2016年2月20日土曜日

2/19 勉強会:消費税:<軽減税率>売上税額の計算の特例 他

1.一時所得の支出解釈示した最高裁判決を踏まえた注目裁決
・法人が契約した生命保険契約を解約したことにより個人が受領した解約返戻金
 ⇒所得税法上一時所得となる
・この一時所得の計算をするときに
 「その収入を得るために支出した金額」を控除することができるが
 法人が支払った保険料は支出した金額として控除してよいかどうかを
 争った事例(審判所の裁決)

・結論:控除することはできない

・理由:法人が支払った保険料はその収入を得た個人において
    自ら負担して支出したものではないから
 …平成24113日付の最高裁判決を踏襲
 …法人が支払った保険料は損金経理されている=個人が負担したものとは言えない


2.中小法人の損金算入をめぐる最近の税務紛争
1.商品券購入費用の交際費計上否認事件
・事案
 取引先、関係者に商品券を交付。
 当該、商品券購入費用を交際費として損金算入した上で法人税申告。
・論点
 以下が不明な(証拠がない)ため、使途不明金ではないのか。
 ・配布先
 ・配布時期
 ・配布金額
・結論
 損金算入不可
 ⇒上記配布先等を証明する具体的・客観的な資料がないため、使途不明金と判断。
 ⇒口頭での証言だけでは対抗できない。

2.前期損益修正損の損金算入否認事件
・事案
 H21.3月期決算で、H13年度に計上漏れしていた外注費を損金経理し、
 消費税の申告では仕入税額控除した。
・論点
 会計慣行であるかもしれないが、公平な所得計算上は認められないのではないか。
 ⇒前期損益修正損として同一の費用を複数の事業年度で計上できる余地がある。
 ⇒(私見になります)例えば翌年も前期損益修正として同じ金額を損金とするなど。
・結論
 損金算入・仕入税額控除ともに不可
 ⇒更正の請求を行えば可能(現在は申告期限から5年以内)


3.税効果開示は平成303月期適用が目標
■現行の繰延税金資産の回収可能性に関連する注記事項
・繰延税金資産の発生原因別の主な内訳
・評価性引当額
・重要な税率差異の原因となった主要な項目別の内訳
H271228日に公表の「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」には、新たな開示は追加されていない。
⇒現在開示項目が検討されている
⇒変更後の開示はH2941日以後開始する事業年度の年度末から適用する方針


4.要介護認定者の障害者控除適用に注意
■障害者控除≠要介護認定者
・介護保険法に基づく要介護認定を受けたことをもって、直ちに障害者控除の摘要を受けることはできない

■障害者控除を受けるためには
・市区町村が発行する「障害者控除対象者認定書」が必要
 (1)年齢が65歳以上
 (2)障害者に準ずると市区町村が認定した場合

⇒認定にあたっては下記等の基準を満たす必要がある
・対象者が要介護認定を受けていること
・日常生活自由度(寝たきり度)などで一定の基準を満たしていること


5.企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」について
■改正のポイント
・会社を五つの区分に分類にして回収可能性を判定するという基本的なルールに変わりなし

・分類23の要件における判断要件
 改正前:会計上の経常利益
 改正後:税務上の課税所得

・分類2におけるスケジューリング不能差異
 改正前:回収可能性なし
 改正後:一定の要件(1)を満たす場合、回収可能性あり
 (1) 将来のいずれかの時点で損金算入される可能性が高い、かつ合理的に説明できる

・分類3における課税所得の見積年数
 改正前:おおむね5
 改正後:一定の場合(2)5年を超える期間も可
 (2) 回収可能性を合理的に説明できる場合

・分類4に関する特例
 改正前:一定の要件を満たす場合、分類3と同等の取扱い
 改正後:一定の要件を満たす場合、分類3又は分類2と同等の取扱い

・分類4・分類5の要件について
 改正前:重要な繰越欠損金、債務超過や資本の欠損の残高(ストック)を基礎とした判断基準
 改正後:分類1~分類3と同様、課税所得(欠損金)の計上額(フロー)を基礎とした判断基準


