2017年12月16日土曜日

12/15 勉強会:仮想通貨、帳簿価額との差額は当期損益 他

1.「仮想通貨、帳簿価額との差額は当期損益」

■ASBJは実務対応報告公開草案「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取り扱い(案)」を決定
・H30年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用(早期適用可)
(活発な市場が存在する場合)
⇒市場価額に基づく価額をもってBS価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益とする(活発な市場が存在しない場合)
⇒取得原価をもってBS価額とし、取得原価と処分見込価額との差額は当期の損失とする
※市場価額=仮想通貨の種類ごとに、通常使用する自己の取引実績の最も大きい仮想通貨取引所又は販売所における取引価額

(売却取引を行う場合)
⇒売却収入-売却原価=PL表示する

(注記)
(1)期末日に保有する仮想通貨のBS計上額の合計額
(2)預託者から預かっている仮想通貨のBS計上額の合計額
(3)期末日に保有する仮想通貨について、活発な市場が存在する仮想通貨と存在しない仮想通貨の別に、仮想通貨の種類ごとの保有数量及びBS価額



2.収益認識、連結のみの先行適用は不可

・ASBJが検討している「収益認識に関する会計基準(案)」は、平成33年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用(平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から早期適用可能)
・収益認識会計基準は、基本的に連結F/Sと個別F/Sにおいて同一の会計処理を定めることとしている為、連結F/Sと個別F/Sで異なる適用時期を設けることは想定されていない

≪マイナス金利、“ゼロ”の利用も当面可能へ≫
・ASBJは、実務対応報告第34号※について平成30年3月31日以後も適用可能とする公開草案を決定
※「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い」
・退職給付債務等の計算において、割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込期間における利回りが期末においてマイナスとなる場合、当面の間、「利回りの下限としてゼロを利用する方法」と「マイナスの利回りをそのまま利用する方法」のいずれの方法も容認



3.消費税の軽減税率導入でインボイスの政令事項の手当て

H31年10月1日に消費税率が10%へ引き上げ。引き上げに伴う軽減税率制度も導入予定。

■簡易課税制度の見直し
農林水産業のみなし仕入れ率につき、現行70%⇒80%引き上げ

■適格請求書等保存方式の政令事項等の整備
軽減税率の導入に伴い、10%取引に該当するもの、8%取引に該当するものが混同する場合あり。
購入者が納税計算を行うのは大変であるため、販売事業者に対し、区分された税率が記載されたインボイスを作成することを義務付ける方針


4.国税庁、仮想通貨の所得計算方法を示す

・給与所得がある人で仮想通貨に関する所得が20万円以下の場合は確定申告不要

■所得の計算方法
(1)仮想通貨の売却
・4BTCを200万円で購入。0.2BTCを11万円で売却
11万円-(200万円÷4BTC)×0.2=1万円

(2)仮想通貨での商品の購入
・4BTCを200万円で購入。0.3BTCで16万円の商品を購入
16万円-(200万円÷4BTC)×0.3=1万円

(3)仮想通貨と仮想通貨の交換
・4BTCを200万円で購入。1BTCで時価60万円の他の仮想通貨を購入
60万円-(200万円÷4BTC)×1=10万円

(4)仮想通貨の追加取得
・移動平均法を用いる(継続適用を条件に総平均法を用いてもOK)

(5)仮想通貨の分裂
・所得は生じない

(6)仮想通貨に関する所得区分
・原則、雑所得
・仮想通貨による収入により生計を立てていることが客観的に明らかである場合は事業所得

(7)損失の取扱い(通算)
・雑所得以外の所得との通算は不可

(8)仮想通貨の証拠金取引(FX)
・外貨FXのように申告分離制度の適用はなし(総合課税で申告)

(9)マイニング(採掘)による取得
・時価から必要経費を差し引いて計算
・採掘により取得した仮想通貨を売却、使用した場合の取得価額は時価を用いる



5.大企業は電子申告義務化へ

■平成32年4月1日以降から資本金1億円超の法人は国税、地方税とも義務化へ
・当初は31年度からとされていたが、企業の準備期間に配慮している。
・1億円以下の法人は義務なし
・連結納税を採用している場合は連結親法人の資本金が1億円超か否かで決定する。

■義務化の対象となる書類の範囲
・勘定科目内訳明細書:記載内容が簡略化される
・提出データ形式:excelベースのCSVファイルでの提出が認められる。
・PDFファイルの場合:紙原本保存が不要になる(但し一定以上の解像度で保存要件は設けられる)

