2016年7月23日土曜日

7/22 勉強会:利益連動給与の採用進まず、依然として手続や開示がネック 他


1.広大地通達の適用をめぐり課税処分の取消裁決が相次ぐ

■広大地
・その地域の標準的な宅地の地積に比して著しく地積が広大な宅地で開発するときに道路や公園などの公共施設用地を負担する必要があると認められるもの
⇒宅地が広いので、宅地内を行き来できるよう道路や公園などを作る必要があるような土地のこと
⇒路線価で評価した時より土地の評価が低くできるので納税者有利

・大規模な工場用地、マンションの敷地に適しているものは対象外となる
⇒施設を作るのに大き目の宅地が必要なものになるため

■裁決事例
・税務調査でその宅地が広大地ではないと更正処分を下されたが、裁判で税務署の更正処分を取り消す判決が相次いだ
・納税者側の想定や開発行為が合理的かどうかが判決の分かれ目となっている様相


2.適格現物出資(被現物出資法人)

■事例
現物出資法人A
・簿価⇒資産1,500、負債1,000(簿価純資産価額500)
・時価純資産価額⇒1,200
・対価はB
被現物出資法人B
・資本金300、資本剰余金900増加

■被現物出資法人Bの会計処理(時価純資産価額で受入した場合)
()資産 2,200      /
                 ()負債 1,000
                 ()資本金 300
                 ()資本剰余金 900

■被現物出資法人Bの税務処理
⇒適格現物出資なので、移転資産負債を簿価により受け入れたものとして計算する。
()資産 1,500      /
                 ()負債 1,000
                 ()資本金 300
                 ()資本金等の額 200

⇒したがって税務調整は以下となる。
()資本金等の額 700 / ()資産 700

■別表調整
別表四⇒不要

別表五()
⇒資産△700
⇒資本金等の額700

別表五()
⇒利益積立金額△700


3.利益連動給与の採用進まず、依然として手続や開示がネック

■平成28年度税制改正で、利益連動給与の拡充
⇒幅広い指標の使用が可能になった。(従来=当期純利益、経常利益、営業利益 等)
(算定の基礎となる指標 ※一例)
・営業利益、経常利益、当期純利益
1株当たり当期純利益
ROA(総資産利益率)
ROE(自己資本利益率)
・営業利益率

■平成283月決算の有価証券報告書で採用している旨の開示は34
依然として利益連動給与の採用はハードルが高い。
(主な理由)
・同族会社は対象外
・報酬委員会の決定や監査役適正書面の提出等の手続きが必要
・算定方法を有価証券報告書等で開示する必要があること


4.少額減価償却資産の損金算入、従業員数判定は期末でOK

少額減価償却資産の損金算入、すなわち、中小企業者等の少額減価償却資産の取得原価の損金算入の特例とは
・対象者:中小企業者等
・対象物:30万円未満の減価償却資産
・限度額:減価償却資産の合計額300万円
⇒全額損金算入(即時償却)

この対象者は、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人に限定
⇒従業員数は、少額減価償却資産の取得をした日の現況により判定
⇒法人が期末時の状況により判定する事とした場合は、期末時点の従業員数で判定OK


5.中小企業者等、特定中小企業者等

(1)中小企業者等とは
① 資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人
(ただし、同一の大規模法人に発行済株式等の1/2以上を保有されている法人等を除く)
② 資本または出資を有しない法人のうち常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人をいう。
30万少額特例、特定機械装置等の特別償却(取得価額×30%)が適用できる。
⇒生産性向上設備等を除き、税額控除(取得価額×7%)の適用はできない。

(2)特定中小企業者等
中小企業者等のうち、資本金3,000万以下の法人をいう。
⇒中小企業者等の特例に加え、特定機械装置等の税額控除の適用可。

※なお、いずれも青色申告法人が対象


6.今週の専門用語

■利益の状況を示す指標

利益連動給与の算定の基礎となる指標とは?
(1)有報に記載されるべき事項に調整を加えた指標
(2)これに準ずる指標

※準ずる指標の具体例
EBIT(経常利益+支払利息△受取利息+法人税)
ROCE(使用資本利益率)
ROIC(投下資本利益率)

※含まれない指標
・売上、株価、配当、CF


7.CbCRの収入金額、売却益はPL計上額で

■国別報告事項(CbCR)及びマスターファイル(ML)の記載要領、ローカルファイル(LF)の例示集が公表
・国別報告事項は、国別の活動状況に関する情報を記載
・マスターファイルは、企業グループの事業活動の全体像に関する情報を記載
・ローカルファイルは、国外関連取引における独立企業間価格を算定する為の詳細な情報を記載

■詳細が明らかになった、CbCRの記載事項
(1)収入金額
CbCRの作成、提出義務の足切り基準でもある
F/S等に記載される、全ての収益の合計額
⇒持分法による投資利益、負ののれん発生益等も含まれる。

