2017年11月10日金曜日

11/10 勉強会:会計システムのクラウド化における検討 他

1.マイナス金利下の割引率、来年3月以降も現行の取扱い可

■ASBJは、実務対応報告第34号「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取り扱い」を平成30年3月31日以降も適用する方針
・第34号では、利回りが期末においてマイナスの場合、「下限としてゼロを利用する方法」「マイナスの利回りをそのまま利用する方法」のいずれかを認めている
 ただし平成30年3月30日に終了する事業年度までの1年間とされている
・どちらを採用しても重要な影響はないとされており、注記も不要の方向性


2.IFRS任意適用に先立つ会計方針の変更等

■概要
IFRSを任意適用しようとしている企業が、その適用に先立って(IFRS導入に備えた対応として)会計方針の変更等を行うが、その代表的なものとして下記事項が挙げられる。
「減価償却方法の変更」、「耐用年数・残存価額の見直し」、「連結子会社の決算期の変更」

■「連結子会社の決算期の変更」
・連結F/Sを作成する際の、親会社及び連結子会社の報告日に関するIFRSの取り扱いは下記の通り
(1)親会社及び子会社のF/Sは、報告日を同一にしなければならない。
(2)両者が異なる場合、実務上不可能な場合を除き、子会社は親会社のF/Sの報告日と同時点の追加的な財務情報を作成しなければならない。
(3)実務上不可能な場合、子会社の直近のF/Sを利用するが、当該F/Sと連結F/Sの決算日の間に生じる重要な取引又は事象の影響について調整しなければならない。
(4)その場合であっても、当該F/Sと連結F/Sの決算日の差異は3ヶ月を超えてはならない。

・上記取り扱いに対する実務上の対応
(1)調査対象としたIFRS適用会社138社のうち、47社がIFRSの適用に先立って連結子会社等の決算期を変更している。
(2)上記変更は減価償却方法の変更よりも早い時期(1期あるいは数期前)に行っている例が多い。
(3)連結子会社を多数有する企業は、(特に海外子会社)数回に分けて決算期変更を行っている例も見られる。
(4)最近1、2年の傾向として、12月決算であることの多い海外の連結子会社の決算期に親会社の決算期を変更して統一する事例が増えてきている。


3.OCI課税の税金費用表示は今後検討

OCIとは、その他の包括利益のこと。

連結納税加入時にその他有価証券が時価評価された場合等、その他包括利益に対し課税されることが考えられる。
⇒その場合、税金費用の表示上の取扱いを明確にすべきと問い合わせが多数あり。

企業会計基準委員会は、上記が論点となる「税効果会計基準」の一部改正を正式決定した後に、将来の検討課題として検討する予定


4.税務CGによる調査省略は51社が対象に

■税務CG(コーポレートガバナンス)とは
税務についてトップマネジメントが自ら適正申告の確保に積極的に関与し、必要な内部統制を整備すること

■対象法人
・特別国税調査官が所轄する大法人

■取組のメリット
・調査間隔の1年延長(調査省略)
<条件>
・税務CG(コーポレートガバナンス)の状況が良好であること
・調査結果に大口悪質な是正事項がない
・税務リスクが高い取引などの自主的な開示


5.自社株対価TOBの普及となるか

■現行制度
 税務上は「株主が保有株を手放した」とされ、みなし売却益へ課税されてきた。
 納税資金を手当てできない株主としてはTOBに応じるネックとなっていた。

■平成30年度改正案
 みなし売却益への課税がTOB直後に発生するのを避けるため株式で保有している間は課税の繰り延べを認めるよう財務省へ要望

■改正案に懸念される事項
 現行制度に比べ多額な資金調達を要しないため、積極的な事業再編が促される一方、改正要望案にある「自社株等」の範囲によっては外国企業が日本の100%子会社を利用して容易に自社株対価TOBを仕掛けることも考えられ改正案に懸念する意見も出ている。


6.家賃保証サービスに係る消費税の課税関係

■Q
A社は賃貸住宅の家賃支払いを保証するサービスを行っている。
入居者が家賃を滞納した場合には入居者に代わって家主に賃料を支払い、後日入居者からその金額を徴収している。この場合の課税関係はどうなるか。

■A
各者の課税関係は以下のとおりとなる。
(1)A社から家主への支払=不課税(立替金処理)
(2)家主=居住用物件であれば非課税、居住用以外であれば課税(通常の家賃収入と同じ)
(3)入居者からA社への支払=立替金の精算であるため不課税

■保証料の取り扱い
(1)入居者がA社へ支払う保証料=非課税(信用の保証にかかる役務の提供に該当)
(2)A社が受け取る保証料=非課税売上

■参考(連帯保証人が支払う場合)
連帯保証人が入居者に代わって支払う賃料相当額は資産の譲渡等の対価に該当しないため不課税となる(入居者に対する貸付金として処理)


