2016年7月30日土曜日

7/29 勉強会:子会社投資の将来加算一時差異で平仄 他

1.現物出資の適格性否認、審判所の判断は

■事案
・税制適格として現物出資⇒税務当局は税制非適格と認定

■ケース
・国内の製薬会社(A)がケイマンに設立した会社(JV)の持分50%を保有
 ⇒JVの持分50%をイギリスにあるA100%子会社(a)へ現物出資

■論点
・税制適格の要件検討
⇒外国法人に「国内にある資産又は負債」の移転を行うものは税制適格から除かれる
 つまり外国法人に「国内」のものを現物出資すると非適格になる

■「国内」か「国外」かの判断 
1.どこの事業所の"帳簿"に記載されていたか
2.実質的にどこの事業所で経常的な管理が行われていたか

■税務当局の見解
1.本社の有価証券台帳に記帳あり
2.意思決定はA本社の決裁により行われていた=A社が管理をしていた
⇒持分は「国内」にあると判断

■もう一つの論点
・事前照会の回答⇒適格現物出資と回答
 税務調査で、回答の内容を覆した⇒「信義則の法理」の適用により違法では?
⇒事前照会の内容と「客観的事実」に重大な相違があれば覆されてもやむを得ない


2.子会社投資の将来加算一時差異で平仄

■企業会計基準委員会・・・子会社の投資に関連する将来加算一時差異における「連結財務諸表」と「個別財務諸表」における取扱いの平仄を合わせる方針

現在は、
連結=原則として繰延税金負債を計上(連結税効果実務指針第37項)
個別=一定の場合を除き、繰延税金負債を認識

同様に思えるが、連結税効果実務指針第37項では、「親会社がその投資の売却を親会社自身で決めることができ、かつ、予測可能な将来の期間に、その売却を行う意思がない場合には、当該将来加算一時差異に対して」、繰延税金負債を計上しないこととされている。
⇒連結と個別での取扱いの差異となっている。

よって個別税効果実務指針第24項にも同様の取扱いを定める方針。


3.審判所、資料の隠匿等なくても重加算税

■事実関係
請求人(K社の業務を行うA)は、
・収入をK社の金員と装うためにK社の口座に入金させ、毎月ほぼ全額を現金で引出し、金員の流れを容易に把握できないようにしていた
・税務調査が行われた場合、
 虚偽の証明書(給与所得の証明書)をK社に作成させ過少申告を予定していた
・多額の事業収入があったが、5年間無申告を続けた

■裁決
A氏に重加算税賦課
⇒重加算税の賦課要件として、架空名義の利用や資料の隠匿等の積極的な行為の存在は不要

(1)税額等を過少に申告or申告しないことを意図
(2)客観的に見て(1)
(3)実際に過少申告or申告しない
⇒以上の場合、重加算税賦課


4.≪今週の専門用語≫

■確実な債務
相続税の課税価格の計算において、被相続人の債務で「確実と認められるもの」のみが債務控除の対象となる

()非上場株の純資産価額方式
・債務控除可能
 借入金や未払金などの対外的な債務

・債務控除不可能
 貸倒引当金、退職給与引当金、納税準備金などの引当金や準備金


5.回収可能性適用指針の早期適用、会計方針を変更した企業は?

3月決算を前提とすると、平成283月期より早期適用可
※平成293月期より原則適用

■平成283月期に早期適用した企業    26
⇒うち、会計方針の変更として注記した企業  6
※それ以外の20社は、追加情報として注記

■以下3つのケース・・・適用初年度の期首の影響額を利益剰余金に計上
⇒会計方針の変更として注記

(1)分類2に該当
スケジューリング不能差異に係るDTAについて、回収可能性ありとして取扱う
前提:回収可能であることを合理的に説明

(2)分類3に該当
5年を明らかに超える見積期間において、スケジューリングされた一時差異に係るDTAについて、回収可能性ありとして取扱う
前提:回収可能であることを合理的に説明

