2017年10月14日土曜日

10/13 勉強会:業績連動給与~一定の同族会社が支給する場合~ 他

1.法人税の収益の帰属者で一部取消し裁決

■裁判事例
取引先から請求人(法人)の元代表者に支払われた金員が請求人(法人)に帰属するかどうかが争われた

■概要
・元代表者は、全額を出資して法人(土木建築事業)を設立
・設立以前から個人で土木建築事業を営んでいた
・元代表者はH8年に代表取締役退任、その後取締役に再度就任したがH21年に辞任(株式保有ゼロ)
・法人はH23年10月、法人はA社と金属スクラップ等の買受契約を締結、またこれをB社へ売り渡す契約を締結
 その後、B社の担当者は元代表者から金属スクラップの中に希少金属が含まれていることを理由に金銭の支払いを求められた
 担当者が経営するC社名義で元代表者へ代金(本件金員)を支払った

■原処分庁
法人が金属スクラップ等の売買により得た収入を故意に計上しなかったと認定
⇒法人税及び重加算税の課税処分

■審判所の判断
以下から法人には帰属しないとした
・元代表者は当時、法人とは独立の個人事業を営んでいたこと
・元代表者は法人が受注した工事にあくまで仲介人としての関与にとどまること
・担当者個人が法人を経ずに支払ったものであること


2.税効果、評価性引当額の定義行わず

・企業会計基準委員会は、現在、税効果会計基準の一部改正(案)等に対するコメントについて検討中

・「評価性引当額を定義すべき」とのコメントに対しては、税効果会計基準の一部改正案等の内容から判断可能である為、定義は行わない方向

・「税務上の繰越欠損金を定義すべき」とのコメントに対しても、現状、実務上の問題が生じていない為、定義は行わない方向


3.実務判断に役立つ相続税の取扱い

Q1.特別養護老人ホーム入居中に相続した宅地と「小規模宅地等の特例」
A1.小規模宅地等の特例に該当する。
原則、相続開始の直前に居住していた宅地等のみ該当するが、要介護認定等を受けていて介護老人保健施設等に入居していた場合、その入居前に居住していた宅地等も「小規模宅地等の特例」の対象となる。

また入居前に被相続人の居住の用に供されていたため、「居住の用に供されていた宅地等」の特例にも該当する。

Q2.障害者控除額の残額を控除できる扶養義務者の範囲
A2.配偶者、兄弟姉妹、家裁の審判を受けて扶養義務者となった3親等内の親族が該当


4.株式報酬、業績連動報酬に関するQ&A

・損金算入が可能な役員給与は?
⇒特定譲渡制限付株式(RS)、★株式交付信託、ストックオプション(SO)、★パフォーマンス・シェア(PS)、パフォーマンス・キャッシュ、★ファントム・ストック、★ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)、退職給与
※★は29年度改正で可能になったもの(一定の要件あり)

・役員給与に関する改正の適用はいつから?
⇒原則29年4月1日以後に支給、交付する給与から適用。退職給与、特定譲渡制限付株式、新株予約権に係る改正は29年10月1日以後から適用

・事前確定届出給与の対象となる株式報酬は?
⇒特定譲渡制限付株式(役務の提供期間に応じて無償取得されるもののみ)、株式交付信託(業績連動がないもの)など

・事前確定届出給与として損金算入が可能となる特定譲渡制限付株式の要件とは?
(1)一定期間の譲渡制限がある株式
(2)役務の提供期間に応じて無償取得できる旨定められていること
(3)役務提供の対価として交付される株式等であること
(4)報酬決定時点で市場価格があり、役務提供を受ける法人またはその関係法人の株式であること
※(2)改正前は無償取得事由が企業の業績や勤務状況によるものも認められていた
※(4)改正前は市場価格のある株式の要件はなかったが、役務提供を受ける法人か完全親法人に限られていた

・特定譲渡制限付株式の損金算入の時期は?
⇒所得税:譲渡制限解除日
⇒法人税:給与等課税額が生ずることが確定した日の属する事業年度

・海外在住の役員等に特定譲渡制限付株式による給与を支給しても損金算入可能?
⇒H29年度改正により役員が非居住者でも損金算入可能に


5.合併に絡む資本割の計算方法の見直し検討

■期中に合併が行われた場合の資本割の計算の見直し
 被合併法人は期首から合併時点までの資本割が月割りで課税対象になる。
 合併法人は期末は合併後である為、資本金等の額が「合併法人+被合併法人」に対しての資本割が、期首から期末まで1年分まるまる課税対象となる。つまり被合併法人の月割りの資本割が二重課税となってしまう状態が続いているため、この部分は控除されるよう見直しが求められている。

