2016年10月8日土曜日

10/7 勉強会:有価証券報告書の提出義務 他

1.相続関係の民法改正で事業承継スキームが変わる!

・法務省が相続関係の民法改正を検討
・中間試案
 遺留分算定の基礎となる財産に含める相続人に対する生前贈与の範囲の見直し
 現行:相続人については期間制限なく、生前贈与されたすべての財産
 試案:相続開始前の一定期間(例えば5年間とか)にされたもの

・現在は事業承継のため自社株を生前贈与していても、遺留分減殺請求の対象になってしまう
⇒改正が実現すれば一定期間以前に生前贈与された自社株は遺留分減殺請求の対象外になる


2.事業譲渡と退職給与負債調整勘定(譲渡法人)

■事例
ABへ事業の一部を譲渡
転籍者に係る退職給付引当金500(有税)も移転

A(譲渡法人)の会計処理
()現金 300 / ()資産 800
()退引 500 /

A(譲渡法人)の税務処理
事業譲渡による資産等の移転は時価による。退引は債務ではないので認容。
⇒有税の退引は、時価取引により費用認容される。

()現金           300 / ()資産 800
()事業譲渡損 500 /

⇒したがって税務調整は以下となる。
()事業譲渡損 500 / ()退引 500

■別表調整
別表四⇒事業譲渡損500(減算・留保)

別表五()
⇒退職給付引当金▲500

別表五()
⇒調整なし


3.近隣国に子会社置いても「適用除外」に

■経産省が29年税制改正で外国子会社合算税制について、「適用除外基準の適用範囲に支店所在地国を含める見直し」を要望
・外国での事業展開において、外資規制等がネックとなりその国に子会社を設立できず、やむなく近隣国に子会社を設立するケースを踏まえたもの。
・現行の外国子会社合算税制の適用除外基準には「実体基準」、「管理支配基準」、「所在地国基準」がある。
⇒近隣国の子会社を通じて事業を展開するケースは適用外

■外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)とは
・法人税がゼロまたは税負担率が20%未満である、外国の子会社等の所得を日本の親会社等の所得に合算して課税される税制
⇒結果、親会社の税負担が増加することがある。


4.閲覧謄写の対象か否かは資料ごとに判断

発行株式を約3.1%保有する株主が会社に対し、会社法第4331項に基づき賃貸借契約書等の閲覧謄写を請求した事件

■会社は「会計帳簿又はこれに関する資料」に該当するのは賃料額等の部分のみであり、それ以外は閲覧謄写の対象外と主張

■裁判所の判断
契約書の一部が「会計帳簿又はこれに関する資料」に該当すれば、全体が閲覧謄写の対象


5.今週の専門用語

■外資規制
⇒外資による出資比率や土地保有を制限するもの。
 海外での会社設立やM&Aの際に留意が必要

()タイ
・外国人事業法に基づき外国資本50%以上の企業において、一定の業種規制を行っている
⇒新聞、ラジオ、テレビ放送事業や農林水産業などの43業種


6.法人税等会計基準案は先行して公開草案

■企業会計基準委員会が日本公認会計士協会の「税効果会計に関する実務指針」を会計基準へ移行中
「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」については、「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準()」として先行して公開草案を公表する予定

■「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準()
法人税、地方法人税、住民税及び事業税に関する会計処理及び開示を規定

具体的には、
(1)当年度の所得に対する納税額:当年度の損益に計上
(2)過年度の所得に対する納税額:下記の通り
(a)更正等により追加で徴収される可能性が高く、追徴税額を合理的に見積ることができる場合、誤謬に該当する場合を除き、原則として、追徴税額を損益計上
(b)更正等により還付されることが確実に見込まれ、還付税額を合理的に見積ることができる場合、誤謬に該当する場合を除き、原則として、還付税額を損益計上

「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」における表現の見直しや考え方の整理等を行うものであり、実質的に内容を変更するものではない
⇒公表日以後適用し、会計方針の変更にも該当しない


7.金地金は手帳記載通りに購入、取得費巡り課税処分一部取り消し

■事例
・金地金の譲渡申告をしていなかった
・税務調査時時に金地金の取得費が不明であったため、取得価額の5%で取得費が決定された。
・賦課決定後に金地金の取得に関するメモや手帳への記載が見つかった
・メモや手帳の記載に信ぴょう性があるか否か

