2017年3月3日金曜日

3/3 勉強会:未実現損益の税効果、従来通り繰延法に 他

1.地方税をめぐり納税者勝訴が相次ぐ

■①数か所に分かれて存在する共有土地の現物分割も不動産取得税の非課税対象
・「共有物の分割による不動産の取得」については、不動産取得税は課されない(地法7372号の3
⇒分割前に有していた持分割合を超えない取得であり、複数の共有地で互いに隣接し、その共有者が同一で、かつ、持分割合が同じである場合において、・・・非課税として取り扱って差支えない
(事例)
・納税者とその兄は、相続により取得した共有物である土地(納税者43.8%、兄が56.2%所有)を3筆に文筆
・真ん中の土地を代金分割として第三者へ売却する一方で、両脇の土地を現物分割
・東京都は真ん中の土地が第三者へ売却されており、両脇の土地は隣接する共有地にはなっていないと指摘
⇒地方税法73条の72号の3の適用はないと主張
⇒裁判では非課税と認められ納税者勝訴

■②老人ホームの付属駐車場の敷地が「住宅用地」か否かが問題に
・土地に対する固定資産税の課税標準=原則、固定資産台帳に登録された価格(地方349
 ただし住宅用地については課税標準を3分の1とする特例あり(地方34932
(事例)
・本件土地上には駐車場(9か所、合計面積約141㎡)があったが、入居者は利用していなかった
・都税事務所は駐車場については住宅用地に該当しないと判断
⇒外部事業者も利用しており「居住者のための施設」とは認められないと主張
⇒裁判所は駐車場には柵等の区分はなく、家屋の出入口まで接続されていること、入居者が呼ぶタクシーが利用していること等から、駐車場は併用住宅としての本件家屋と一体のものとして利用されており住宅用地に該当と判断
※控訴中


2.空き家に係る譲渡所得の特例、適用を受けるためのポイント

1.特例の概要
家屋を相続した相続人が家屋又は取り壊し後の土地を譲渡した場合、その譲渡所得から3,000万円を特別控除するというもの
2.適用のポイント
(1)下記の3つを確認する必要がある
.譲渡日の要件あり
.対象となる家屋の要件あり
.譲渡する際の要件あり
(2)「自己居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除」または「自己居住用財産の買換え等に係る特別措置」のいずれかと併用可能
(3)「相続財産譲渡時の取得費加算特例」とは選択制


3.退任時譲渡制限解除で退職所得に該当も

・平成29年度税制改正において、役員給与税制の見直しが入った

⇒退職給与のうち、業績連動給与に該当する退職金は、業績連動給与の損金算入要件を満たさない限り、損金不算入

⇒退職給与のうち、業績連動給与に該当しない退職金は、引き続き過大でない限り損金算入可能となる

インセンティブ報酬の1つである譲渡制限付き株式報酬であっても、業績や株価に連動して付与株式数が変わらないものであれば、その譲渡制限を退職時に解除することにより「退職給与」として損金算入できる可能性が出てくる。


4.未実現損益の税効果、従来通り繰延法に

■未実現損益の消去に係る税効果の取り扱い
・日本基準:繰延法
・米国基準:棚卸資産は繰延法+それ以外は資産負債法
IFRS:資産負債法

■論点
・日本基準のままか
・米国基準に合せるか
IFRSに合せるか

■企業会計基準委員会の検討結果
・従来通り、繰延法を採用する方向
・主な理由は、下記の通り
(1)システム変更や内部統制の構築等、多大なコストが生じる。
(2)会計基準レベル(マクロ)における国際的な整合性は取れている為、必ずしもガイダンスレベル(ミクロ)における整合性まで図る必要はない。


5.架空仕入れめぐり税理士業務の禁止処分

■事例
・顧問先代表者からの依頼に基づき架空仕入れを計上
・架空仕入れ額約1.7億円を費用計上し所得を圧縮した(所得0円へ)
・税務調査で架空仕入れが発覚
・地裁判決により税理士に対する業務禁止処分が下された。
・地裁判決は適法か?