■その他変更点
・経理責任者の自署押印制度が廃止(電子に限らず、紙申告でも同様)
・電子署名範囲が変更:法人の代表者から委託を受けた当該法人の役員・社員による署名も可能になる。
・サイバー攻撃を受けた場合の宥恕規定:電子申告不能になった場合、紙申告でも可能となる。

■問題点
・企業側は紙申告の文化が根強い場合、承認経路や管理体制の変更が求められる。
・多様化するPCデータに対応が税務署側が対応できるのかどうか。



6.税務の動向 30年度改正案

■所得税改正(案)
基礎控除の引き上げ(38万円⇒48万円)、給与所得控除の引き下げに伴い下記を改正する
・配偶者控除、扶養控除の見直し(合計所得金額38万円以下⇒48万円以下を対象にする)
・配偶者特別控除の見直し(合計所得金額85万円以下⇒95万円以下を対象とする)
・青色申告特別控除の見直し(控除額を65万円⇒55万円にする)
 
■所得拡大税制の改正(案)
・給与等支給増加額基準⇒基準年度方式を廃止し、対前年度比較とする
・給与等支給総額基準⇒変更なし
・平均給与等基準⇒(大企業)前年比2%以上の増加に加え、国内設備投資を行うことを要件とする


7.仮想通貨と法定調書

・法定調書⇒納税者の所得を捕捉する資料情報、税務署への提出が義務付けられている
・仮想通貨⇒現在、法定調書は定められていない
⇒税務当局はその取引で生じた所得を捕捉することができるのか?
・仮想通貨はブロックチェーン(譲渡等の事実が記録された台帳のようなもの)技術を利用。 そのため、その取引内容を調べることができるといわれている
・税務調査等で必要に応じ取引業者等に利用者の情報を求めることも考えられ国税当局が仮想通貨に係る所得を捕捉することは可能と考えられる
・なおアメリカでは、ビットコイン取引など約250の取引に情報報告義務が課せられている


8.仮想通貨の会計処理等に関する当面の取り扱い案

・仮想通貨交換業者:登録制度導入&財務諸表監査が義務付け
①仮想通貨交換業者+仮想通貨利用者が保有する仮想通貨の処理
・保有する通過に活発な市場が存在する場合
 ⇒“市場価格=時価”で貸借対照表価額とする。簿価との差額はPL認識
・保有する通過に活発な市場が存在しない場合
 ⇒取得原価で貸借対照表価額とする。処分見込価額が簿価を下回る場合は損失認識する。

②仮想通貨交換業者が預託者から預かった仮想通貨の処理
・預かったときの時価で資産認識する=同額の負債(返還義務)も認識する
・期末は①と同様に評価替え(資産も負債も同額で評価替えする)


9.企業統合に関する実務論点

■IFRS-企業結合の会計処理の流れ
・すべての企業結合は取得法により会計処理
※IFRS上の企業結合の定義:事業に対する「支配を獲得」すること
・ステップ
(1) 取得企業の識別 ⇒ 被取得企業の「支配を獲得」する企業(平たく言うと親会社になる会社)
(2) 取得日の決定 ⇒ 「支配を獲得」した日
(3) 識別可能取得資産および引受負債の認識及び測定
⇒取得日における資産負債、非支配持分を認識。公正価値で評価
(4) のれん又は廉価取得に係る利得(いわゆる負ののれん)の認識及び測定
⇒取得資産-引受負債-取得対価-非支配持分で算定

■論点1 被取得企業のリストラクチャリング計画が企業結合の会計処理に及ぼす影響
・上記(3)の引受負債の他に「リストラクチャリング負債」を認識
・企業結合の一部とみなされるならのれんに影響。みなされないなら結合後取引として損益に影響
・日本基準で企業結合の一環として負債計上される可能性があるものでもIFRSで別個の取引として処理する結論になることも多いため、要注意

■論点2 条件付対価の会計処理
・例 アーンアウト条項(一定の条件が達成されることを条件に、追加で対価を支払う方法)
・企業結合の一環として処理する条件付対価(のれん処理)なのか、企業結合とは別個の取引(一時の損益)なのか判断する必要あり



10.みなし役員の認定・不認定をめぐる税務上の留意点

■みなし役員とは何か
・相談役、顧問、それに類する者で、経営に従事していると認められるもの
⇒経営に従事しているとは例えば、取締役会等に出席して事業計画の策定や経営に関する重要案件の決定に参画しているかどうかなど

■みなし役員をめぐる税務処理の裁判例
・登記もなく出資もない代表者親族の営業担当者への役員賞与
⇒専ら営業活動の中心となっていたため、みなし役員認定
⇒法人税法上の役員の範囲の認定にあたっては、形式上よりも、その従事する職務の実質に基づき認定すべきとし、みなし役員として認定された


