2017年1月13日金曜日

1/13 勉強会:第三者割当新株予約権の設計ポイント 他

1.過去の誤謬(減価償却資産の減損損失)

(設例)
・前期において、建物に係る減損損失450の計上漏れがあった
・過年度遡及会計基準の適用により、当期の期首利益剰余金を500減額処理した
・減損損失450に係る当期の減価償却費限度額は50
⇒当期の申告調整はどうするか。

(答)
別表四は「減価償却費認容」として50減算(留保)する


2.債権放棄の事実を認めるも、寄付金に該当で損金不算入

国外関連者(国外子会社)に対する債権放棄が、寄付金に該当すると判断された審判事例

債権放棄に関する損失が寄付金に該当する場合
⇒全額が損金不算入

寄付金に該当しない場合
⇒債権放棄に経済的合理性がある場合

経済的合理性の有無は、下記要素を総合して判断
(1)被支援者は支援者と事業関連性のある子会社等であるか
(2)当該子会社は経営危機に陥っているか
(3)支援者が損失負担を行う相当の理由があるか

今回の事例では、(2)から(3)が無いと指摘された。

さらに審判所は、子会社の債務超過が相当期間継続した事実が無い点を指摘、債権放棄による損失は法人税法上の寄付金に該当する(損金不算入)と判断した。


3.今週の専門用語

■固定資産税の設備投資減税

・「中小企業等経営強化法」が平成2871日に施行
⇒中小企業等を対象とした固定資産税の減税や金融支援等の特別措置

・固定資産の減税
⇒認定経営力向上計画に記載された機械装置を取得した場合、固定資産税が3年間2/3となる
⇒平成29331日までなら、生産性向上設備投資促進税制と重複適用可能

※生産性向上設備投資促進税制
 最先端設備等を取得した場合に、特別償却50%か最大4%の税額控除


4.分割法人の株式売却でも税制適格に

■平成29年税制改正で組織再編税制が大幅に見直し
⇒税制適格の判定に際して株式保有の継続に関する要件が緩和
(1)企業グループ内の分割型分割に係る関係継続要件
(2)共同事業を行うための合併等に係る株式保有継続要件

(1)分割後における、当事者間の完全支配関係の継続について
・改正前:親法人、分割法人、分割承継法人の間で必要
・改正後:親法人、分割承継法人の間で必要

(2)合併等後における、被合併法人等株主の合併法人等株式保有の継続について
・改正前:被合併法人等の発行済株式総数の80%以上に相当する株主による保有
※被合併法人等の株主数が50人未満の場合のみ
・改正後:被合併法人等の発行済株式総数の50%超を保有する株主による保有


5.中小企業の賃上げに最大22%の税額控除

H29年度税制改正で「所得拡大促進税制」を見直し。
前事業年度からの賃上げ率が2%以上であれば、前事業年度からの給与増加額の22%を税額控除。

なお大企業については、前事業年度からの賃上げ率が2%未満の場合は、「所得拡大促進税制」の適用対象外となる。

H294月以後開始事業年度より適用開始。


6.QAで読み解く中小企業の新投資減税

(1)中小企業投資促進税制
・機械装置、工具、ソフトウェアが対象
30%特別償却 or 7%税額控除

(2)固定資産の設備投資減税
・認定経営力向上計画の策定が必要
・機械装置、工具、器具備品、建物付属設備が対象
・償却資産税を3年間、2分の1に軽減

(3)中小企業経営強化税制
・認定経営力向上計画の策定が必要
・機械装置、工具、器具備品、建物付属設備、ソフトウェアが対象
・即時償却 or 7%-10%税額控除

⇒上記の(2)(3)、経営力向上計画の策定に税理士などが関与


7.相続税:類似業種比準方式改正の影響

■見直し内容
(1)類似業種の上場会社の株価について、前2年平均を加える
(2)類似業種の配当・利益・簿価純資産価額について連結決算を反映させたものとする
(3)配当・利益・簿価純資産価額の比重を1:1:1にする

■上記(2)の影響を検証
配当⇒連結子会社から連結親会社への配当は相殺されるためほとんど影響がないと思われる。
利益⇒単体では別表4調整後の課税所得をベースとしているが、改正後は連結P/Lの税引前利益がベースになると思われる。通常、別表調整は加算項目の方が多いため利益の数値は改正により小さくなるケースも想定される。
簿価純資産価額
⇒単体では別表4調整が反映された別表5(一)の数値をベースとしているが、改正後は連結B/Sの純資産がベースになると思われる。利益と同様、改正後の数値の方が小さくなるケースも想定される。 

