2018年3月30日金曜日

3/30 勉強会:平成30年3月期の税務申告のチェックポイント 他

1.国外財産調書制度に係る加重措置の適用可否で初裁決

■国外財産調書制度とは
・12月末時点で5,000万円超の国外財産を有する居住者に対して
翌年3月15日までに国外財産の種類、数量、価額等を記載した
国外財産調書の提出を義務付けるもの
・期限内に調書の提出がない場合又は期限内に提出された調書に記載のない
 国外財産に係る所得税の申告漏れが生じたときは5%の加算税

■裁決事例
【前提】
(1)納税者は平成26年分の所得税について法定期限内に確定申告書を提出していた
(2)納税者は国外財産調書は提出していなかった
(3)納税者は平成27年8月31日に自主的に修正申告書を提出した
(4)納税者は平成27年9月14日に修正申告書の基因となった国外財産調書を期限後提出した

【争点】
・原処分庁は国外財産調書の提出がない場合の加重措置を適用し過少申告加算税の賦課決定処分を行った
・納税者は修正申告書に加重措置は適用されないと主張した

【裁決】
・加重措置を適用した過少申告加算税の賦課決定処分は適法
⇒国送法6条4項は国外財産調書が提出期限後に提出されたことを前提として、
 それ以後に修正申告の提出があった場合の取扱いを定めたもので、逆の場合は同項の適用はないと解釈
⇒つまり順番が大事!(4)国外財産調書の期限後提出、(3)自主的修正申告の順であれば加重措置回避できた




2.再編税制「その他所要の措置」の内容は

■「その他所要の措置」とは
・今回の税制大綱…組織再編関連での改正が並ぶ中、「その他所要の措置を講ずる」旨記載があったが、今回その内容が明らかになった。

■内容=全部取得条項付種類株式や株式併合:金銭交付でも適格株式交換に
・税法:適格株式交換等の対価要件の例外を複数列記
(従来の例)
・買い取り請求に基づく対価として交付される金銭その他の資産
・一定数以上の株式を保有している親会社が株式交換する際、他の株主に交付される金銭その他の資産
など
⇒限定列挙されたもの以外の対価によるものは非適格とされる。

(改正)以下が追加
・全部取得条項付種類株式の取得、株式併合の場合で端株に対して交付された金銭




3.法人決算業務契約の途中終了で報酬額は

■事例
・法人との間に顧問契約あり
・H26年決算業務は途中で終了し決算書を作成していない。
・決算業務を途中で終了したのは法人からの連絡が途絶えたから
・税理士が決算業務報酬として58万円を請求(決算業務を遂行した割合に応じた相当額)

■判決
・税理士が勝訴
【理由】
(1)法人と税理士は決算業務報酬額に関する合意をしていた
(2)税理士はH26年決算業務の98%を遂行
(3)決算報酬はH17年~24年までは50~60万程度であり、法人も支払っていた
⇒従来の請求額と比較して不相当な額とはいえない
⇒決算業務の途中終了について税理士には責任はない※

※民法648号3項
委任が受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる





4.新固定資産税の特例措置

税制改正により平成32年度までの3年間に限り投資した機械設備等の固定資産を1/2から最大0になる。
施行時期:国会の審議状況によるが「公布の日から3か月を超えない範囲内で」

■(旧)中小企業経営強化法 ⇒ (新)生産性向上特別措置法への変更
・平成31年までは両制度が併存する。
・旧制度は固定資産税の課税標準が1/2が限界だったが、新制度は1/2~最大0

■固定資産税の特例措置を受けるためには?
・設備導入促進計画を国に認めてもらう事
・市区町村の条例に定められていないと特例措置を受けられない
・また対象設備も市町村ごとに異なっている為注意が必要で条例の公布を待つ必要がある。
(⇒3月末頃を目途に全国の市町村が制定した条例を中小企業庁のHP上にUPする予定との事)

■設定のハードルは?
・先端設備導入計画の認定は経営力向上力計画は申請書2枚のみ
・法令の要件さえ整っていれば認定を受けることができる。

■新制度の施工日前に取得した設備の取扱いは?
・対象外なので注意。
・現行の制度では認定前に取得していても取得日から60日以内に経営力向上計画が受理されれば軽減措置を受けることができる。





