2016年12月17日土曜日

12/16 勉強会:中小企業向け措置法 他

1.株式併合などにも組織再編税制を適用

100%子会社化の手法
・株式交換、株式併合、全部取得条項付種類株式、株式等売渡請求など
・現行の税制で組織再編税制の対象になっているもの
⇒株式交換のみ

・平成29年度改正で株式併合、全部取得条項付種類株式、
株式等売渡請求についても組織再編税制が適用されることに
100%子会社化に際して、税制適格の要件を満たさないものは時価評価が必要になる
⇒平成29101日以降の組織再編から適用が開始される予定


2.過去の誤謬(時効完成利益)

(設例)
・前期以前計上の損害保険の積立金500について、前期以前に入金があったが対応する保険積立金の取崩損が計上されていなかった
・上記処理は5年以上も前のことであり時効により減額処理することができない
・過年度遡及会計基準の適用により、当期の期首利益剰余金を500減額処理した
⇒当期の申告調整はどうするか。

(答)
別表四は「特別損失否認」として500加算(社外流出)および「特別損失認容」として500減算(留保)する


3.高所得者の配偶者控除を低減・消失へ

※平成30年分から適用

■配偶者控除適用
・配偶者の給与収入(年収、源泉徴収票に記載の支払額) 150万円以下に引き上げ

■配偶者特別控除適用
・配偶者の給与収入が150万円を超えると、控除額が徐々に減っていく(201万円超で控除ゼロ)
・納税者本人(世帯主)の給与収入によっても控除額が異なる
・納税者本人(世帯主)の給与収入が、1,220万円を超えると配偶者控除、配偶者特別控除の適用なし


4.割引率、マイナスでも零でも利用可能

293月期決算において国債利回りがマイナスの場合、退職給付債務等の計算における割引率を「マイナス」でも「ゼロ」でもどちらで算出しても可となる可能性

・今後マイナス利回りの幅が著しく変動・長期化した場合、取扱いを見直す可能性がある
・国際的にマイナス利回りにおける議論は行われているが、定まった見解はない


5.中小企業向け措置法

H29年度税制改正にて中小企業向けの租税特別措置が大幅に見直される。

■主な論点
・研究開発税制
⇒現行12%の税額控除率を確保も最大で17%まで引き上げ。
・中小企業経営強化税制が創設
⇒器具備品及び建物附属設備が対象
 即時償却と税額控除10%選択適用可
・中小企業向け軽減税率
⇒所得800万円以下は引き続き15(2年延長)

■中小企業の要件見直し
資本金1億円以下の法人であれば中小企業の特例が適用可能も、H29年度税制改正にて、以下要件が追加された
⇒課税所得の過去3年間の平均が15億円以下であること。

従って、過去3年間の課税所得の平均が15億円超であれば、中小向けの税制措置は適用不可となる。(2年間の経過措置あり)


6.上場株の時価は原則「終値」、95%相当額譲渡も寄付金課税

・上場株式の時価は特段の事情がない限り、「終値をもって時価」とする

【審判所事例】
A社が関連会社B社に、上場株式を終値の95%にて譲渡
・下記事情があるときに、特段の事情と認められるか

(1)A社は銀行から借入返済を迫られており、資金化ニーズあり
(2)B社は収益事業なく、配当収入を得るために株式が必要だった
(3)B社に対して、譲渡後の株価下落リスクを配慮した
(4)A社は発行法人との契約で、関係法人以外へ譲渡できなかった
(5)市場で譲渡した場合、インサイダー取引に該当する可能性あった

⇒上記(1)(5)は、すべてA社&B社の内部事情によるもの
⇒上場株式の客観的な交換価値自体に影響を及ぼさない
⇒時価と譲渡金額の差額は、寄付金課税


7.不納付加算税における「正当な理由」

■不納付加算税とは
源泉徴収による国税が期限までに完納されなかった場合に徴収される加算税。
ただし、納付しなかったことについて「正当な理由」がある場合には徴収されない。

■正当な理由があると認められた事例
(概要)
・請求人Aは居住者Bから店舗を賃借し賃料を支払っていた
・居住者Bはその後出国し、非居住者となった
・請求人Aはその事実を知らず、源泉徴収をせずに賃料を支払い続けていた
・請求人Aは不動産会社CからBが出国したこと及び源泉徴収が必要な旨を聞き、過去分の源泉所得税を納付した
・課税庁は不納付加算税を課した

⇒請求人Aは源泉所得税を納付しなかったことに「正当な理由がある」として不服を申し立て認められた。

(参考 所得税法212条等)
非居住者に対し国内源泉所得の支払をするものは、その支払の際、その金額の20/100に相当する金額の所得税を徴収し、徴収日の属する月の翌月10日までにこれを国に納付しなければならない。


8.自己株式の取得 措置法特例で非上場株式を取得した場合の税務処理

■非上場会社が自己株式を取得
・相対取引のケース⇒みなし配当発生⇒税務処理「資本金等の額」と「利益積立金額」の
それぞれを減算
・相続により買取のケース⇒みなし配当なし⇒ただし税務処理「資本金等の額」と「利益積立金額」のそれぞれを減算
※相続により買取りのケースでは譲渡所得として課税(「届出書」の提出が要件の一つとしてある)
■論拠
上場会社が市場等取引により自己株を取得した場合⇒みなし配当なし
⇒税務処理「資本金等の額」から自己株式の「取得対価の額」そのものを減算する
⇒当該ケースは限定列挙で、相続により買取ったケースは含まれていないため


