2017年10月1日日曜日

9/29 勉強会:相談役、顧問等の開示制度の留意点 他

1.有償SO、未公開企業は本源的価値で可

・ASBJが、実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」に寄せられたコメントを検討中
⇒少なくとも未公開企業に関しては、ストック・オプション会計基準第13項により「ストック・オプションの公正な評価単価に代え、ストック・オプションの単位当たりの本源的価値の見積りに基づいて会計処理を行うことができる」とされている。
※反対意見が多く、最終基準化の目途はたっていない


2.事業の買換特例、先行取得の可否も焦点

・経済産業省の平成30年税制改正要望に「事業の買換特例」の導入案が盛り込まれた
⇒現行の買換特例は、土地や建物等を対象とするが、「事業の買換特例」は事業そのものを対象

・「事業の買換特例」は現行の買換特例同様、圧縮記帳制度の一つとして導入を検討
⇒新たに取得した事業について、売却した事業の譲渡益相当額の圧縮損を計上することで、課税を繰り延べる

・譲渡益の出ない不採算事業の売却に本特例を利用するメリットはないし、そもそも中核事業を売却することは考えにくい
⇒譲渡益の出る非中核事業の売却に際して活用されることが想定される

・企業側から、非中核事業の買い手が簡単に見つかるか不安視する声あり
⇒売却したい事業の買い手が見つかる前に、購入したい事業が見つかるパターンも十分に想定される
⇒先行取得(取得⇒売却)が認められるか、今後検討すべき論点の一つ ※通常は、売却⇒取得の順



3.医療費通知を活用した医療費控除の簡素化
<医療費通知を活用した医療費控除の簡素化>
H29年度税制改正にて、所得税の医療費控除の申告手続きが簡素化された

主な論点
・領収書の添付にかえて、医療費の明細書の添付でOK
⇒医療保険者(協会けんぽ等)が交付する「医療費通知」が活用できる
・「医療費通知」に記載された領収書は保存する必要なし
・いつから適用されるか
H29年分以後の確定申告書を、H30年1月1日以後に提出する場合に適用。
※過去分(H28年分以前)の医療費控除については適用されない
・「医療費通知」に記載条件あり
下記6つが明記された「医療費通知」に限る
被保険者の氏名、療養を受けた年月、療養を受けた者の氏名、
療養を受けた病院、被保険者が支払った医療費の額、保険者の名称
※一般的に記載されている項目。

なお保険者(協会けんぽ等)に対し、これらの記載要件は義務付けられていない領収書の添付のみならず、「医療費通知」も活用して医療費控除が受けられることとなる。



4.ビットコイン以外の仮想通貨と交換した場合の利益も雑所得

■消費税
・仮想通貨の譲渡は非課税(H29年7月1日施行)
⇒H28年6月公布の改正資金決済法で「支払手段」と位置付けられたため

■所得税
原則:雑所得
・ビットコインだけでなく、イーサリアム、リップル等の他の仮想通貨も同様
・換金、他の仮想通貨と交換、店舗で使用等した際の利益に課税
・同一年における雑所得の範囲内での損益通算は可能

■会計処理
・11月頃に「仮想通貨に係る会計上の取り扱い」についての公開草案が公表される見込み


5.税務調査巡る帳簿不提示で消費税仕入税額控除を否認

【消費税の仕入税額控除は原則として帳簿等の保存がない場合には受けることが出来ない】(消法30条7項)
この点に関して起きた税務紛争で納税者が税務調査の際に帳簿等を提示しなかったことに対する仕入税額控除の否認を巡って否認された例を紹介。

●無予告調査を巡り顧問税理士らが調査要請に応じず仕入税額控除が否認された例
この例は、納税者に対し無予告で調査に来たことに端を発した。これに対して顧問税理士は、事前通知を行わない調査をする理由が説明できない調査は違法であると主張し調査を拒否、税務署側は1年4か月の間に8回以上、顧問税理士に納税者に調査に応じるよう要請していたが調査には応じられないとの回答をされていた。そこで税務署は消費税法第30条7項に規定する「帳簿等を保存しない場合」に該当するとして仕入税額控除否認の更正処分及び過少申告加算税合わせて約38億の処分を行った。
この処分を不服とした納税者は更正処分の取り消しを求めた。

