2016年1月25日月曜日

1/22 勉強会:税制改正による定額法変更で企業に混乱が生じる可能性大 他

1.住宅取得等資金の贈与を受けた場合の審理上の留意点に係るQA
■贈与を受けた後、外国に転勤になった場合
・平成271月に贈与を受け、3月にそれを頭金としてハウスメーカーと契約
・引き渡しは10月の予定
・平成274月より海外転勤になる予定(単身赴任)
・完成引き渡し後は、日本に残った家族が新築の家に住む
⇒住宅取得資金の特例の適用あり(家族が居住を開始するため)
※たとえば、家族も海外転勤についていき、10月の引き渡し以降に居住していない場合は適用なし

■連年で贈与を受けた場合
・平成26年に父親から頭金にあてるため200万円の贈与を受ける
・平成26年分は贈与の適用を受けた(旧措置法の適用)
・翌年に残金支払のため、父親から300万円の贈与を受けた
⇒平成27年分については、住宅取得資金の特例の適用なし
※住宅取得資金の贈与に関する規定は、何度か改正されていて直近では平成2711日以後贈与分について改正があった。
 よって、平成26年の旧措置法の適用を受けた者は、平成27年以後の贈与分について適用を受けることができない


2.税制改正による定額法変更で企業に混乱が生じる可能性大
■平成28年度税制改正による減価償却制度の見直し
・建物附属設備及び構築物の償却方法が定額法へ
・対象:平成2841日以後に取得するもの
■監査上の取扱いに注意
・この税制改正を理由に償却方法を変更した場合には「正当な理由による会計方針の変更」に該当しない可能性あり
⇒税制改正以外に定額法に変更する合理的な理由を企業側が説明する必要が生じる

「正当な理由による会計方針の変更」と認められなかった場合には、会計上=定率法、税務上=定額法とし、二重に管理する事態になりかねない。


3.裁決事例紹介 納税義務者への事前通知、取引先への照会には不要
■概要
Aが所得税の確定申告を行った
・医療費控除欄で、Aの母の介護サービスの金額を含めていた
・税務署が介護サービス会社とAの母の間での金銭取引を事前照会
 (Aへの事前通知なし、介護サービス代金はAの母が支払っていた)
・上記に則り税務署がAへ更正処分を行った

■争点
・本件の更正処分に係る調査手続きは国税通則法違法かどうか
 …納税義務者への事前通知なしで取引先へ確認を行った行為

※国税通則法第74条の9
 納税義務者に対し質問検査等を行う場合には事前通知をする

⇒今回の事前照会は納税義務者に調査をしたわけではなく、取引先(≠納税義務者)に行ったため国税通則法違反とはならない。


4.監査契約の更新は新規契約に該当せず
■粉飾決算を行った、東芝の監査を行っていた、新日本有限責任監査法人に対し、金融庁が行政処分を行った。
 ・新規契約締結の業務停止処分(3ヶ月間)
 ・業務改善命令
 ・課徴金納付命令(21億円1,100万円) ⇒ 監査法人に対して、初めて

■「新規契約締結の業務停止処分」とは
 監査業務の新規契約のみならず、監査以外の業務の新規契約も該当
 ただし、既存の監査契約の更新は該当せず(業務の拡大となるものではないため)
⇒ 影響は軽微

 また、以下のような場合も、基本的には、該当せず
 ・既存契約に密接に関係した、新規契約締結(既存の契約先が会社分割した場合など)
 ・新規上場クライアントに対し、既存の任意契約を金商法に基づく監査契約に切り替える
 ・既存の契約先が過年度財務諸表を遡及修正する場合における監査


5.青年会議所の会議への参加交通費を損金と認めず
■事例
・会社社長は青年会議所の会員。
・青年会議所の会議出席のために生じた旅費交通費を自社の損金に算入していた。
・原処分庁側は事業遂行上必要な費用ではないため役員給与と判断。

■争点
青年会議所の会議に出席するための費用が、自社の損金に算入可能か否か

■会社社長の主張
・会議所の会員を通じて取引先となった会社より1億円の売上があった。
・青年会議所の活動に関する支出は、会社の受注活動費用としての性質あり
・上記理由により会議出席に関する諸費用は、、会社の事業遂行に必要な費用であり、社長が負担すべきものでないため、役員給与には該当しない。

■審判所の判断
・会議出席の費用は、あくまでも青年会議所の活動目的を遂行するための費用。
⇒青年会議所の活動に付随する副次的な費用であり、社会通念上に照らしても、社長の会社の事業遂行に必要な費用とは認められない。
・社長が支出した交通費等は個人で負担すべきもの。
⇒定期同額給与には該当しないため、損金算入できないと判断


