2017年6月10日土曜日

6/9 勉強会:遊休資産に係る会計・税務の取り扱い 他

1.債権法を見直す 民法の改正案が国会で成立

5/26民法の一部を改正する法律案が参議院本会議で可決・成立
 約120年ぶりに民法の債権関係を見直すもの
■主な改正
・消滅時効について、短期消滅時効の特例をいずれも廃止するとともに、消滅時効の期間について、原則として権利行使が可能であることを知った時から5年に統一
⇒弁護士・税理士・司法書士等の報酬についての時効が「5年」に統一


2.社員弁理士は法人税法上の役員に該当

【裁判事例】
弁理士の特許業務法人が、代表社員以外の社員弁理士である社員らに支払った歩合給は損金に算入できるか?

⇒損金に算入できない
⇒特許業務法人の社員は職務内容に関わらず、法人税法上の
・役員に該当
・使用人兼務役員には該当しない
※固定給は、損金算入できる


3.今週の専門用語

■所内調査
・東京都が毎年行っている固定資産の調査方法の1
・前年と当年の航空写真や家屋現況図、認定管理図や住宅地図を参照
⇒変化を把握することを目的とする
・これらの調査で認定の変更が疑われる場合は、聴き取り調査や立会調査等に進む

■特殊業務法人
・弁理士法の改正により創設された法人制度
・弁理士2名以上が共同して定款を作成し、登記することで設立可能
(メリット)
①継続性の担保
②対外信用度の向上
③税制面での優遇措置


4.認定経営革新等支援機関制度、任意調査で活動実績をチェック

■認定経営革新等支援機関制度
・目的
中小企業に対して、経営相談等、専門性の高い支援を行うこと

・認定経営革新等支援機関
税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や実務経験を有する個人、法人等※で、国の認定を受けた者
※税理士、会計士、弁護士、中小企業診断士、商工会議所、金融機関等

・認定機関数
26,132(平成294月時点)、全体の76.4%が税理士及び税理士法人

■本制度を巡る動き
(1)中小企業政策審議会の中小企業経営支援分科会は、平成295月に認定経営革新等支援機関制度の見直しを盛り込んだ中間整理案を了承

(2)今回の見直しでは、以下を検討
・報告徴収
⇒複数回連続で任意調査等による報告を確認できなかった場合、法律に基づく報告徴収(罰則規定有)を求める
⇒認定経営革新等支援機関が認定後も充分な経営支援能力を有しているか
(認定時に確認した資格等の有無や直近数年間の活動実績)どうか確認

・業務改善命令及び認定の取り消し
⇒支援業務の運営に関し改善が必要と認められる場合、法律に基づく改善命令を発し、当該命令に従わなかった場合は認定を取り消す

・更新制の導入
⇒認定機関に35年の有効期間を設け、期間満了時に改めて充分な経営支援能力を有しているかどうか確認した上で更新

(3)今後、中小企業等経営強化法や基本方針等の見直しが検討される


5.固定資産税をめぐる最近の事例

家屋の固定資産税は、家屋課税台帳等に登録された価格に基づき課税され、その価格は総務省が告示する「固定資産評価基準」により算定。

木造家屋については、「需給事情による減点補正」といった規定があり、建築様式が著しく旧式となっている場合は評価額を減少させる制度。

■事例
・原告は観光地に旅館施設を経営する法人
・観光客の集客減等もあり、「需給事情による減点補正」を適用して減額評価。
・課税庁は同規定を極めて限定的なケースのみ適用すべきと認めなかった

■地裁判断
一般論として、需要と供給との間にかい離がある場合は、需給事情による減点補整をしなければいけない。
⇒つまり、上記規定を極めて限定的なケースのみに適用するのではなく、置かれている状況や事情に応じて臨機応変に対応すべきと判断し、原告主張を支持した。
現在控訴中。

※他の観光地の旅館施設の評価にも影響を与える可能性あり。ゴルフ場も同様に影響あり。


6.改正CFC税制、負債利子控除は不可濃厚

タックスヘイヴン対策税制の改正により、日本の親法人に合算させる利子や配当などの所得の範囲が拡大
⇒適用時期は(外国関係会社の)平成3041日以後に開始する事業年度から

■改定内容
(1)利子に係る費用
・負債利子の控除を規定した文言が削除
⇒負債利子の控除が不可となる可能性が濃厚

(2)合算対象から除外できる配当
従来は「効力発生日に持分割合10%以上の株式に係る配当」だったのが、「支払い義務確定日以前6月以上継続して25%以上保有する株式に係る配当」に改正
⇒改正により、外国子会社配当の益金不算入の規程と同様になった様子


