2016年12月10日土曜日

12/9 勉強会:経理業務効率化のための業務棚卸と取捨選択 他

1.平成29年度税制改正で相続税の節税策に対応

※財務省が提案した改正内容です。

■広大地の評価方法の見直し
・現行 1000㎡以上の宅地 面積が広くなるほど評価額を減額
・現行の問題点
 同じ面積の土地でもその形状によって取引価格は異なるのに相続税評価額は同じ
 富裕層の節税策に利用されている

・見直し案
 各土地の状況に応じて、面積・形状に基づき評価する方法に見直し
 取引価格と相続税評価額とのかい離を解消する

※通常の宅地評価 路線価×面積×補正率(形状を考慮した補正率)
 広大地の評価  路線価×面積×広大地補正率

■国外財産
・現行 被相続人と相続人の住所が5年超海外にあるとき
⇒国外財産は相続税の課税対象外となる(贈与税もほぼ同じ)
・現行の問題点
 海外へ住所を移転、5年経過後に国外財産を相続・贈与する租税回避行為として問題視されている

・見直し案
 5年超を10年超とする方向で見直し


2.過去の誤謬(土地評価損)

(設例)
・前期において土地に係る減損損失500の計上漏れがあり修正申告済

・過年度遡及会計基準の適用により、当期の期首利益剰余金を500減額処理
⇒当期の申告調整はどうするか。
(答)
別表四は申告調整不要
※土地評価損はいずれにしても損金算入できないため


3.居住者と非居住者の区分に係る住所認定の6つのポイント

所得税法に規定する「居住者」に該当するか否かの判断について

■前提
・住所についての定義規定:ない
・所得税法における住所:各人の生活の本拠地
・生活の本拠地:その者の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心

■各人の住所の認定の判断材料:
(1)滞在日数
(2)生活場所及び同所での生活状況
(3)職業及び業務の内容・従事状況
(4)生計を一にする配偶者その他の親族の居住地
(5)所有資産の所在場所
(6)生活に関わる各種届出の状況等
これらの客観的諸事情を年度ごとに、総合的に勘案して判断


4.医療費控除は医療費明細書の添付でOK

■現行の医療費控除
・医療費の【領収書】を確定申告書に添付する

■平成29年分以降(平成301月以降の申告)
・確定申告書の添付は【領収書】に代えて【明細書】でも良い

※法定申告期限から5年間は税務署長から求められた場合、【領収書】の提示が必要となるため保管必須

■経過措置
・平成29年分~平成31年分の確定申告に関しては、納税者の選択により現行制度でも申告できる


5.子会社株式減損、清算方針でも一時差異

■国内100%子会社の株式の減損は税務上、損金算入されない
⇒会計上の簿価と税務上の簿価に差異が発生

■減損後、将来想定されるパターンは2
(1)子会社株式を売却
⇒損金算入OK
⇒両者の差異が解消した際、課税所得を減額する効果あり
⇒将来減算一時差異
(2)子会社を清算
⇒損金算入NG
⇒両者の差異が解消した際、課税所得を減額する効果なし

(2)に関する、会計上の取り扱い
将来の一定の時期が到来しないと、損金に算入されるかどうか
判明しない項目については、判明するまで一時差異として取り扱う

ただし、清算するまで保有し続ける方針がある場合、(将来、損金に算入される可能性が低い場合)減損に係るDTAの回収可能性はないと判断
⇒分類1でも、回収可能性なしと判断するケースあり
DTAの回収可能性に関する適用指針において、『分類1:「原則として」全額、回収可能性あり』とする方向


6.対価補償金は収用土地上の資産の対価相当部分に限定

収用される土地の上にある建物の移転雑費費用につき、
補償金として受領した一部に設計工事費用や工事管理費用が含まれていた。すべての費用を対価補償金として収用等に伴う課税の特例を受けられるか?

