2017年4月7日金曜日

4/7 勉強会:印紙税 請負契約書と委任契約書の判断 他

1.マイナス金利のガイダンス検討へ

・マイナス金利に関する実務対応報告第34号が3月に公表された
⇒退職給付債務計算の割引率は「ゼロ」または「マイナスの利回り」のいずれも可能
⇒適用は平成29331日に終了する事業年度から平成30330日に終了する事業年度まで
 その後の取扱いはガイダンスを策定へ


2.国内子会社がIFRSでも実務対応報告18号の適用可

3月に実務対応報告第18号の改正となる「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」を公表
・今回の見直し
⇒親会社=日本基準、国内子会社等=IFRS or 修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して有価証券報告書により開示している場合、親会社の連結財務諸表作成において実務対応報告18号等の適用可へ
⇒適用は平成2941日以後開始する連結会計年度の期首から
 平成293月期決算からの早期適用も可

(参考)実務対応報告18号について 抜粋
・連結財務諸表を作成する場合、原則、親会社及び子会社が採用する会計方針は統一する
 ただし在外子会社の財務諸表がIFRS等に準拠して作成されている場合等は、当面の間、それらを連結決算手続上利用することができるものとする。


3.税制改正で貸倒引当金残高が大幅減

H27年度分の会社標本調査の結果(貸倒引当金)について

■利用会社:過去最多
■期末残高:過去最低水準
⇒考えられる要因:H23年税制改正
・大企業(資本金又は出資金が1億円超。金融保険業を除く)は、H273月末で税務上の貸倒引当金の計上不可
・経過措置:H244月以降、貸倒引当金繰入額が段階的に縮小


4.個別の議決権行使結果を開示へ

平成296月の株主総会から適用する、日本版スチュワードシップ・コードの改定案が公表

■改定案の内容
・機関投資家に対して議決権の行使結果を個別の投資先企業ごとに公表
・独立した取締役会や、第三者委員会などのガバナンス体制を整備するべき


5.税法改正による影響額の開示は除外

・企業会計基準委員会が税効果に関する適用指針を検討中
→大きな論点は、開示の取り扱い

・追加を検討している開示項目
(1)評価性引当額の内訳
(2)税務上の繰越欠損金に関する事項
(3)税法改正による影響額
(3)は開示しない方向

・税法改正による影響額
(開示を検討した理由)
財務諸表利用者が当年度の税負担率より将来の税負担率を予測する場合、税率の変更による影響額だけではなく、当該影響を含む税法の改正による影響を考慮する必要があると考えられる為

(開示しない方向にした理由)
・税法改正の内容を開示する場合、DTA及びDTLに重要な影響を与えるものを特定した上で、税法の改正を考慮していないことを前提にしたDTAを算定する必要があるが、特に在外子会社の税制は多様である為、当該算定が難しい
・後発事象の検討において、すべての在外子会社から決算日後の税法の改正に関する情報を、有価証券報告書を提出するまでに網羅的に入手し対応するのは煩雑


6.中小企業の申告期限延長、法律で規定

H29年度改正で、投資家が株主総会議案を検討する期間を確保することを趣旨とし、法人税の確定申告書の提出期限の延長特例が改正。
1か月延長が認められた通達が廃止され、法律として格上げされた。

中小企業も定款の変更等で、「事業年度終了の日から3月以内に株主総会を開催する旨~」の明記に変更されれば、確定申告期限の延長が可能となる。


7.公共施設等運営権の会計処理は概ね変更なし

■公共施設等運営権とは
空港、水道などの料金徴収を伴う公共施設などについて、利用料金を収受する権利を民間事業者に設定するもの
(運営は民間が行い、施設の所有権は公的機関に残る)

■企業会計基準委員会が、「公共施設等運営事業における運営権者の会計処理等に関する実務上の取扱い」に対する意見を募集中(2/22まで)
⇒草案から大きな変更はなく、4月~5月頃に正式決定し、公表日以後適用される
⇒過去の期間のすべてに遡及適用

■主な内容(草案)
1.公共施設等運営権は「無形固定資産」に計上
個々の公共施設等の時価を把握することは困難であるため、リース会計基準の適用範囲に含めない。

2.公共施設等運営権は「固定資産の減損に係る会計基準」の対象
権利の移転は一括して行うことが要求されているため、原則、契約単位でグル―ピングを行うこととする。

3.プロフィットシェアリング条項による支出額は、各期の費用として処理
運営権対価とは別の契約となるため、会計処理を区分する。

4.更新投資(維持管理のための費用)は資産及び負債に計上
権利期間中に更新投資の義務があり、合理的に見積もることが可能な場合は、支出が見込まれる額の総額の現在価値を資産負債に計上する。


