2017年11月17日金曜日

11/17 勉強会:株式売渡請求のポイント 他

1.一般社団法人利用の節税スキームに警鐘

■日税連の神津会長が2つの相続税関係の節税スキームに警鐘
(1)一般社団法人を利用した節税スキーム
・富裕層が一般社団法人に資産を移転することで相続税を節税
⇒相続税の課税対象となる不動産や株式を一般社団法人に移転、相続人が理事長等に就任することで実質的に無税で資産移転可能

(2)小規模宅地特例を利用した節税スキーム
・H22年度税制改正では、特定居住用宅地等について要件を満たす対象者は80%減額可能
⇒相続人が資産管理会社を設立、同社に建物を譲渡し自らは社宅として居住することで要件を満たし、相続時に特例を受ける
※要件の一つ「相続開始前3年以内に日本国内にあるその人又はその人の配偶者の所有する家屋(相続開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋を除きます。)に居住したことがないこと」を満たすためのスキーム
https://www.nta.go.jp/taxanswer/sozoku/4124.htm

いずれも制度趣旨から逸脱しており今後の税制改正に影響を及ぼす可能性あり


2.有償SO、IFRSとの違いは対応困難

・ASBJは、実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」に寄せられたコメントについて検討中
⇒コメントには、実務対応報告案とIFRSで処理内容が異なる点について、懸念を表明するものが複数あり

・IFRS第2号「株式に基づく報酬」では、権利確定条件として勤務条件がある場合のみ、有償新株予約権を報酬として費用計上

・今回の実務対応報告では、勤務条件がある場合のみならず、勤務条件がなく業績条件が付されている有償新株予約権も報酬として費用計上

・ASBJは、ストックオプションを費用計上する等、両者は類似している面もあるが、一方、構造的に異なっている面もある為、部分的な差異を論じることは必ずしも適切ではないし、両者の差異はIFRSの解釈に及ぶ可能性もある為、ASBJだけでは対応困難であるとし、実務対応報告案の変更は行わない方向


3.競馬予想プログラムで大量購入でもハズレ馬券は経費に該当せず

■H27.3月の最高裁判決
裁判所判断:払戻金を「雑所得」としハズレ馬券の購入代金を必要経費として控除可
購入方法:馬券を自動購入するソフトを使用して、長期間に多数回かつ頻繁に的中馬券に着目せず網羅的に馬券を購入

■今回の高裁判決(H29.9月)
裁判所判断:払戻金を「一時所得」とし、ハズレ馬券は必要経費の対象外とする
購入方法:自ら開発した競馬予想プログラムを用いて、予想的中率及び期待値算出のために演算処理行って買い目の馬券を抽出。抽出した馬券と他の馬券購入者が低く評価した馬券とを比較して、より高配当を得ようとする馬券を購入する方法

■一時所得の条文の概略(所基本通達34-1)
・馬券を自動的に購入するソフトウェアを使用している
・ネットを介して長期間にわたり多数回かつ頻繁に馬券の的中に着目しない網羅的な購入
・上記の購入方法で多額の利益を恒常的にあげること
・これらの購入方法が経済活動の実態を有すること
⇒上記を満たせば雑所得に該当し、該当しない場合は一時所得と規定されている

■高裁判決は?
・今回の納税者は必ずしも競馬予想プログラムが抽出した買い目の馬券を無差別かつ網羅的に購入していたわけではない。
・8年間のうち3年は損失を発生させているので恒常的に利益を上げていない。
・PCを使用したプログラムを用いて長期間に多数回購入しているが、買い目の的中に着目した購入方法は、一般の競馬愛好家の購入方法と同じである。
(=競馬新聞の印を見て購入する方法と同じ)
⇒上記より馬券の購入が一体の経済活動の実態を有すると客観的に明らかにできないと判断し、一時所得に該当すると判決を下した。

※なお納税者は上告受理申立てを提起中。


4.特徴税額通知、マイナポータル利用見送り

・規制改革実施計画で、マイナポータルを利用して住民税の特徴税額を従業員が直接取得できるようにする案が検討
⇒見送り決定
(理由)
・マイナポータルの普及率が低い
・自治体によって対応が異なることで書面と電子の通知が混在する恐れ
・事前に従業員に承諾を取る手間がかかる