7.“配当還元”巡り低額譲渡の問題も 地裁判決受け納税者が控訴-相続税対策による株の譲渡そのものにも否認リスク

■事案
・個人Aが保有する自社株をB社に譲渡(7.88%)
・Aの譲渡所得の申告⇒収入金額は配当還元方式で算定した価額(実際に譲渡した金額)を使用
 取得側(B社)からすると「同族株主以外の株主等が取得した株式」のため配当還元にて評価

■税務署の主張と裁判所の判決
・本件譲渡対価は時価(類似業種比準方式)の2分の1に満たない⇒低額譲渡として更正処分(裁判所も認めた)
・これにより54M⇒1,816Mの譲渡収入へと

■考え方
・相続税⇒財産の移転があった際の価額を基に"その取得者"に課税
 それに対し
・所得税⇒資産の値上がり益を所得として"元の所有者"に対し課税
したがって、低額譲渡の判定も譲渡直前における元の所有者にとっての価値により評価するのが相当
・本ケースでは譲渡したのは7.88%であったが、Aの譲渡直前の議決権は22.79%と15%以上であったため配当還元が採れず原則的評価方法の類似業種比準方式が時価と判定された


8.返金不要の支払

・スポーツクラブの入会金や電気通信契約の加入金など、返金不要な顧客からの支払の処理
⇒現行の日本基準では一般的な定めはない
⇒入金時に一括処理と契約期間で按分とに分かれる

収益認識基準の適用指針案(57-60項)はこの取扱を明確化している。
⇒将来の履行義務の場合、財・サービスが提供される時点で収益認識する
⇒スポーツクラブへの入会により会員期間中にサービスを受ける権利や非会員より低い価格で財・サービスを購入できる権利を付与する場合には、会員期間にわたり履行義務の充足につれて収益認識することが求められる
⇒会員期間に定めがない場合、平均在籍年数などの合理的な見積により収益を配分する


9.役員向け株式交付信託制度に係る会計処理

■スキーム
(1) 【会社→信託】自社株を取得することを目的として、役員報酬相当額を信託に拠出
(2) 【信託←市場】信託が市場から自社株を取得
(3) 【会社→信託】剰余金を配当
(4) 【会社→役員】ポイントの付与(業績達成度等に連動)
(5) 【会社→役員】ポイントに基づき株式を交付(退任時or在任期間中)
【前提】
・株式交付信託を用いた役員報酬について、株主総会の承認が必要
・取締役会等により株式給付規程を制定
・信託期間を通じて議決権は行使しない(信託管理人が指図)

■会計処理
・株式投資信託⇒信託財産をBSに計上(≠年金資産の扱いとは異なる)
・ポイント割当時:費用および引当金を計上(≠ストックオプション)
・株式交付時:引当金を取り崩し


10.非業務執行役員に対するインセンティブ報酬としての株式報酬を考える

※非業務執行役員=社外取締役、監査等委員、監査委員、監査役

・賞与や業績連動報酬は、業務を執行せず業績に責任を負わない非業務執行役員にはなじまないという考えがある
 ⇒経営の一翼を担っている以上、非業務執行役員に業績連動報酬を付与することが不適切とまでは考えられない


11.タイ 独占または市場支配的地位の形成につながる企業結合

・事前届出が必要
・企業結合が著しく競争を制約する事となる場合には、企業結合実行後7日以内に届出
※具体的な届出基準はOTCC(タイ取引競争委員会)が定めることになっているが、現時点では未公表


12.会計システムのクラウド化における検討

■クラウド化による最大のメリット
⇒自動仕訳機能による人的作業の削減 (簿記知識なくとも経理が可能)
・従来:証憑をもとに、経理部員が作成した仕訳を、会計システムに登録
・クラウド:金融機関データをもとに、クラウドシステム内で自動仕訳が作成&登録

■自動仕訳における検討
(1)金融機関データベースの仕訳は現金主義⇒発生主義に変換する必要のある取引はどれにするか
(2)検証作業も踏まえ、勘定科目を適度に細分化
(3)例:売掛金の回収か前受金の発生か判別できない、といった自動仕訳の限界のリカバーはどうするか

■経費管理システムのクラウド化における留意点
(1)仕訳を部門別に作成するのか、勘定別に作成するのか、集計対象をどうするか
(2)証憑がクラウド環境にしか残らないため、会計との整合や、後の検証作業をどうするか

■給与計算システムのクラウド化における留意点
(1)基本給与、社保、勤怠、持株会等のサブ情報をどう取り込むか、クラウド対象とするか
(2)マイナンバーに関するセキュリティ体制はどうか


13.新収益認識会計基準案による実務への影響

・製品保証引当金
現行
無償(初期不良対応等)で商品の修理/交換をする場合:費用の発生見込額を合理的に見積可能な場合、販売時に引当計上
有償(保証期間延長サービス等)で商品の修理/交換をする場合:費用の引当計上はできず、保証期間に応じて収益認識