7.民法改正(抜粋)

■施行期日
公布日から3年以内に政令で定める日(平成32年頃)

■主な改正内容
消滅時効:債権を行使できることを知った時から5年間行使しないときに統一
⇒これまでは飲み屋のツケは1年、病院の医療費は3年などバラバラだった
法定利率:年5%から3%に見直した上で,3年ごとの変動制へ移行
⇒当時者間で意思表示がなかった場合の取り扱い
保証人:第三者を連帯保証人とする場合は公証人による事前の意思確認が必要
敷金の返還:賃借物の原状回復義務を負うが,通常の損傷等の修繕義務は除く
⇒経年劣化による損傷のみの場合は敷金が返還される
約款:相手方の利益を一方的に害するものは無効とみなす


8.CRS導入で過去の申告漏れ等の指摘も

CRSについて
・各国の非居住者が持つ金融口座情報が各国税務当局間で自動的に交換
・例えば、日本の居住者が保有する海外の口座残高や収入金額等の情報が日本の税務当局へ提供される
CRSCommon Reporting Standard:共通報告基準

■適用
・平成29年分以後の口座情報が対象(309月末までに行われる)
・まずは、「291231日時点の口座残高」と「29年分の収入金額」等
100か国・地域で導入
(ケイマン諸島やバミューダ諸島等“タックスヘイブン”と呼ばれる地域も含まれていることが特徴)

■過年度申告漏れ等の指摘の流れ(イメージ)
29年海外口座残高が多額⇒28年以前における申告所得金額が少ない
⇒納税者本人へヒアリング⇒解明できない場合は、租税条約による「要請に基づく情報交換」
⇒他国の税務当局を通じて海外銀行等の情報を要請⇒申告漏れ指摘
・一度税務調査が行われた課税年分についても安心はできない


9.資産除去債務と税効果

・資産と負債(資産除去債務)を両建てで計上

資産除去債務
・税務上は負債として認められず実際に除却した時点で税務上の損金算入となる
 =将来減算一時差異
 =繰延税金資産を計上(回収可能性の検討必要)

固定資産に加算される除去費用
・税務上の資産として認められず会計上の資産が税務上の資産を上回る
 =将来加算一時差異
 =繰延税金負債を計上(回収可能性の検討不要)
 ⇒減価償却によって徐々に解消していく


10.国税に関する不服申立制度

1.税務署等の処分に不服がある場合の対処方法
・国税不服審判所への審査請求
・税務署長等への再調査請求

2.概要
(1)審査請求
・国税庁の特別機関である国税不服審判所に対して行われる。
・時間はかかるが、公正な第三者的立場で裁決される。
・国税不服審判所の裁決に対し、原処分庁は不服として訴訟等を提起することは不可

(2)再調査請求
・処分庁が審理を実施
⇒処分の事案や内容等を把握しやすいため、簡易迅速な事務遂行が可能
⇒法令解釈でない事実関係の確認等であれば効果的


11.連結外法人の完全子法人化・吸収合併など各スキームの課税関係ケーススタディ

■キーワード
・平成29101日前後
・少数株主の排除と税務メリット(繰欠引継等)の両立が可能に

■連納グループ外法人を完全子法人にするケース
・事例:現在持株比率90%のB社を100%にして連納グループに入れたい
・平成29930日以前
⇒対価に現金を含む方式:少数株主排除or税務メリット
少数株主との関係は切ることができる
B社の時価評価&繰欠切捨
⇒対価が株式のみの方式(株式交付型株式交換):少数株主排除+税務メリット
少数株主との関係を切ることができない(親会社株主として参画し続けるため)
B社は簿価評価&繰欠引継

・平成29101日以後
⇒上記、株式交付型株式交換に加え、
現金交付型株式交換
全部取得条項付種類株式割当
株式併合
株式売渡請求
で現金を対価に子会社化するケースも少数株主排除+税務メリット享受が可能に

■連納グループ外法人を吸収合併するケース
上記同様、平成29101日以後は現金対価の吸収合併も適格扱いになる


12.負ののれんの性質と会計処理

■負ののれんの性質
企業の時価純資産>企業の時価(取得原価)
⇒理論上は企業の保有する資産をすべて売却し、負債をすべて返済した方が有利な状態。
 経済合理性の観点からは正常な状況ではない為、その発生経緯や原因について慎重な検討が必要。

