2017年6月16日金曜日

6/16 勉強会:国外転出時課税の対象は一千億円超 他

1.「遺言の種類」

1)自筆証書遺言(承前)
⇒全文を自分で書く遺言
メリット
・費用がかからず、手軽に書ける
デメリット
・民法で定められたとおりに作成をしないと、遺言として認められない
・遺言書の隠匿、偽造、紛失の恐れがある
・解釈に疑義が生じるリスクが高い
・家庭裁判所の検認手続きを要する

2)公正証書遺言
⇒公証役場で公証人に作成してもらう遺言
メリット
・方式不備等の不安がない
・紛失や偽造変造の心配がない
・家庭裁判所の検認が不要
デメリット
・証人2名が必要で手間もかかる
・費用が発生する
・秘密が守れない

3)秘密証書遺言
⇒「内容」を秘密にしたまま、「存在」のみを証明してもらう遺言
 実際はあまり利用されていない
メリット
・「内容」を他人に秘密にしたまま、遺言書の「存在」を明らかにできる
・偽造・変造の心配がほとんどない
デメリット
・作成の際、煩雑な手続きが求められる
・内容は確認していないため、公正証書遺言のような確実さがない
・執行時に家庭裁判所の検認の手続きを要する


2.今週の専門用語

■地域統括会社
・日本の親会社の子会社として海外に設立されるもの
・複数の海外現地法人の業務を集約
(メリット)
・集約によるコスト削減
・意思決定の一本化、迅速化
・流通経路の簡素化

H22年度税制改正で、タックスヘイブン対策税制の適用対象から除外されて以来、設立する日本企業が急増


3.国外転出時課税の対象は一千億円超

■平成28年分確定申告の申告状況について

・所得金額1億円超の申告者…2383

・国外転出時課税の申告数…99
⇒うち所得税の課税対象となる含み益は1,013億円

・マイナンバー記載率…83


4.不適法な納付も予納額還付は認められず

■国税通則法第5912
・納税者が「概ね6ヶ月以内において納付すべき税額の確定することが確実であると認められる国税」を納付する旨を税務署長に申し出て納付した場合、納税者は還付請求できない

■本件
・相続財産の申告漏れに対する税務調査及び査察調査を受けた納税者が査察官の助言を踏まえ、国税の予納申出書を提出した上で納付
⇒その後、予納額は税務当局による増額更生等により納付すべきこととなった国税に全額充当

■納税者の主張
・本件予納は、国税通則法第5912号に該当しない
⇒過誤納金としての還付及び還付加算金の支払を納税当局に対して請求

■税務当局の主張
・本件予納は、国税通則法第5912号に該当
∴査察官が予納の積極的利用の勧奨を行った後に相続人が予納の申し出を行った等の客観的状況からすれば、納税者が国税通則法第5912号の国税として納付する旨を申し出て納付したものであることは明らか

■裁判所
・本件予納は、国税通則法第5912号に該当しない(不適法な納付)
∴査察の進行を待たずに自ら税額を決めて修正申告することを予定していたとまでは認められない。

・充当は信義則に反する権利の濫用として無効なものであるとは言えない
∴所轄税務署長が還付請求権を納税者に最も有利に、増額更生等により納税者が納付すべきこととなった国税に充当

⇒納税者の請求を棄却


5.法定相続情報証明制度について

H29.5.29より法定相続情報証明制度が始まった。

■法定相続情報証明制度とは
相続が発生する前に、法務局へ戸除籍謄本等の束を提出し、あわせて法定相続情報一覧図を提出することで、法務局が一覧図に認証文を付した写しを交付する制度。

■概要
・従来の手続きと比較し、
認証文が付された写しのみの提出で被相続人の預貯金等の払戻し可能となった。(手続の負担が軽減)
・手続は住所地を管轄する登記所などで手続き可能。
・被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本が必要。
・法定相続情報一覧図には、以下項目を記載する必要あり。
・被相続人の氏名・生年月日、被相続人死亡時の住所及び死亡年月日、相続人の氏名・生年月日・続柄等
・相続放棄者であっても上記一覧図に記載する必要あり。
・法定代理人のほか、税理士でも手続きの申請が可能。(弁護士、社労士、司法書士も可)
・相続手続以外の利用は不可。
・保存期間中(5年間)は何度でも再交付可能。
・不正申出には戸籍法の罰則規定が適用される