8.印紙税 請負契約書と委任契約書の判断

■課税関係
請負契約書…課税対象
委任契約書…非課税

■意義及び具体例
「請負契約」
当時者の一方がある仕事を完成することを約し、相手方がその仕事に対して報酬を支払うことが約される契約をいう。
各種工事、ソフト開発、広告宣伝など

「委任契約」
当事者の一方が法律行為をなすことを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって成立する契約をいう。
工事管理、コンサルタント、調査研究、経営指導など

■判断ポイント
(1)仕事の完成と報酬の支払いが対価関係にたち、
(2)仕事の完成に至るまでの危険を受託者が負担する
場合には「請負」に該当する。

■参考
(1)公認会計士の「会社監査契約書」
⇒終極の目的が監査報告書の作成・提出にあるため「請負契約書」に該当する

(2)税理士の「業務委託契約書」
⇒税務顧問のみであれば「委任契約書」、申告書の作成を含む場合は「請負契約書」に該当する

(3)不動産鑑定士の「価格等調査業務承諾書」
⇒終極の目的が不動産の適正な価格の調査にあるため「委任契約書」に該当する


9.小規模宅地等の特例の実務 二世帯住宅

Q被相続人が生計別の子と二世帯住宅に居住している場合
■事例
2階建て 1階⇒別生計の子供 2階⇒被相続人とその配偶者
・土地 被相続人持分2/3 その配偶者1/3
・相続で、土地を配偶者2/6、子供2/6を取得

■相続した土地について子供、配偶者は、小規模宅地の特例を取れるか?
≪ケース1≫建物が区分所有登記のケース(1階は子供、2階は被相続人と配偶者1/2ずつ所有)
 ⇒子供×
 ⇒配偶者○(ただし、建物の総面積の内、2階部分に限定)
 例えば、土地が330㎡、建物総面積400㎡、2階部分180㎡とすると、330㎡÷400㎡×180㎡×2/6(相続取得持分)=49.4㎡のみ 80%評価減を適用可

 ※子供が区分所有している建物面積部分は、そもそも被相続人等の居住の用に供されていた面積に該当しないため、特例の対象外となってしまう
 (小規模宅地の特例は、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等を相続した場合の特例)。

≪ケース2≫建物が区分所有登記されていないケース
(全体の1/2ずつ、子供と被相続人で所有、被相続人持分は、配偶者と子供で1/2ずつ相続)
 ⇒子供○(建物の総面積分について適用可)
 ⇒配偶者○(建物の総面積分について適用可)
 ケース1と同じ例とすると、子供、配偶者ともに330㎡÷400㎡×400㎡×2/6=110㎡ずつ計220㎡について80%評価減が適用可


10.業績予想値を記載しない例

2016/3期 東証2,354社のうち89社が予想値を記載せず業績予想値の記載が無かったケースは以下の3つに分類される。

①予想値が算出可能となった時点で開示する旨を記載
②予想の算出が困難である旨のみを記載
③その他(上場廃止予定等)


11.マイナス金利が会計処理に与える影響

1.主な論点
(1)現在価値を算出する際、割引率にマイナス金利を使うか
(2)BSPLにどのように表示するか(利息の性質)

2.企業会計基準委員会の見解
(1)退職給付会計基準
⇒マイナス金利とゼロ金利との選択適用可
※企業会計基準委員会では、マイナス金利を用いるべきという論拠が多数だが、議論が収束していないということで、選択適用を認めることとした。
(2)金利スワップの特例処理
⇒特例処理の継続を認める
※委員会は、金利スワップの特例処理を定めた時点で、マイナス金利を想定していなかったことは認めている。
⇒見解を示すには議論不足ということで、結論は出していない。
(3)PL表示
⇒借入利息としてマイナス金利が適用された場合、受取利息ではなく、支払利息のマイナスとして処理
(4)BS表示
⇒借入利息としてマイナス金利が適用された場合、未払利息のマイナスではなく、未収入金として処理


12.MBO手続の実務上の留意点

■交渉過程に関する情報開示
・情報の非対称性への対応
⇒公開買付届出書上、公開買付の実施を決定するに至った意思決定の過程を具体的に記載
⇒交渉過程を具体的に記載している例もあり
⇒十分な交渉が行われたことが明らかになるような対応が必要

■スクイーズ・アウト手続
・一般的な選択肢
(1) 株式等売渡請求
(2) 株式併合
(3) 全部取得条項付種類株式
(4) 現金対価の株式交換※
(5) 現金対価の吸収合併※

