2016年7月8日金曜日

7/8 勉強会:インセンティブ報酬~リストリクテッド・ストックの取扱い~ 他

1.顧問先が粉飾決算で経営破たん、取引先が顧問税理士に損害賠償

・粉飾決算により破たんした会社A社の取引先B社がA社の顧問税理士を訴えた事例
・架空の仕入割戻を計上していた(相手勘定:未収入金)
B社の主張:粉飾決算を見抜けなかったのは税理士の故意または過失によるもの

・裁判所の判断
A社社長が独断で進めていた
未収入金が急増し長期滞留していたことに税理士は疑問を持ち、A社社長に確認をしていた
A社社長は資料を偽造して税理士に提出・説明。その資料や説明に不合理な点はなかった

以上より税理士には過失があったとは言えないのでB社の損害賠償請求は斥けられた


2.適格現物出資(現物出資法人)

■事例
現物出資法人A
・簿価⇒資産1,500、負債1,000(簿価純資産価額500)
・時価純資産価額⇒1,200
・対価はB
被現物出資法人B
・資本金300、資本剰余金900増加

■現物出資法人Aの会計処理(時価純資産価額で移転した場合)
()負債 1,000  /()資産  1,500
()B株式1,200 /()譲渡益 700

■現物出資法人Aの税務処理
⇒適格現物出資なので、移転資産負債を簿価により譲渡したものとして計算する。
()負債 1,000  /()資産  1,500
()B株式500

⇒したがって税務調整は以下となる。
()譲渡益 700 /()B株式  700

■別表調整
別表四⇒譲渡益過大700(減算・留保)

別表五()
B株式△700

別表五()
⇒なし


3.今週の専門用語

■災害減免措置
「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律」により、相続財産等に被害を受けた者は災害減免措置が講じられる。

・適用要件
課税価格の計算の基礎となった財産の価額又は動産の価額のうち、被害を受けた部分の価額の占める割合が1/10以上であること

・減免措置の内容
(1)申告期限前に被災(⇒課税財産価額が減額)
相続財産等から被害を受けた部分の価額を控除した価額を相続税等の課税価格に算入

(2)申告期限後に被災(⇒税額が免除)
納付すべき相続税額に被災部分の割合をかけて算出された税額が免除


4.平成28年分平均路線価が8年ぶりに上昇

■国税庁が平成28年分の路線価及び評価倍率を記載した路線価図等を公開

■平均路線価
・全国平均は8年ぶりに上昇(対前年比+0.2%)
・都道府県別⇒14の都道府県で上昇
1位:東京都+2.9%2位:宮城県+2.5%3位:沖縄県+1.7%

■最高路線価(都道府県庁所在地別)
・上昇した都市(25都市、対前年比+4都市)
・上昇率が10%以上の都市(10都市)
1位:大阪(22.1%)2位:東京(18.7%)3位:京都(16.9%)
・下落した都市(5都市、対前年比△6都市)
青森、秋田、水戸、新潟、鳥取

■熊本地震で被災した場合の取扱い
・地震発生前に相続又は贈与により取得した財産
⇒平成28年分路線価に基づいて評価
※一定の要件を満たす場合、災害減免措置の適用有
・地震発生後に相続又は贈与により取得した財産
⇒被害の状況に応じて個別に評価
・東日本大震災の際は、震災特例法に基づいて、「調整率()」を乗じて計算
()震災による地価下落を反映
⇒今回は、震災特例法の手当はなく、上記措置は講じられていない

■平成2811日現在、原子力発電所の事故に関する「帰還困難区域」、「居住制限区域」、「避難指示解除準備区域」に設定された区域内にある土地等の取扱い
・平成27年分同様、相続税、贈与税の申告に際し、ゼロとして評価して差し支えない
※路線価等を定めることが困難である為