6.非居住者か否かの確認義務巡り控訴審でも企業側が敗訴

■事案
不動産等譲渡対価の源泉徴収義務を巡る裁判
⇒売主が非居住者の場合は所得税の源泉徴収が必要

買主不動産会社は「居住者」と判断
・売主が日本国内の住民票を所有

税務署は「非居住者」と判断
・米国人と結婚して米国籍を取得し、現在も米国の住居で長男と同居中
・日本には年14回ほど帰国(日本滞在は1年の半分に満たない)

■裁決
1審、2審ともに不動産会社の敗訴
⇒売主は生活の本拠が米国であり、非居住者
⇒買主は注意義務を尽くしたとはいえない

■確認すべきだった点
・出入国の有無・頻度
・海外への滞在期間
・海外での家族関係、資産状況等


7.消費税:簡易課税・性質及び形状変更の判断

QA社は再生資源としてプラスチック容器等を購入し,それをプラスチック製品の原材料として販売するに当たって梱包等の都合で一部を裁断したうえで販売している。

この場合の再生資源の販売は,性質及び形状を変更しないもの(第1種事業)として簡易課税の計算を行ってよいか?

A1種事業で問題ない。
消費税法基本通達1322 《性質及び形状を変更しないことの意義》の考え方を踏まえれば,販売等の都合上裁断するものであり,販売に伴い必然的に生ずる加工行為であることから,新たな商品の製造とまで評価する必要はないと考えられる。


よって、性質及び形状を変更しないもの(第1種事業)として簡易課税の計算を行ってよい


8.会社規模区分と土地保有特定会社

■土地保有特定会社の該当に注意
2911日以後の相続・贈与から、非上場株の評価における会社規模の基準等が変更
⇒大会社に該当しやすくなった⇒自動的に土地保有特定会社に該当してしまうケースも想定される
※通常は大会社の方が評価上は有利

■土地保有特定会社の判定
土地保有割合以下で土地特になる
・中会社のケース⇒9割以上
・大会社のケース⇒7割以上
※大会社の場合には判定の保有割合が低く厳しい

【参考】会社規模
・改正前
従業員数⇒100人以上で大会社、
取引高基準(100人未満の場合)⇒例えば卸売業、直前期の取引金額80億円以上で大会社
・改正後
従業員数⇒70人以上で大会社
取引高基準(70人未満の場合)⇒例えば卸売業、直前期の取引金額30億円以上で大会社
※大会社の判定が緩くなっている


9.合意された手続業務

・合意された範囲の財務情報のみを扱う
・財務諸表監査のような保証業務には該当しない
・保証業務の結果として誤用されることを防ぐため、報告書の配布・利用先も手続業務に合意した関係者に限られる


10.所得拡大税制改正概要

1.適用要件
(1)前年度2%以上の増加が要件
※従来は、前年度を上回れば良かった。
(2)適用年度に係る比較平均給与がゼロの場合は要件を満たさなくなった。
⇒新設法人の適用は出来なくなった。

2.税額控除額
(1)大会社
雇用者給与増加額×10%+(雇用者給与支給額-比較雇用者給与支給額)×2%
(2)中小企業
雇用者給与増加額×10%(雇用者給与支給額-比較雇用者給与支給額)×12%
※従前は、大企業・中小企業とも雇用者給与増加額×10%


11.PFI事業に関する会計処理・開示のポイント

■適用時期等
・適用時期:3月決算の会社…2018/3期の第1四半期から
・経過措置:なし。過去の期間全てに遡及適用する(!)