(3)分類4に該当
分類2として取り扱う
前提:将来期間(5年超)において、課税所得()が生じることを合理的に説明
()一時差異等加減算前

■それ以外のケース・・・P/Lに計上
⇒追加情報として注記


6.競馬の馬券的中による払戻しに係る所得区分と控除(必要経費)金額

■一般的な購入方法による払戻金
・所得区分:一時所得
・必要経費:当たり馬券に対応する購入金額のみ必要経費算入可

■特殊な購入方法による払戻金
・所得区分:雑所得
・必要経費:当たり馬券の購入金額のみならず、外れ馬券の購入金額も必要経費算入可
・特殊な購入方法とは:
独自で編み出したノウハウを駆使しネット等により長期間にわたり多数回かつ網羅的に馬券を購入して多額の利益を恒常的にあげる方法

競馬の馬券的中に関する論点は、一連の馬券の購入が一体の経済活動の実態を有するか否かが所得の判断基準となるため、今後も個々の事実関係をめぐって争いが続く可能性あり


7.移転に伴う支払義務の負債計上を認めず

【東京地裁事例】
・個人が法人に非上場株式を贈与(寄付)
・贈与時の非上場株式評価額が争点に

(納税者)
・非上場会社は、東京都が行う道路整備事業のために、自社所有の工場等を別の場所に移転する旨の契約を東京都と結んでおり、移転費用を純資産価額計算上の負債に計上できる

(当局)
・移転費用は確定債務ではないため、負債に計上できない

【判決】
・負債計上はできない
・非上場会社が移転費用を負担することは予想できるが、「具体的金額」が明らかになっていないので、引当金的な性質
・確実と認められる債務でないので、債務控除はできない


8.キャリアコンサルティング費用と特定支出控除

■キャリアコンサルティングについて
キャリアコンサルティングとは、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力の開発に関し、助言及び指導を行うことをいう。キャリアコンサルタントは284月より国家資格となった。

■特定支出控除の要件
キャリアコンサルティング費用はそれだけでは特定支出控除の対象とならず、関連する研修を受けた場合に限り、研修費との合計額が特定支出控除の対象となる。

■適用対象年度
関連する研修を受けた年に特定支出控除の対象となる。

<設例>
・平成2812月にキャリアコンサルティング費用を支出(A)
・関連する研修を平成291月に受講(B)
(A)(B)29年の特定支出として認識する


9.【税務】中小の固定資産税減税 貸付資産を除外せず

■固定資産税減税とは
・経営力向上計画の認定を受けた事業者が、
H28.7.1H31.3.31に生産性を高める機械装置を取得した場合
 ⇒ 翌年から3年間、その固定資産税が2分の1とされる。

■貸付用資産の取り扱い
・ファイナンスリースの場合
 ⇒ 借り手が適用を受けられる

・オペリース(orレンタル)の場合
 ⇒ 貸し手が適用を受けられる。

※貸付用資産が対象から除かれている『生産性向上設備投資促進税制のA類型』とは、対象資産の範囲が若干異なる。


10.在外子会社ののれんと経過措置

H27.4.1以後開始する連結会計年度の期首において計上されているのれんのうち、
 在外子会社が償却処理を選択したのれんについて、
 償却方法の選択が可能となる取り扱いが認められている。

①連結FSにおけるのれんの残存消却期間に基づいて消却する方法
②在外子会社が採用する償却期間で消却する方法
 ※連結FSの償却期間よりも短い場合


11.H28年度税制改正に係る減価償却方法の変更

1. 建附及び構築物の法人税法上の償却方法が定額法のみに変更
・法令等の改正に準じた取扱
・下記を注記
(1)定率法から定額法に変更している旨
(2)変更に伴う、当期への影響額

2.自発的な会計方針の変更ではなく、法令等の改正に準じた取扱とする理由
⇒法人税法の償却方法を選択するかは企業の判断
⇒実務では税法基準を採用することが一般的であり、会計慣行として認められている事実がある。
⇒実質、法令の変更で強制的に変更することと変わらない
⇒法令等の改正に準じた取扱とすることとされた。