・収用に際して交付を受ける移転料や収用に伴う対価 ⇒ ○
・収用に伴う取壊し又は除却に伴う費用 ⇒ ○
・上記以外 ⇒ ×

純粋に、土地の上にある建物の取壊しや移転費用に基づく補償金のみ、対価補償金として課税の特例が受けられる。付随費用に近い費用に伴う補償金は対象とならない。


7.増額更正時の控除額増加、更正請求不要

【現行】
・外国税額控除、研究開発税制の控除額が増加する場合、必ず更正の請求が必要

29年度改正】
・税務調査の結果増額更正となり、連動して上記控除額が増加する場合、更正の請求は不要
※外税控除等は、法人税額の一定割合が控除限度額なため、増額更正で法人税額が増加すると控除限度額も増加するケースあり
※現在は、増額更正の結果を受けて、更正の請求を手続きする必要あり
(納税者にとっても税務署にとっても二度手間)


8.移転価格税制 国外関連者に対する貸付金利息

■審判事例
(概要)
A社は国外関連者B社(海外子会社)に対し貸付をした
・利息については任意の利率により設定した
・原処分庁から利息が低すぎるとして更正処分を受けた

■適正な利率は?
審判所の判断によれば、この場合の適正利率は「独立価格比準法に準ずる方法と同等の方法」を用いて算定すべきとさせる。具体的には「貸手の銀行調達利率による方法」を用いるべきである。
A社の設定利率と乖離があったため移転価格税制が適用された。

(参考)
独立価格比準法
⇒非関連者間で同種・同様の状況下で行われる取引の対価の額を
基礎として独立企業間価格を算定する方法


9.輸入消費税の仕入税額控除と輸入者

輸入消費税の納税義務者
⇒“輸入者”自身、「輸入許可書」等の保存により納付した輸入消費税の仕入税額控除が認められる
⇒“輸入者”が通関業者の場合、その輸入消費税の仕入税額控除は、通関業者側で認められる


10.消費増税延期と連結納税

・法定実効税率は変わらないが、地方法人税(国税)と法人住民税法人税割の割合が変わる
・連結納税は国税と地方税で分けて繰延税金資産の回収可能性を検討する
(国税は連結対象、地方税は連結しないため)
⇒消費増税延期で国税と地方税の割合変更時期が変わると回収可能性にも影響あり


11.三角合併の会計処理

1.三角合併とは
吸収合併のうち、存続会社の親会社の株式を合併の対価として交付する取引

2.メリット
・企業再編の際にキャッシュが不要
・親会社と子会社(存続会社)の100%支配関係が崩れない。
※子会社株式を交付すると、非支配株主が発生してしまうため

3.会計処理
(1)他の会社を吸収合併
・企業結合の分類判定(取得か持分の結合か等の判定)
⇒親会社と他の会社との取引とみなして判定
※合併当事者である、子会社と他の会社とでは判定しない
・会計処理(取得の場合)
<個別FS>
⇒親会社株式の時価と適正な帳簿価額との差額は損益計上
⇒あとは、通常のパーチェス法と同様
<連結FS>
⇒当該損益を、資本取引として自己株式処分差額へと振替える
※親会社からすると、自己株式を処分する取引となるため
(2)他の子会社を吸収合併
・企業結合の分類判定
⇒共通支配下の取引に該当
・会計処理
<個別FS>
⇒適正な帳簿価額で資産負債を受け入れ、親会社株式の簿価との差額はのれん
<連結FS>
⇒少数株主に交付した自己株式の時価と適正な帳簿価額との差額を自己株式処分差額へと振替える


12.秘密情報の例外をどのように規定するか

■秘密保持契約における一般的な例外規定
(まとめ)
・すでに知っていた、または知ることができた秘密情報は秘密保持契約の例外
・自己の責めによらずに第三者が開示した秘密情報は秘密保持契約の例外
・他の公開情報等から自分で作った情報は秘密保持契約の例外

(例外規定の例示)
(1) 相手方から提供または開示を受けた際、すでに自己が適法に保有していた情報
(2) 相手方から提供または開示を受けた際、すでに公知となっていた情報
(3) 相手方から提供または開示を受けた後、自己の責めによらずに公知となった情報
(4) 開示当事者に対して秘密保持を負わない正当な権限を有する第三者からなんら秘密保持義務を負うことなく適法かつ正当に入手した情報
(5) 相手方から開示された情報によることなく独自に開発した方法

■売主として検討を要する例外規定
・上記(5)について削除することがあり
・売主と同業種の買主
⇒売主から開示された対象会社の情報によらなくても独自に情報を開発できるため、売主から開示された情報と自己が開発した情報との区別が困難なため


13.秘密情報をどのように定義するか

NDA締結の目的
・開示した情報を第三者に開示、漏えいすることを禁止する
M&A取引を検討する目的以外の目的で情報を使用することを禁止する

■秘密情報の定義
M&A取引の検討及び実施のための協議交渉の過程において、売主又は買主が相手方から開示される相手方に関する情報及び対象会社に関する情報
NDAの存続及びその内容
・売主、買主がM&A取引を検討しているという事実、その検討結果