■概要
・公共施設等の運営権を合理的に見積もって無形固定資産に計上
・対象:公共施設等運営権制度に基づく運営権
⇒利用料金の徴収を行う公共施設等について、当該施設の所有権を公共主体が有したままで、公共施設等運営権を民間事業者に設定する制度
・取得時の支出のみならず、分割で支払う場合の将来支出額も割引計算により現在価値を算出し、運営権として計上
・施設の更新工事:いわゆる資本的支出的な部分も運営権価額を構成する


12.税効果会計に関する四半期決算固有の論点

■会社分類
・基本的には課税所得が確定する年度決算で見直す
・ただし、四半期決算の時点で既に当期の年度末において企業の分類を見直すような業績の状況になっているとき等は年度決算を待たずに起業の分類を変更することを検討

■会計処理
・原則的な税金計算における簡便的な取扱い
 ⇒納付税額の算定に際して加減算項目や税額控除項目を重要なものに限定できる
 ⇒DTAの回収可能性の判断に際して、前期末に使用した将来の業績予測やタックスプランニングを利用できる
 ※経営環境等に著しい変化が生じていない場合
・四半期特有の会計処理
①中間税効果実務指針に定める方法(予想年間税金費用/予想年間税引前当期純利益)
⇒一時差異に該当しない差異や税額控除等の算定に際し、重要な項目に限定することが出来る。
②税効果会計適用後の実効税率を厳密に見積もる方法


13.役務提供の対価として特定譲渡制限付株式を交付する場合の会計処理

■前提
・役員から報酬債権2,000万円の現物出資をうけ、株式を発行
・当該報酬が対象とする勤務期間および付与から譲渡制限解除までの期間は2
・譲渡制限期間中は勤務を継続
■会計処理
1.株式交付時
前払費用2,000万円/資本等2,000万円
2.役務提供1年目
株式報酬費用1,000万円/前払費用1,000万円
3.株式交付時
株式報酬費用1,000万円/前払費用1,000万円

14.四半期短信の開示についての見直し

■従来
サマリー情報の様式:使用を強制
投資判断に有用な情報(定性的情報等):開示を要請

■見直し後
サマリー情報の様式:使用を要請(開示の自由度up)
投資判断に有用な情報(定性的情報等):開示の要請もなし(開示の速報度up)

■適用時期
H29.3以降終了する四半期決算短信から


15.中小企業特例に関する改正の実務ポイント

・地域中核企業向け設備投資促進税制の創設
⇒地域経済への波及効果や都道府県の基本計画に合致していることが前提
⇒認定された事業計画の設備投資について特別償却or税額控除をとれる

・中小企業投資促進税制
⇒生産性向上設備の税制優遇の上乗せ措置が改組し、資産対象が拡充

・中小企業経営強化税制
⇒特定経営能力向上設備等の取得時に即時償却または特別控除

・特定中小企業者等の経営改善設備投資促進税制
⇒平成25年度税制改正で創設されたもので、平成29331日までに取得した資産が対象であったが、適用期限が2年延長。

・経営力向上設備等の取得に係る固定資産税の減税措置
⇒取得した資産の固定資産税を軽減する措置の対象資産(器具備品等)が拡大

・中小企業向け租税特別措置
⇒平成314月以後に開始する事業年度から中小企業向けの各租税特別措置について、平均所得金額(前3事業年度の所得金額の平均)で適用の可否を判断。
⇒平均所得が年15億円を超える事業年度では、軽減税率、貸倒引当金の租税特別措置が適用できない


16.IFRS移行の現状

・平成292月末時点で、IFRSの任意適用・適用予定上場企業は140社。
・日本たばこ産業、IFRS導入の主な財務的な影響は下記。
→ 売上収益が日本基準で6兆円あったが、IFRSでは2兆円に(代理人取引と間接税の影響)。
→ 大型買収ののれん非償却。
KDDI1年半でスピード導入。工夫した点は…
→導入は連結決算のみ(一方で数字の二重管理の問題発生)
IFRS導入のメリットは、「機動的なM&Aが可能になった」「機関投資家のニーズに応えられる」「海外子会社の業績比較が容易になった」など。


17.IPO直後の高値⇒その後の下落ケースが多い背景

1.全体相場の先行きが不透明
2.その企業の業績が上場前の想定を下回った
3.業績は比較的堅調で割安感があるものの、投資家に業態や将来の成長が理解されずにいる
4.業績は良くても割安感がある
5IR活動への関心が薄いか意識がない




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