2017年12月24日日曜日

12/22  勉強会:給与所得控除、給与収入850万円で上限 他

1.固定資産税の負担調整措置等は存続

■現状の商業地等の固定資産税について
・負担水準(=前年度の課税標準額÷今年度の評価額)をもとに、今年度の課税標準額を決定
・3年に1度の固定資産税の評価替えによる価格の上昇に伴う税負担を調整する措置あり
⇒負担水準70%以上=今年度の評価額の70%に引き下げ
 60%以上70%未満=前年度課税標準額と同額に据え置き

■平成30年度税制改正
・商業地等に係る固定資産税の負担調整措置等がH33年3月31日まで延長
・土地等の取得に係る不動産取得税の税率の特例なども3年間延長
⇒これまでの負担調整措置が存続


2.不動産販売取引は収益認識会計の対象

・「収益認識に関する会計基準(案)」では、「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」の対象となる不動産の譲渡に係る会計処理は、連結の範囲等の検討と関連する為、同会計基準の適用範囲外としている。

・不動産販売を主たる事業としている企業が営業目的で不動産を投資信託又は投資法人に売却する場合、不動産流動化実務指針が適用されない営業目的の不動産の売却である為、収益認識会計基準の適用範囲に含まれる。

・不動産販売を主たる事業としている企業が不動産賃貸業も行っており、当該賃貸不動産を固定資産として保有し売却する場合、企業の通常の営業活動ではない不動産の売却であり、顧客との契約ではない為、収益認識会計基準の適用範囲に含まれない。


3.紙の特別徴収義務者用通知、個人番号記載なし

個人住民税の特別徴収義務者用(会社保管のもの)につき、個人番号を記載するか否か検討されている。

・eLTAXで通知される場合
⇒個人番号が記載される(地方税法で規定)
・紙ベースで郵送される場合
⇒個人番号は記載されない

現状、電子(eLTAX)の利用状況が乏しい。
紙ベースで通知される場合、企業の守秘・保管コスト等を考慮して個人番号の記載が不要とされた


4.給与所得控除、給与収入850万円で上限

■30年度改正
・給与所得控除と公的年金等控除を10万円減額
・基礎控除を10万円引き上げ(38万円⇒48万円)
・基礎控除は合計所得が2400万円超から金額を逓減させ、2500万円超は適用なし
・給与所得控除の上限の見直し※
(年収1000万円超は220万円が上限⇒年収850万円超は195万円が上限)
※22歳以下の子どもがいる子育て世帯や要介護3以上の高齢者等がいる介護世帯には適用なし
・青色申告特別控除を10万円引き下げ(65万円⇒55万円)ただし電子申告すれば10万円上乗せ

■適用
平成32年以後の所得税に適用

■影響
・年収850万円以下のサラリーマンには影響なし
・年収1000万円の会社員は、年間4.5万円の増税
・個人事業主で所得が2400万円超の場合は増税
・青色申告事業者が電子申告した場合、控除額が10万円UP


5.平成30年度税制改正の全容

1.生産性革命税制(賃上げ。生産性向上のための税制)
○対象企業:大企業
 中小企業は適用対象外とされた

○適用条件(下記の①と②を満たすこと。従来の所得拡大促進税制の要件が緩和)
平均給与等支給額が前年度比の3%以上
税額控除の要件とされている「基準年度」という考えが廃止され、前年との比較に変更される。
② 国内設備投資額が減価償却費の90%以上
 「損金経理した」減価償却費であり、「国内設備投資」は建物やソフトウェアも入る見込み。

○税額控除
 税額の20%を限度として、給与支給総額の対前年度増加額の15%(下記の要件満たせば20%)
 一定の教育訓練費の増加を要件に控除率を20%にアップする。

2.IoT投資減税
□対象企業:すべての法人

□適用条件
生産性向上実現のための臨時措置法(仮称)の要件を満たすものとして認定された計画に基づく投資
 (※臨時措置法は来年度の通常国会での立法が予定されている為、仮称となっている)
 認定されるための要件:①社内におけるデータ連携やセキュリティへの投資、②生産性向上目標の達成
 労働生産性:年平均の伸び率2%以上、投資利益率:年平均15%以上の達成または達成見込み