■負ののれんの会計処理
発生した事業年度の利益として処理
⇒負ののれんは負債の要件を満たしていない(経済的資源が流出する義務はない)。
⇒売手が時価よりも低い価額で企業を売却せざるを得ない特殊な環境下で生じるバーゲン・パーチェスと考える。


13.遊休資産に係る会計・税務の取り扱い

1.会計
・遊休資産でも減価償却の必要性あり、費用は原則、営業外費用
⇒以前は遊休資産について償却しないという考え方もあったが、遊休資産であっても経済的陳腐化により資産価値が減少している
2.税務
・減価償却をしても、費用は損金不算入
⇒法人税法上、減価償却できる資産は事業の用に供する資産に限定
⇒遊休資産であっても、休止期間中に維持補修が行われ、いつでも稼働できる状態にあれば損金算入可能


14.H29連結納税改正の概要

■簿価1000万円未満の資産を、連納開始の時価評価対象から除外
⇒自己創設のれんや過去から所有している土地の含み益の心配は不要に

■スクイーズアウトに関して、特定連結子会社の範囲を拡大
(条件)完全子会社の方法条件:全部取得条項付株式、株式併合の端数処理、株式売渡請求
⇒一定条件下で、税制適格組織再編税制の適用対象として、当該完全子会社も特定連子に該当
⇒特定連子の完全子会社も、一定条件下で特定連子に該当

■吸収合併、株式交換の適格要件緩和
(条件)合併等法人が被合併等法人の株式の2/3以上保有
⇒現金交付型でも、一定条件下で税制適格組織再編税制の適用対象として、当該完全子会社も特定連子に該当


15.スクイーズアウト課税の見直し

■適用開始時期
平成29101日以後に行われる株式交換等または合併について適用。
⇒連結納税の開始日が同日以後であっても、スクイーズアウトによる完全子法人化または合併が平成29930日以前である場合、旧税制が適用される点に注意が必要。

■現金交付型合併・現金交付型株式交換
前提 株主に金銭を交付し、少数株主を退出させる。発行済み株式総数の3分の2以上を保有している。
・組織再編税制
改正前 ⇒ [非適格]   改正後 ⇒ 他の要件を満たす場合[適格]
金銭等を交付しても[適格]と認められる範囲が拡大した。

■全部取得条項種類株式割当方式・株式併合方式・株式売渡請求方式
改正前 ⇒ [課税なし]   改正後 ⇒ 他の要件を満たす場合[適格]
経済的実態が同一なため、改組織再編税制の取り扱いを受けることとなった。

■連結納税
改正前 ⇒ 対象会社および対象会社の100%子法人は非特定連結子法人に該当
改正後 ⇒ 対象会社および対象会社の100%子法人は特定連結子法人に該当
5年前または設立日から完全支配関係継続要件を満たす場合に限る)
連結納税時に持込みできる欠損金の範囲が拡大した。


16.社会福祉法人へ監査導入

・一定規模以上の社会福祉法人に、会計監査人の監査が義務化される。
 →(平成2941日~)収益30億円または負債60億円超
 →(平成3341日~)収益10億円または負債20億円超

・医療法人についても、平成2942日以後義務化
・農協についても、順次義務化が進んでいる。


17.内部監査制度

内部統制報告制度におけるモニタリング機能の役割
上場直前期1年間、上場後と同じレベルで実施されることが望まれる。

・制度導入にあたって、一般的に整備すべき事項
1.内部監査部門の独立性の確保
⇒原則として独立した部門であること

2.内部監査専従者の配置
⇒人数が少ない場合には、被監査部門の業務内容によって他部門の従業員を臨時的に追加して実施する方法も認められる。

3.内部監査に対する社内の理解
⇒不正・誤謬を発見することも目的の一つであるが、発見された問題点に対するフォローアップを通じて業務の効率化等に資するケースもある。

4.関連諸規定の整備
⇒被監査部門が規程やマニュアルに従って業務を遂行しているか否かについてチェックを行うため、内部監査実施前の時点で、各部門が従うべき規程やマニュアルが整備・運用されていることが必要である。

5.関係会社に対する内部監査

⇒上場準備会社に子会社・関連会社がある場合、それぞれの会社において内部監査制度を設けることは事実上不可能、または非効率となるケースがある。そのため、会社の重要性やリスクを検討し、親会社の内部監査担当者がこれらの会社に対して監査を実施するか否かについて検討することが必要である。









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