12.業種別税務調査の対策ポイント 卸・小売業、商社

■主なポイント
・POSレジデータと会計帳簿が一致しているか
・棚卸資産の評価損
・広告宣伝費(期ずれがないか、貯蔵品等とすべきものがないか等)
・ソフトウェアの計上が適正かどうか
・出店、退店、改装等の処理は適正に行われているか


13.連結納税制度の親法人による説明・指導のポイント

・連結の納税用データを連結親法人に報告する体制を整えさせる
・連結親法人と子法人で行うべき作業について、それぞれの法人内で担当部署や担当者を決定しておく
・作業を早めるため、連結子法人での人員増加の要否を検討
・連結法人税額の計算結果をフィードバックする連結子会社担当者、時期、内容を検討


14.PPA時の無形固定資産計上のポイント

■買収の主たる目的である資産(例:顧客資産)が無形資産として計上されないケース
①買収時点以降に獲得予定の顧客は対象外
②被買収企業が赤字=顧客資産に価値なし⇒取得価格が全額のれんのケースも

■経済的耐用年数の設定ロジックと監査上のポイント
①商標権、特許権:法的保護期間
②契約関連:契約期間、継続年数、減少率
③顧客資産:継続年数、減少率

PPAが無形資産およびのれんに与える影響
①無形資産とのれんは償却年数が異なることが通常⇒業績予想に影響大
IFRSは耐用年数確定が出来ない無形資産は非償却(要減損テスト)


15.連結納税制度(連納)の概要と単体納税との差異

■連納概要
企業連結グループを一つの単位として考える
属する個社の所得と欠損を通算して連結所得金額を計算する
算定された連結法人税額は親会社がまとめて納付する

■連納のメリット・デメリット(主要なもの)
⇒受配等の益金不算入における負債利子計算
○連結法人間の負債利子は考慮されない(控除減)
△配当ない個社でも負債利子を集計する事務負担

⇒寄付金の損金不算入
○損益通算により所得基準額が増加すると損金算入額増加
△資本基準額は親会社基準のため、各社合計より縮小の可能性

■連納における税額計算フローと注意点
(個社):グループ各社がそれぞれ作業、():親会社が作業
(個社)所得計算
()①を単純合算
()連納の各種調整
()連結法人税の計算
()④から各社帰属金額を計算
(個社)決算・申告
⇒個社のうち一つでも所得計算を修正すると全てやり直し
⇒税務視点でもグループ各社の管理・統制のしくみを万全に


16.社会福祉法人の会計士監査人就任 独立性に関する留意事項

・一定規模以上の社会福祉法人について、会計監査人の設置が義務付け。
・監事の場合 → 退任後1年経過まで監査契約締結不可。
・税務顧問の場合 → 顧問業務を解消するまで監査契約締結不可。
・上記を満たしたとしても、実質的に自己レビューとならないよう考慮する必要あり。


17.ショートレビューによる会計処理の主な指摘事項

監査法人によるショートレビューにおいて、主に以下の会計論点が指摘されることが多いと考えられる。

(1)売上の総額表示or純額表示
⇒代理店契約がある場合に、代理店への支払については、契約実態に従い、売上高の控除(純額)or費用処理(総額)の検討が必要。
⇒例えば、顧客に対する信用リスクや商品の在庫リスクを自社が追っている場合には、総額表示となる。

(2)売上原価と販管費の区分
⇒原価性を有するものは売上原価へ区分する必要あり。

(3)ソフトウェアの計上
⇒原価計算制度の構築し、外注費や人件費、間接費からソフトウェアとして資産計上するかどうかを検討する必要あり。

(4)税効果
⇒税効果会計基準に従って、DTADTLの計上が必要。
⇒上場準備の初期段階では、赤字会社が多く、DTAの回収可能性はないと判断されることが多い。

(5)減損会計

⇒固定資産の減損会計基準に従って、減損の検討が必要。







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