□税額控除
 該当する投資した資産につき30%の特別償却または3%の税額控除(賃上げ3%以上達成で5%に増加)
 ※但し、最低投資額の合計が5,000万円以上であること。

3.ムチ税制(下記の要件をすべて満たした場合、税額控除の適用が停止)
●対象企業:大企業のみ
中小企業は適用対象外とされた

●適用条件
①平均給与等支給額が前事業年度の平均給与等支給額以下
国内設備投資額が減価償却費の10%以下
 ※①、②を満たしても所得金額が前事業年度以下の場合は適用対象外となる。

●措置の内容
 一部の租税特別措置法の適用を停止する。
 上記の適用を停止される特別措置法は具体的に決定されていないが、研究開発税制、地域未来投資促進税制、IoT投資減税が適用停止の対象になるのではないかとされている。


6.グループ法人税制留意点 寄付金の損金不算入

■寄付金の損金不算入、受贈益の益金不算入とは
100%グループ内において、寄付をした法人側で寄付金を全額損金不算入とし、寄付を受けた法人側で受贈益を全額益金不算入とする制度

■留意点
・法人による完全支配関係がある場合のみ適用
⇒個人による完全支配関係の場合には適用なし

(例)
個人AがB社とC社の100%株主である場合に、B社がC社に贈与をするとC社の受贈益は全額課税される

・寄付修正が必要(別表で調整)
グループ内で寄付金の損金不算入(受贈益の益金不算入)取引が行われた場合、その株主法人はそれぞれの子会社株式の帳簿価額を修正しなければならない
⇒寄付の当事者ではない株主法人側で調整が必要なため調整もれしやすい

・税務上の帳簿価額がマイナスになることもある
⇒親法人における帳簿価額を超える金額の贈与があった場合には上記寄付修正により税務上の帳簿価額がマイナスになる(ゼロ限度ではない)ので注意


7.熊本不服審判所 議決権行使の状況から類似業種比準方式を適用すると判断-納税者の配当還元方式が適用できるとの主張を棄却

■事案
納税者の父が死亡
納税者及びその同族関係者(請求人グループ)が取引相場の無い株式を相続
⇒配当還元で評価
請求人グループの議決権割合30.12%
経営者グループ26.20%
X 29.24%

■請求人の主張
Xは経営者グループに属する者の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者と認められる
⇒経営者グループは50%超となり、請求人グループは同族株主以外の株主に該当し、取得した株式の評価は配当還元方式が採用される

■審判所の判断
Xは以下より経営者グループの同族関係者には当たらない
したがって、原則的評価で類似業種比準方式が採用
1.経営者グループやその関連法人と相互に株式を保有していない
2.議決権行使に当たり、社内で稟議書の決裁を了した後、その決裁内容に従い議決権を行使している
3.経営者グループの意思と同一の内容の議決権を行使するとの契約又は合意をしていない
4.経営者グループに属する者に対する白紙委任を行った事実はないこと


8.政策保有株式の開示

・企業間で持ち合う株式に関しては、有価証券報告書とコーポレートガバナンス報告書において次の情報開示が求められている
・全体の銘柄数および貸借対照表計上額の合計額(有報)
・資本金の1%超または上位30銘柄に係る銘柄、株式数、計上額、保有目的(有報)
・政策保有に関する方針等(CG報告書)
⇒政策保有株式はかねてより一般株主との利益相反(株主総会の形骸化)が起きやすいとして縮減が進められてきた。
※保有目的については「取引関係の維持・強化のため」等の抽象的な理由を記載することが多い


9.特別利害関係者等との不動産の賃貸借

(1)特別利害関係者等と申請会社との間で不動産の賃貸借取引が行われている場合、原則として上場前に当該取引を解消することが必要である。
ただし、以下の諸条件をすべて満たす場合は、取引の継続が認められることもある。

1.当該不動産が、生産設備及び営業用設備等、申請会社の主要施設に係るものではなく、重要性が乏しいと判断されるものであること。
2.当該不動産の価格が比較的高額で、資金的な面から、早期に申請会社または特別利害関係者等が買い取ることが困難な状況にあること、または解消することに経済的合理性がないこと。
3.適当な代替物件がないこと。
4.取引条件が不動産鑑定士の評価または近隣の類似物件の相場に基づく等、適正と判断されるものであること。

上記の点においては、証券会社等を交えて事前に十分に検討しておく必要がある。









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