■新制度
(1)事業者は給与支払報告書提出時に電子的送付の同意の有無を報告
(2)eLTAXを通じて事業者に電子的に特徴税額を送付
(3)同意がなければこれまで通り書面で送付



5.税理士法違反のチェックポイント特集

税理士監理官・専門官
⇒税理士法違反行為がみられる税理士等に対する調査を行う。

■事例1 不真正税務書類の作成 
 不正な書類を作成したり、事実に反する申告書を作成した場合は、不正に対しての税理士の関与度を調査
⇒「事実に反する、若しくはおそれのある」行為とわかっていたかどうか。(メール、メモ等の物証の収集)
■事例2 税理士本人の脱税・申告漏れ
⇒税理士法人の代表者や実質的に経営している者の行為も違反行為の対象となる。
■事例3 業務懈怠
 申告書類の作成を依頼されていたにもかかわらず、申告期限まで申告しなかった。
⇒原因が事務所の職員であっても監督者(税理士)の違反行為
■事例4 使用人に対する監督義務
 事務所の職員が、顧問先の不正経理に加担。
⇒監督者だけでなく、当該職員からも聴取を行う


6.LEDランプの取替えにかかる税務処理

従来の蛍光灯からLEDランプへ交換する場合の取替費用の取り扱いは下記のとおりとなる。

■購入する場合
LEDランプ代及び工事費用を修繕費として処理

<参考>(国税庁質疑応答事例)-LEDランプの取替費用-
蛍光灯は照明設備がその効用を発揮するための1つの部品であり,かつ,その部品の性能が高まったことをもって,建物附属設備として価値等が高まったとまではいえないと考えられるため,修繕費として処理することができる

■所有権移転外リース取引により取得する場合
リース料総額及び工事費用をリース資産として資産計上し、リース期間定額法で償却費計上
⇒上記<参考>はあくまで「購入」を前提としているため、所有権移転外リースの場合は適用されない

なお、リース期間終了後に買取(購入)する場合であっても、その購入費用は修繕費として処理できない



7.平成29年分 年末調整のポイント

■年末調整の対象となる人や対象とならない人は、どのような人ですか?
・年末調整の対象とならない人は次のとおりです。
1.年調時までに扶養控除等申告書を提出していない人
2.給与収入金額2,000万円超
3.国内に住所も1年以上の居所も有していない人(非居住者)
4.年の中途で退職(死亡退職等を除きます。)した人
5.災害減免法で源泉について徴収猶予や還付を受けた人

■年末調整はいつ行うのですか?
・その年最後に給与の支払をする時⇒一般的に12月中に行う

■年末調整後に給与の追加払や控除対象扶養親族等の異動があった場合
・年末調整のやり直し(再調整)をする
・期限⇒基本は源泉徴収票を給与所得者に交付する翌年1月末日まで

■平成30年分マル扶
・配偶者が源泉控除対象配偶者に該当するかどうかはどの時点で判断するのか
⇒提出する日の現況により判定、直近の源泉徴収票や給与明細書を参考にして見積り
・年の中途で合計所得金額の見積額に異動がある場合、どうすればよいか
⇒扶養控除等異動申告書を給与の支払者へ提出
 給与支払者は上記の提出があった日以後、扶養人数を修正の上、源泉徴収税額の計算を行う
 なお、源泉は遡って修正はせず、年末調整により精算
・控除対象扶養親族の「16歳未満の扶養親族(平15.1.2以後生)」の判定
⇒平成30年12月31日の現況により判定・記載



8.商品券の非行使部分の処理

・収益認識基準の適用指針案52-56項
・発行した商品券などが顧客によって使用されない場合の取り扱い
 ⇒「非行使部分」は「企業が将来において権利を得ると見込めるか」で収益認識タイミングが異なる
・見込める場合⇒顧客の権利行使パターンと比例的に収益認識
(例)
 商品券1,000円を顧客に販売
 10%(100円)を非行使部分と見込む
 商品券が1年目に700円(70%)、2年目に300円(30%)使用された場合、
 1年目は100円×70%、2年目は100円×30%を収益として計上する
・現行の日本基準では一定期間経過後に一括計上が多く、処理が複雑になる可能性あり