上記分析は別表調整の金額が大きい場合を想定しているため、別表調整の影響が小さい場合は連結ベースの方が利益・純資産とも改正前より数値が大きくなると予想される。


8.グループ法人税制と特定新規設立法人の「他の者」

■特定新規設立法人とは(以下の3要件全てを満たす法人)
1.資本金等の額1,000万円未満の新規設立法人
2.他の者、他の者に完全支配された法人に50%超支配されている
3.上記判定の基礎となった他の者等の,新規設立法人の基準期間に相当する期間の課税売上高が5億円超
⇒設立1年目,2年目であっても,消費税免除なし

■グループ税制との比較(Cを中心に)
 AB 100%支配
 BC 100%支配
・グループ税制⇒ACはグループ税制の対象
・特定新規設立法人⇒上記3.の要件については、Bが判定対象となる(ACの関係ではなく)
 (3.5億円超の判定対象は,新規設立法人の直接的な株式保有を要件としている)


9.ホワイトカラーの犯罪

・かつて米国でビジネス・リーダーとして褒め称えたれた50人の経営者について、その後、ホワイトカラー犯罪で3名が刑務所に収監され、別の3名は不法行為により数百万ドルの罰金刑を科せられている。
・成功した人がなぜ、犯罪に走るのだろうか?
・インサイダーや粉飾決算などは少なくとも被害者を目にすることがない
 ⇒犯罪としての実感が希薄と感じる


10.平成29年度税制改正

1.デフレ脱却・経済再生
(1)研究開発税制
<従来> 売上に占める研究開発割合に応じた税額控除率
<改正> 試験研究費の増減率に応じた税額控除率
※売上規模に関わらず、試験研究費の増加を控除額に反映
(2)所得拡大税制
<従来> 雇用者給与増加額の10%
<改正> 雇用者給与増加額の10%(雇用者給与-比較雇用者給与)×2%

2.コーポレート・ガバナンス改革
(1)確定申告書の提出期限の延長
下記要件を満たせば、申告期限を4ヶ月まで延長可能
・会計監査人設置会社
・定款に定時株主総会が事業年度終了日の翌日から3か月以降とする旨を記載
(2)役員給与等
利益連動型給与の指標として下記の指標を採用することを認めることを明示
・売上高
・株価


11.第三者割当新株予約権の設計ポイント

■主要条件
(1) 行使価額固定型、行使価額修正型
・固定型:行使価額が満期まで一定。
株価↑=希薄化
株価↓=思い通りに資金調達ができない可能性あり

・修正型:株価が下がっても行使価額が下方に修正される
⇒資金調達の確実性が高くなる。

(2) 行使指定、行使制限、行使禁止
可能⇒発行会社のタイミング・ニーズに合わせた資金調達が可能に。

(3) 強制行使、コミットメント条項
株価が行使価額よりも高い場合に一定量の株式数を上限とした行使を強制できる条件が一般的

(4) 株式数固定、株式数変動
株式数固定型が一般的だが、株式数変動型とすることも可能
⇒行使価額修正条項が付されたものには株式数変動型が多い。

(5) 取得条項(コール条項)
よりよい資金調達手段がえられた場合、企業として新株予約権を取得してしまうもの

(6) 取得請求権(プット条項)
コール条項とは逆に、割当先が売却する権利。割当先の投資家と交渉の結果付されることがある。

(7) 権利行使条件(業績条件、株価条件)
不必要な希薄化を抑えるという観点からは、一定の行使条件により制限を設けることに意義あり


12.固定資産投資後の効果測定はこうする

投資実行後にその実際の成果を把握・測定できていないケースが非常に多い。
⇒固定資産投資後、「モニタリング可能指標」を適切に設定し、個別の投資案件ごとにその成果を把握することが重要。

■モニタリング可能指標の要件
①事後的にトレース可能
・投資後、一定期間経過後に定量的に把握することが可能なもの
・必ずしも金額である必要はない
・投資を契機にトレースの仕組みを構築することも一案
例:資産ごとの稼働時間と動力使用料を把握するなど

