2018年4月23日月曜日

4/20 勉強会:「改正CFC税制(外国子会社合算税制)・キャピタルゲイン特例の全容 他

1.改正CFC税制(外国子会社合算税制)・キャピタルゲイン特例の全容

■概要
・CFC税制(外国子会社合算税制)
⇒外国の子会社等の所得を日本の親会社等の所得に合算して課税される税制

・キャピタルゲイン特例
⇒ペーパーカンパニーで生じる一定のキャピタルゲイン※を合算対象外とする特例
※買収されるまで外国企業グループの中にあったペーパーカンパニーが行った
株式の譲渡により生じた譲渡益など、日本の税源を侵食しているとは言えない
外国法人の株式の含み益に起因する譲渡益

■改正政省令の内容
・内国法人が特定外国関係会社を直接保有する場合はキャピタルゲイン特例の適用対象外
・譲渡された株式の再移転があった場合は原則としてキャピタルゲイン特例の適用対象外
・やむを得ない理由(本店所在地国の法令や慣行等)があれば2年以内でなく5年以内の譲渡も特例対象




2.公正価値測定、金融商品以外は検討せず

・IFRSでのBS価額=公正価値で評価
・日本基準=時価の概念はあるが、金融商品以外は「公正価値測定(IFRS)」と異なるもの
・トレーディング目的で保有する棚卸資産は売買目的有価証券に準ずる、とされているため、今後国際基準との整合を図る可能性あり
・それ以外の資産について、国際的な会計基準と整合性を検討する必要性は高くない⇒特段の取り組みは行わない方針


3.中小企業賃上げ税制の詳細が明らかに

■中小企業向け所得拡大促進税制の改正
【基本】
・雇用者給与等支給額が前事業年度を超える
・継続雇用者給与等支給額が全事業年度比1.5%以上増加
⇒増加額の15%相当額を税額控除可能(法人税額の20%が限度)
※ただし、継続雇用者給与等支給額がゼロの場合は適用不可

【上乗せ措置】
・継続雇用者給与等支給額が前事業年度比2.5%以上増加
・下記どちらかを満たす
(1)教育訓練費が全事業年度比10%以上増加(前年度0でも適用可)
(2)経営力強化計画の認定あり
⇒増加額の25%相当額を税額控除可能(税額の20%が限度)


4.仕入税額控除否認、マンション一室毎販売も対象か

■消費税の仕入税額控除を巡り地裁と裁決が異なる解釈
・販売業者が取得した居住用建物にかかる消費税の仕入税額控除の大部分を否認する更正処分が頻発
⇒裁決(H24.1/19大阪国税不服審判所) 賃貸の用に供しているから共通仕入と判定
⇒判決(H25.6/26さいたま地裁) 販売目的と謳っていれば課税仕入れのみと判定される可能性あり

■一棟毎でも一室毎でも同じ
・更正処分が頻発している現在、対象は“一棟ごと”販売した法人に限られている。
⇒区分所有の賃貸用マンションを“一棟づつ”販売ではなく“一室づつ”販売したとしても取引金額の大小があるだけで、取引自体が変わるわけではないため爆発的に更正処分の件数が増える可能性がある。


5.IFRS任意適用日本企業が計上している耐用年数を確定できない無形資産

【IAS第38号「無形資産」について】
■耐用年数を確定できない無形資産
→無形資産が、正味CFをもたらすと期待される期間について、予見可能な限度がない場合には、耐用年数を確定できないものとみなす必要がある。
→耐用年数を確定できない無形資産は償却を行ってはならない。
→毎期減損テストを実施する必要がある
→毎期耐用年数が確定できないものとする事象又は状況が引き続き存在しているか、毎期見直す必要がある。

【日本企業における適用事例】
■IFRS任意適用日本企業:123社
→内、耐用年数を確定できない無形資産を計上している企業:29社
→内、500億円を超える耐用年数を確定できない無形資産を計上している企業:5社
→ソフトバンクが群を抜いて多額に計上している。
計上額は4兆8,036億円(内、FCCライセンスが4兆1,006億円)。
→次に多く計上しているLIXILグループで1,795億円。

■耐用年数を確定できない無形資産の内容
主に計上されているものは、商標権(17件)である。
その他には、ブランド(4件)や仕掛研究開発(3件)、ライセンス(2件)、顧客との関係(1件)がある。




6.今週の専門用語

■法定相続情報証明制度
 平成29年5月29日から開始され、登記所より交付される法定相続情報一覧図の写しを各種相続手続きに利用できます。(※法定相続一覧図の写しは無料で必要な通数を取得、また5年間は再交付が可能)