5.検針日基準の代替的な取り扱いは容認せず

■電気事業及びガス事業における検針日基準に代替的な取り扱いを設けず
→新しい収益認識会計基準は、基本的に収益を見積り計上することが原則
→検針日基準を認めた場合には、他の業種から例外的な取扱いの追加の要望を受けることが懸念されるため。
→ASBJは、今後実務上見積が困難であれば再検討することも考慮するとしている。

■売上高又は使用料に基づくロイヤリティも代替的な取り扱いはなし。
→現行実務上、一定の場合には現金主義での収益認識が認められている。
→新しい収益認識会計基準では、現金主義での収益認識ができない。
→現金主義での収益認識を容認すれば、比較可能性を損なわせる可能性があるため。
→ASBJは、今後実務上見積が困難であれば再検討することも考慮するとしている。





6.審査事例:歯科矯正治療費に係る事業所得の総収入金額計上時期

■質疑応答事例による回答
<いわゆる治療基本料金の取り扱い>
(1)矯正装置の装着など一定の役務提供を行った時に基本料等の全額について請求し
受領することとしている場合⇒その役務の提供を完了した日
(2)期間の経過または役務の提供の程度等に応じて所定の基本料金等を受領することとしている
場合⇒その期間が経過した日またはその役務の提供を了した日
(3)(1)(2)以外
イ.支払日が定められている場合⇒支払日
ロ.支払日が定められていない場合⇒支払を受けた日
ハ.支払日が矯正治療を完了した日後とされている場合⇒治療を完了した日

■事例
A歯科では治療を希望する者に対し、治療費の振込先・治療費総額が記載された
書面を交付している(請求書との認識はない)。この場合、収入の計上時期はいつか?

書面が「請求書」にあたる場合⇒一定の役務提供を完了した日に計上
書面が「請求書」にあたらない場合⇒支払を受けた都度計上




7.電子申告義務化 PDFデータ対応の範囲は現行どおり

H32年4月1日以後開始事業年度より、
資本金1億円超の大法人は法人税と消費税等の電子申告が義務化される
すべての申告書と添付書類が対象で、
原則電子データで提出し、一部の書類はCSV形式やPDFデータで提出することができる。

PDFデータで容量が大きくなる場合は、
光ディスクで提出可能となるように法改正も見込まれている。




8.仮想通貨/活発な市場

仮想通貨の処理は「活発な市場」の有無で処理を分けている
「活発な市場」がある場合
・市場価格をBS価額とし、差額は損益とする
「活発な市場」がない場合
・取得価額をBS価額とする
・期末時点の処分見込価額が取得原価を下回る場合処分見込価額をBS価額とし、差額は損失とする

「活発な市場」の判断基準
⇒継続的に価格情報が提供される程度に、十分な取引量、取引頻度があること
2018/4月以降開始の期から適用だが、早期適用可能なので2018年3月期からの早期適用がありえる。





9.平成30年3月期の税務申告のチェックポイント~役員報酬~

(1)支給総額が同額である、源泉税額等の控除後の手取り額が同額であるか
(2)やむを得ない事情を除き、期首~3ヶ月以内の改定
※申告延長の場合、当期首からその指定された月数に2を加えた月数を経過するまで
(3)期中に減額改定が行われている場合、税務上認められる業績悪化改定事由、臨時改定事由に該当するか
(4)増額改定が過去に遡及して一括で払われる場合、遡及増額分を全額否認しているか
(5)出向法人で役員の場合、出向元に対して支払う当該役員に対する給与負担金について、
出向先で総会等の決議があり、出向契約で予め期間、金額が定められているか。
また、支払われた負担金は、定期同額または事前確定届出の要件を満たしているか。
(6)事前確定届出給与に該当する場合、届出が期限までに提出済みか
(7)業績連動給与に該当する役員退職給与で、H29.10.1以降に決議があったものは(※)、
業績連動給与の損金算入要件を満たすものを除き損金不算入にしているか
※決議が無い場合は、H29.10.1以降に支給されたもの





10.支配獲得時の資本連結

■主な資本連結
・投資と資本の相殺消去
・のれんの計上
・非支配株主持分の計上
■みなし取得日・売却日の取り扱い
・支配獲得日が子会社の決算日以外の日である場合、当該日の前後いずれかの決算日に支配獲得(株式の売却等)が行われたとみなして処理できる
■決算日の異なる子会社を取得した場合の取り込む財務諸表の範囲に関する留意点
・子会社の決算日と連結決算日の差異が3ヶ月を超えない場合=子会社の正規の決算を基礎として連結決算可能
(のれんの償却開始時期)
・原則=支配獲得日・・・子会社のPL連結期間と一致
・例外(親3末、子12末決算で4月末に100%取得)
(1)みなし取得日4/1・・・2Qからのれん償却(1QではPL取り込まない)
(2)みなし取得日6/30・・・3Qからのれん償却(1Qおよび2QではPL取り込まない)