■無償増資、無償減資が行われた場合の資本割の計算の見直し
 資本割の課税標準である「資本金等の額」は法人税法上の規定となるのが原則。
しかし、無償で増減資を行った場合、事業税の課税標準の計算の際に、無償で行った増減資の金額を加算または控除した金額で計算する特例が設けられている。この特例を受けた法人が合併されたとき、 合併法人はこの特例を適用できない。これは地方税法において資本金等の調整に係る額の継承に関する規定がない為であるが、会社法上は消滅する会社の権利義務のすべてを存続会社に継承させる規定がある。
 会社法と地方税法においてズレが生じている状態なので改正が求められている。


6.民泊の固定資産税特例を巡り棄却裁決

■住宅用地の固定資産税特例
専ら人の居住の用に供する家屋」又は「一部を人の居住の用に供する家屋」の敷地の用に供されている土地(住宅用地)が対象。その土地の固定資産税の課税標準額を3分の1,又は6分の1に減額する。

■概要
・Aは土地Bに建物を建設し居住用賃貸物件として貸付を行い、固定資産税特例を受けていた。
・近年は「民泊サイト」に民泊物件として登録していた
・民泊サイトをみた京都市からお尋ねがあり、「居住用物件」にあたらないとして過去5年に遡って減税額の返納を求められた。
⇒裁判となり京都市勝訴

■裁決要旨
・固定資産税特例の適用対象は「専ら人の居住の用に供する家屋」の敷地
・総務省通知(平成9年4月1日/自治固第)によれば、「専ら人の居住の用に供する家屋」とは「特定の者」が継続して居住の用に供することをいう、とされている
・民泊は不特定多数に対する短期賃貸であるため上記にあたらない
・よって適用対象外のため、固定資産税減税の適用はない
⇒民泊サイトに登録されている物件で特例を受けている場合には同様の指摘を受ける可能性が高い


7.業績連動給与~一定の同族会社が支給する場合~

■改正内容
改正前⇒損金算入可は、非同族会が支給する給与のみに限定
改正後⇒同族会社のうち同族会社以外の法人との間に完全支配関係がある法人も追加
⇒親会社(非同族)-子会社(同族)-孫会社(同族) 各社100%保有関係
このケースでは、孫会社も対象 (※あくまで親会社との完全支配関係となるため)

■同族会社のケース-各要件の検討
・算定指標⇒親会社の指標を利用、有価証券報告書等に開示必要
・手続き⇒親会社の報酬委員会等での決議が必要
・完全支配関係の判定時期⇒親会社の報酬委員会等での手続き終了の日
・株式を交付する場合⇒親会社の株式を使用(交付日まで50%保有されている関係が必要)


8.出荷基準の取り扱い

・日本の現行基準:商製品の販売に関する収益認識基準は出荷基準、引渡基準、検収基準等。
・収益認識基準公開草案では
 「一定の期間にわたり充足されるものではない場合は、一時点で充足される履行義務として、資産に対する支配を顧客に移転することにより履行義務が充足される時に収益認識する」とされた。
・「支配の移転」は一定の指標(物理的占有権の獲得や検収の完了など)を考慮して決定する
・「代替的な取り扱い」も定めている
・商製品の国内販売で、出荷時から支配移転までが通常の期間である場合には、出荷時や着荷時に収益認識OK
・「通常の期間」は数日間


9.M&A時にマネジメントが考えること・決めること

■プレ段階
(1) ターゲットの選定
・買収対象として適切か?
⇒ターゲットが有する経営資源は何か
⇒期待されるシナジー効果は何か

(2) 財務インパクト
・いくらまでなら出せるか?
⇒のれんはどの程度計上されるか
⇒買収後の自社の利益は向上するか(絶対額&一株当たり)

■実行段階
(1) DD、価値評価
・適切な専門家の選定
⇒専門家の特性を把握
・Go or No-Go
・最終的な買収提案額
⇒ターゲットのリスク情報把握
⇒ターゲットの価値、本件でのシナジー効果等を考慮

