2016年3月12日土曜日

3/11 勉強会:資本政策の作り方 他

1.IBM事件が残した課題と今後の実務への影響
IBM事件が決着
・最高裁は国側の上告受理申立てを不受理とすることを決定
・納税者勝訴が確定

■課税自体の課題
・国側は、IBM事件で「子会社株式の譲渡損の損金算入」を否定していた
 ⇒みなし配当の益金不算入を否認すべきだったのでは?
・平成13年度の改正で、自己株式の買い取りに伴いみなし配当が生じることになった
 ⇒譲渡損益の計算でみなし配当分が対価の額を減らすことになるので譲渡損が生じる
・みなし配当が発生⇒譲渡損が生じるという順番、逆はない。

■今後の課題
・法人税法132条の解釈がゆがむのではないか。
・目的に関係なく、結果に経済的合理性がなければ租税回避となるかも。
・経済的合理性とは何か。その有無をどう判断するかは非常に難しい問題となりうる。
 ⇒経済学や経営学で論じられる部分のため


2.所得税-債務免除益は一時所得と高裁判断
■事例
・航空機リースに関する組合事業を清算
・その組合事業清算の際に、金融機関から債務免除を受けた
・その結果、組合参加者が経済的利益を受けた
⇒当該経済的利益の所得区分は何か。
■結論
・一時所得に該当(納税者勝訴)
⇒一時所得の要件である非継続要件等を満たすため
■参考(国側の主張)
・東京地裁時
 雑所得
・東京高裁時
⇒不動産所得には不動産等の貸付業務の遂行により生ずべき付随収入も含まれると主張
(航空機を購入するための借入にかかる債務免除益も不動産等の貸付業務と関連する)
⇒東京高裁は、債務免除益は航空機を使用収益させる対価・性質を有するものではないと判断。


3.決算短信は「サマリー情報」「経営成績等」「財務諸表」に限定
・東証が決算短信の見直しを進めている。
⇒記載事項は原則、「サマリー情報」「経営成績等」「財務諸表」に限定
⇒「経営方針」や「継続企業の前提に関する重要事象等」は記載不要
⇒例外として「会計基準の選択に関する基本的な考え方」などは記載を継続
※「経営成績等」・・・従来の分析的な記載から概況の記載にとどめる
※「財務諸表」・・・精査が完了していないで、これを開示しなくても投資判断を誤らせない場合であれば添付を求めない

また有価証券報告書の開示内容も検討されている。


4.DO保険料会社持ちでも給与課税なし
D&O保険
・役員の不法行為や重過失の結果、取引先や従業員などに損害を与えた場合の訴訟をカバーする保険
・「普通保険特約」と「株主代表訴訟補填特約」に分けられる

■従来
・会社法上「株主代表訴訟特約」(役員の損害賠償責任に係る部分)の保険料を会社が負担すると忠実義務違反に該当すると考えられていた
・それに伴い、税務も「株主代表訴訟特約」の会社負担分は給与課税扱いとしていた

■今後
・経産省が「株主代表訴訟特約」の保険料を会社が負担したとしても会社法上は問題ないとの解釈を示した
・それに伴い、国税庁も通達の内容を224日付で更新
 (1)取締役会の承認
 (2)社外取締役が過半数である委員会の同意or社外取締役全員の同意
 上記2点の条件を満たした場合に給与課税を不要に


5.税効果適用税率指針、3月中に公表へ
■公開草案に対するコメントについて検討
⇒ 大きな変更点はなく、取扱いを明確化するのみ

■以下のケースにおける取扱い
・条例で超過課税による税率で課税することが規定されている
・地方税法の改正案が国会で成立している
・条例の改正案が各地方公共団体の議会で成立していない
⇒ 改正後地方税法に規定される標準税率に、改正前条例に規定される超過課税による税率に係る差分を考慮する税率

具体的には、
(1) 改正後標準税率に改正前における超過税率と標準税率の差分を加算する方法
(2) 改正後標準税率に改正前における超過税率の標準税率に対する割合を乗ずる方法

Ex. 改正前:標準税率3%、超過税率4% ⇔ 改正後:標準税率:3.5%、超過税率?
(1) 3.5%(4%3%)4.5%
(2) 3.5%×(4%÷3%)4.7%

⇒ 上記算定方法は例示である旨を明記する予定 
∴税制改正の趣旨などを勘案し、他に合理的な方法があれば、当該方法による算定も容認され得るはず

■決算日後において税制改正法案が国会で成立した場合の取扱い
⇒ 決算日後に税率の変更を伴う法律又は条例が改正した場合、税効果会計基準に従い、内容及び影響を注記する旨を明記する予定
∴現状、明文化されていない


