2018年3月3日土曜日

3/2 勉強会:株式譲渡代金の調整条項で支払われる代金の収入時期 他

1.二次再編でも従業者従事要件等が緩和

■要約
・従業者従事要件及び事業継続要件が緩和され、二次再編があった場合にも適用される
・平成30年4月1日以後に行われる組織再編(合併、分割、現物出資、株式交換、株式移転)から適用される

■説明
A社:被合併法人
B社:合併法人
C社:二次再編先
D社:C社との間に完全支配関係がある法人

・B社がA社を合併(A社の従業者や事業がB社に移転)
・B社が二次再編としてC社に適格合併
⇒現行法人税上は、従業者従事要件や事業継続要件はC社において満たす必要あり
・さらにA社の従業者や事業がD社に移転
⇒改正後は、引き続き従業者従事要件や事業継続要件は満たされることになる



2.株式譲渡代金の調整条項で支払われる代金の収入時期

■事例
・アーンアウト条項による支払代金の収入時期を争った事例
■原処分庁の主張
・段階的な支払であっても、収入の原因たる権利が確定した場合に所得が実現したものとして課税所得計算
⇒収入の原因たる権利の確定時期=株式譲渡契約締結時期
⇒アーンアウト条項が付されていても譲渡契約上の金額の満額に対して契約時点で課税
■請求人の主張
・調整額=将来の業績の計画値の達成度合いにより毎年変動しうる不確実なもの
⇒収入の原因となる権利があっても、計画達成により実際に受領するまでは未確定
⇒契約時点で一括課税ではなく、受領時点で所得実現とすべき
■決定
・譲渡契約締結時に満額に対して課税
⇒譲渡前に3年連続右肩上がりの利益となっており、それを踏まえれば達成が容易な計画値だったといえる
⇒交渉の過程で当初想定された達成ラインよりも1億から3000万円程度下方修正された値でFIXしていたことも加味。
⇒アーンアウト条項も最初から達成できるように設定されていた、という主張



3.馬券払戻金の課税関係めぐり、国税庁が所基通を再び改正へ

■馬券の払戻金の課税関係
・営利を目的とする継続的行為から生じたもの
※年間通してほぼすべてのレースで馬券を購入しているような場合
※年間通しての収支で回収率が100%を超える場合
※ソフトウェアの使用の有無は問わない(これまではソフトウェア利用に限定)
⇒雑所得。外れ馬券は経費にできる

・上記以外の一般の競馬愛好家
⇒一時所得。外れ馬券は経費にできない

■遡及
遡及適用あり。更正の請求で所得税の還付を受けることができる。(5年以内)



4.従業員の出向・出張に伴う税務~出向編~

■法人税基本通達9-2-47
出向元が出向先との給与条件の較差を補填する為に支払った金額は出向元の法人の損金に算入する。
・出向先が経営不振で出向者に賞与を出せないために出向元が出向者に対して支払う賞与の額
・出向先が海外なので出向元が支払う留守宅手当

■通達の創設理由
・出向元法人にとって「現実に勤務しない」使用人に対する支出は損金と考えるのか?
⇒雇用契約に基づく
出向元―出向者であるため出向先が払えない事情がある(出向元も強制はできない)のであれば、出向元が支給するのが当然であるという考えから。
⇒対価性の有無
出向元法人の都合によって行われることが多く出向させることにより何らかの利益を得ている。

■給与条件の補填とは
⇒「給与」のみを指しているわけではない。「給与以外」の福利厚生等の較差の補填も通達の適用となる
(給与条件の較差補填以外の負担 ⇒ 合理的な理由があれば課税上の問題は生じない)

■税務調査での留意点
・出向者に対する費用は出来るだけ出向先の負担にするように努める
・出向元が出向者の費用負担をする場合、メリットがあるのかどうか
・雇用契約書、出向契約書(費用負担割合も明記)に基づく支払が行われているかどうか



5.実務対応報告36号の解説

「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い」

■「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引」
→会計処理の取扱いが明確ではなかった。(SO会計基準制定時に想定してなかった。)
→ストックオプションor複合金融商品
→実務対応報告36号が公表。