②固定資産そのもののパフォーマンスが測定可能
・操業度や市況などの外的要因による影響をできる限り排除し、固定資産のパフォーマンスを純粋に測定することが可能なもの
・単位当たりの指標を設定することや「%」や「時間」等の指標を設定することも有用
例:製品1個当たり人件費、設備稼働1時間当たりの電気使用量など


13.シャルレMBO事件における社外取締役の責任

(1)シャルレMBO事件とは
MBOを実施するに際し、買付側(創業家一族)の算定した価格<シャルレ側で算出された価格(11041300/株)
→買付側で高額と判断
→買付側である社長が価格が安くなるよう算定根拠となる利益計画の作り直しをメールで何度も指示
800/株でMBOを実施しようとしたが、上記内容が内部通報され、買付側はMBOを撤回、結果計画は頓挫した

(2) 社外取締役の責任
→義務違反なし

・監視義務
→本件においては、社長の価格決定への不当介入プロセスを知らなかったor容易に知り得なかったため、監視義務の前提を欠くと判断
・株主利益に配慮した公正な手続きにより買付者側と交渉すべき義務
→利益計画を変更することに十分な理由が認められた
→ヒアリングや計画作成の過程で不当性が認められなかった
(意図的に計画を下げる、数字合わせ等)


14.決算期変更時の論点

■事業年度の取扱い(会計&税務)
会計上最長16ヶ月⇔税務上は1年毎に区分の必要

~以下、事業年度を9ヶ月間に変更した場合を想定~
■減価償却限度額(税務。会計は合わせるのが一般的)
旧定率法:改定耐用年数(本来の耐用年数×12÷9)を使用
旧定額法・定率法・定額法:改定償却率(本来の耐用年数の償却率×12÷9)を使用

■貸倒実績率(税務)
・分子:前3年内事業年度の貸倒損失等×12(A)÷(12129)
・分母:前3年内事業年度の一括債権÷3(B)
A:必ず12
B:事業年度は3を超える場合はその数

■中間申告(税務)
・中間申告:変更後事業年度が6ヶ月以内⇒中間申告不要
・予定申告:前事業年度の法人税額÷9×6ヶ月分

■役員報酬(税務+会社法)
・変則事業年度の期間(9ヶ月)に見合った報酬等を総会決議すればOK

■親会社(3月決算)が子会社(12月決算)に決算期を合わせる場合(会計)
◇親会社の事業年度が9ヶ月(X1.4-X1.12)となるケース
BS(利益剰余金)で調整する方法
1Q(X1.6)にて、親会社業績3ヶ月分と同期間の子会社業績3カ月分により連結FS作成(SS不要)
連結会計年度のSSにて、子会社社業績を利益剰余金に反映
PLで調整する方法
1Q(X1.6)にて、親会社3ヶ月分と子会社6ヶ月分で連結FS作成

■子会社(12月決算)が親会社(3月決算)に決算期を合わせる場合(会計)
⇒子会社の事業年度が15ヶ月(X1.1-X2.3)となるケース
BS(利益剰余金)で調整する方法
⇒子会社の3カ月分(X1.1-X1.3)の業績のうち、親会社持分相当額をX1.3の連結SSに反映
PLで調整する方法
⇒翌事業年度(X1.4-X2.3)に影響させる(1Qでは6ヶ月分、4Qでは15ヶ月分が反映される)


15.上場準備中の事業承継(親⇒子)

上場後は一般的に株式の評価額が高くなる。
上場前のできるだけ初期段階で次世代の持分割合を増加させるような施策を取ることが望ましい。

・後継者(子)の持分割合増加のための諸施策
1.後継者への株式移動
直接的な持分移動により、後継者の持分割合が増加できるが、譲渡の場合には譲渡益課税、贈与の場合には贈与税が発生し、資金流出がある。

2.後継者への新株予約権の割当
株価が高くない初期の段階で、新株予約権を割当て、上場が近づいたところで行使し、持分割合を確保。
1.の株式移動と比べ、後継者の資金負担が少ない。

3.相続時精算課税制度
贈与時に贈与財産から2,500万円を特別控除した金額に、一律20%の税率を適用して計算した贈与税を支払い、その後、相続発生時に贈与財産を含む相続財産に対して計算した相続税額から、すでに支払った贈与税額を控除できる制度。


当該制度を活用すれば、将来、価格上昇が見込まれる株式価格を、現時点の時価で固定して後継者へ承継することができ、相続税額の節税効果が期待できる。









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