国税不服審判所の判断:納税者の訴えを斥けた(平成28年10月21日裁決)
理由:納税者が処分に係る調査全体を通じて適法に帳簿等の提示を求められたにも関わらず、拒み続けたといえる場合には、税務職員による検査に当たって適時に帳簿を提示する体制を整えて保存していなかったと解するのが妥当とされた。


6.役員給与税制適用時期と決議日の関係

■29年度改正
拡充項目(例):株式交付信託(在任型)
決議基準日:29年4月1日
改正前は損金算入不可、改正後は業績連動or事前確定に該当すれば損金算入可
⇒支給に係る決議日が29年3月31日以前であれば損金算入不可、4月1日以後であれば一定要件のもと損金算入可

縮減項目(例):株式交付信託(退任型)
決議基準日:29年10月1日
改正前は要件なしで損金算入可、改正後は業績連動給与の要件を満たさなければ損金算入不可
⇒支給に係る決議日が29年9月30日以前であれば損金算入可、10月1日以後であれば一定要件を満たさなければ損金算入不可


(参考)
■29年4月1日を基準日とする報酬
パフォーマンスシェア(PS)
ファントムストック
リストリクテッドストックユニット(RSU)
株式交付信託(在任型)

■29年10月1日を基準日とする報酬
ストックオプション(SO)
業績連動型の株式交付信託(退任型)



7.適格現物分配 現物資産と金銭の分配は別取引として判定

■適格現物分配の定義
現物分配を受ける者がその直前において、現物分配法人との間に完全支配関係がある内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)のみであるケース
⇒現物分配を受ける株主に個人や外国法人等が含まれている場合には、全体が非適格の現物分配となる

■金銭と金銭以外の資産の両方が分配されるようなケース
例えば100%グループ内に法人株主と個人株主がいる場合
・法人株主⇒株式などの資産を分配(現物分配)
・個人株主⇒金銭を交付する
⇒このケースだと適格の要件を満たすことになる。
※現物分配は完全支配関係がある内国法人のみに行われているため

仮に、個人株主に対しても株式などの現物分配が行われた場合
⇒全体が非適格の現物分配となる



8.有償SO 中止条件付きで導入

・大幸薬品「費用計上なら発行中止」
・SOの公正な評価額から本SO付与に伴う払込金額を差し引いた金額のうち、「合理的な算定方法に基づき当期に発生したと認められた額」は費用計上
 ⇒業績に相応の影響あり
 ⇒インセンティブプランの再検討が必要になる


9.スピンオフの意義・効果と29年度税制改正の概要

■意義
・事業再編組織再編の手法の一種
・特定事業を切り出して企業グループから分離

■考課
・元の会社は中核事業に専念することが可能に
・スピンオフされた会社は迅速・柔軟な意思決定が可能に

■税制改正の概要
・適格分割の範囲が拡大
(従来)
(1) 完全支配関係もしくは共同事業を営むための分割である必要あり
(2) スピンオフを実施した上場会社にみなし配当課税が発生してしまう
(改正)以下の要件を満たす場合、支配関係がなくてもOKに
(1) 分割法人が誰の支配もない→分割承継法人も継続して誰の支配もない(非支配関係が継続)
(2) 分割事業の主要な資産・負債が分割承継法人に移転している
(3) 分割事業の従業者のおおむね80%以上が分割承継法人の業務に従事することが見込まれる
(4) 分割事業が引き続き分割承継法人で行われる見込みである
(5) 分割法人の役員又は重要な使用人が分割承継法人の特定役員となることが見込まれる
(6) 分割の対価として、新設法人の株式のみが交付される
(7) 新設法人の株主が分割法人の各株主に対して持株数に応じて交付される


10.有形固定資産の耐用年数の見直し

■過去に定めた耐用年数が、定めた時点では合理的&以降の変更も合理的なとき
・会計上の見積りの変更に該当
・影響額は当期及び将来の期間の損益で認識
・重要性が乏しい場合を除き、会計上の見積りの変更の内容等を注記

