2018年5月2日水曜日

4/27 勉強会:収益認識会計基準と法人税法上の取扱い 他

1.非上場株式等の公正価値評価の方法

IFRS任意適用日本企業はどのように非上場株式の公正価値を測定しているか?

⇒非上場株式はほとんどが観察可能でないインプットに基づいて公正価値の測定を行わざるを得ないため、
公正価値のヒエラルキー上は、基本的に「レベル3」に分類される。
⇒評価技法はDCF法、マルチプル法、純資産法など
⇒観察可能でないインプットとは割引率、非流動性ディスカウント、支配プレミアム、資本コスト、永久成長率など



2.自己資本比率低下で/継続企業の前提の注記~平成29年12月期決算では5社

■タイトルに関する注意点(ブログではカットしてください)
・タイトルが「自己資本比率低下でGC注記に至る」と読めるが、あくまで監査報告書の強調事項が付された会社のうち1社にそういった表現があったのみで、自己資本比率低下によりただちにGC注記に至るわけではないし、GC注記の要件でもない。
・非常に読みにくいタイトルになっている点注意してください。

■2017年12月期決算でGC注記が記載された上場会社(5社)
・UMNファーマ(監査法人:トーマツ)
⇒継続的な営業損失の発生及び営業CFのマイナス
・アンジェス(同:トーマツ)
⇒継続的な営業損失の発生及び営業CFのマイナス
・アプリックス(同:ハイビスカス)
⇒6期連続で売上高の著しい減少、営業損失及び営業CFのマイナス
・小僧寿し(同:至誠清新)
⇒43期以降、継続して売上高減少及び親会社株主に帰属する当期純損失を計上
・倉本製作所(同:アヴァンティア)
⇒4期連続で親会社株主に帰属する当期純損失を計上したことにより、自己資本比率が8.3%に低下
⇒取引金融機関によって期限の利益の確保が短期にとどまっている状況



3.期限内に計画の提出なければ事業承継税制特例を適用できず

■事業承継税制
中小企業で後継者が経営者から非上場株式を贈与または相続により取得した場合、後継者が納付すべき贈与税、相続税の納税が猶予される制度。
さらに、一定要件を満たしつつ後継者が死亡した場合には、納税が猶予されていた贈与税、相続税は免除される。

■特例措置(平成30年度税制改正)
(1)後継者が取得したすべての株式が納税猶予の対象に
⇔これまでは発行済議決権株式の2/3までが対象
(2)相続税、贈与税ともに全額が納税猶予の対象に
⇔これまでは贈与税は全額対象、相続税は80%までが対象
(3)最大3人までの後継者への承継が対象に
⇔これまでは代表者となる後継者1人に限定
(4)承継後5年平均の雇用者数が承継前の8割を下回っても猶予の継続が可能に
⇔これまでは8割を下回った場合には、納税猶予は打ち切り
(5)後継者が廃業、売却した際はその時点の株価で税額を再計算できる
⇔これまでは承継時の株価を基に税額を計算

■適用期間
・平成30年1月1日~平成39年12月31日までに取得する財産に係る贈与税又は相続税が対象
⇒10年間の期間限定措置

■適用方法
・平成30年4月1日~平成35年3月31日までに特例承継計画を都道府県に提出すること
⇒計画を提出しても必ず事業承継を行う必要はないので、可能性があれば提出しておくべき



4.住宅の消費税非課税について

■非課税の範囲
居住用家屋の貸付で貸付期間が1ヶ月以上のもの。1ヶ月以内は課税
事務所や店舗、旅館などの施設の貸付はそもそも住宅としての貸付ではない

■施設の貸付
駐車場などの付属設備は、「住宅に付属又は一体」となって貸付られる=住宅家賃と同じとして非課税
但し、家賃と別契約で利用料等をもらう場合は「設備の貸付」なので課税
⇒住宅の貸付となる部分とそれ以外の部分の区分が必要

■集合住宅の家賃、共益費などの課非判定
・集合住宅に入居している者のみを対象にしている場合
⇒「住宅に付属又は一体」となった貸付けなので非課税(外部からの利用も可能であれば課税)
例:住宅内でのジムなどのアスレチック施設、パーティルームなどの娯楽施設
・倉庫や家具などの付属設備の使用料の取扱
⇒入居者自身の選択ができない場合は非課税(選択が可能であれば課税)
・家賃とは別に請求する上記と同様な各種の料金
⇒個別に判断するが、住宅家賃と区分している、していないで課非判定が分かれる