6.消費税軽減税率対象外の「外食」とは
以下3要件を満たすものは、「外食」と判断され消費税の軽減税率の対象外

・飲食店を営む者が提供した食事であること
・テーブルや椅子があるお店での食事の提供であること
・その場で食べる等の役務提供を受けられること

1つでも要件を満たさない場合は、軽減税率の対象となる


7.「おまけ」の割合、原価でも判定可
・飲食料品の譲渡は、消費税軽減税率の対象(8%)
・ただし、酒類、外食などは軽減税率対象外(10%)

【注意が必要な取引】
(1)食品と非食品の資産が一体となっているもの(おまけ付き、福袋など)
・全体が1万円以下で、金額の2/3以上を食品が占める場合
 ⇒軽減対象
・金額の判定は、定価、売価、原価のいずれでもOK

(2)ケータリング
・依頼者が指定した場所で加熱、調理、給士等を行う場合
 ⇒軽減対象外
・企業が社内で開催したセミナー後の懇親会、ホームパーティにシェフを派遣してもらい調理・後片付けまで依頼する場合
 ⇒依頼者が指定する場所(社内、自宅)にてサービスを受けるので軽減対象外
・ピザや寿司などの宅配
 ⇒配膳や給仕を伴わない単なる「出前」なので、軽減対象


8.消費税:<軽減税率>売上税額の計算の特例
■売上税額の簡便計算
売上を税率ごとに区分することが困難な事業者のため、売上税額の簡便計算が認められる。

(1)仕入を管理できる卸売・小売業者
⇒仕入総額に対する軽減対象品仕入の割合をベースにして計算可

(2)(1)以外の事業者
⇒連続10営業日の売上に対する軽減対象品売上の割合をベースにして計算可

(3)(1)(2)の計算が困難な事業者
⇒軽減税率売上割合0.5として計算可

■適用時期
・基準期間の課税売上高5,000万以下⇒平成2941日から原則4年間適用可
・基準期間の課税売上高5,000万超⇒平成2941日から原則1年間適用可


9.消費税:軽減税率 同一商品でも売価によって税率に差異
『高級重箱付きおせち』などのオマケ付き食品(=『一体商品』)は原則として軽減税率の対象にならない。
ただし以下の2つの要件を両方満たす場合は、オマケを含む全体が軽減税率の対象となる。
 (1)一定金額以下[現行案ではおそらく10,000]
 (2)主たる部分が飲食料品

(1)の要件は実際の販売価格により判断される。
従って(2)の要件を充足している定価10,100円の『高級重箱付きおせち』を販売するケースでは、販売価格に依って下記のとおり適用税率が異なることとなる。

A:定価で販売された場合には(1)を満たさないため10%の税率が適用される。
B:3割引で見切販売された場合には(1)を満たすため8%の税率が適用される。


10.関連当事者
・関連当事者=親会社、子会社、兄弟会社、主要株主及びその近親者、役員及びその近親者
・関連当事者との取引で重要性が高いものは下記を注記。
  会社と関連当事者との関係
  取引の内容
  取引種類別の取引金額

(例外=注記不要)
 ・一般競争入札による取引
 ・預金利息、配当の受け取り
 ・取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引
 ・役員報酬、役員賞与、退職慰労金


11.アウトソーシングの最新動向
1. アウトソーシング対象業務範囲の変化
(1) 従来
・日常的に行われる取引など、比較的単純な取引を対象
(2) 近年
・月次決算の調整など、対象業務範囲が拡大
・自動化ツールを用いて作業を効率化し、判断支援業務まで行うケースも増加

2. アウトソーシング実施上の留意点
アウトソーシングでは100%業務を移管できるわけでなく、下記のような制約事項がある。
(1) 物理的制約事項
⇒ 顧客先でないと作業できないなど、場所的な問題から100%移管できないケースがある。
(2) 経営判断や承認権限
⇒ アウトソーシングの目的は業務の効率化
⇒ 経営に関する意思決定などは移管できない。
(3) 資格要件
⇒ 資格を要する業務などの場合には移管できないこともある。


