2015年12月19日土曜日

12/18 勉強会:法人税20%台引き下げも課税ベース拡大 他

1.国税通則法改正の全容
■事前通知を受けてから「修正申告」を行う場合
・現状
 修正申告が更正があることを予知して提出されたわけではない場合
 ⇒過少申告加算税は賦課されない

 事前通知を受けた段階で、修正申告を提出するケースが後を絶たない
 …事前通知の段階では更正があることを予知していたことにはならないから
 ※事前通知:所轄署からの調査日程の連絡

・改正案
 事前通知を受けてから更正があることを予知するまでの期間
 ⇒過少申告加算税を賦課する(5%または10%)

■事前通知を受けてから「申告」を行う場合(無申告のケース)
・現状
 無申告で自主的に申告書を提出した場合
 ⇒無申告加算税は5%となる
 事前通知を受けるまで放置する納税義務者が後を絶たない

・改正案
 無申告で、事前通知後に申告書を提出した場合
 (事前通知を受けてから更正があることを予知するまでの期間)
 ⇒無申告加算税は10%または15%(50万円を超える部分)


2.繰延税金資産の回収可能性指針、"会計方針の変更"部分は限定的
ASBJ12/25にも「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」を正式決定
⇒平成2841日以後開始する連結会計年度の期首から適用予定

■適用初年度の取扱い(会計方針の変更or会計上の見積りの変更)
・会計方針の変更に該当は3つのケースのみ
⇒適用初年度の期首の影響額は利益剰余金とする
・その他のケースは会計方針の変更とせず、損益計上が可能


3.法人税20%台引き下げも課税ベース拡大
平成28年度税制改正議論が決着。
■法人税率等
・法人税     (現行)23.9 %⇒(28年)23.4
・法人事業税所得割(現行) 6.0 %⇒(28年)3.6
・法定実効税率  (現行)32.11%⇒(28年)29.97

・外形/付加価値割(現行) 0.72%⇒(28年) 1.2
・外形/資本割  (現行) 0.3 %⇒(28年) 0.5
※外形標準課税の拡大に対応するかたちで、
 事業規模が一定以下の法人は3年間の軽減措置あり

■その他
・生産性向上設備投資促進税制が縮減/廃止
・「建附」「構築物」の償却方法が定額法に一本化
・大企業の繰越欠損金の控除限度割合が見直し
 (現行)65%⇒(28年)60%(29年)55%(30年)50


4.生産性向上設備投資促進税制
 一定規模以上の先端設備等を取得等した場合、産業競争力強化法の施行日(平成26120日)から平成28331日までであれば、即時償却又は5%の税額控除(建物・構築物は3%)、また、平成2841日から平成29331日までであれば、50%の特別償却(建物・構築物は25%)又は4%の税額控除(建物・構築物は2%)の適用を受けることができる。
平成28年税制改正では適用期限通り、軽減・廃止がなされることになった。
 ここでいう、
・先端設備等とは、「先端設備」又は「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」となり、
・取得等とは、取得又は製作若しくは建設をいい、建物にあっては改修のための工事による取得又は建設を含みます。
 「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備」は、資産取得前までに、投資計画策定、公認会計士又は税理士による投資計画の確認、経済産業局による確認書発行など手続きが多く時間がかかりますので充分時間の余裕をもって対応する必要があります。


5.相続紛争に関する和解金の所得区分で課税処分取り消し
■事例
Aが相続による遺留分減殺請求訴訟により金員を受領
・和解金として取得した金員は相続財産である賃貸マンション収入
・原処分庁は不動産所得に該当すると判断
・審判所は不動産所得ではなく一時所得と判断

■争点
・不動産所得に該当するか

■審判所の判断
・金員は相続紛争を解決するための和解金としての性質あり
Aがマンションの所有者ではないため、そのマンション収入は不動産の貸付による収入には該当しない。
・ただし収入にはかわりないので一時所得として課税される


6.インボイス導入で免税事業者に経過措置
29/4/1 消費税10%UP と同時に「軽減税率&インボイス制度」が導入予定
 ※下記、12/3に政府・与党が素案を公表

【買手側】
・仕入税額控除をとるためには、「適格請求書」の保存が必須
⇒売手側に交付を依頼する必要あり
 ※適格請求書・・・登録番号、適用税率、税率別の消費税額等の記載が必須

【売手側】
・買手側から依頼された場合は、「適格請求書」の交付・保存が義務
・ただし、免税事業者は「適格請求書」を発行することができない

⇒今後は、免税事業者からの仕入については仕入税額控除が取れなくなる
 ※ただし、制度導入後6年間は経過措置あり
 (免税事業者からの仕入につき、当初3年間は80%、その後3年間は50%の仕入税額控除が可能)
⇒買手側は、課税事業者から仕入れた方が節税となる
 ※免税事業者は取引してもらえなくなる
⇒課税事業者を選択する会社が増えることが想定される