5.収益認識会計基準と法人税法上の取扱い

・平成33年4月1日以後開始事業年度から「収益認識会計基準」が強制適用。
・適用対象は、上場会社や会社法の大会社等の約1万社数千社
・平成30年度税制改正では、収益認識を明確化するため法人税法22条の2が新設。
・改正される見込みの法基通においても、原則として収益認識に関する会計基準の考え方が取り込まれ予定
・課税の公平の観点から会計基準とは異なる取り扱いもある。

■法人税法上の基本原則
・法人税法22条の2について
1項
→資産の譲渡等に係る収益の額は、原則として「その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日」の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入されることが明記。
→原則として、「引渡基準」が採用されていることが明示されている。

2項
→資産の譲渡等に係る収益の額について「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って当該資産の販売等に係る契約の効力が生ずる日」等の属する事業年度の確定した決算において収益として経理した場合には、第1項の規定にかかわらず、当該事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入することとしている。
→「権利確定主義」を法制化するものと解釈される可能性があり、選択適用の規定ではないため、会計上で収益計上した場合には、税務上も益金として取り扱う必要が出てくる。




6.国税庁、データ形式柔軟化で雛形提供

■勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化(平成31年4月実施予定)
1.売掛金(未収入金)や買掛金(未払金)など記載量が多くなる勘定科目を対象
(1)期末現在高が50万以上or上位100件の記載(100件超の場合、上限を100件とする)
(2)相手先単位での記載or支店、事業所別の記載
⇒法人が記載方法について選択可能
2.貸付金及び受取利息の内訳書⇒「貸付理由」欄の削除
3.借入金及び支払利子の内訳書⇒「借入理由」欄の削除
4.仮払金/仮受金の内訳書⇒取引の内容の欄の自由記載化
5.雑益、雑損失等の内訳書⇒固定資産売却益(損)の記載不要化

■データ形式の柔軟化
国税庁から勘定科目コード及び標準フォームを提供

■電子申告義務化摘要届出書の提出期限 ※法人の設立日等により異なるので注意。
既存の資本金1億円超の法人
⇒平成32年4月1日以後最初に開始する事業年度の開始の日以後1月以内
施行後・・・
増資により資本金1億円超となった場合
⇒1億円超となった日から1月以内
資本金1億円超の会社を設立した場合
⇒設立の日から2月以内




7.仮想通貨の不正送信被害に係る補償金の取扱い

■タックスアンサー回答
仮想通貨交換業者から日本円による補償金の支払いを受けた場合、補償金の額は
非課税となる損害賠償金に該当せず、雑所得として課税の対象となる。

■課税関係
補償金>仮想通貨の取得価額⇒上回る部分が課税対象、原則として雑所得
補償金<仮想通貨の取得価額⇒下回る部分の金額の損失を他の雑所得と通算可

■その他関連論点
流出してしまったことに対する慰謝料として補償金を受ける場合には「心身または
資産に加えられた損害につき支払を受ける見舞金」として非課税とされる可能性がある




8.収益認識会計基準対応 法基通の方向性を確認、消費税は泣き別れが不可避に

収益認識会計基準の創設を踏まえた税務上の対応は以下の通り。
・法人税法22条の2が創設 ※22条は法人税法の基本となる条文
・基本は会計を容認する。
⇒ただし返品や回収不能の可能性がある場合は収益の計上額に反映させない。
・値引き・割戻等は通達にて対応予定。
・消費税は従前からの取扱いを変えない。
⇒会計・法人税との間で乖離が発生し、システム対応が必要となる。
・中小企業は適用されない。

■創設された法人税法第22条の2
(1)収益計上時期
・原則:目的物の引渡し又は役務提供の日
・原則の引渡し日に近接する日に収益計上した場合、益金算入を認める
・申告調整にて益金計上することも可能
(2)収益の計上額
・原則:引渡し時の価額又は役務提供に対する対価の価額で計上する
・引渡し時の価額又は役務提供に対する対価の額に
返品や回収不能の可能性がある場合はその影響を織り込むことはできない




