2016年10月16日日曜日

10/14 勉強会:ベンチャー投資促進税制 他

1.法人税法における収益の計上基準

・法人税法における収益の計上基準は、別に規定があるものを除き「引渡基準」
・現在の法人税法において、
 収益とは「純資産の増加の原因となるすべての事実」
 収益の計上時期は「資産の引き渡し等の日の属する事業年度」


2.収益認識会計にはリース取引を含まず

ABSJIFRS15号「顧客との契約から生じる収益」の範囲を踏まえて、収益認識に関する包括的な会計基準()の開発検討をしている。
・リース取引(IFRS15号対象外)
⇒同会計基準()対象外、今後リース会計基準を改正するか検討する。
・金融手数料・バーター取引(IFRS15号対象)
⇒日本基準に無い部分で同会計基準()の対象となる。
 ※バーター取引…顧客等への販売を容易にするための同業他社との非貨幣性資産の交換
・固定資産売却取引(IFRS15号対象外)
⇒特別目的会社の連結範囲等と関連するため同会計基準()の対象外とする。


3.海外子会社への金銭貸付で移転価格課税

■裁決事例
・国内企業が海外子会社へ貸付を行い、貸付利息を収益計上
・原処分庁は、貸付利息が独立企業間価格に満たないとして移転価格税制を適用した課税処分を審判所が認めた。
⇒「貸手の銀行調達利率による方法」を用いて算定した利息との差額を益金に算入する課税処分

※移転価格税制では、国外関連者間取引には独立企業間価格が求められている。よって貸付金金利についても独立企業間の独立した条件で貸付が行われた場合の利率によることが求められる。


4.今週の専門用語

貸付利息の独立企業間価格

■独立企業間価格とは
独立した企業(第三者)間で類似の取引が行われた場合の価格

■貸付利息の独立企業間価格の算定
・比較対象となる取引を把握する事が困難な事も多い
・事務運営指針では、国内法人等が金銭貸付業を行っていない場合、次の順に独立企業原則()に即した結果が得られるとされている
(1)借手の銀行調達利率
(2)貸手の銀行調達利率
(3)国債等の運用利率

※税務上の移転価格を決定するために使用される国際基準


5.税制改正も消滅時効中断は連帯納付義務者に及ぶ

徴収権の消滅時効の中断及び停止の効力は、平成24年度税制改正後も連帯納付義務者に及ぶか否か争われた事例

■連帯納税義務とは
複数人で被相続人の財産相続するなど別の相続人がいる場合で、別の相続人が相続税を納めていない場合、その未納分を他の相続人が納める義務がある

不意打ちで多額の延滞税が係るなどの問題が生じたため、平成24年度改正で下記の場合は連帯納付義務が解除されるようになった
・申告期限から5年を経過
・税務署から督促等の通知が来ていない

■今回の流れ
・平成7年に未納の相続税があると請求人の兄弟へ通知
・平成25年に請求人所得税の確定申告をし、還付金が発生したが、還付金は上記未納相続税に充当すると通知があった

■結論
今回の請求人の連帯納税義務は有効である
・督促状の通知が兄弟へ送っていたため、連帯納付義務は解除されない
・差押処分により徴収権5年の時効は完成していない


6.事業譲渡と退職給与負債調整勘定(譲受法人)

■設例
A社がB社に対して事業の一部を事業譲渡
・事業の移転に伴い転籍者に係る退職給付引当金500を移転
 (譲受法人B社の会計処理)
()資産800  ()現金300
          ()退職給付引当金500
(参考)
(譲渡法人A社の会計処理)
()現金300            ()資産800
()退職給付引当金500

■税務処理
・事業譲渡により移転を受けた資産負債は時価により取得したものとして処理
・退職給与債務の引き受けをした場合、従業員に係る退職給付引当金の額に相当する金額は退職給与負債調整勘定として処理
(譲受法人B社の会計処理)
()資産800 ()現金300
            ()退職給与負債調整勘定500