9.吸収合併の場合のポイント

■法務
(1) 対象会社(合併消滅会社)の解散
・許認可は必ずしも存続会社に承継されない。
⇒許認可を維持する必要がある場合は他のスクイーズアウト方法を検討

(2) 手続
・存続会社、消滅会社の双方において手続必要
⇒株主総会の承認、株式買取請求の対応、債権者保護手続 等
⇒総会承認は、簡易合併or略式合併の場合は片方もしくは両方で省略可能な場合あり
⇒債権者保護手続は効力発生日の1か月以上前に公告が必要

■税務
(1) 適格合併
・存続会社&消滅会社…簿価により引き継ぎ
・少数株主…合併直前の帳簿価額を譲渡原価として譲渡損益計算。みなし配当発生しない。

(2) 非適格合併
・存続会社…時価で受入+資産負債調整勘定が発生
・消滅会社…時価譲渡のため、譲渡損益発生。合併最終年度の損金or益金に算入。みなし配当が生じるため、源泉徴収義務が発生
・少数株主…交付を受けた金額からみなし配当相当額を控除した金額を譲渡対価として譲渡損益を計算


10.所得拡大促進税制と当初申告要件

■当初申告要件について
・確定申告後に適用し直すことは認められるか?
⇒当初申告要件の定めにより、当初の確定申告で適用を選択しなかった場合は適用不可

■所得拡大促進税制とは
【概要】
・給与等の支給総額が、基準年度と前年度より増加した場合に、
増加した給与額の10%を法人税からマイナスできる制度(法人税額の20%が限度(大企業は10%))
・限度額は平成29年度税制改正により、平均給与等支給額が前年度比2%以上増加している場合は22%に改正
 (大企業の場合は12%)
※平成29年4月1日以後開始事業年度から適用

【詳細】必要に応じて読んでください
(1)適用期間
・平成25年4月1日以後に開始する事業年度~平成30年3月31日までに開始する事業年度

(2)基準年度とは
・平成25年4月1日以後に開始する事業年度のうち最も古い事業年度の「直前の事業年度」
⇒基準年度がない場合、平成25年4月1日以後に開始する最も古い事業年度の給与等支給額の70%相当額
 が基準年度の支給額となる

(3)要件
・給与等支給総額が基準年度より2%~5%増加
・給与等支給総額が前事業年度以上
・平均給与等支給額が前事業年度以上(大企業は2%以上増)

【用語】
・給与等支給総額
⇒給与の総額から、役員報酬、役員の親族等に対する給与、退職手当を除く(賞与、パートアルバイトの賃金含む)
・平均給与等支給額
⇒適用年度の継続雇用者に対する給与等支給額÷継続雇用者の月ごと延べ人数合計
・継続雇用者
⇒適用年度及び前事業年度において給与等の支給を受けた国内雇用者(つまりどっちにもいた人)


11.株式売渡請求のポイント

■法務
(1)概要
・特別支配株主が、当該会社の株主総会決議によることなく、他の株主全員に対し、その保有する株式の全部を、自己に売り渡すよう請求すること。
(2)必要議決権数
・90%
(3)株主総会
・承認不要
・債権者保護手続不要、端数処理手続不要
(4)新株予約権
・個別の同意不要
■税務(完全子会社化が行われた場合)
(1)支配株主
・取得に要する金額=取得価額
(2)対象法人
・税制適格
⇒課税関係なし
・税制非適格
⇒対象法人を時価評価し、評価損益は完全子会社化完了日の属する事業年度で益金・損金処理
(3)少数株主
・譲渡価額と取得価額の差額で譲渡損益を計算
■会計
(1)連結
・追加取得の持分を被支配株主持分から減額
・追加取得により増加した親持分は追加取得した株式の取得価額と相殺、差額を資本剰余金とする


12.株式交換におけるポイント~スクイーズアウト~

完全親子関係を図る方法⇒スクイーズアウトとしては合併に比してより直接的な手法

■法務
完全親会社の手続:総会特別決議(略式※・簡易なら不要)、買取請求の対応、債権者保護
※TOBにより対象会社の90%を取得しておければ、株式交換における対象会社での決議が不要