6.三世代同居は税制上の要件にならない
既存住宅につき、三世代同居の改修工事をした場合、税制上の軽減措置を受けることができる。

■要件
・工事費用50万円超
・キッチン、トイレ、浴室
・ローン控除又はローン残高5%の税額控除のいずれかの適用が可能

「三世代」が必ずしも同居していることが要件ではない。
将来的な三世代同居検討しているや三世代で同居することを考えていない者でも、上記要件を満たせば軽減措置を受けることが可能。


7.スイッチOTC薬控除の対象は成分で判断
スイッチOTC薬控除とは医療費控除の特例であり、ロキソニンや胃腸薬等の購入価額のうち12,000円を超える部分を所得金額から控除できる。
ただし医療費控除との併用は不可。

対象となる医薬品は商品名ではなく「薬の成分」で判断する。
同じ風邪薬でもスイッチOTC薬控除の対象となる薬とならない薬が出てくるため、どの医薬品が対象となるか判断する必要あり。
※税制改正法案設立後に周知される予定


8.報酬委員会
・会社法上、指名委員会等設置会社において設けられる委員会
3名以上の取締役(過半数は社外取締役)により構成
・取締役・執行役の報酬決定方針を決め、経営者報酬の対外説明責任を果たす役割
・監査役会設置会社、監査等委員会設置会社も「任意」で設置可能になりそう


9.財産債務調書まとめ
平成27年度より従前の「明細書」に代えて導入されている。
■提出義務者
次の(1)(2)両方を満たす者
(1)総所得金額の合計が2,000万円超
(2)12/31において、3億円以上の財産又は1億円以上国外転出
 特例対象財産を有すること

■未提出等に対する罰則
なし

■加算税の軽減措置等
(1)期限内に提出した場合、記載した「財産債務」に関する所得税等に申告もれが生じてもその部分の加算税を5%軽減
(2)逆に提出しないまたは記載漏れした「財産債務」に関する申告もれが生じたときはその部分の加算税を5%加重

※未提出でも罰則はないが、申告漏れ(たとえば相続財産に入れなかったなど)があった場合は加算税が加重されるため実質的には罰則あり

■その他
・税務署では所得税の申告書とは別に管理
・税務署では7年間保存


10.消費税:軽減税率関連の改正
平成28年度の消費税の改正事項のうち、軽減税率関連は次のとおり。
・平成2941日に、軽減税率を導入する。
・平成3341日に、適格請求書等保存方式(いわゆる「インボイス制度」)を導入する。
・軽減税率の導入から平成33331日までの4年間は、区分記載請求書等保存方式とする。
・軽減税率の導入から1年間(中小事業者は4年間)は、売上税額を簡便に計算する特例を設ける。
・軽減税率の導入から1年間は、仕入税額を簡便に計算する特例を設る。
・適格請求書等保存方式の導入から6年間は、免税事業者からの仕入れの一部について仕入税額控除を認める経過措置を設ける。


11.任意の諮問委員会
・監査役会設置会社では、ガバナンスの強化等を理由に任意の諮問委員会を設置している会社も少なくない。
・指名委員会又は報酬委員会に相当する任意の委員会が有る上場会社は459社ある
⇒監査役会設置会社と指名委員会等設置会社の双方のメリットを享受できる仕組み。
 ハイブリット型などと呼ばれている。


12.マイナス金利導入による債権の会計処理
1. マイナス金利の債権を満期保有目的の債権に区分できるか
(1) 結論
⇒ 満期保有目的と出来ない
(2) 理由
⇒ マイナス金利ということは、満期まで保有すると投資元本を回収できない
⇒ 取得価額以上の売価で途中売却しなければ損失となる
⇒ 損失となる債権を満期まで保有することに合理性はなく、満期まで保有するということは考えにくい。

2. マイナス金利の債権をヘッジする金利スワップに特例処理の適用は可能か
(1) 結論
⇒ 特例処理は可能
(2) 理由
⇒ 特例処理が認められる債権は満期保有目的の場合のみ
⇒ 債権本体がマイナス金利ならば、スワップもマイナスの金利
⇒ マイナス同士で効果は相殺さる。
⇒ ヘッジされた債権の金利はプラス
⇒ 金利がプラスならば、満期保有することに経済的合理性はある
⇒ 満期保有に区分でき、特例処理の適用も出来る余地がある。