■修正処理
()退職給付引当金500 ()退職給与負債調整勘定500

■申告調整
別表四:調整不要
別表五()Ⅰ:退職給付引当金+500、退職給与負債調整勘定△500


7.外国子会社合算税制の見直しの方向性が明らかに

■用語の意義
・外国子会社合算税制(タックスヘイブン対策税制)
租税回避地に所在する子会社を通じて、租税回避行為を規制するための制度

・トリガー税率
外国子会社の所得を合算する必要があるか否かを判定するための基準税率。
その外国子会社の所在地の税率が20%未満の場合は、タックスヘイブン税制が適用される。

■現状
・トリガー税率が20%未満の外国子会社等のすべての所得について、日本の親会社の所得に合算して課税する必要あり。
(基準を満たした場合の適用対象外のケースを除く。)

またトリガー税率が20%以上であれば合算の対象外となるため、以下の問題点が発生する。

20%未満であれば、経済実体がある事業から得た所得も合算対象となる。
20%以上であれば、経済実体がなくても合算されない。

■見直し案
トリガー税率にかわる「制度適用免除基準」を検討。
具体的には、子会社が自ら主導して行う事業(経済実体あり)に係る所得は合算の対象外。
経済実体がない事業から得られる所得は合算の対象(日本で課税)とするなど。

過度に複雑化すると企業を苦しめるだけなので、引続き見直しに関する議論を継続する。


8.相続税の連帯納付義務

・相続人が複数いる場合、自分の相続税を納付しても、他の相続人が滞納していると連帯して納付義務が発生する
・相続税の申告期限等から5年が経過すると連帯納付義務は解除
・ただし、既に税務署長から納税通知書(督促状)を受けている場合は解除されない


9.実例:DES課税リスク説明義務違反事件

■概要
・税理士法人AB社社長Cから相続税対策の相談を受けた。
・社長CB社に対し10億円の債権を有していた(相続財産に該当)
・税理士法人ADESによる相続税対策を提案し実行したが、債務免除益の発生により、B社に法人税課税が生じることをCに説明していなかった(提案時に認識なし)
・また、DESでなく、会社清算(解散)を選択していれば法人税課税はされなかったため、税理士法人Aは損害賠償請求され敗訴した。

DESと会社清算の比較
ともに債務免除益が発生するが、会社清算の場合、債務超過であれば期限切れ欠損金と相殺が可能。
このケースは期限切れ欠損金が10億円あったため会社清算が有利だった。


10.上場市場変更

・新興市場(ジャスダック&マザーズ)から市場一部や二部にステップアップすること
・目的:資金調達力の強化、企業価値の向上等
・要件
 JASDAQから一部
⇒株主数2,200人以上(二部は800人以上)
⇒時価総額250億円以上(二部は20億円以上)
・一部への変更は上場からJASDAQ6ヶ月、マザーズで1年以上経過していることが必要
・審査があるので申請から市場変更まで3ヶ月程度かかる
 審査は「基本的には新規上場時の審査と同じ」


11.子会社株式取得時の付随費用

1.取得時
・個別財務諸表 … 取得原価に含める
・連結財務諸表 … 発生した年度の費用
⇒ 連結修正として、上記の個別と連結で生じる差異を調整する処理を行う。

2.売却時
(1)売却後も子会社
子会社株式の一部売却と売却対価の差額は資本剰余金へ
⇒個別と連結で取得価額に付随費用分差異がある。
⇒個別と連結で売却対価と取得原価の差額に差異が生じるため、調整が必要。
⇒個別上の売却損益と、売却した分に関する付随費用を資本剰余金へ振り替える。

※子会社のままなので、投資は継続しているとして、連結上は資本取引に該当する為、資本剰余金に振り替える。

(2)売却後は関連会社
子会社株式の一部売却と売却対価の差額は損益処理
⇒個別と連結で売却対価と取得原価の差額に差異が生じるため、調整が必要。
⇒売却した分の付随費用相当分を連結上の売却損益に調整する。

※子会社ではなくなったので、投資の精算として、連結上でも損益を認識する。

(3)売却後は子会社でも関連会社でもない
連結から除外されるため、残った株式の取得原価は付随費用込みへと調整が必要
⇒また、個別と連結で売却対価と取得原価の差額に差異が生じるため、調整が必要。
⇒連結上で取得原価から費用へと調整した付随費用を、売却損益と取得原価へと振替える。