5.固定資産税の軽減措置、適用のポイントを読み解く

■固定資産税の軽減措置とは
H28年度税制改正により、中小企業者等が「経営力向上計画」を作成し、主務大臣から認定を受けた場合には、固定資産税を3年間、2分の1に軽減する措置。
※資本金1億円超の法人等は適用対象外。

■要件
H28.7.1からH31.3.31までの間において、「認定経営力向上計画」に記載された一定の機械装置を取得した場合に軽減措置を受けられる。
※施行日前に取得した機械装置は適用対象外。

一定の機械装置とは、下記3要件を満たす必要あり
(1)販売開始から10年以内のもの
(2)旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上するもの
(3)1台の取得価額が160万円以上
※比較すべき旧モデルがない場合は、(1)の要件のみとなる

製造業以外の業種での主な対象例
・卸小売業⇒大型冷蔵庫、販売するための加工設備
・外食産業⇒厨房設備、食品加工設備
・介護⇒給食用設備、介護入浴装置

■手続き(流れ)
(1)中小企業者等は「経営力向上計画」策定時に取得する設備を決める
(2)設備メーカーを通じて担当する工業会等から証明書(発行まで2ヶ月程度かかる)を入手する。
(3)主務大臣に「経営力向上計画」及び工業会からの証明書の原本を添付して計画申請する。
(4)主務大臣より計画認定書と計画申請所の写しが交付される。
(5)固定資産税納付時に、納税書類と共に、(2)(4)の写しを自治体に提出する。

■「経営力向上計画」とは
・企業の概要、現状認識、経営力向上ための目標・指標・内容等を記載した計画を策定すること
・申請書類は2枚程度の簡素なものであり、郵送での申請も可能。

■その他
・自社製品やオーダーメイド品も対象。
・ファイナンスリース取引も対象。
・補助金を受けて取得した機械装置も対象となる。
なお圧縮記帳前の取得価額が160万円以上であれば軽減措置を受けられる。
⇒固定資産税の課税標準額に圧縮記帳は影響しないため。


6.所得税の行為計算否認で全部取消し裁決

(審判所事例)
・個人事業主Aが、A自身及び親族の経営する会社Bへ、年間4800万円の業務委託料を支払った
・委託料の内容は、アシスタント派遣や経理記帳、マネジメント業務等
・原処分庁は、適正委託料を超える支払があったとして、同族会社の行為計算否認規定を適用し、超える部分の必要経費算入を否認

⇒必要経費算入はできないのか?

(裁決)
・すべて必要経費算入可能
・原処分庁は適正委託料の根拠として人材派遣会社を比準したが、会社Bの業務は人材派遣業と相当な類似性があるとはいえない

⇒原処分庁の主張は不当であり、行為計算否認規定の適用は誤り


7.所得税:空き家の譲渡特例の適用関係

■空き家の譲渡特例とは
・平成28年度の税制改正で創設
・相続等で取得した空き家を一定期間内に譲渡した場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる
・分割譲渡(切り売り)も可

■分割譲渡の場合の留意点
・譲渡金額の合計が1億円を超えると適用除外となる
・ただし、最初の譲渡があった年の翌年11日から3年を経過した日以後の譲渡は1億円判定の対象外となる

■具体例
(1)初回H28.6.18,000万、2回目H29.5.13,000万で譲渡
⇒譲渡金額の合計が1億を超えるため3,000万控除なし

(2)初回H28.6.18,000万、2回目H32.5.13,000万で譲渡
⇒譲渡金額は8,000万となり3,000万控除の適用あり。
 なお、2回目の譲渡は通常の譲渡となり特別控除の適用はない。


8.【消費税】新規に課税事業者となった場合の期限後の還付申告の可否

■背景
・課税事業者選択届出書の提出なし
x1年の課税売上高     :1,000万円以下
x2年上期の課税売上高 :1,000万円超 (特定期間)
x2年上期の人件費     :1,000万円以下(特定期間)
x3年に多額の課税仕入が発生

■論点
x3年は仮に課税事業者であれば還付ポジション。
x3年の申告にあたり特定期間の判定を失念し、免税事業者に該当すると判断。
 x3年の消費税の申告書は提出していなかった。
・特定期間の判定を売上高で行えば課税事業者に該当することに、申告期限後に気づいた。
X3年の納税義務を特定期間の売上高で判定するものとし、期限後に還付申告は可能か?

