2016年7月2日土曜日

7/1 勉強会:固定資産税の軽減措置適用の手続きが明らかに 他

1.相続税の節税策めぐり税理士法人が全面敗訴

・税理士法人が相続税の節税策として提案したDESにより法人税課税が発生したとしてクライアントが税理士法人を訴えていた事件
・税理士法人がDESにより生じる課税リスクの説明を怠った点に説明義務違反があったと東京地裁は判断
・税理士法人への損害賠償請求を認めた
・税理士法人は控訴をしている

DES
 債務を資本に交換する取引のこと
 債務者に対する債権を現物出資して株式の割り当てを受ける現物出資型のDESが代表的


2.直接交付型の分割型分割も時価譲渡に

■平成28年度税制改正で分割型分割の定義改正
会社法上は物的分割のみであるが、現実には対価が直接株主に交付されるケースが想定される。
⇒法人税法上、対価が直接株主に交付されるケースも分割型分割に該当することとされた(特定分割型分割)。

■上記に関連し法人税法62条が改正
以下が追記された。
非適格の特定分割型分割について、分割会社は対価を時価で取得
⇒直ちに対価を株主へ交付したものとする。


3.繰戻還付は前年の申告書記載税額に限定

■争点(国税不服審判所)
・前年分の青色確定申告書に記載のない退職所得に係る所得税額を、純損失(翌年分の事業で発生)の繰戻しによる還付金の対象とすることができるか否か

■事実関係
・請求人は平成2412月に「個人事業の開業等届出書」を提出した。
・平成24年分について期限内に青色申告をした。
・ただし確定申告書には、退職所得の金額や退職所得に係る所得税が記載されていなかった。
・翌年、平成25年分の純損失を平成24年分に繰り戻し、所得税の還付請求書を提出した。

■審判所の判断
・純損失が生じた前年分の確定申告について青色申告書の提出が要件とされている。(所法140④)
これを踏まえ、青色申告書に記載されていない退職所得に係る所得税の額を純損失の繰戻しによる還付金額の計算対象とはできない。

⇒退職後に事業を立ち上げるような場合=翌年に繰戻還付ができるよう退職所得の確定申告を行うことがベター


4.今週の専門用語

■期限切れ欠損金
青色欠損金の繰越控除の有効期限以内に使いきれなかった欠損金のこと。
現時点の有効期限は9(平成23年度改正前は7)

期限切れ欠損金は通常の事業年度では損金の額に算入されないが、法的整理(会社更生・民事再生)や会社解散等の一定の場合に限り損金算入可能。


5.リース会計基準改訂するか否かを検討へ

■企業会計基準委員会(ASBJ)が取り纏め予定の、「中期運営方針」の概要が明らかに
・「中期運営方針」とは、今後3年間の「日本基準」の開発の方針及び「国際的な会計基準」の開発に関連する活動を行うに当たっての方針を示したもの

■収益認識に関する包括的な会計基準
⇒平成3011日以後開始する事業年度に対する適用を当面の目標として優先的に開発

■国際会計基準審議会(IASB)から公表された会計基準のうち、企業の財務情報に大きな影響を与えるもの
⇒今後、日本基準を改訂するか否か、検討を行う
IFRS 9号「金融商品」(分類及び測定、減損、一般ヘッジ)
IFRS10号「連結財務諸表」(連結範囲)
IFRS11号「共同支配の取決め」
IFRS12号「他の企業への関与の開示」
IFRS13号「公正価値測定」
IFRS16号「リース」

IFRS16号「リース」
・すべてのリースをファイナンスリースとして取扱い、オンバランス処理する
・現行の日本基準と大きく差異あり
⇒仮に日本基準を改訂する場合、適用範囲(連結のみ、又は、単体も)をどうするか等、問題あり


6.固定資産税の軽減措置適用の手続きが明らかに

H28年度税制改正により、7月初旬より適用される中小企業等経営強化法に基づき、中小企業者が「経営力向上計画」を作成し、主務大臣から認定を受けた場合には、固定資産税の軽減措置等の特例措置を受けることが可能となった。

■要件
強化法の施行日(現時点では未定)からH31331日までの間に、「認定経営力向上計画」に記載された一定の機械装置を取得した場合に軽減措置を受けられる。

一定の機械装置とは、下記3要件を満たす必要あり
・販売開始から10年以内のもの
・旧モデル比で生産性が年平均1%以上向上するもの
1台の取得価額が160万円以上

■手続き(流れ)
(1)中小企業者は「経営力向上計画」策定時に取得する設備を決める
(2)設備メーカーを通じて担当する工業会等から証明書を入手する。
(3)主務大臣に「経営力向上計画」及び工業会からの証明書の原本を添付して計画申請する。
(4)主務大臣より計画認定書と計画申請書の写しが交付される。
(5)固定資産税納付時に、納税書類と共に、(2)(4)の写しを自治体に提出する。

■留意点
・認定までには申請書の提出から約1か月かかるため、
年末に認定を受けられない場合は、翌年の固定資産税は減税にならない。
・「経営力向上計画」認定申請書は中小企業庁のHPに掲載されている。