9.生産性向上設備の固定資産税特例措置

1.概要
・資本金1億円以下の会社等
・認定された経営力向上計画の一環で特定の機械又は装置を取得
⇒最長3年間分の固定資産税が半減
2.経営力向上計画
⇒人材育成、コスト管理等の経営力向上のために実施する計画
3.対象となる中小企業
・常時使用する従業員が1,000人以下
・資本金1億円以下
※上記の両方を満たすことが必要
4.対象となる機械装置等
・販売開始から10年以内
・生産量等が年平均1%以上向上
160万円以上
・中古資産でない


10.貸倒引当金の実務上のポイント

■貸倒実績率がゼロの場合の貸倒引当金
・過去3期中に貸倒実績がなくても、それより過去に実績があれば貸倒引当金をゼロとすることは認められない
・期末に有する債権の回収期間内に貸倒の発生がないものと合理的に予想される場合はゼロとしてよい

■過年度遡及会計基準との関係
(繰入額)
・特別損益の計上を認めないとするものではない(営業外債権)
・臨時的かつ巨額に発生した項目である場合は特別損失で表示されることもある
(戻入額)
・戻入額が多額に生じた場合、当時の最善の見積もりを行っていない場合は過去の誤謬として過年度修正
・繰入額を特別損失として計上していたとしても必ずしも戻入を特別利益で行う必要はない
・実態に応じて見積もりの変更等が生じた理由ごとに、営業外or特別を判断

■後発事象との関係(期末売掛金がその後回収不能になったケース)
(監査報告書日まで)修正後発事象
・BSPLの修正が必要
(監査報告書日後)開示後発事象
・財務諸表に注記
・監査役監査報告書に貸倒事実があった旨を記載するか、取締役から株主総会で報告を行う必要あり


11.ビジネスモデル別KPI設定の考え方

BtoBBtoC
BtoB
・受注残
・訪問数
・成約率

BtoC
WEBへのアクセス数
・接客数

■新製品・サービス開発型、二番煎じ戦略型
【新製品・サービス開発型】
・販売取扱製品の新製品割合を○%以上とする
・革新的な業務に取り組むために業務時間の○%をモラトリアムタイムとする

【二番煎じ戦略型】
・コスト
・製造、販売数量

IT関連、サービス業
・閲覧ユーザー数
・会員登録数

■少品種大量生産型製造業、多品種少量生産型製造業
【少品種大量生産型製造業】
・原材料滅失率
・機械装置稼働時間

【多品種少量生産型製造業】
・実際の原価率、利益率


12.有報虚偽記載に関する損害算定の考え方 つづき

損害事例から得られる教訓
(1)平時の心がけ
・損害額の出発点を小さくする
・虚偽記載を行わない、可能性が判明したら適時・適切に開示する
(2)虚偽記載公表時の留意点
・可能性が生じたら直ちに公表という訳ではない
・東証や監査法人と協議、第三者委員会の設置を含む適切な事態収束策を用意
(3)訴訟段階での留意点
・専門家と担当弁護士の実質的な共同作業が極めて重要


13.KPI設定までの4ステップ

KPIとは
Key Performance Indicator(重要業績評価指標)
・具体的な経営アクション※を起こすための指標⇔財務指標は包括的で経営目標の設定に役立たない
KGI(Key Goal Indicator、重要目標達成指標)を達成するための具体的なアクション指標
例:(KGI)年間売上高を前年比+10%(KPI)契約件数+●%、営業担当者+●人

KPI設定までの4ステップ~定性的分析⇒定量的分析~
(定性的分析)
SWOT分析:自社分析(強み、弱み、機会、脅威)
・バリューチェーン:商材のどの部分で付加価値が生まれるか
(定量的分析)
PI(Performance Indicator)の抽出:PL(売上高)や非財務項目(人材)
PIのうち、KPIの選択:PIを縦に、SWOT分析とバリューチェーンを紐づけ、適合者に加点
⇒最高得点のPIKPIに設定

KPI設定にあたっての留意
・中計との整合の考慮(日常的アクションと紐づけるため)
・継続的な運用可能性


14.BEPS行動計画 無形資産の扱いについて

・無形資産を軽課税国に持たせることで租税回避を狙うスキームがある。
OECDより、上記を防止するための提言が出された。
・下記を、企業から国に開示させる
→研究開発、所有、使用する場所の所在地はどこか。
→無形資産についての重要な取り決めの一覧
→対価の設定方針
→無形資産をグループ企業内で移転する場合、その対価の妥当性
取引時、どのような事業計画に基いて評価額を決めたか
移転後、計画と実績に乖離はなかったか


15.MBO後の再上場時における上場審査

1MBOと再上場の関連性
MBOと再上場はそれぞれ独立した行為であり、両者の間に必ずしも高い関連性があるとは限らない。
⇒上場審査では、主導者(経営者・株主)の同一性・連続性、MBOから再上場までの期間の長短などを確認。

2.プレミアム配分の適切性・MBO実施の合理性
aMBO時に株主の判断の前提となる手続きが公正に行われた上でMBOが成立していれば、問題なし。
⇒上場審査では、MBO時の手続きのMBO指針への準拠性などを確認。

b)再上場時から見て、MBO時の計画とMBO後の進捗との間に乖離がある場合であっても、再上場時にその理由について合理的に説明することができるのであれば、問題なし。
⇒上場審査では、当該説明が十分に説得力のあるものかどうかなどを確認。









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