11.IFRS 今期から適用となる基準とアジェンダの決定の概要

■未実現損失に係るDTAの認識
・保有している負債性金融商品の公正価値が市場金利上昇の影響により下落したことによる損失は将来減算一時差異を認識
→元本の回収は税務目的で報告される課税所得を増加も減少もさせないため、元本の回収は非課税事業であり、公正価値が下落しても将来減算一時差異は発生しないという意見もあった
→IASBの審議結果は、報告期間の末日現在の資産の帳簿価額と税務基準額との比較のみに依存
→帳簿価額に生じ得る将来の変動には影響されないという考えのものと、当該未実現損失に対して将来減算一時差異が生じている事を明確化された


12.上場会社の少数株主保護

会社に対する投資判断:会社への信任(⇔非上場会社では経営者に対する個人的信任)
⇒少数株主保護の必要性が大きい

■開示規制
①取引所の規則(上場規程411、施行規則412)
→支配株主等に関する一定事項を開示

②取引所の企業行動規範(12条の2)
→適時開示対象の重要取引に支配株主が関与する場合
→当該取引が少数株主にとって不利益でないとする、第三者意見を入手する義務

③会社法による事業報告開示(施行規則118V)
→RP取引に関する留意事項等を開示

■ガバナンスコードによる規制
①社外取締役の重要性(原則4-7)
→少数株主の支店を企業経営に反映させる役割を担っている

②株主とのコミュニケーション(原則5-2)
→増配請求等の軋轢が生まれないよう、総会以外の場でのコミュニケーションを促進


13.リストラクチャリングに課する実務論点

■IAS37号 - 引当金、偶発負債及び偶発資産
IAS37号では以下の要件を全て満たす場合は引当金を認識しなければならないとされている。

・企業が過去の事象の結果として現在の債務(法的または推定的)を有してる。
・当該債務を決済するために経済的便益を有する資産の流出が必要となる可能性が高い。
・当該債務の金額について信頼性のある見積りが可能である。

但し、必要以上に早期にリストラ引当金が計上されるのを防ぐため、推定的債務がいつ発生したかを判断するためのガイダンスを設けている。

具体的には、期末日に前にリストラ計画が役会承認されていても、公表が期末日後になる場合は期末日時点の推定的債務は発生しておらず、リストラ引当金の認識はできない(後発として開示するか否かの検討は必要)。

費用面では企業の継続的活動と関連がないものに限定される。
従業員の再教育、新システムへの投資:☓
解雇人員への解雇費用、リストラに伴うリース解約費用:○

■IAS36号 - 資産の減損
リストラ計画の役会での意思決定が減損の兆候に該当する場合がある。
リストラにより既存のCGUから新たなCGUを区分して認識するか否かの検討が必要とある。
※CGU = 資金生成単位 = 独立したキャッシュ・インフローを生成する最小の識別可能資産

■IFRS5号 - 売却目的で保有する非流動資産及び非継続事業
リストラによる非流動性資産や事業の売却をする場合、該当資産等が売却目的で保有する非流動資産及び資産グループに分類するかの検討が必要

14.連結の範囲が変動する場合の表示・開示

(1)経理状況
・連結又は持分法適用の範囲を変更した旨及び理由の表示
・事業年度の末日が親会社の決算日と異なる子会社と連結した場合
⇒内容、連結子会社で仮決算が行われたかの記入
(2)連結株主資本等変動計算書(以下、連結S/S)
・従来から連結S/Sを作成しており、当期にある子会社の重要性が増加した場合
⇒当該子会社の取得後利益剰余金はS/Sの当期の変動に「新規連結に伴う増加」等で表示
(3)連結キャッシュ・フロー計算書(以下、連結C/F)
・非連結子会社を新たに連結した場合の連結開始時点の現金同等物の残高
⇒連結C/Fの「現金及び現金同等物の期首残高」に加算・減算形式で独立表示
⇒新たな会社を連結した場合は、「投資活動によるキャッシュ・フロー」の区分に「子会社株式の取得による支出」等の科目により表示
(4)連結包括利益計算書
・重要性がなく、連結の範囲に含めていなかった会社を連結範囲に含めた場合
⇒内訳項目の増減額は、連結包括利益計算書のその他の包括利益に含まれない。


15.IPO企業の規模比較

東証の各市場の上場会社規模を比較すると以下の通り。
単位はすべて億円、金額は各市場に上場している会社の中央値。
データは2014年~2016年
(市場)売上高/経常利益/純資産の額/初値時価総額/IPO時のファイナンス規模
(東1)1,074/72/318/882/491
(東2)152/11/45/82/25
(マザ)19/2/5/100/11
(JQS)63/3/13/52/7





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