新収益認識基準案
対象商品が合意された仕様に従っているという保証(初期不良対応等)のみの場合⇒引当金として処理
上記保証に加え、有償による保証サービスあり⇒保証サービス分を契約負債と認識し、期間に応じて取崩/売上計上
※実質的な収益認識額への影響なし

・返品調整引当金
現行
将来の返品額を合理的に見積可能な場合、販売時に返品見込み分も含めて収益認識+引当金計上

新収益認識基準案
返品見込み部分は収益を認識しない
⇒新収益認識基準案では返品見込み分の収益認識は行わず、返品見込額を返品資産(原価)/返金負債(売価)として認識する

・ポイント引当金
現行
ポイント付与時にポイント分も含めて収益認識、ポイント使用見込額を引当金計上

新収益認識基準案
ポイント付与時にポイント分を除いて収益認識し、ポイント使用時に収益認識
⇒販売時にポイント売上分を契約負債として認識し、使用時に売上へ振替


14.引当金の計上タイミングのポイント

■前提
引当金の計上要件(4要件)
①将来の特定の費用又は損失であること
②その発生が当期以前の事象に起因していること
③発生の可能性が高いこと
④その金額を合理的に見積もることができること

下記にて実務において迷いやすい論点を科目ごとにピックアップ。
■賞与引当金
論点:決算賞与を期末日後に支給する場合の引当金計上。
⇒支給の原因が当期における従業員の勤務に起因していれば引当金を認識
※決算日に支給額が確定⇒未払費用又は未払金計上

■役員退職慰労引当金
論点:内規に定めのない功労加算金の引当金計上。
⇒支給が決定される株主総会の決議時に費用認識することが多い。
※引当金計上の判断⇒支給理由、内規内容、過去の支給実績、今後の支給可能性等から慎重に判断。

■工事損失引当金
論点:どのようなタイミングで引当金計上又は見直し。
⇒実行予算作成後の合理的な見積額により行う。

■訴訟損失引当金
論点:訴訟の提起後の引当金の認識時点
⇒事実関係、訴訟の進行状況、専門家の助言等から発生の可能性が高まったと判断される時。
※裁判での敗訴、和解の成立による損失額の確定⇒未払金計上

■災害損失引当金
論点:期末日以前に発生した災害に対する決算日以降に発生する費用又は損失の引当金の認識。
⇒災害を直接の原因としているか、合理的に金額が見積もれるかをポイントに判断。

■債務保証損失引当金
論点:主たる債務者がどのような状態にある場合に引当金計上するか。
⇒下記3つの状況により判断。(決算期ごとに見直す必要あり)
・法的、形式的に経営破綻している場合
・実質的に経営破綻に陥っている場合(深刻な経営難、再建の見通しがない等)
・今後、経営破たんに陥る可能性が高い場合(経営難、経営改善計画等の進捗が芳しくない等)


15.米国が連邦法人税率引き下げ

・連邦法人税率を35%から20%に引き下げ 税率は恒久化
・海外留保資金には5~12%を課税(従来は米国に戻す際、最大35%)。先行きはゼロに。米国内にお金を戻しやすくする。
・グローバル比率の高い企業には10%の海外収益課税を課す
・外資が米国で稼いだ資金の国外送金に一部課税(最大20%?)


16.ベンチャーの失敗事例(その4)

1.種類株主総会決議を忘れる
・種類株式の発行後、一定の場合には特定の種類の株式(A種優先株式、普通株式等)の株主のみで構成される種類株主総会決議が要求される。
・これを忘れると会社の行為が無効となるおそれあり。
・種類株主総会決議が要求されるのは、(1)種類株式の内容として拒否権を定めた場合、(2)会社法上定められている場合
・(1)の場合はVC等の投資家と協議の上、内容を定めるため、会社も種類株主総会が必要なことを認識していることが多いが、
(2)については特に種類株主の内容として定めなくとも必要となってしまうため、気をつける必要があり。

(参考)会社法上の種類株主総会事項(主なもの)
(1)ある種類株式の種類株主に損害を及ぼすおそれがある次の事項についての決議
1.次に掲げる事項についての定款の変更
イ 株式の種類の追加
ロ 株式の内容の変更
ハ 発行可能株式総数又は発行可能種類株式総数の増加
2. 株式の併合又は株式の分割
3.株式無償割当て
4. 当該株式会社の株式を引き受ける者の募集
5. 当該株式会社の新株予約権を引き受ける者の募集
6.新株予約権無償割当て
7.合併等
(2)全部取得条項付株式の定めを設けるための定款変更決議をする種類株主総会
(3)監査役選任の種類株主総会において監査役を解任する種類株主総会
(6)組織再編行為の対価として譲渡制限株式を発行する存続会社等の種類株主総会
(7)譲渡制限株式についての定めを設ける定款変更の決議
(8)組織再編行為により、譲渡制限株式等を交付する場合における契約・計画を承認する種類株主総会






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