・固定資産等の売却に係る収入は売却益を記載
売却益と売却損を総額表示している場合、売却益のみ記載
純額表示している場合、相殺した後の売却益のみ記載

(2)有形資産
・株式や債券等の金融資産は含まれず、投資不動産は含まれる
・減価償却累計額控除後の金額を記載

■追加情報
・表1で数値を記載し、表3で追加情報を記載(ただし、文字数の制限あり)
∴各国の税務当局に誤解されない為


8.平成28年度における法人税関係の改正について

主な論点のみピックアップ
■法人税率の引下げ
23.9%⇒23.2
※ただしH28.4.1H30.3.31までに開始した事業年度の税率は23.4

■欠損金の繰越控除
(1)控除限度額の引き下げ
H28.4.1H29.3.31までの開始事業年度は、所得金額の65%相当額
H30.4.1以後開始事業年度まで、年5%ずつ引き下げ。
(2)繰越期間の延長等(現状は9)
H30.4.1以後事業年度より10

■減価償却
H28.4.1以後取得の建物附属設備・構築物⇒定額法のみ

■その他下記事項の改正があった
・役員給与の損金不算入(特定譲渡制限付株式による給与)
・雇用促進税制の基準雇用者数に係る措置の見直し
・エネルギー設備取得に係る税額控除等
・割増償却や準備金など


9.LPS最高裁判決が他の外国事業体に波及

・外国で設立されたLPS(投資事業有限責任組合)が法人に該当するかどうか、過去の最高裁判決を基準に、地裁が判断

【判断基準となった最高裁判決(H27.7.17)
⇒下記、(1)で判断出来ない場合、(2)にて判断
(1)外国法令で法人に相当する法的地位を持つことが明白であるか否か
(2)権利義務の帰属主体であるか否か


10.LEDの取替工事と資本的支出・修繕費

■蛍光灯からLEDランプへの取替工事をした場合
(1)天井のピットに装着された照明設備(建附)の工事を行っていない場合
⇒修繕費

理由:建物附属設備となる照明設備は,ランプだけでなく天井に組み込まれた配線等も含めた設備全体をいう。
照明設備の1つの部品である蛍光灯をLEDランプに取り替えても,その部品の性能が高まったことをもって建物附属設備としての価値等が高まったとまではいえないため。

(2) 照明設備の工事も併せて行う場合
⇒資本的支出または修繕費

理由:工事によって照明設備の価値が高まるまたは耐久性が増している場合には資本的支出となる。また、価値の増加が明確でない場合にはいわゆる60万円基準、10%基準により判定し修繕費となる場合もあるため。


11.【マイナンバー】預金口座/証券口座とマイナンバー

■預金口座の取り扱い
H30.1.1以後、マイナンバーが紐付けられる。
・新規開設口座
⇒ マイナンバー登録が必要。

・既存口座
⇒ H30.1.1以後の銀行来店時にマイナンバー登録を求められる。ただし求めに応じる義務はなく任意。

■証券口座の取り扱い
H28.1.1以後、マイナンバーの登録が必要となっている。新規口座も、それ以前からある既存口座もすべて登録が必要。


12.役員退職慰労引当金の税効果

・以前はスケジューリング不能な一時差異⇒分類1の企業以外は税効果計上NG
・新ルールで見直し。
・以下の2つを満たせばDTA計上OKとなった
 ①損金計上時期が特定できないが、将来のいずれかの時点では損金算入できる可能性が高い
 ②将来のいずれかの時点で回収できることを「合理的な根拠をもって説明」できること


13.国際会計士倫理基準審議会

・会計士が順守すべき倫理規定を議論。
・下記について議論。
→違法行為への対応(関与先の違法行為に気づいた場合、経営者に「勧告する」。重大な違法行為に対しては直ちに当局に判断すべきか専門的な判断をする。)
→担当者の監査関与先への長期的関与
→倫理規定の構成の見直し
→セーフガードの見直し(阻害要因の認識について、形式ではなく実質判断を重視。)
→企業等所属の職業会計士に関する規程
→監査報酬切り下げプレッシャーに関して


14.事業再生の現実 2/4

1.中小企業再生支援協議会
⇒私的手続に分類される中の、準則型私的手続の一つ
⇒公的機関であり、産業競争力強化法を根拠とする機関
⇒公的な立場より、銀行との調整を行い事業再生を図る手法

2.協議会スキームの分類
・従来型
⇒銀行主体で、銀行が選んだ専門家がDD等を行う
⇒銀行サイドの意見が通りやすく、債務者の意見が反映されないことも
⇒数年経つと、再度経営不振に陥るケースもある
・検証型
⇒債務者が選んだ専門家がDDを行う
⇒債務者の意見が通りやすいが、銀行との調整が大変
・簡便型
DDを省略する
⇒リスケ案件のみしか採用できないスキーム

3.検証型の留意点
・債務者が選ぶ専門家によるDD等のレベルに大きく左右される。

・金融機関との調整の面で、弁護士の力量もキーポイント







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