■結論
還付申告は可能。
・特定期間の判定を売上高で行うか給与等で行うかは納税者の任意である。
・課税事業者届出書(特定期間用)の提出をしていなくても、課税事業者か否かの判定結果には影響しない。


9.子会社投資に係る税効果の取り扱い見直し

・子会社投資に係る税効果の取り扱いについて、連結と個別とで扱いが整合していない。
 ⇒将来加算一時差異(繰延税金負債となる)の扱いが整合していない

連結
・「予測可能な将来期間に売却する意思がない場合」
 ⇒繰延税金負債を認識しない

個別
・「課税所得が発生しないことが合理的に見込まれる場合」
 を除き、繰延税金負債を認識する。

⇒個別税効果実務指針を連結税効果実務指針に合わせることになりそう。


10.平成28年度税制改正のまとめ(法人税法関係)

1.法人税率の引き下げ
23.9%から平成30年度には23.2%
※平成28年度、29年度は23.4%

2.欠損金の繰越控除
(1)控除限度額
H28.4.1H29.3.31
⇒所得の60%
H29.4.1H30.3.31
⇒所得の55%
H30.4.1以降
⇒所得の50%
(2)繰越期間と帳簿書類保存期間
10年に延長

3.減価償却
⇒建物付属設備及び構築物の償却方法が定額法のみ
H28.4.1以降取得のもの

4.組織再編税制
(1)対価が直接株主に交付されるケースも分割型分割に該当することが明確に。
(2)内国法人による現物出資先が外国法人でも、国内PEに帰属なら適格現物出資。

5.役員給与
(1)特定譲渡制限付株式の交付による給与は、事前確定届出給与の届出が不要に。
(2)利益連動型給与の指標に、ROE等も認められることが明確化

6.特定譲渡制限付株式の損金参入時期
⇒譲渡制限が解除された時

7.地方法人税率の引き上げ
4.4%から10.3%


11.税務調査の対策ポイント 製造業

■工場・研究所の調査
(1)予備部品等の貯蔵品管理の状況
(2)除却済みの資産が保管されていないか
(3)未稼働機械が償却されていないか
(4)作業屑、自動販売機収入等の雑収入は適正に計上されているか
(5)資産計上すべき器具が試験研究費で経費処理されていないか
(6)税額控除の対象となる試験研究費の範囲は適正か


12.売却予定の在外子会社に係る税効果

前提
・業績不振により子会社株式の減損を計上している
・翌年度中に売却することを意思決定している

■個別上の税効果
・回収可能な価額についてDTAを計上
 ⇒税務上加算調整した分について会計と税務で子会社株式簿価に将来減算一時差異が生じている為

■連結上の税効果
・個別上で計上されたDTAは取消し
・連結上の将来減算一時差異に対し、回収可能な価額についてDTAを計上
 ⇒取得後剰余金や為替換算調整勘定により個別と連結で子会社株式簿価に差異が生じている為


13.会社分割時の不動産取得税の非課税措置

⇒形式的な所有権の移転に当たるような場合は非課税
・主要な資産負債が分割承継法人に移転する
・分割に係る分割事業が分割承継法人で引き続き営まれる見込み
80%以上の従業者が分割承継法人の業務に従事する見込み
 など
⇒税制適格要件は求められていない


14.消費者法をめぐる最近の動向-消費者契約法

■契約の取消
・現行規定
事業者の以下の行為により契約を締結した場合、消費者は取消しが可能
①不実告知(重要事項[=契約の目的物に関する事項]が対象)
②断定的判断の提供
③不利益事実の不告知
④不退去/退去妨害
・改正
①過量な内容の契約の取消し(新たな取消事由)
②重要事項の範囲の拡大
③行使期間の伸長(追認できる時から6か月→1年に伸長)

