2017年7月28日金曜日

7/28 勉強会:社長交代で電子証明書の取得間に合わず 他

1.移転価格文書化の個別照会、事実関係異なれば課税リスクも

・7月から移転価格制度の個別相談窓口が各国税局に設置されている
 移転価格税制については元々「事前確認制度(APA)」が用意されていた⇒違いは?
(APA)
・税務当局が事実関係の確認を行ったうえで移転価格審査を行う。
・税務当局の立場から確認をしており、事前確認の内容に適合した申告であれば税務調査の必要なし。

(個別相談窓口)
・企業から提出された資料等の事実関係を前提として検討および回答を行う。
・またAPAより短期間での回答(数か月)を目指す。
・事実関係確認のため税務調査の場合も。

※国税庁は6月に「移転価格ガイドブック」を公表



2.今週の専門用語

■電子証明書
・申告書等の作成者が署名者本人である事を確認するためのもの
■電子署名
・電子申告のデータが改ざんされていない事を署名者が保証するもの



3.収益認識導入が企業に及ぼす影響

■企業会計基準委員会が「収益認識に関する会計基準」の公開草案を決定
⇒公開草案は、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」の基本的な原則(下記参照)を取り入れている上、連結F/Sだけでなく個別F/Sにも適用される為、これまでの実務が大きく変わってしまうのではないかという懸念あり

■代替的な取扱いの容認
・非連結F/S作成会社や一部の業種・業態の企業に影響が及ぶ可能性はあるものの、これまでの日本企業の実務等に配慮し、重要性等に関する代替的な取扱いを容認
⇒企業への影響を一定程度に軽減する措置

■強制適用時期
・平成33年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用
⇒システム改修の準備期間等を考慮し、企業に一定の配慮

■収益認識会計の基本となる原則(下記5つのステップ)
(1)顧客との契約を識別する
(2)契約における履行義務を識別する
(3)取引価格を算定する
(4)取引価格を契約における履行義務に配分する
(5)履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する

■現行の日本基準又は日本基準における実務の取扱いが認められない会計処理
・顧客に付与するポイントについての引当金処理
・返品調整引当金の計上
・割賦販売における割賦基準に基づく収益計上



4.功績倍率による退職給与は損金算入OK

国税庁が7/14付で法人税基本通達等の一部改正を公表。
主に役員給与改正などを含む29年度税制改正に対応したもの。

・業績に連動する退職給与は、
「業績連動給与」の損金算入要件を満たさない限り損金不算入。
ただし功績倍率法に基づく退職給与は、「業績連動給与」に該当しないため損金算入可。

基本通達の改正により、役員給与の損金算入及び不算入を明確化にした



5.社長交代で電子証明書の取得間に合わず

・早ければH30年申告分から「大法人」は電子申告が義務化

■電子申告義務化に向けた課題
(1)電子証明書の発行時期の問題
・上場会社は確定申告の期限直前に株主総会が開催されることが多いため、株主総会で社長が交代した場合、電子証明書の取得が間に合わないケースが多々発生

(2)大企業の定義が決まっていない
・大法人の子会社の中小法人を大法人に含めるかどうか
・連結子法人である大法人を地方税においてどう取り扱うか



6.国税局照会事例 一般財団法人が設立時に受けた寄付について

■概要
病院経営を行っている一般財団法人Aは平成29年10月設立予定のB財団に対して、病院経営の一部を引き継がせるために医療機器を贈与する予定である。
この場合の法人税法上の取り扱い(収益事業の損益)はどうなるか?

■照会内容
財団が病院経営に必要な医療機器を贈与により取得し、その後処分したときの損益は<収益事業の付随行為>として収益事業にかかる損益となる。
そのため、医療機器の贈与による受贈益についても収益事業にかかる損益となるのではないか?

■国税局回答
この受贈益は収益事業にかかる収益に該当しない。

(理由)
公益法人等が固定資産を取得するために受ける補助金は、その固定資産が収益事業に供されるものであったとしても収益事業の益金に算入しないこととされている。本件贈与による取得は実質的に固定資産取得のための補助金等と同様の性質である。
したがって、収益事業にかかる収益に該当しない(課税なし)



7.裁判例・裁決例:一時的空室部分”巡り5か月の空室を長期間と判断

■質疑応答事例でのアパート等の空室が一時的かどうかの判断
(1)各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか
(2)賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか
(3)空室の期間、他の用途に供されていないかどうか
(4)空室の期間が課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど一時的な期間であったかどうか
(5)課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうか
などの事実関係から総合的に判断

■今回の大阪高裁の判断
一時的空室部分該当性の判断に当たっては、現実の賃貸状況、取り分け、空室期間の長短を重要な要素として考慮しなければならない
各空室部分が「継続的に賃貸の用に供されている」状態にあるという理由のみで上記例外的な取扱いを認めることはできない。
本件各空室部分の空室期間は、最も短い場合でも5か月であり、「例えば1か月程度」にとどまらずに、むしろ長期間に及んでいるといえるから,「一時的」なものであったとはいえない
⇒空室期間が重要と示されるも総合判断であることは変わらず



8.株主優待引当金

・株主優待に備える目的で「株主優待引当金」を計上する事例がある
・株主優待は配当ではなく費用として処理する
(剰余金の配当手続によるものではない、優待内容が所有株数に完全には比例しないため)
・優待内容を期末日以前に株主に公表済で、将来発生する費用を過去の利用実績から合理的に見積もることができる場合
 ⇒引当計上する
 ※利用時に売上値引きや交際費として扱う例あり。
・税務上は原価以上の対価を得ていれば交際費には該当しない。



9.保有資産が遊休状態となった場合の留意点

■事例
・製造業だが製品の販売が芳しくなく、ラインの操業を停止。
・その後の操業開始の目途は立っていない。
・減損の検討が必要かどうか、具体的な考え方は?