12.DDの最近の傾向と今後の方向性
■売り手によるDDの増加
 売却に先立つ売り手によるDD
 ⇒買い手DDにより多数の指摘事項が挙げられ、当初想定していた価格での売却が困難になる可能性ありこのような事態を避けるために、売却に先立ち売り手がDDをするケースが増加している。

■今後:リスク発見型から未来志向型へ
(従来)
 リスク発見のためのDD
 ⇒認識したリスクを回避軽減するために買収価格と契約事項の中でどう担保していくかを目的とすることが中心のDD
(現在)
 リスクを割けるだけでなく、どう対応して乗り切るかを含めた提案(未来志向型のDD)
 ⇒買収後の経営を重視、シナジー創出型のDD
 ⇒先の読めない時代に適応したDDとしてより求められつつある


13.各種DDの連携・調整のポイント
①各DD実施者が把握したリスク情報を連携・共有する
 (財務DD、法務DD、人事DDなど)
②リスク情報の統合・定量化をする
 ⇒各DD領域において、リスク金額の測定・見積りまで実施することが望ましい
③財務DDにリスク情報を集約する
 ⇒企業活動は最終的にすべて財務データとなるため
④将来計画の検証をする
 ⇒リスク情報をしっかりと将来計画の検証にも役立てることが重要
⑤企業価値評価に反映する

DDレポートの効果的な使い方
DDレポートに書かれているリスク事項を、買収価格、表明保証、クロージング条件等の契約条件へ反映させるかという視点で検討することが重要。


14.ROE目標値の設定
■伊東レポート(※)による「ROEは最低限8%を達成」の根拠は
日本株に対する国内外の機関投資家の期待収益率としての資本コストの調査結果を引用
・国内機関投資家 6.3%
・海外機関投資家 7.2%

※経済産業省発表「持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係構築~」プロジェクト最終報告書(伊藤レポート)」

(参考 2012年暦年ベースのROE
・日本  5.3%
・米国 22.6%
・欧州 15.0%

ROEの下限は
ISS(世界最大の議決権行使助言会社)は「過去5期の平均ROE5%を下回る企業」=資本生産性が低い企業
ROEが改善傾向に無ければ、取締役の選任の反対を推奨
・改善傾向とは、「ROE基準を満たさない場合でも、直近会計年度のROE5%以上ある場合」


15.テレビが録画不可になる?
4k放送の開始(現在の予定では地上波は2020年 前倒しの可能性大)に合わせて、テレビが録画不可になる可能性が出てきた。
・現在、官民一体で4Kデジタル放送を検討している次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)で検討中。
・デジタル放送になって以来、技術的には「録画不可」とすることは既に可能だが、実際には運用されてこなかった。
・「録画不可とする」「録画は可能だがCMスキップは不可とする」等の案が現在議論されている。
・民放各社は、自社提供の「見逃し視聴サービス」(フジテレビオンデマンド、TBSオンデマンドなど)に視聴者を流したい考え


16.規程作成のポイント
(1)法律・規則の遵守
規程には、各種の法律・規則等によって制約を受ける。
・基本規程および組織規程
⇒民法、会社法、独占禁止法等
・人事労務関連規程
⇒民法、会社法、労働基準法等
・経理等業務関連規程
⇒会社法、税法、金融商品取引法等
法令等の改正があった場合には、タイムリーに関連諸規程を改訂する必要あり。

(2)諸規程間の整合性
上場審査上、フローチャートと規程を照合することにより、内部統制の有効性、規程の十分性が検証されるため、フローチャートとの整合性にも注意が必要である。

(3)運用可能性
会社の実態に即さなければならないため、業務等の改善を進めながら、関連する部署との協議を十分に行い、運用可能な規程を作成することが必要となる。

(4)規程作成上の留意点
以下の点に留意する必要がある。
・運用期間を念頭に置いた長期的な整備スケジュールを作成し、作業担当者に周知
・整備計画に基づいて、分担表と進捗管理表を作成、作業の進捗管理を定期的に実施
・規定類に使用する用語、文体等の必要事項を定めたマニュアルを作業前に作成、事前配布


17.今週の新規上場会社
なし










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