11.外国子会社から受けた配当の益金不算入についての留意点

■ポイント
 (1)配当等の額の95%を益金不算入としているか
 (2)配当に係る外国源泉税額を損金不算入としているか

■対象となる外国子会社
内国法人が25%以上※を配当基準日以前6ヶ月以上から継続して保有している外国法人
※株式数か議決権数かいずれか高い方の割合
※租税条約で緩和されている場合は、その割合(日豪間は10%)

■外国子会社の配当が損金算入されている場合、受けた方も益金不算入の対象外となる



12.外国税額控除

外国税額控除のチェックポイント

①外国税額につき税額控除または損金算入のいずれを選択するか確認したか
⇒外国税額につき、損金算入を選択した場合、外国税額の繰越控除余裕額または繰越控除限度超過額はすべて打ち切られることに留意。

②外国税額控除を選択する場合、控除対象外国法人税はすべて加算(社外流出)調整が必要

③外国子会社配当の益金不算入規定が適用される配当金に係る外国源泉税は外国税額控除の対象とならない

④外国子会社配当の益金不算入制度が適用される配当がある場合、
配当等の5%相当額を国外所得金額に算入し、残額を国外所得金額から控除する

⑤過年度からの控除限度超過額ないし控除余裕額を当期に充当する場合、
古いものから先に充当し、同じ年に発生したものは国税⇒道府県民税⇒市民税の順に充当する




13.交際費の税務申告時チェックポイント

(1)税務上の交際費に該当するが、交際費以外の勘定科目で処理されているものの有無の確認
 「有」の場合、損金不算入額の計算対象に含めているか
(2)一人当たり5千円以下の少額飲食費(社内飲食費は除く)
 全額が税務上の交際費から除外されているか
(3)一人当たり5千円以上の飲食費(社内飲食費は除く)
 50%相当額が損金算入されているか
 ※中小法人(大法人の完全支配関係があるものを除く)が、
  年額800万円の定額控除限度額に係る規定を適用する場合は、いずれか有利な方を選択適用可能。
(4)上記(2)、(3)を適用する場合、一定書類の保存がされているか
 飲食等のあった年月日、参加人数等の一定の事項を記載した書類の保存が必要
(5)税抜経理方式を採用している場合
 交際費に係る控除対象外消費税額が発生した時に、交際費等の支出額に含めているか
(6)その他
・5千円以下か否かの判定時の金額
 税込経理方式は税込金額で、税抜経理方式は税抜金額で判定
・接待時の移動に要する交通費等
 する側  ⇒税務上の交際費に含める(接待等がなければ支出されなかった費用も含むため)
 受ける側 ⇒税務上の交際費に含めない





14.今3月期決算の実務ポイント 税務

・研究開発税制
 ⇒ 増加型を廃止、総額型に
 ⇒ 2年間の時限装置で控除率の上乗せあり
 ⇒ 「新サービス研究」を対象に追記

・所得拡大促進税制
 ⇒ 中小企業者以外の要件が厳格化(前事業年度の平均給与等総額を超えていること⇒前事業年度比2%以上増加)
 ⇒ 税額控除率は10%から22%に

・営業権の償却
 ⇒ 月割計算に変更



14.公開申請に伴い発生する費用

(1)証券取引所
1.上場審査料
東京証券取引所200万円、その他100万円

2.上場手数料
取引所/定額/変動
東京/1部1,500万円、2部1,200万円/株式数×価格×(公募:万分の9、売出:万分の1)
マザ/100万円/株式数×価格×(公募:万分の9、売出:万分の1)
ヘラクレス/400万円/上場時の時価総額により25万円~1,300万円
大阪/500万円/1単位(※)につき30円(上限1,500万円)
名古屋/300万円/1単位(※)につき26円(上限1,700万円)
JASDAQ/600万円/上場株式数により72万円~132万円

(※)投資単位が50万円とみなして次の計算により算出した調整後の上場株式数
投資単位調整後上場株式数=上場株式数×(実際の投資単位÷50万円)










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