■税務
・適格株式交換
親会社:子会社株式の取得価額⇒子会社における簿価
子会社:特に調整なし

・非適格株式交換
親会社:株式の取得価額⇒子会社株式の時価
子会社:時価評価損益を益金又は損金に算入

■会計
・個別
子会社株式の取得原価⇒交付した親会社株式の時価

・連結
子会社株式の追加取得の処理に準ずる


13.取得関連費用と税効果

■取得関連費用の取扱

・個別財務諸表
取得時にて付随費用と認められるものは取得価額に含める

・連結財務諸表
発生した事業年度の費用として処理

・税効果
個別財務諸表上の子会社への投資額と連結貸借対照表に差異が生じる。
回収可能性があれば繰延税金資産を計上

・売却時
付随費用のうち、売却に対応する額分、連結財務諸表上で売却損益の調整が必要


14.スクイーズアウトの概要・手続き

■スクイーズアウトとは
M&Aにおいて、会社の株主を大株主のみにするために、少数株主に対して金銭その他の資産を交付し、強制的に締め出すこと。

■吸収合併
・合併により消滅する会社(対象会社)の権利義務の全てを合併後の存続会社(支配株主)に承継
・支配株主が議決権の2/3以上保有で対象会社を完全子会社化が可能。

■株式交換
・株式会社が他の株式会社(合同会社を含む)に発行済株式を全て取得させ、完全親子会社関係を実現。
・少数株主への対価は金銭とし、直接支配会社に移転する方法が多い。
・吸収合併と同様、支配株主が議決権の2/3以上保有で対象会社を完全子会社化が可能。

■全部取得条項付種類株式
・株主総会特別決議により既存の株式全部取得条項付種類株式にする⇒全部取得条項を使用し、少数株主に端数を付与
・平成26年の会社法改正以後、株式併合の手続き整備、株式売渡請求の制度が設けられてから使用が減少

■株式併合
・少数株主の保有株式数が1株未満の端数になるように株式を統合し、少数株主は現金を対価として保有株式を失う。
・平成26年の会社法改正により、法的安定性が担保され、改正前より利用が増加

■株式売渡請求
・特別支配株主(議決権9/10以上を直接又は間接に保有)が対象
・対象会社の承認を得ることで対象会社の少数株主に対して株式の売渡請求が可能
・平成26年の会社法改正により、新たに導入
・株主総会の決議不要、少数株主の有する株式の端数処理不要⇒時間的・手続き面のコスト削減可能



15.IFRSのPL表記が変更に?

IASBで現在下記を議論中。

(1)EBITをP/Lの小計に表示する検討を優先的に進める。
(2)P/Lに投資カテゴリーの導入を検討する。
(3)費用性質法、費用機能法に基づく表示に関するガイダンスを追加する。

(1):(比較可能性のある利益として)EBIT、を表示すべきという提案(過去にもダ
イムラーなどがEBITを表示してい)。
(2):投資収益・投資費用、財務収益・財務費用を独立表示させるという議論。
(3):費用性質法、費用機能法のどちらが財務諸表利用者に有用な情報を提供するか
を判断するためのガイダンスを提供。


16.メルカリ、資金決済法に抵触?

(概要)
・メルカリはスマートフォン向けのフリーマーケットアプリの運営会社
・爆発的な普及により、日本で唯一の「ユニコーン」(企業価値10億ドル以上の未上場企業)と期待されていた。

(詳細)
・メルカリは、自分が物品を販売して得た売上金を、メルカリに預けておくことができる。
・売上金が1万円未満だと、引き出すのに210円の手数料がかかるため、1万円を超えるまでためておく人が多い。
・保管期限は1年間。そのお金で売買を繰り返す。これがクレジットカードや銀行口座を持たない若者にメルカリが爆発的に普及した理由の一つ。

・この仕組みが、資金決済法が定める「資金移動業者」にあてはまるとの指摘あり。
・資金移動業者は万が一、経営不振に陥った場合などに備えて、預かっている資金の100%以上を金融庁に供託金として保全しなければならない。

・メルカリは「資金移動業者には当たらない。売上金は(事業などで使うことのないように)別口座で保全している」と説明。
・しかし、金融庁は「ユーザーの売上金を別口座で保全する方法では、万が一、経営不振に陥った際の利用者保護として不十分」との認識。
・金融法制に詳しい弁護士も「別口座で管理していようと、倒産した場合、弁済の原資に使われ、債権の優先度の高い金融機関に支払われる可能性が高い」と指摘。

(現状)
・経産省の後方支援もあり、最近になって、メルカリが売上金をプールする仕組みは、資金移動業者に相当するのではなく、プリペイドカードや商品券と同じような「前払い式支払い手段」と解釈することで、金融庁と経産省の間では「合意ができた」とのこと。






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