13.3つの視点からおさえるグローバル原価企画の勘所
■プロセス
 ・商品のライフサイクル損益を把握、利益貢献の大きい収益源を明確にする
 ・企画、構想段階で生涯利益を設計し、適時に実績を把握、ギャップの解消、PDCAサイクルを回す
 ・コストの作り込み(仕様とコストのトレードオフを常に意識)
 製品=販売仕様(顧客の意思決定に資する「みえる」機能)+技術仕様(製品機能を担保する顧客に「みえない」機能)として、それぞれを分解する(スペック・コストコントロール)など。

■組織
 ・原価企画部門(チーム)の強化
 ・原価企画のプロフェッション人材を育成

■データ
 ・生産現場の最新の実力値を把握、現在の製品別実際原価情報のフィードバック
 ・インプット情報の整理、ナレッジの蓄積


14.H283月期(連結)計算書類作成上の留意点
■改正企業結合会計基準等
 ・当期に合併等がなくても(重要性がない場合を除き)過去に合併がある場合や、将来に可能性がある場合には、注記が必要

1株当たり情報
 ・注記の文言につき、以下の「」部分が追加
1株当たり「親会社株主に帰属する」当期純利益

■法定実効税率の変更
 ・会計規上は、税率変更に係る注記の定めはなく、必要に応じて追加情報や税効果会計に関する注記で開示


15.CG対応で感じる疑問
CGコードはどの章から読み始めるといいか
4章→1章→3章→5章→2

■取締役会等の責務
・「経営」「監督」「執行」「監査」に分けると理解しやすい
・「経営」:株主から経営者に委託され、経営者側で執行、監督そして監査されるもの
・「監督」:執行者に執行権限を委譲する
・「執行」:監督機関から執行権限を委譲されている、監督機関が決定した方針等に基づき業務を執行し、その結果等を監督機関に報告する
・「監査」:監督機関と執行者を監査する、業務監査は適法性を対象としており、妥当性は対象としていない


16.資本政策の作り方
(1)基本方針決定のための検討項目
1.上場市場および時期
  ⇒各市場が規定する形式基準・実質基準、会社の規模などを考慮して決定

2.上場時の発行済株式総数
  ⇒上場時の1株当たり利益の目標値と上場時の利益水準から逆算して求める

3.公開株数(公募株数と売出し株数との合計数で上場時に市場に放出する株式数)
  ⇒各市場が規定する形式基準の一つに、流通株式(※1)または浮動株比率(※
2)があり、公開株数の目標を設定する場合、最低でもこの基準を満たす必要がある。
  (※1)役員が保有する株式や自己株式などの流通可能性が認められない株式以外の有価証券
  (※2)発行済株式数のうち、実際に株式市場で売買可能な割合

4.上場後の株主構成
  ⇒オーナー一族でどのくらいの持株比率を確保するか、社外の安定株主をどのくらいの持分比率で確保するかの目標を設定

5.創業者利潤の目標額
  ⇒売出し等によりオーナーの持株比率は低下するため、オーナーがどの程度資金を回収する必要があるかについて、上場前の資金負担額などを考慮し検討

6.インセンティブ・プラン
  ⇒従業員持株会の設置の要否、ストック・オプションの実施の要否などを検討

(2)基本方針決定後の効果の検討
1.スケジュール表と株主構成推移表の作成
  ⇒実施するファイナンスの手法、時期を決定し、そのスケジュール表を作成
   スケジュール表に基づき、株主構成の推移表を作成し、上場後の安定株主比率を検討

2.会社の資金調達額
  ⇒上場前の資金調達額の予想額を算定し、設備投資計画等に基づく資金需要を満たすかどうか検討

3.オーナー一族の資金負担および回収額の検討
  ⇒上場前に借入等で資金負担した総額と、上場時のキャピタルゲインとを比較


17.今週の新規上場会社
上場・公開日    社名     銘柄コード 市場  公募価格(円)
39          プラス     2424      マザ  4,370
311        フィット    1436      マザ  1,890

(ブラス)
業種:サービス業
事業内容:完全貸切のゲストハウスにおける、挙式・披露宴に関する企画・運営等
主幹事:東海東京証券
監査法人:あずさ

(フィット)
業種:建設業
事業内容:規格住宅や規格戸建賃貸住宅の販売及び太陽光発電施設の販売
主幹事:SBI証券
監査法人:トーマツ














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