■利用者のメリット
(1)戸籍謄本の束を何度も出し直す必要がなくなる。
(2)金銭的負担の軽減。
(3)時間の短縮(書類の返却を待つ必要がない)

■留意点
(1)全国の登記所と一部の大手機関となるため事前に利用できるか確認が必要。
(2)亡くなられた方と相続人が全員日本国籍を有していない場合は、本制度は利用できない。
(3)法定相続情報一覧図の写しは、あくまで戸籍謄本一式の代わりなので、一部の手続きには利用できない。(例:遺産分割協議書、相続申告書の添付資料など)



7.確定申告書の「連年提出要件」

■概要
・個人Aは平成23年から25年において先物取引を行っていた
・平成23年については差金決済にかかる損失が生じていた(確定申告済)
・平成24年については確定申告をしていなかった
・平成25年分の確定申告時に「差金決済に係る損失の繰越控除控除の特例」を適用して申告した
が同特例の適用をうけるためには「連続して確定申告書を提出している」ことが要件とされている
 ことから適用を受けられなかった
・そこで平成24年分の期限後申告を行った上で、平成25年分の更正の請求を行った
・しかし、提出順序が前後していることから更正がされなかった

■まとめ
「連続して確定申告書を提出する」とは各年分の確定申告書が前後せず順番に提出されていることを意味している




9.電子申告義務化に係る法人税申告書別表見直しは31年4月に

e-taxの使い勝手の大幅改善策として、
法人税の申告書の別表と内訳書、財務諸表のデータ形式につき、
CSV形式で提出することを許容することを明らかにした。

H31年4月を目途に以下の書類が簡素化される
・勘定科目内訳明細書の記載内容の簡素化
・法人税の申告書の別表及び内訳書のデータ形式での柔軟化
・財務諸表のデータ形式の柔軟化
・申告書と共に提出する添付書類の提出方法の拡充(光ディスク等)
・財務諸表の提出先の一元化

相続税の申告手続きの電子化については、H31年10月以降に対応予定。




10.海外M&A 実行「前」と「後」が重要

※経済産業省 海外M&A研究会報告書等を公表

①M&Aストーリーの構想力
 海外M&Aありき、ではなく、まず「なぜ海外M&Aなのか」の緻密な検討と入念な準備が必要
②海外M&Aの実行力
 DDの意義と限界を理解した上で、目的意識を明確に持ってDDを遂行する
③グローバル経営力
 海外企業にも通用するリーダーシップ・専門性・コミュニケーション能力を持った人材を採用・育成する

※経営トップがとるべき9つの行動
・「目指すべき姿」と実現ストーリーの明確化
・「成長戦略・ストーリー」の共有・浸透
・入念な準備に「時間をかける」
・買収ありきでない、成長のための判断軸
・統合に向け買収成立から直ちに行動に着手
・買収先の「見える化」の徹底
・自社の強み、哲学を伝える努力
・海外M&Aによる自己改革とグローバル経営力
・過去の経験の蓄積により「海外M&A巧者」へ




11.平成30年6月株主総会の想定問答

■監査等委員会設置会社への移行
Q:監査等委員会設置会社に関してどう考えているか、また移行は考えているか
A:監査等委員会設置会社は最低2名以上の社外取締役を要求、取締役の監督機能を強化する狙い
当社においてもガバナンス上の最適な機関設計を検討しているが、監査役会設置会社でも
半数以上の社外監査役がいるので、十分に機能を果たせると考えている

■働き方改革
Q:働き方改革に伴い、何か取り組みを行っているか、その取り組みで人件費は増加したか
A:ワークライフバランス推奨活動を実施し、柔軟な出退社時間の設定、時間外労働の削減、
有給休暇取得推進等を進めています。これらの取り組みで人件費が大きく増加したということは
今のところございません。



12.持分法会計

・投資会社が被投資会社の資本および損益のうち投資会社に帰属する部分の変動に応じて、その投資の額を連結決算日ごとに修正する方法
 仕訳例(投資有価証券×× / 持分法による投資損益××)
 対象=原則、議決権の20%以上を自己の計算において所有している場合
■基本的な会計処理
・被投資会社の時価評価
・のれんの償却
・持分法による投資損益の計算
・未実現損益の消去
・配当金の消去
■留意点
・子会社と同様に同一環境下で行われた同一の性質の取引等についても、子会社の場合と同様に原則統一する
・被投資会社の直近の財務諸表を利用することが認められている
 ただし決算日に差異があり、その期間内に重要な取引または事象が発生しているときには、修正または注記が必要
・連結と異なり追加取得の際、新たにのれんを認識する