■「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引」の性格
→従業員が一定額の金銭を払い込むため、資金調達や従業員への投資機会の提供としての性格を有する。
→企業は勤労意欲の増進等、インセインティブ効果を目的として付与することが大半であり、報酬の性格も併せ持つと考えられる。
→SO会計基準は自社株式オプションを従業員等に付与する取引等を整理した基準である。
有償ではあるが、引受先が従業員等に限定されていることや権利権利確定条件が付されているという特徴は、基準が想定している取引と類似。
⇒ストック・オプション会計基準第に定める報酬としての性格を有していると整理



6.裁判例:役員給与と役員退職慰労金における限度額

■概要
酒造メーカーAは役員4名に対し役員給与を、退職した代表取締役に役員退職慰労金を
支給したところ、それぞれ「不相当に高額な部分」の金額があるとして国税当局から更正処分を受けた。

■役員給与について
国税当局は類似業種における役員給与の「最高額」を判断材料として提示。
A社よりも業績がよい他社の最高額を上回る部分については「支給の妥当性」がないとして否認した。
⇒その後、最高裁でも同様の判決があり確定

■役員退職慰労金について
※功績倍率法により算定⇒ここは両者に争いなし
国税当局は類似業種における退職役員の最終月額給与の「平均額」を判断材料として提示。

高裁の判断:
退職した代表取締役の功績は高く、類似業種における最高額と同額とすることに何らの違和感も
ないと判断。「平均額」に妥当性がないとして国税当局の判断を退けた。

結果、役員給与についてはA社敗訴、役員退職慰労金については国税敗訴となった。



7.2018年問題 慰労金の退職所得への該当性は勤務実態で判断

■2018年問題
2013年4月に施行された改正労働契約法で、
同一の使用者との間で「有期労働契約」が通算で5年を超えて繰越更新された場合、
5年目以降は本人の申し出によって「無期労働契約」に転換できることとされる問題。
⇒要件を満たす者すべてが対象で、企業側は対象者を選別できない

■対象者に慰労金を支払った場合の所得は?
結論:対象者の勤務実態で判断する。

(例)3/31付で慰労金を100万円支給

(1)3/31付で契約満了し転職する場合
⇒退職所得に該当。
退職に起因し一時金として支給を受けるため

(2)3/31付で契約満了であるが、4/1付で正社員登用となる場合
⇒給与所得に該当する可能性があり。
勤務関係は終了しておらず、単に「雇用形態」が変わった判断されるため。


8.ICOの会計処理 一部は四半期末の時価評価に変更

・メタップス社
・ICOの会計処理をめぐり監査法人と協議していたが、自己所有の仮想通貨のうちの一部を四半期末時点で時価評価する
・以下の点が追加的レビューが必要な項目とされた
  ①仮想通貨残高の実在性の確認
  ②今回のICOは韓国で実施したもののため、韓国における法律上の見解の入手
・取引記録をブロックチェーンと照合するなどして実在性を確認。
・「当第1四半期においては取引量が少なく複雑性が低いため、結論表明の基礎を得た」
 ⇒将来、取引量が増加し、会計処理が複雑になると、
 十分かつ適切な証拠を適時に入手することが難しくなる可能性がある。



9.条件付取得対価の会計処理

■日本基準
対価の交付または引渡が確実で、対価を合理的に算定可能となった時点で追加計上し、のれんで調整
→例えば20を追加した場合で、償却期間10年、経過年数2年の場合は2×2年=4を追加取得分から費用化する
(参考)今後の日本基準の改正案(返還時)
対価返還とのれん減額の差額を利益計上

■IFRS
条件付対価は取得日の会計処理にあたり、取得の対価に含めて取得対価の一部として公正価値で測定し、認識する
→当初ののれんに変動はなく(減損除く)、追加取得分は費用処理
※IFRSでは日本基準と異なり、取得日以降の事象により生じた公正価値の変動については、
企業結合によるのれんの金額を増減させない