■減損検討が必要か
・必要(減損の兆候あり、と判断される)
⇒基準「当該資産又は資産グループの回収可能価額を著しく低下させる変化」に該当
・不要な場合もあり(1年以内の場合は「兆候なし」と主張できる余地あり)
⇒基準「資産をほとんど利用しなくなってから間もない場合で、将来の用途を定めるために必要な期間に当たる場合」

■具体的な方法
(1) 回収可能価額は?
⇒正味売却価額(使用価値はゼロ)

(2) グルーピングは?
⇒しない(キャッシュを生まないため)



10.社債による資金調達時の対話のポイント

■株式や融資に比べ、普通社債の発行による資金調達のメリットは何か?
・調達コストが低い
・株主構成の変化、既存株主の議決権比率の低下を避けられる
・融資に比べ多額の資金調達が可能
・市場での認知度を上げる効果がある

■劣後債・ハイブリッド債にはどのようなメリットがあるか?
・株主構成の変化、既存株主の議決権比率の低下、株価の下落といった新株発行のデメリットを生じさせることなく、規制資本を積み増すことが可能となる点で、銀行や保険会社にとって有用な資金調達手法
・規制上、格付上、会計上の資本性が認められる資金調達でありながら、支払利息の損金算入が認められる

■劣後債・ハイブリッド債にはどのようなデメリットがあるか?
・普通社債と比べ、商品設計が複雑であり、規制当局や格付機関との協議が必要となる



11.種類株式による資金調達時の対話のポイント

■種類株式による資金調達の場合、そのような商品設計が可能か?
・目的に応じて組み合わせ可能
⇒剰余金配当(※)、残余財産分配(※)、議決権、譲渡制限、取得請求権、取得条項、種類株主総会
(※)実務上多い
⇒取得請求権を用いて、優先株式から普通株式への転換を図ることで、半永久的なエクイティ出資者にイグジットの機会を与えることが出来る
■銀行借入や普通社債ではなく、社債型優先株式を用いる理由は?
・一定の日に金銭償還されるのでデッドに近い性質を有する一方で、優先配当権(累積型・非参加型)および残余財産分配権(非参加型)がある。既存株主の議決権比率に希薄化の影響なし
・銀行借入や普通社債だと自己資本比率が下がるが、社債型優先株式は自己資本比率が上がる
(参考)剰余金の配当については、所定の優先株主配当金以外に普通株主配当を受けられる参加型と、所定の優先株主配当しか受けられない非参加型がある



12.通貨オプション取引の会計

■オプション取引とは
(1)特定の商品を
(2)定められた期日に
(3)定められた価格で
(4)「買う」または「売る」
の4条件を満たす「権利」を売買するデリバティブ取引の一つで、「権利」の対価としてオプション料を支払う。

■オプション取引の会計処理(買手)
・前提
種類:1,000ドルのプットオプション
オプション料:1ドル=3.8円
決算日オプション価格:1ドル=7.1円
権利行使価格:1ドル=120円
権利行使日の価格:1ドル=113円

(1)通貨オプション契約締結時
買建通貨オプション 3,800円 / 現金 3,800円
⇒権利購入のため、資産計上をする。

(2)決算日(時価評価益)
買建通貨オプション 3,300円  / 為替差損益 3,300円
⇒デリバティブ取引のため、時価評価する(翌期首に洗替)。

(3)通貨オプション権利行使日
現預金 7,000円 / 為替差損益     3,200円
        / 買建通貨オプション 3,800円
⇒権利行使価格により生じた利益(1,000ドル×(120-113)=7,000円)からオプション料(3,800円)を控除したものが営業外費用として処理される。



13.会社法上、株主が議決権の行使期限は「基準日から3か月以内」

・株主総会は「事業年度終了後の一定の時期」に開催すればよいため、3月決算の場合、(定款を変更して)基準日を1か月後倒しすれば7月開催も可能。
・ほとんどの会社は決算日と基準日を同じにし、総会は6月開催。⇒決算日と基準日を別日にすると、株主を2回確定する必要あり。

・ニイタカ(5月決算)が、基準日および株主総会開催日を変更。
(基準日) 従来:5月末 ⇒ 6月末
(株主総会)従来:8月末 ⇒ 9月末

・IRによれば、変更の理由は下記の通り。
(1)猛暑の時期の株主総会開催を避けることにより、会場にお越しになる株主様の熱中症等のリスクを低減するため。
(2)定時株主総会の開催日を柔軟に設定することにより、株主様との建設的な対話を促進するため。



14.与信限度額の管理

・実際の与信額が与信限度額を超過していないかどうかについては、継続的にチェックを行う必要がある。
・1社に対して複数部門と取引している場合は、名寄せする必要がある。
・与信限度額を超過しないためには、以下の観点からシステムによる管理が望まれる。
⇒与信超過時は受注入力できないことにより、与信枠を広げる場合の事前承認が徹底される。
⇒受注・入金状況がタイムリーに反映され、管理ミスが防げる。
・与信超過を未然防止するために一定のアラーム基準(例:与信限度額の80%)を設け、与信額がアラーム基準を超過した場合は管理部門より営業部門へ通知し、与信限度額を増額すべきか否かの検討を促す必要がある。












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