6.プロ野球新人選手が税金について学ぶ
・今期プロ入りした12球団選手を対象に、東京ドームホテルで税金研修会が開催された
・新人選手が脱税に関わった過去の事例を紹介しながら、申告義務を説明


7.2016年における税務紛争の動向
・近年の重要な税務紛争は、資本等取引、組織再編成、租税回避の3分野
・資本等取引、組織再編成
 ⇒H13年度改正以降取引が増え、税務調査官の経験がアップ、指摘が増加
・租税回避
 ⇒IBM事件の高裁判決で、132条(同族会社の行為計算否認)の解釈が変更
 ⇒従来の租税回避判断:
 「行為又は計算が、異常、かつ、租税回避以外に正当な理由がない場合」
 ⇒現在の租税回避判断:
 「独立当事者間の通常の取引と異なる場合」
 ※租税回避の意図がなく、租税回避以外に正当な理由があったとしても関係ない


8.有利発行
新株等を引受人に特に有利な価格で発行すること。

100%資本関係→有利発行という概念はない。
税務上→時価-発行価額 > 時価の10%の場合有利発行 (法基通2-3-7)
 ※会社法上の有利発行かどうかは問われていない。

時価については、財産評価基本通達に定める非上場株式の純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額として最高裁判決あり。

課税関係(時価-発行価額について)
・個人が低額引受→所得税or贈与税
・法人が低額引受→受贈益課税
 ※既存株主→引受人へ経済的な利益が移転するため
  なお既存株主の課税関係は必ずしも明確ではない

関連裁判
→神鋼商事が大阪国税局より申告漏れ(受贈益)を指摘され、現在裁判中で1審敗訴、2審中。


9.消費税:入居者から受け取る違約割増金の取り扱い
Q
A社は不動産賃貸業を営んでいる。
・入居者が契約条件に従わない場合には退去してもらう契約となっている。
・退去期限までに退去しない場合、期限後は契約賃料の3倍相当額の賃料を徴収することとしている。

⇒この場合、収受する賃料は違約金(損害賠償金)として不課税取引となるか?

A
役務提供の対価として取り扱われるため、課税対象となる。

この違約賃料は損失補てん又は逸失利益の補てんとしての性質を有しておらず、単に割増料金を収受しているに過ぎない。
したがって不課税ではなく課税対象となる。

なお、不正乗車について通常の3倍の乗車料を徴収する場合も同様の考え方から課税対象取引(割増運賃扱い)となる。


10.消費税:原材料に使う飲食料品への軽減税率の考え方
売手が『食品』(酒を除く)として販売しているか否かにより、軽減税率の適用可否を判断する。
仕入側の目的は考慮しない。

■例
・食品にも化粧品にも使用可能な添加物を販売するケース
・売手は化粧品に使用することを想定したパッケージ等をして販売している。
・仕入側は食品の原材料として使用する。
⇒このケースでは売手は『食品』として販売していないので、売手側&仕入側の双方で10%の税率を用いる。(軽減なし)


11固定資産の減損と税効果
・減損損失:原則として税務上の損金計上不可
 ⇒一時差異となり税効果の対象となる
・回収可能性の検討の際、「スケジューリング可能な一時差異か否か」がポイントとなる
・スケジューリング不能=分類1の会社以外では回収可能性なし、となる。
・減価償却資産ならスケジューリング可能。
 土地等の非償却資産は売却予定があるか否かで判断する


12.シャープ再建 3,500億円の金融支援
・みずほ銀行、三菱東京UFJ銀行が再建案を受け入れへ
⇒優先株2千億円を産業革新機構へ無償譲渡。
156月にDESしたもの)
15百億円の貸付を新たにDESに。
・シャープは液晶事業と家電事業を分社化
・液晶事業はジャパンディスプレイと統合


13.上場審査と委員会制度
(1)委員会制度
・監査役制度に代えて、指名委員会、報酬委員会、監査委員会を設置
⇒指名委員会:取締役の選任・解任に関する議案内容の決定
⇒報酬委員会:取締役、執行役が受ける個人別報酬内容の決定
⇒監査委員会:取締役、執行役の職務執行の監査
・各委員会は3名以上で社外取締役が過半数
・業務執行を担当する執行役の設置

(2)執行役の取扱い
・特別利害関係者となるため、会社取引など健全性が審査対象

(3)監査委員会の取扱い
・上場審査上、監査委員会のメンバーに取締役、執行役の同族関係者が就任している場合には、独立性の観点より有効な監査がなされていないものとみなされ、その就任が問題になる。


14.今週の新規上場会社
なし








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