10.第2回 連結決算体制の整備、連結パッケージ

■連結財務諸表作成までの流れ
(1)決算前に行われる親会社から子会社への必要事項(スケジュールや会計方針の変更等)の伝達
(2)親会社、子会社における個別TB等の作成
(3)親会社、子会社での連結PKGの作成と親会社連結決算担当者への提出
(4)親会社での子会社の連結PKGの個別修正
(5)連結精算表の作成
(6)連結TBの作成(表示科目組替)
(7)連結TBの注記の作成

■子会社における連結PKGの作成とチェック体制
・正確な情報が記載され、所定の期限内に提出されることが最も重要
⇒作成者、チェック担当者、承認者等を定めておく
 上記担当者において綿密な期限設定を行う
⇒親会社がチェックリストを作成し、子会社に配布するケースも多い

■親会社における連結PKGのチェック体制
・作成の元データを保有していないことや時間的な制約から、整合性や前期比較などの概括的な分析を効率的に実施することが重要
・定量的な側面及び定性的な側面から「異常」を発見できる体制としておく必要がある



11.条件付取得対価の税務上の留意点

※税法上の取扱いは定められていない(実務慣行に基づく整理をするしかない)ことに注意

■株式取得の対価に、条件付取得対価が含まれるケース
取得対価の調整である限り、(損益ではなく、)株式の取得価額の増減とする⇒会計と同じ

■非適格合併等の対価に、条件付取得対価が含まれるケース
資産調整勘定とされれば、5年間で均等償却⇒会計に合わせる(資産調整勘定≒のれん)


12.のれんの償却年数を決定する際の実務ポイント

日本基準:資産計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって規則的に償却する
IFRS:毎年、減損テストを行うことが求められる(償却なし)

「効果の及ぶ期間」をどのように解釈し、見積るかがのれんの償却期間を設定する際のポイントとなる・
企業結合に係る投資の予想回収期間を償却期間とすることが最も多い。
※リサーチ・ペーパー1号「のれん償却」より

投資の回収期間を算出方法として、
・当期純利益と取得原価を比較する方法
・FCFと企業価値を比較する方法
等があげられる。

監査上は「効果の及ぶ期間」を定量的に説明する必要がある。


13.条件付取得対価のメリット・デメリット

■メリット
①双方
・買収価格に合意できない場合でも、事業買収取引の実施が可能
②買主側
・買収後の事業計画の達成というリスクの一部を売主側にも負ってもらうことができる
・売主側への買収時に支払う対価を限定できる可能性あり
③売主側
・条件付取得対価を定める条項の達成により、
当初の見込み買収金額よりも高い金額が受け取れる可能性あり

■デメリット
①双方
・買収後に不測の事態が発生した場合や経営状態が変化した場合、
 追加の買収対価の支払いをめぐる問題が発生する可能性あり
②買主側
・対象会社の株主がそのまま経営陣として経営に関わる場合、
 経営方針の相違が生まれる可能性があり
③売主側
・定めた条項によって、買収時の買収対価取得額が限定される場合あり
・条件未達成の場合、最終的に買収時に見込んだ売却金額よりも対価取得額が限定される可能性あり



14.今3月期決算の実務ポイント 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正

・非財務情報の改正
 →経営者視点から見た、「経営成績に重要な影響を与えた要因」、「長期的な目標に照らして経営成績をどう分析しているか」など、より詳細な記述を求める方向へ。

・新株予約権等
 →一部簡略化(事業年度末の情報から変更なければ、有価証券報告書提出日の前月末現在の記載は「変更ない」で可 など)

・大株主の状況
 → 株式所有割合の算定の基礎となる発行済み株式総数から、自己株式を控除する(改正前は控除しない)。
 → 記載時点は原則議決権工事基準日(改正前は事業年度末)



14.反社会的勢力に関する確認書の提出

・顧客や関係会社との契約書面の中に、反社勢力との関与が疑われる場合は解除できる条項を入れておくことが必要
・申請時には「反社会的勢力との関係がないことを示す確認書」の提出が求められる
・日頃からに日経テレコンやGoogle検索による反社チェックを行う必要あり

■ネットベンチャーは事業の適法性に注意
・目新しいビジネスモデルほど、法律に照らして適法であるか審査される
・関連法令の順守は必須(個人情報保護法、景表法や下請法など)
・自社の商品名やサービス名は商標を取る










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