2017101日以降は税制適格となる余地がある(平成29年税制改正)

・選択の視点:MBO参加取締役が株主として残存するか否か
⇒買収目的会社への売渡請求のケース:継続保有予定の役員等まで一度譲渡益課税へ配慮

・選択の視点:新株予約権、新株予約権付社債の取扱い
⇒株式併合又は全部取得条項付種類株式の方法のケース:予約権の発行要項を確認
⇒無償取得が可能か、予約権者に放棄してもらうことが可能か等を検討


13.MBO後に再上場する際の留意点

MBOとは
・上場会社の経営者が(投資ファンドと共同して)株主から株式を買い取って会社を非公開化する取引
・目的は、長期的思考に基づく経営の実現や、柔軟な経営戦略の実現等

MBO後の再上場における追加的審査
⇒追加的審査を行うことにより、市場に対する信頼を毀損する恐れの高い再上場案件を防止

1.MBOと再上場の関連性
経営者や株主の同一性・連続性、MBOから再上場までの期間の長短等を確認
MBO後に大株主の異動があるケースでは、追加的な審査が必要となる可能性は低くなる
MBOから再上場までに10年以上期間が開いている場合も、追加的な審査が必要となる可能性は低くなる

2.プレミアム配分の適切性、MBO実施の合理性
プレミアム配分の適切性・買付価格の合理性の判断材料となるMBO時の計画とMBO後の進捗を確認
⇒進捗状況との乖離について説明が求められ、十分に合理的かつ説得力のある説明ができるのであれば、計画からの乖離が再上場を阻む要因にはならない


14.平成29年株主総会 想定問答

(1)長時間労働について調査は受けたことがあるか、取組みはあるか?
・ブラック企業との評価は企業のレピュテーションを毀損し、今後の採用活動・取引に影響あり
→仮に質問が出た場合は、自社の状況を正確に把握し、防止のための労務管理体制を具体的に回答

(2)監査役による会計監査人の選・解任の決定基準は何か?
・独立性、品質管理体制、欠格事由の有無、チーム編成、報酬水準等を入手して判断
→特に同一監査法人による継続監査を受けている場合は質問が予想されるため、基準と再任に問題が無いことを説明


15.H29.6月 株主総会の実務対応ポイント

■新たな対応が必要となる大きなテーマなし
⇒整備中の制度への対応状況、法令改正への対応状況についての準備を主軸に
①コーポレートガバナンスコードへの対応状況
②働き方改革の推進状況(プレミアムフライデーの導入等)
③法令改正への対応状況
・登記申請に際して総会決議が必要な場合、一定要件満たす株主名簿の添付が必要
・従来短信開示の「経営方針」⇒有報開示での開示が必要
・決算短信・四半期短信の様式の強制を取りやめ(禁止ではない)
④個人株主の動向や発言傾向
・過半数が60歳以上(年齢不明分を除く)、多くが来場⇒質問も多くなる予想
・経営方針に関する質問が最多、他にも働き方改革や女性の活躍推進等についても要準備


16.構造的利益相反と情報の非対称性に配慮(MBO手続の概要と最近の動向)

上場会社のMBOは公開買付⇒スクイーズアウト手続の2ステップを踏む。

MBOには「構造的利益相反」及び「情報の非対称性」が生じている。
以下のような公正性担保措置と充実した情報開示が求められる。
・特別委員会の設置
・法律事務所からの助言
・株価算定書等の入手

スクイーズ・アウト手続は201551日施行の改正会社法上で、
株式等売渡請求及び株式併合が加わったことで、多様化している。


17.今3月期決算の実務ポイント 退職給付会計の実務ポイント

・退職給付債務の計算で、国債の利回りを基礎にして割引率を決定している場合
 ⇒ 国債の利回りがマイナスの場合はどうするか
 ⇒ マイナスでもゼロでも可
 ⇒ ただし上記は「当面の取り扱い」とされており、平成303月期決算までの限定的な適用。


18.3月のIPO市場は概ね順調

3月は21銘柄が上場(今年に入ってから一番多い)
このうち、初値が公開価格の2倍以上上回った銘柄は10銘柄
⇒需給の良さに支えられたマザーズ銘柄の値動きが堅調

一方、初値が公開価格を割り込んだ銘柄は、以下の2銘柄のみ
・マクロミル(3978
・スシロー(3563

⇒業績は安定していて買い安心感はあるものの、公開株数の多さが目先の株価の動きが重しとなった感があるとのこと









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