13コーポレートガバナンスの促進とフェア・ディスクロージャー・ルール適用の動き


■コーポレートガバナンス(CG)コードに関する現状と今後の動き
(1)招集通知への記載内容の充実
CGコードで開示が求められる事項※を、総会参考書類や事業報告に任意に記載する事例が増加中
※特に、社外役員でない取締役・監査役候補者の指名理由は、上場会社の60%超が記載

(2)相談役・顧問の開示
CG報告書の改訂により、相談役・顧問の任意記載が可能に

(3)CGコードの改訂案
政策保有株の縮減に関する方針、年金の人事・運営に関する取組、役員解任の手続に関する開示要請等

■フェア・ディスクロージャー・ルール(FDルール)の導入(2018年4月から適用)
(1)内容
上場会社の役員等が、重要事項を伝達した場合、同時又はその後速やかに、公表することを求めるもの

(2)重要事項
会社の経営・財産に関する未公表の重要な情報であり、投資家判断に重要影響を及ぼすもの

(3)ルールが適用される場合の例
株主懇親会等でのスライドを用いた中計の報告時、総会の質疑回答で重要情報を意図せず伝達した場合

※インサイダー規制等の従来の縛りがあることから、実質的に大きな影響はないか



14.開示書類に係る改正と一体的開示への取り組み

欧米諸国:株主総会までに開示書類1つ
日本:有価証券報告書と事業報告の2つ
⇒有価証券報告書と事業報告の雛形や様式の差異が多いので、別書類として作成
⇒一体化することで効率的な開示を目指す

・一体化に向けた対応項目
以下の事項等については一体的開示が進められている
※対応は義務ではない。
※事業報告等の項目/有価証券報告書の項目

主要な事業内容/事業の内容
使用人の状況/従業員の状況
主要な営業所及び工場/主要な設備の状況
会社役員の報酬等/役員の報酬等
計算書類/財務諸表




15.積立金方式での固定資産の圧縮記帳


■圧縮記帳が認められる主な場合
・国庫補助金等で取得した場合
・保険金等で取得した場合
・交換により取得した場合 等

■積立金方式で圧縮記帳を実施するかの判断ポイント
(1)金額的重要性
(2)資金繰り、資金運用の観点からの有用性
・受贈益等が原則通り課税された場合、予定していた設備投資等の支出が困難になる場合
 ⇒圧縮記帳の実施が有利
(3)今後の法人税率等の引下げの可能性
・⇒引き下げが考えられる場合、圧縮記帳が有利
(4)資産内容(償却資産か土地か)
・償却資産⇒耐用年数の経過により小さくなった減価償却費を通じて課税所得の増額
・土地  ⇒処分予定がない場合、課税所得の増加もない
(5)圧縮額の計算の容易性



16.無対価株式交換の会計上の留意点



■概要
・無対価株式交換
⇒100%資本関係のある会社間の企業再編で、取得企業が対価の支払を省略し、被取得企業の株式の取得のみを行う取引のような、対価の支払のない株式交換取引のこと。

■個別財務諸表上の会計処理
(ex.親会社:P社、P社の100%子会社:A社、B社、A社がB社株式を株式交換により取得するケース。)
対価の支払のある株式交換取引と考える(株式交換方式)。
・P社の処理
⇒取得したA社株式を、B社株式の帳簿価額により算定(適用指針236-4項)。
・A社の処理
⇒取得したB社株式を、B社の株主資本に、P社の持分比率(100%)を乗じた持分相当額により算定(摘要指針 236-4項)。
・B社の処理
⇒処理なし(株主がP社からA社に変更するのみ。)

P社がB社株式をA社へ現物出資したと考える(現物出資方式)。
・P社の処理
⇒取得したA社株式を、B社株式の帳簿価額により算定(分離基準19項)。
・A社の処理
⇒取得したB社株式を、B社株式の帳簿価額により算定(結合基準41項)。
・B社の処理
⇒処理なし(株主がP社からA社に変更するのみ。)

■両会計処理の相違
・A社の会計処理に差が生じる。

■諮問基準会議の結論
⇒基準化が見送られ、会社の方針や他の事業との整合性などを勘案して判断する。

■IFRSの考え
⇒採用している子会社株式の評価方法を考慮する。



17.PwCあらた監査法人は企業会計の異常値を人工知能(AI)で抽出するシステムを開発し、このほど試験的に運用を開始。



売上高や費用を分類する会計仕訳という作業に使い、不正などの可能性がないかどうかを自動的にチェック。
PwCあらたは2016年10月にAI監査研究所を開設。会計監査にAIを活用し、業務の効率化などを進める考え。


















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