■税理士法451
財務大臣は税理士が故意に真正の事実に反して税務書類を作成した場合は、1年以内の税理士業務停止又は税理士業務の禁止処分をすることができる

■以下理由により適法と判断
・架空計上行為が真正の事実に反して税務書類を作成した行為に該当。
・架空計上行為を故意に行っていた
・架空計上額は極めて悪質かつ高額で責任重大である。
・禁止処分としたことに裁量権の範囲の逸脱や濫用があったとは認められない


6.原則は修繕時も、通達で震災に配慮

■事案
・被災事業年度(H235月期)に「災害損失特別勘定()」を損金算入
・翌期(H245月期)に「災害損失特別勘定」を取り崩して益金算入
H245月期に過大な税額が発生したとして更正の請求を行う
()震災後1年以内に支出する予定の被災資産の修繕費について、損金算入を認めるもの

■請求人の主張
(1)翌期に過大な税額が発生したことは、法律の趣旨に矛盾
(2)修繕費は実際に修繕を行った時に損金算入を行うのが正しい処理

■判決
・本事案は通達どおりの正しい処理であるとし、訴えを棄却
⇒修繕費用は修繕時の損金算入が原則ではあるが、未曽有の災害のため通達
⇒延長確認申請書を提出していれば、修繕完了事業年度に益金算入可能であった


7.業績連動給与 留意点

■利益連動給与⇒業績連動給与に名称変更
・パフォーマンスシェア(PS)や株式交付信託による給与も対象になる
・「複数年度に係る指標」を用いることが可能になる
 
■留意点
・株式を交付する場合は指標確定から2か月以内に交付することが要件
(現行は指標確定から1か月以内に金銭を交付することが要件)
・「複数年度に係る指標」を用いた場合は指標が確定した年度に損金算入
⇒未確定年度においては引当金を計上して、確定年度に取り崩して損金算入する規定となる見込み


8.職務発明の補償金

■企業が"相当の利益"として金銭(補償金)を支払う場合の従業者の所得税の取扱いについて
・職務発明に係る補償金⇒雑所得となることが多い
・契約等で職務発明をした者をあくまで使用人と位置づけ補償金を支払う場合には、給与所得になり得る
・最終的には個別の判断
・源泉の取り扱い⇒雑所得は不要、給与所得になる場合は必要

■前提
・職務発明⇒会社に勤める従業者が会社の仕事として研究・開発した結果完成した発明のこと
・従業者は、職務発明に関して、特許を受ける権利や特許権を会社に譲渡したときは、相当の利益を受ける権利を有する。
・発明者が使用者等から受ける"相当の利益"には、金銭だけでなく留学の機会の付与や金銭的処遇の向上を伴う昇進・昇格等といった経済上の利益も含む。


9.IFRS採用でのれん償却負担がなくなる?

・IFRS採用を決定する企業において、のれん償却費がいらなくなり、営業利益を押し上げると業績予想するのがメディア報道のパターンになっている。
・まるでIFRS採用の動機がのれんの非償却処理にあるようだ
・通信サービス業であれば対価の大部分がのれんとなる。
 そのような場合にはのれんを償却する、両者のインパクトは非常に大きくなる。


10.大型IPOと中小型IPO

20171月~2月までに、6社がIPOを果たし、3月には21社がIPO予定。
比較的事業内容が堅調な成長企業の銘柄対する株価は堅調。
中小型株を専門に投資する機関投資家や外国人投資家が主たる投資家層であり、好需給に支えられ株価は右肩上がりを続けている事例が出ている。
例えば、安江工務店(1439)、ユナイテッド&コレクティブ(3557)、フュージョン(3977)、レノバ(9519)など。

一方、大型IPOはやや停滞気味に推移。
例えば、LINE3938・公開価格3,300円)、日本郵政グループ3社(日本郵政(6178)、ゆうちょ銀行(7182)、かんぽ生命(7181))
特にLINEは一時期3,500円を割れ、公開価格に接近中。

業績面は比較的ポジティブであるが、需要面が芳しくない模様。









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