■審判所の判断
・手帳に記載された名義人や生年月日が購入申込書と一致すること。
・手帳と購入申込書の筆跡がよく似ていること。
・販売年月日、重量、単価、金額が一致していること。
以上を踏まえると、請求人が購入手続きを行っていたと判断できるため、金地金の取得費は購入申込書に記載された取得価額とするとした。


8.ヤフー事件等を受けた今後の実務対応

・ヤフー事件、IDCF事件の最高裁判決により、組織再編に係る行為計算否認規定の適用基準が明らかに
・「法人税の負担を不当に減少させ」かつ「税負担の軽減以外に目的がない」行為計算は否認される
・「通常の行為に引き直ししたとき」に税負担が増えるような取引はアウト

)ヤフー事件
・欠損金の引き継ぎ要件を満たすために、合併直前に、合併法人の副社長を被合併法人の副社長に就任させていた
・直後の合併で、元の通り合併法人の副社長に戻っており、通常の行為ではない
・通常の行為を想定すると、欠損金の引き継ぎ要件は満たさず、税負担は増えることとなる
⇒行為計算否認規定により、欠損金の引き継ぎは認められない


9.所得税:国外扶養親族にかかる扶養控除

■国外扶養親族に係る扶養控除の提出書類
(1)親族関係書類 扶養控除等申告書と同時に提出
親族関係書類⇒戸籍の附票の写し等及び親族の旅券の写し

(2)送金関係書類 年末調整時に提出
送金関係書類⇒金融機関の書類の写し、クレジット発行会社の書類の写し

■留意点(国税庁QA抜粋)
・現金で手渡した月と口座へ送金した月がある場合は送金した月の送金書類
 のみ提出OK
・送金額があまりにも少額である場合は同一生計であるか事実確認が必要
・配偶者と子を扶養控除の対象とする場合、それぞれに対して送金の証明が必要。
 したがって、それぞれに送金口座を開設してもらう必要がある。たとえば配偶者を代表者として2人分の送金をしても、控除の対象は配偶者のみとなる。


10.【相続税】非上場株の評価見直し 国税庁と中企庁が検討

取引相場のない株式を評価に用いる「類似業種比準価額方式」について、見直しが検討されている。
対象会社の価値が変わらなくても、上場会社の株価の上昇に伴い評価額が高くなる点等を問題視している。

■見直しに関する意見
・海外展開をしている上場会社との違いを考慮することが望ましい。
・類似業種の株価について過去の平均値を採用するなど措置をとることが望ましい。
・株価に影響が大きい「利益」の比準割合を3倍としている点を見直すことが望ましい。


11.特別償却と税効果

・生産性向上設備などの資産を取得した場合、通常の減価償却に加えて取得価額の一定割合を税務上「特別償却」できる制度
・租税特別措置法の優遇措置
・特別償却は会計上の費用とは認められない
・会計上は特別償却準備金を積み立て一定年数で取り崩して税務上の益金に算入する。
・特別償却準備金は「その他利益剰余金」に計上される
 ⇒税務上は損金算入なので一時差異となり、税効果会計を適用する必要がある
 ⇒将来の納付税額を増やす効果を有するため「繰延税金負債」を計上することとなる。


12.IT・ソフトウェア業の法人税調査のポイント

1.売上関係の調査
売上の契約形態により計上時期が異なる。主な契約ごとの調査ポイントは下記の通り。
(1)請負契約
・納品が完了し、現場での作業が全て完了した時点で売上計上しているか。
(2)派遣契約
・役務の提供をした月に売上計上しているか。
(3)売買契約
・納品が完了した時点で売上計上しているか。
・金額未確定でも見積額で売上計上しているか。

2.労務費関係の調査
・期末仕掛に完成したプロジェクトの労務費が含まれていないか。
・短期間に入退社したように装って、架空の人件費を計上していないか。
※業種的に入退社が頻繁な傾向があるため、短期間の入退社が不自然に映らない。