■過去に定めた耐用年数が、定めた時点で合理的ではなかった&事後的に合理的な見積りに変更するとき
・過去の誤謬の訂正に該当
・過年度の財務諸表を修正再表示
・過去の誤謬の内容等を注記


11.相談役、顧問等の開示制度の留意点

・あくまで任意開示のため、開示を行わない事も許される
■開示の対象書
・元CEO等の上場会社の経営トップ
⇒代表権はあるが、経営トップでなかったもの、主要な子会社の代表取締役は対象外。任意開示は許容。
・会社法上の役員の地位から退任した者
⇒引き続き役員である取締役会長や取締役相談役は対象外
⇒経営トップを退任後、上場会社の主要な子会社の相談役・顧問は間接的に引き続き会社と関係するため対象
⇒経営トップを退任後、別会社を設立し、上場会社との間でアドバイス等の契約を締結した場合も対象
■開示事項
・役職、地位、業務内容、勤務形態、条件、社長等退任日、任期、合計人数
⇒開示を選択したのであれば、一部の不開示は許されないと解すべき
⇒一部の対象者のみの開示も想定されていない


12.スキャナ保存を活用した経費精算業務への移行にあたってのポイント

①現フローのどこがボトルネックであるか事前分析
・スキャナ作業等の負担が、かえって業務効率を害する場合は移行NG
・大企業であれば、税務調査対応といったニーズに応えるメリットは大きい

②トップダウンでプロジェクトを推進すべき
・現場の協力が必須のため、経理部主導での推進は困難

③経理部でのタイムスタンプ期日の決め
・タイムスタンプ:起算日から3日以内に電子データに残す必要のある印
・起算日は法定されていないため、原始証憑を受け取った日or申請締日で決めておく

④裁量判断の除外
・データ上の各種処理になり作業の平準化が必要になるため、従来のイレギュラー処理の排除を念頭に

⑤スマホでの撮影を許容するかの決め
・申請者(撮影者)の作業への依存が大きく、不鮮明になるリスクを検討する

⑥最終的に、原始証憑の廃棄を目指すこと
・「念のため」と言っていつまでも紙を捨てられないと、いつまでも効率化しない



13.グループ本社経理・財務組織の目指すべき姿の検討ポイント

経理・財務機能にどのような経営貢献が求められているかを明確にした上で、目指すべき方向性を定義する必要がある。

目標:「海外売上比率の現状からの倍増」
目指すべき姿:グローバルを含めた経営管理機能のしくみをもつ経理・財務機能

目標:「新規事業の創出・育成による売上10%以上増」
⇒サービス横断軸での管理の仕組みを構築した経理・財務機能

経理・財務組織の構成要素
・データおよび分析
・プロセス
・テクノロジー
・オペレーティングモデル
・人材



14.エストニアの確定申告

・マイナンバーを基に、国が各種情報を集め、申告書を作成。ポータルサイトに申告書を載せてくれる。
・国民は上記の内容をスマホで確認可能。修正がなければクリックのみで確定申告および納付が完了。
・所得税の電子申告利用割合は95%。
・所得税還付は最短で5日で完了。



15.復活期待の2016年IPO有望銘柄

2016年にIPOした銘柄は83銘柄。
そのうち東京IPO特別コラムが選定した、注目銘柄のうち上位3銘柄は以下である。

1.バリューゴルフ(3931)3月 
公開価格1,280円 、高値3,400円
先日の決算説明会開催以来、株価はジリ高歩調。
一人ゴルフの会員数増加、対象ゴル フ場の増加。
M&Aによる事業拡大を図り業績向上。健康関連サービスにも注力。

2.昭栄薬品(3537)3月
公開価格1,350円、 高値4,385円
個人投資家向けの説明会開催以来、株価は比較的堅調な推移。
保有する53億円余りの投資有価証券の大半は花王株。
高級アルコールの拡大で 業績も堅調。

3.グローバルグループ(6189)3月 
公開価格2,000円 、高値3,655円
保育園など子育て支援ビジネスを展開。
上場後の高値から4月安値1,480円まで値下がり。
2017年9月下旬より子育て支援関連が消費税増税に伴う財源確保から一気に人気化。
補助金収入が収益に貢献するビジネスモデルで来9月期の業績に関心。
公開価格割れを続けたがようやく浮上の動き。










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