スマホアプリの収益認識

・「収益の認識に関する会計基準」では、
 履行義務を充足した時、または充足するにつれて収益を認識することが求められている
・企業は識別された履行義務が
 ①一定の期間にわたり充足されるものか
 ②一時点で充足されるものか
 を判断する必要がある。
・スマホアプリ(主にゲーム)内課金に関する収益認識について
 1.ユーザーが課金してゲーム内通貨を購入した時点
 2.通貨でアイテムを購入した時点
 3.アイテムの使用状況に応じて
 のいずれになるかが論点となっている。
 ⇒まずは①か②で判断する。
 ⇒「各社が、自社が提供するゲームの実態を反映した適切な方法で」とされている。




10.近時の定時株主総会の傾向

CGコードの制定等を背景に、株主との建設的な対話の場として、株主総会の活用を図る取り組みが進展
(1)集中度合が引き続き減少傾向(集中日は6/29で31.0%)
(2)招集通知を早期発送する傾向(3週間以上前が26.6%)
(3)早期ウェブ開示が増加傾向(前年は85.2%)
(4)英文招集通知作成会社でウェブ開示は増加傾向(前者35.8%、後者34.5%)




11.資本連結から生じる一時差異の税効果

■連結FS固有の一時差異
・子会社の資産および負債の時価評価による評価差額に係る一時差異
⇒子会社の税率使用

・支配獲得時に生じる子会社に対する投資に係る一時差異
⇒通常は一時差異は生じないが、以下において生じるケースあり 
 ※ただし支配獲得時においてDTA/DTLは計上されない(税効果適用指針22~24項、105,106項)
(1)取得原価に含まれる取得関連費用に係る一時差異
 個別:取得原価に含める、連結:費用処理であるため
(2)段階取得に係る損益に関する一時差異

・支配獲得後に生じる子会社に対する投資に係る一時差異
(1)子会社の留保利益に係るもの
⇒配当金として受け取ることに解消されるものが対象
(2)為替換算調整勘定に係るもの
⇒売却の意思が明確な場合のみ

・のれんまたは負ののれんに係る一時差異
⇒子会社株式等の取得に伴い認識したものはDTA/DTLを計上しない

・のれんの償却額または負ののれんの利益計上額の取り扱い
⇒原則は計上しないが、売却の意思がある等、回収可能性がある場合のみ計上する



12仮想通貨に関する法人税・所得税上の取扱い

■概要
制度上の取扱いは整備途中だが、比較すると、所得税法上の整備が進んでいる

■所得税
・所得⇒仮想通貨を「使用」した際に所得が生じる(含み損益は所得にならない)
(1)売却(=日本円に換金)した場合:仮想通貨の売却価額と取得価額の差額
(2)商品を購入した場合:商品の税込価額と支払った仮想通貨の取得価額の差額
(3)交換した場合:交換後の仮想通貨の時価と交換前の仮想通貨の取得価額の差額
(4)マイニングした場合:取得した仮想通貨の時価からマイニングに要した経費を控除した金額

・取得価額⇒原則として移動平均法、継続適用を前提として総平均法が認められる

・申告⇒雑所得

■法人税
・仮想通貨の期末評価
該当するかは定かではないが、税法上の「短期売買商品」「棚卸資産」に該当すれば評価対象

・売却損益の認識時点
金融商品に該当すれば約定日基準、棚卸資産に該当すれば税法上は引渡基準




13.実務対応報告36号を踏まえて考える有償ストック・オプションの法務・税務への影響

■有償SOの取扱
・有償SOは現金を対価として新株予約権を発行する取引
・実務対応報告では有償SOの付与を「金銭の対価および従業員等から受けるサービスの対価」として付与するものと整理
 ⇒労働等のサービスに対する対価のため費用計上することになった。

■所得税法上の取扱
・個人が新株予約権の時価により付与を受けた場合、有価証券の取得として取り扱う
 ⇒権利行使時に課税関係は生じず、株式を譲渡した時に課税される。
・「役務の提供その他の行為による対価」として付与された場合、権利行使時に給与所得として課税される
・有償SOは「役務の提供その他の行為による対価」として付与されるものではないとして、譲渡時に譲渡所得として課税されていた。
 ⇒実務対応報告は発行法人の取扱を定めたものであるため、ただちに所得税法上の取扱に影響を与えるものではないと考えられる