7.固定資産の税額調整

・固定資産を取得した場合、消費税の仕入税額控除は、取得した期に一括計算
※法人税の減価償却のような期間按分はない
・取得後、短期間で用途を変更した場合、不都合が生じる

()取得価格1億、消費税8百万の建物を取得
(1)建物を事務所用(課税対象)として取得し、翌年居住用(非課税対象)へ用途変更した場合
⇒取得した期に8百万の仕入税額控除を取れる
(2)建物を居住用として取得した場合
8百万円の仕入税額控除は取れない

⇒取得した翌年以降、(1)(2)共に居住用の建物として使用しているのに、消費税負担
8百万円の差が生じてしまう
⇒不公平をなくすため、下記規定が設けられている

(調整対象固定資産の規定)
・取得価格1百万以上の固定資産を取得した場合で、3年以内に用途変更した場合は消費税の調整計算が必要となっている
※課税売上割合が大幅に変動した場合も調整計算対象
1百万判定は、税抜き
・下記に該当する場合は調整計算対象外
-土地などの非課税資産、棚卸資産の取得
-取得した期が非課税事業者、簡易課税適用事業者
-個別対応方式の共通対応資産を購入した場合


8.法人税:少額減価償却資産の特例と圧縮記帳

■重複適用OK
措置法の少額減価償却資産の損金算入特例(30万未満の減価償却資産にかかる一括損金算入)と法人税法上の圧縮記帳(例:国庫補助金の圧縮記帳)は重複適用が認められているため併用ができる。

■具体例
・軽減税率対策補助金20万を取得
・軽減税率対応のためレジを35万で購入
・圧縮記帳を適用し圧縮損20万を計上

税務上、圧縮記帳を適用した場合の固定資産の取得価額は「圧縮記帳後」の金額とされているため、レジの取得価額は15万(35-20万)と認識される。

したがって、30万未満の減価償却資産に該当することとなり、一括損金算入が可能。

■留意点
この取り扱いは「法人税上の圧縮記帳」が前提であり、「措置法上の圧縮記帳(例えば特定資産の買換え特例)」の場合は重複適用できないので注意が必要(措置法のダブル適用は禁止)。


9.【法人税】熊本地震に係る災害損失特別勘定の繰入額の損金算入

■通常の取り扱い
被災資産についての通常の取り扱いとしては、下記の2つがある。
 ・被災資産の評価損を計上
 ・修繕費用等を計上

■災害損失特別勘定の繰入額の損金算入
東日本大震災と同様に、個別通達により災害損失特別勘定の繰入額の損金算入が規定された。
次のいずれか多い方の金額が繰入限度額となる。
 (1)「被災資産の帳簿価額」-「被災事業年度終了日における被災資産の時価」
 (2)被災資産に対して、災害のあった日から1年を経過する日までに支出すると見込まれる費用(修繕費用等)の見積額
  ※保険金等で補てんされる金額を控除した額
  ※(1)については通常の評価損を計上したものは除かれる。
  ※(2)には被災資産の取壊し又は除去費用のほか、損壊防止のための費用が該当

■適用要件等
 ・災害損失特別勘定として経理する
 ・明細書を申告書に添付する
 ・損金算入した翌期の益金に算入する(一部例外あり)


10.賞与引当金と税効果

・賞与引当金は将来減算一時差異に該当し、回収可能性があれば、繰延税金資産を計上する。
・流動資産に計上される

・役員賞与にかかる引当金
 ⇒税務上損金になるもの(事前確定届け出等):繰延税金資産計上
 ⇒税務上損金にならないもの:繰延税金資産計上できない


11.グループ法人税制と連結納税制度の比較

(違う)
・制度の適用       (グ)強制   (連)任意
・損益通算         (グ)なし    (連)あり
・欠損金           (グ)各単体 (連)一部全体で使える
・加入時の時価評価 (グ)なし    (連)あり
・投資簿価修正     (グ)なし    (連)あり
・青色申告制度     (グ)あり    (連)なし※

※なお、連結納税制度に「青色申告制度」はない。連結法人は当然に欠損金の繰越控除、租税特別措置法に規定されている各種の優遇措置を受けられる。

(同じ)
・譲渡損益繰延     (グ)あり    (連)あり
・寄付金損金不算入 (グ)不算入 (連)不算入
・受贈益益金不算入 (グ)不算入 (連)不算入


12.日本企業の海外進出

海外において、国内のみで事業展開している時には想定できないリスクが発生することがある。
このようなカントリーリスクは企業努力では回避できない。
上場会社は有報の「事業等のリスク」で当該リスクの詳細を開示

1)上場審査上のポイント
・事業計画において、カントリーリスクが実際に生じた場合に備えての対応策を明確にしておくことが必要。
Ex:工場建設の地域分散化
・海外展開によりグループ売上増加を計画している会社は、事業継続性を検討し、想定通りにならなかった場合に備えたリスクヘッジ手段を説明できるようにする必要あり。
・連結グループ経営の観点から、親会社から海外子会社の情報が適時に入手できるような管理体制を構築する必要あり。

2)海外進出のメリット
・企業の知名度の向上
・現地通貨での資金調達

3)海外進出のデメリット

・異なる会計基準かつ日本語以外の言語でFSを作成








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