■契約条項の無効
・現行規定
消費者の利益を不当に害する条項は、無効
① 事業者の損害賠償責任を免除する条項
② 消費者の支払う損害賠償額の予定条項
③ 消費者の利益を一方的に害する条項
・改正
①事業者の債務不履行等の場合でも、消費者の解除権を放棄させる条項
(無効とする条項の追加)
②消費者の不作為をもって意思表示をしたものとみなす条項を追加


15.インセンティブ報酬~リストリクテッド・ストックの取扱い~

※リストリクテッド・ストック(RS):一定期間の譲渡制限を付した株式報酬

■日本の役員報酬の状況と
固定報酬中心⇒業績向上のインセンティブ効きにくい

■税法上の取扱い
役員報酬の損金算入は定期同額・事前確定届出・利益連動・SO規定への準拠分のみ
28年改正でRSを損金算入の対象に取り込む。

RS各論
⇒損金算入の時期:RSの譲渡制限解除の日 (not交付日)
⇒事前確定届出給与の届出必要(総会等の決議あれば不要)
⇒譲渡制限期間:35(中経の期間と合わせるのが一般的か)
⇒没収要件が必要:所定の期間にて継続勤務しない、法人業績が目標未達成等
⇒対象株式:当該法人orその完全親法人の株式
⇒議決権、配当受給権OK


16.事業再生の現実 1/4

・事業再生の手続きは大きく分けて4つある。
【法的手続き】
(1)会社更生
(2)民事再生
【私的手続き】
(3)準則型私的整理手続き
(4)純粋型私的整理手続き

・法的手続きは、
(メリット)手続きが透明で銀行の同意を得やすい
(デメリット)銀行以外の取引先も巻き込んでしまう

・私的手続きは、
(メリット)対象を金融機関だけに絞れる
(デメリット)全債権者の同意が必要、後日「濫用」とみなされるリスクがある

・私的手続きの主な手法は、
(1)リスケジュール
(2)第二会社方式
(3)事業再生ファンド、サービサー
(4)DESDDS

・準則型私的整理手続きは、支援協議会スキームなど。
⇒ 純粋型と比べて手続きの透明性が担保される。
⇒ 金融機関にとっても貸倒部分の無税償却が明確化。


17.IT産業の上場審査

(1)技術革新のスピード
IT産業は技術革新の激しい業界。
・すぐに陳腐化してしまうリスクを常に抱えている。
⇒会社が技術革新のスピードに対応し、常に組織的に新しい技術を習得できる体制を整えているか確認される。

(2)特定商品及び特定顧客への依存
・多くの会社は、特定商品を不特定多数の顧客に対して提供するか、特定顧客へ多様なサービスを提供するというビジネスモデルを構築。
・必然的に特定商品及び特定顧客への依存度が高くなる傾向にあり。
⇒特定商品が収益を生まなくなった時、及び特定顧客との取引が解消された時のインパクトを最小限にとどめる体制が構築されているか確認される。
ex.新商品の開発、新規取引先の開拓)

(3)セキュリティ対策
・顧客情報に接する機会が多い。
⇒顧客データベースへのアクセスを特定の者に限定、アクセス履歴を管理等、顧客情報が社外に漏れないような内部統制を構築しているか確認される。

(4)受注管理
・システム開発の特徴として、受注した段階では、依頼業務の全体像を把握することに困難を伴うことがある。
・全体像を把握していたとしても、その後、顧客の要求が変更になることも多々ある。
⇒適切な実行予算を適時に作成し、受注した業務の採算を常に管理することが重要。

(5)プロジェクト別業績管理
⇒受注した案件ごとに発生した原価を集計し、プロジェクト別の採算を管理することが必要。

(6)ソフトウェアの会計処理
⇒取引実態を把握し、適正に会計処理に反映させるための内部統制の構築が必要。








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