12.そもそもの目的を忘れていないか?共通費用を適切に配賦する際の考え方と留意点

■固定費の配賦を考える際の留意点
・配賦の目的「何のために」を確立することが重要
・配賦結果にどのように納得するのか(納得させるのか)が重要
⇒正確に分けることを前提としないので。

・考え方の要素
(1) 期間費用と製品原価
(2) 管理可能費と管理不能費
(3) 共通費か否か

・共通費の配賦基準の例
(1) 金額基準(売上高、利益、発生費用)
(2) 物量基準(作業時間、生産量)
(3) 応益負担主義(電気の使用量等)


13.ベンチャー投資促進税制

・経済産業大臣から投資計画の認定を受けたファンドを通じてベンチャー企業への投資を行った場合
⇒出資額の80%まで損失準備金を積み立て、損金計上できる

・平成293月末までに経済産業大臣により認定されたファンドを通じたベンチャー投資に適用される
(平成29年度税制改正により適用期限の2年延長の可能性あり)


14.平成286月 第一四半期報告書の開示分析

平成28年度税制改正の係る減価償却方法の変更
(1)概要
・平成2841日以降取得の建物付属設備・構築物の償却方法が定率法廃止→定額法のみ(法人税法)
・税務基準の償却方法を選択している会社が定率法→定額法にした場合、「会計基準等の改正に伴う会計方針の変更」に該当
(2)開示の結果
198社中、114社が開示
6社が影響額を記載、108社は影響は軽微


15.非上場の関係会社株の減損に係る会計上の見積り

■減損の要件
・実質価額の著しい下落(取得原価の50%以上の下落)がある場合
※「回復可能性が十分にある」場合は減損しないこと可⇒会計上の見積り

■「回復可能性が十分にある」
・回復:実質価額が取得原価まで回復すること
・原則として5年以内の回復が十分な証拠で裏付けられる必要
・中長期の事業計画等に基づく判定が望ましい⇒計画の合理性が重要

■合理的な計画の要件
※企業毎で異なる計画レベル⇔回復可能性を裏付ける十分な証拠に足り得るか
・意思決定機関による承認がある
・影響する前提要素(為替、金利、原油価格等)を加味している
・適宜予実分析の実施をしている
・計画達成のための具体的施策がある


16.平成29年度税制改正 日本公認会計士協会の意見・要望

(国際競争力強化)
・損金経理要件を一部緩和し、IFRS適用企業が不利にならないように。

(個人課税について)
・世帯単位課税の導入など、配偶者の収入に関わらず夫婦2人で受けられる所得控除の合計額を同じにする
・所得再分配機能の強化。
⇒高所得者ほど得をする「所得控除」よりも、「税額控除」を。
⇒控除できない金額を切り捨てず、「給付」する仕組みを。

(世代間の資産格差是正)
・贈与を積極的に支援するように
⇒ 使いみちに制限を設けない
・年金に関する税負担は個人ごとの資産状況に応じて変えるべき


17.コンテンツ産業の上場審査のポイント

映画・音楽関連、出版業、ゲームソフト関連など

1)事業性
コンテンツ産業は商品が無形のため、資産価値の評価が難しい。
企業の将来性を評価するためには、コンテンツ自体を評価する。
コンテンツに資産性・成長性があると評価された場合でも、他の知的所有権を侵害している恐れがないか等、コンテンツの成長性が維持できるかどうか審査される。

2)会計処理
明文化された会計基準はない。
1.収益の計上基準
売上代金の回収手段が多様であるため、回収手段に合わせて売上計上基準を柔軟に考慮する必要がある。
上場審査上、恣意性がないか、実現主義と照らして売上計上基準が妥当であるかが確認される。

2.コンテンツ制作費の計上基準
コンテンツは「研究開発費等に係る会計基準」の枠外のため、ソフトウェアに比べて資産計上する範囲が広いことが一般的である。
無制限には認められないため、収益との対応関係を考慮しながら資産計上範囲を決定する必要がある。

3.資産の償却基準

収益のブレが大きいため、保守的に償却期間は短めに設定されることが多い。









◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

決算早期化・開示支援、株価算定・財務調査、IPOのための内部統制支援
ワンストップでサービスを提供  

0 件のコメント:

コメントを投稿