3.外注費関係の調査
・外注の必要性はあるのか。
・発注時期からして異常な外注でないか。

4.その他
・人材確保の為に、多額の引抜料や交際費が支払われるケースがある。
⇒内容が引抜料や交際費のものが、会議費等の科目で処理されていないか。


13.M&Aの表明保証違反への契約上の手当てサンドバッギング条項をめぐる実務上のポイント

■サンドバッギング条項
(1)定義
買主が売主による表明保証の違反を知っていても、売主に対して当該違反に基づく責任追及が可能
(2)効果
・表明保証違反を理由に買主がM&A取引の実行を拒絶できる
・買主が売主に対して当該違反に起因する損害の補償を事後的に請求できる
(3)必要性
規定しなかった買主(原告)敗訴の判例あり(東京地裁)
「売主の表明保証違反について買主が善意であることが原告の重大な過失に基づくと認められる場合には、悪意と同義」
「買主が知りえない事由もしくは事象の危険は売主が負担(=救済があるのは買主が認識しえないものに限定)」

■交渉実務上のポイント
(1)交渉上十分な時間があることを前提にする限り、何かしらの手当てをしておくことが望ましい
(2)買主の主観的事情(悪意、重過失、軽過失、善意)をどこまで考慮するか
(3)買主の主観的事情は誰を基準に、どの時点で判断するか
・誰を基準に?⇒買主の代取、役員、(買い手アドバイザー)等が考えられる
・どの時点で?⇒M&A契約締結時点とするのが通例。
(4)DDにおける開示事項を包括的に除外するか
・書面による開示事項に限定するのが双方にとって望ましい場合が多い(口頭による開示事項は除外)
・VDRでの開示:VDRを開設した業者に一定時点において開示資料をDVD等のメディアに保存させる等の手当
・どの点について、どの程度明確に開示されていれば表明保証の対象から除外されるのか基準を規定することもある


14.平成29年度税制改正に関する経団連の提言

■研究開発税制の維持拡充
研究開発投資の増大の為に、制度の維持拡充が必要

■外国子会社合算税制見直し
軽課税国に所在する外国子会社を利用した租税回避の防止が必要

■個人所得課税
経済力に応じた公平な負担を実現する為の見直しが必要


15.有価証券報告書の提出義務

(1)上場会社が廃止
→提出義務が免除される訳ではない。下記該当すれば引き続き提出義務あり
・株主の募集にあたり、有価証券届出書を提出している
・事業年度を含む前5事業年度末日のいずれかで所有者が1,000人以上の株券、および所有者が500人以上のみなし有価証券
(2)免除のケース
→継続開示は作業負担が大きく、公益または投資者保護に欠けなければOK
・免除申請する事業年度の全事業年度の所有者数25名未満
・当該事業年度を含む前5事業年度のすべての末日における所有者が300名未満


16.リストリクテッド・ストック開示の変更

■有価証券届出書「第三者割当の場合の特記事項」の記載を不要に

※「企業内容等開示府令」等の改正
原則として金商法の第三者割当等に関する発行開示必要
⇒報酬としての性質に鑑み、第三者割当の定義から除外し、開示不要に(SOと同様)

■経緯
第三者割当の開示趣旨 (ガバナンスの観点)に抵触しない
⇒債権と引換、一定期間の譲渡制限かつ勤務/業績要件未達成で没収


17.BEPSと移転価格税制

BEPSBase Erosion and Profit Shifting(税源侵食と利益移転)
・多国籍企業の租税回避策への対抗策を、OECDが各国に提言。
⇒ あくまで提案であり、強制力はないが、今後各国で取り組みが進められる方針。
・全部で15の行動計画。その1つが、「各国政府間での情報整理方法の統一」。
⇒ 統一された書式で情報を共有することを目指す。
⇒ 多国籍企業のグループ概況、サプライチェーンの状況、グループ内役務提供、無形資産・金融取引に関わる移転価格ポリシー、国ごとの収支・納税額・資本金等


18.過年度決算の再確定

・Ⅰの部(有価証券届出書)
申請期5年前~直前期(5年間)の財務諸表の開示が必要。
・監査
直前々期~申請期(3年間)の監査意見が必要。

⇒申請期5年前~申請期3年前(3年間)については、未監査となる。

当期間は税務ベースでの処理が多く、重要な誤謬が発生する可能性があり、重要な誤謬が発生した場合には、修正することが求められる。

・手順

計算書類の過年度修正→臨時株主総会→修正申告or更正の請求









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