14.有報虚偽記載に関する損害算定の考え方

損害賠償の根拠
(1)民法(不法行為)
・取得時価-処分時価=損害額
・虚偽記載公表直後の下落額=損害額
・取得時価-取得時に虚偽記載がなかったと仮定した場合の時価=損害額
※これとは別に市場全体の影響もあるが、投資家による証明は困難

(2)金商法(21条の2)
・株主:流通市場で取得した株主(発行市場は1819条が適用)
・粉飾:有報の重要事項の虚偽記載や不記載
・虚偽記載公表日-前後1ヶ月の平均=損害額
※会社はこれとは別に市場全体の影響等も証明出来れば減額可


15.経理業務効率化のための業務棚卸と取捨選択

■業務効率化までのステップ
業務棚卸⇒(深堀)⇒取捨選択⇒アクション

■業務棚卸
各メンバーによるリストアップ⇒統合一覧表
・リストアップ:業務区分、作業内容、必要時間、問題点、改善アイデア等
※業務区分:分類する⇒ex.債権管理>顧客別管理/期日別管理
※作業内容:フローを意識⇒ex.インプットは何、アウトプットは何
※必要時間:集計期間を設定⇒ex.1年で何時間、1ヶ月で何時間

■業務棚卸の深堀り
・一度の業務棚卸では理解しきれない業務がある場合の、分解方法
⇒難易度高:業務マニュアル作成し、複雑な業務を特定
⇒必要時間多:線表化し、時間のかかる業務を特定
⇒難易度高、必要時間多、関与人数多:業務フロー図への落としこみ+上2つ
⇒特定期間に負担大:業務時間の面グラフ化: 山をならすための業務を特定

■業務の取捨選択
全業務を万遍なく検討、ではなく、特定の切り口に紐づくか、の視点
Ex:経理部ミッションの設定
・経営層からの期待
・社内他部署からの期待
・経理部書内部の目標


16.インサイダー取引の事例と上場企業の管理体制

・平成27年、インサイダー取引で課徴金が課された事例は22件、課徴金額75.5百万円。
・平成17年~27年の11年間の累計は241件。最も多いのが公開買付け等事実64件。続いて新株等発行40件、業績予想等修正37件。
→ 公開買付けは、「多くの関係者が関与」「最終的な合意・公表までに相当な時間を要する」ことからインサイダー取引が行われやすい。
・違反行為者は、直接の会社関係者よりも、間接的に情報を得た友人・同僚などの人間が多い。
・現在ほとんどの上場企業でインサイダー取引防止規定が整備されている。
→ ただし、「具体的な罰則は定められていない」「子会社役職員は対象外」など不十分。


17.虚偽記載とディスクロージャー規制(東京証券取引所の対応)

・虚偽記載
有価証券報告書等について、以下の場合を虚偽記載という。
1.内閣総理大臣等から訂正命令を受けた場合
2.内閣総理大臣等又は証券取引監視委員会により告発が行われた場合
3.訂正報告書等を提出した場合であって、その訂正した内容が重要と認められるものである場合
4.内閣総理大臣等から課徴金納付命令を受けた場合

・各上場基準における「虚偽記載」の取扱い
1.上場審査基準
最近2年間(最近3年間の利益の額が審査対象となる場合は、最近3年間)の個別・連結財務諸表が記載又は参照される有価証券報告書等に「虚偽記載」を行っていないことを要する。
2.市場第一部銘柄指定基準
最近5年間の個別・連結財務諸表が記載又は参照される有価証券報告書等に「虚偽記載」を行っていないことを要する。
3.株券上場廃止基準
有価証券報告書等に「虚偽記載」を行い、かつ、その影響が重大であると当取引所が認めた場合に上場廃止する。

・「虚偽記載」により、上場廃止となった銘柄
2010925日 シニアコミュニケーション
200951日 アイ・ビー・イーホールディングス
2009221日 オー・エイチ・ティー

・シニアコミュニケーションの「虚偽記載」の内容
20043月期から20103月期第3四半期まで架空の売上を計上するなどして、実際には赤字のところを黒字であるかのように虚偽の報告書を作成。
2005年の新規上場においても虚偽の内容により審査を通過
監査法人の残高確認手続きに対し、虚偽記載をおこなった取引相手や郵便ポストから書類をだまし取り偽造









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