■法人税法上の取扱
・会計処理の如何にかかわらず、法人税計算上、損金に算入されない現行の実務は今後も維持されるべき。
 ⇒損金算入が認められる場合は、所得税法上、個人側で課税がある場合が前提である。





14.仮想通貨の会計処理

仮想通貨は、会計上の資産として扱い、仮想通貨として独自の会計処理が定められている。
※適用開始:2018年4月1日以後開始する事業年度の期首から

■会計処理方法
(1)期末における仮想通貨の評価
・活発な市場あり
⇒市場価額に基づく価額で評価
 帳簿価額との差額は当期の損益
・活発な市場なし
⇒取得原価で評価
⇒期末処分見込価額が取得原価を下回る場合は、期末処分見込価額をもって貸借対照表価額
 差額は当期の損失(戻入不可)

(2)仮想通貨の売却損益の認識時点
 売買の合意成立時点において認識(約定日基準)

(3)仮想通貨の売却損益の表示方法
・売却収入から売却原価を控除した純額を表示(表示科目の定めなし)
・仮想通貨交換業者は発生期間における企業活動の成果として、上記純額を表示

(4)仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨
・預かった仮想通貨は、その時の時価により資産計上
・同時に預託者に対する返還義務を負債計上(上記資産と同額計上)
・預託者から預かった仮想通貨と仮想通貨交換業者自身の保有仮想通貨は簿価分離する
・期末評価は(1)と同様の方法により評価
 期末評価からは損益を計上せず、負債は資産と同額とする



15.仮想通貨をめぐる監査実務のポイント


■概要
資金決済に関する法律「資金決済法」が平成28年6月3日に改正・公布された。この影響により、日本公認会計士協会から平成29年5月31日に「仮想通貨交換業者における利用者財産の分別管理に係る合意された手続業務に関する実務指針」、平成30年3月23日に「仮想通貨交換業者の財務諸表監査に関する実務指針(公開草案)」が公表された。

■「仮想通貨交換業者における利用者財産の分別管理に係る合意された手続業務に関する実務指針」
・監査の対象
⇒事業者自身の財産と利用者の仮想通貨の分別管理の状況(ex.法令順守、内部統制の整備・運用状況)を監査。
・手続
⇒合意された手続(事前に依頼主と合意した手続のみを行う)。
・結果の報告
⇒事前に事業者と合意した手続とその結果を報告するのみ。保証業務ではないため、実施結果報告書に「保証業務ではない旨」が明瞭に記載される。
・想定利用者
⇒事業者と規制当局のみに限定。

■「仮想通貨交換業者の財務諸表監査に関する実務指針(公開草案)」
・監査の目的
⇒事業者の財務諸表が企業会計の基準に準拠して、実態を適正に表示しているかどうか。
・手続
⇒監査人が監査の基準に準拠して、職業専門家として判断した手続
・結果の報告
⇒財務諸表全体の適正性についての意見表明。
・想定利用者
⇒一般的な投資家





16.統合報告書の監査


・決算情報だけでなく、意思決定の仕組みや社会的な責任を守る活動についての情報をまとめて「統合報告書」を作り、投資家など外部への情報開示を充実させる企業が増加。⇒2017年に411社が発行。

・新日本監査法人
17年に統合報告書に関わる作業を担う「統合報告推進チーム」を立ち上げ。
人権や自然環境に関する専門家も抱えている。

・あずさ監査法人
キリンホールディングスやJR東日本などを担当。

・PwCあらた監査法人
17年にこうした業務を担当する「リスク・デジタル・アシュアランス部門」を新設。


17.就業規則、労使協定


就業規則
・従業員が常時10人以上いる会社に作成及び、労基への届出が義務
・周知方法は、社内の共有サーバーやメール配信など

労使協定
・会社と労働組合、または、労働者の過半数代表者との書面上締結
・労働者の過半数代表者は、管理監督者ではない従業員から選出
・例えば36協定を締結する場合、
1.過半数代表者を選出することを通知
2.期日を指定し立候補者を募る
3.立候補に対して、投票などで信任を問い、過半数の同意を得た立候補を適任者として決定
⇒従業員数が少ない場合は、話し合いや持ち回りでの互選でも可能




















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