(2) 契約交渉
・価格と価格以外の条項との交渉戦略
⇒リスクへの対応策、契約書への反映方法を検討


10.平成29年度税制改正 役員給与税制上の取扱いと実務ポイント

■役員給与税制の体系の見直し
・業績連動型の役員退職金についても、役員給与税制の範疇に組み込み
・支給形態による取扱いの不整合の解消(SO、金銭、株式)
■普通株式の交付についても、一定要件のもと、損金算入が可能に
 (事前確定届出給与または業績連動給与に該当する場合)
・株数ではなく支給金額を確定して、その金額に相当する株式を交付する場合も損金算入が可能に
■利益連動給与の見直し(業績連動給与へ名称変更)
・株価や売上高に連動した指標の採用(売上高は単独での使用不可)
・複数年度での業績連動指標の採用
■制度対象範囲の拡大(損金算入範囲の拡大)
・事前確定届出給与(譲渡制限付株式):50%超の子会社への適用が可能に
・業績連動給与:持株会社の100%子会社への適用が可能に
・非居住者に対する譲渡制限付株式、SO:損金算入が可能に


11.役員報酬制度見直しのポイント

・現金、株式、新株予約権(SO)、リストリクテッドストック(RS)、パフォーマンスシェア(PS)等、多種な手段
⇒手段ありきではなく、個々の会社における報酬の目的に応じてどう組み合わせるか、を考える時代に

■最近の報酬制度の潮流と背景
⇒中長期業績に連動させることを目的とした、株式を用いた報酬制度
・コーポレートガバナンスコード:中長期的な会社業績と連動させるべき
・機関投資家の声:日本の会社役員の自社株の保有率を上げるべき
・優秀人材の獲得・引き止めの観点:欧米レベルに報酬水準を上げるべき
・税制改正:RSやPSの導入による選択肢の拡充

■見直しの始点
どのタイプにするか:会社業績に対し固定か連動か、会社業績は短期とするか中長期とするか
⇒4分類:短期固定、中長期固定、短期連動、中長期連動

■例:中長期業績連動報酬の見直しをしたい
⇒リスクとリターンの関係から業績へのモチベーションをどうコントロールするか
方法(1):現状報酬+PS⇒業績不調でも前と同額報酬
方法(2):固定給を引下げ+PS多め⇒(1)に比して業績好調と業績低調時の振れ幅大

■例:短期業績連動報酬の見直しをしたい
・4つのポイントを整理
⇒業績指標の見直し、業績指標の下限と上限、業績への報酬反映率、報酬反映率の傾斜配分

■例:優秀人材の獲得引き止めを図りたい
・獲得目的:PSが有効(インセンティブ性〇、ただし安定性×)
・獲得+引き止め:RSが有効(インセンティブ性△、安定性〇)


12.のれんの償却期間

■のれん
被取得企業の継続事業としての価値や期待されるシナジーなどの超過収益力と考えられている。

■連結財務諸表での取扱
・のれん
効果の発言する期間を見積り、計上後20年以内の期間で償却(販管費)する。
・負ののれん
計上時に特別利益に計上

■のれんの償却期間
のれんの効果が及ぶ期間は高度な見積りを要する
償却期間を長期化した場合、毎期の負担額は減少するが、見積りの不確実性が高まり、償却期間決定の整理は困難となる。
※長期間の事業計画を策定し、当該計画通りに運営することは難しい

償却期間を画一的に決定できる取決めはないため、案件ごとにのれんの効果が及ぶ期間を検討し、合理的な償却期間を決定する必要がある。


13.東芝、特設注意市場銘柄の指定解除及び監理銘柄(審査中)の指定解除

・10/12付で指定解除。
・内部管理体制確認書を再提出し、「内部管理体制に問題があるとは認められない」ため。
・ただし引き続き、債務超過に関わる上場廃止基準の猶予期間中。
 → 2018年3月末時点で債務超過が解消されず、上場廃止基準に該当した場合、上場廃止となる。


14.東芝ひとまず上場維持

・2015年に発覚した不正会計を受け、同年9月に東芝株は「特設注意市場銘柄(※)」に指定
・2017年10月12日、東証は特設注意市場銘柄を解除
・東芝が2017年3月に再提出した再発防止策や幹部への聴取などから、
「内部管理体制について相応の改善がなされた」と判断

ただし、

・東芝は2017年3月末で5,529億円の債務超過
・2018年3月末までに解消できなければ、今回の判断にかかわらず、東証基準に従い上場廃止となる。

(※)有価証券報告書に虚偽記載などを行った企業の株式について、取引所が投資家に注意喚起するため指定する。
取引所は内部管理体制の改善を求め、企業の対応を審査。
改善したと判断した場合は指定を解除する。
取引所が審査の結果、内部管理体制の改善の見込みがなくなったと認めた場合や、
指定から1年6カ月後の再審査でも問題があると認められた場合は上場廃止になる。










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