7.所得税:従業員等に支給する金品と源泉徴収
■資格の講習費用等を支給した時の取り扱い
・業務遂行上の必要に基づき「適正」な支出であれば非課税
・「適正」か否かは
(1)個人に帰属する利益の度合い
(2)事業関連性
(3)習得後の勤務期間
等を勘案して個別に判断する。

■個別事例検討
・経理部員にセミナーを受講させる費用
⇒個人に帰属する利益が少ないため源泉徴収不要

・バス会社が事務職員に大型免許を取得させる費用
⇒個人に帰属する利益が大きいため源泉徴収が必要な可能性がある

・病院が看護学生の学資金を負担した場合の費用
⇒非課税(通達あり)


8.法人税:子会社等に対する債権放棄に関する裁判例(東京高裁)
■内容
・債務超過状態の子会社に対して行った債権放棄の額が寄附金に該当するか否かが争われた。
・「相当な理由」があれば寄附金課税しなくてよい旨が規定された法基通9-4-2の適用可否。

■「相当な理由」が有るかどうかの判断基準
(1)対象の子会社の倒産を防止するために、債権放棄が止むを得ないものであるか?
(2)債権放棄が合理的な再建計画に基づくものであるか?

■判決
法基通9-4-2は適用不可。寄附金課税するのが相当。
(本通達適用の可否判断のほか、貸倒損失の要件を満たしていないことにも言及している。)

■適用不可とした理由(判断基準と事実関係の照合)
(1)について
 ・親会社が子会社に対して債務の支払いを猶予していた結果、他の取引先への支払いは滞っていなかった。
 ・債務超過ではあるが、子会社は継続的に金融機関から借り入れができていた。
 ⇒債権放棄は子会社の倒産回避のために不可欠とはいえない。

(2)について
 ・再建計画は存在していたが、目標値等が書かれているだけで具体的なコスト削減策等は盛り込まれていなかった。
 ・再建計画の中で親会社に対する債務の取り扱いについて触れられていなかった。
 ⇒合理的な再建計画に基づく債権放棄とはいえない。


9.繰延税金資産等の表示
DTADTLの場合、発生原因となった取引・科目が流動or固定のどちらに属していたかで決まる

・土地の評価に関する損失について計上されたDTAの場合
 土地が固定資産に計上されている場合⇒DTAは「投資その他の資産」へ
 不動産業などで土地が流動資産に計上されている場合⇒DTAは「流動資産」へ

・繰越欠損金
 ⇒特定の資産・負債に関連しない
 ⇒ワン・イヤー・ルールで長短区分する


10.消費税のリバースチャージ方式に関して判断に迷う論点と対応
1. 経費管理システム
経費管理システムにおける基礎データの入力は各部門の担当者であることが多い
⇒会計、税法に詳しくない担当者でも対応できるように事前に十分説明する必要がある

2. 担当者が判断に迷う論点への対応
(1) 電気通信利用役務の提供か否か
⇒「国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等に関するQ&A2-1に範囲の例示が記載されている。

(2) 事業者向けか、消費者向けか
⇒役務の性質と取引条件から判断 (Q&A3-1
() 事業者向けと判断されるケース
 ・役務の性質 … インターネットを介した広告の配信等
 ・取引条件  … 取引当事者間固有の契約を結ぶクラウドサービス等

(3) 登録国外事業者か否か
⇒ 国税庁のHPに記載された業者か否かを確認する。


11.無対価合併の適格判定
■原則
 無対価合併=原則として非適格合併として取り扱う

■事例
 V社がW社を吸収合併する(V社が合併法人、W社が被合併法人)
 いずれも株主はX社とY社のみで、持株比率はいずれも5149である。
 (V社の持株比率はX:Y=5149、W社の持株比率もX:Y=5149
 したがって、合併後の新会社の持株比率も5149となるので無対価合併としたい。
 この場合、適格合併となるか?

■結論
 適格合併とはならない(下記を満たさないので)

■適格の要件を満たす場合
 (1) 100%グループ内の合併である場合
   V社がW社を100%支配していた場合
 (2) 50%超100%未満グループ内の合併である場合
   X社がV社を100%支配しており、
   X社が40%、V社が60%、W社の株式を保有していた
   ∴X社グループで、W社を100%支配していた場合
   
 (3) 当事者が公益法人等である場合


12.特定個人情報の漏えい時の対応ポイント
1.措置
 ・被害の拡大防止(例えばLANを抜いてネットワークから切り離すなど)
 ・影響範囲の特定(漏えいした情報の内容、漏えいした手段、漏えいした原因等)
 ・再発防止策の検討実施
 ・事実関係について本人へ連絡

2.報告時の留意事項
 ・主務大臣のガイドラインに従って報告
  (場合によっては特定個人情報保護委員会に報告)
 ・個人情報取扱事業者以外の事業者は、以下すべての条件を充足する場合は特定個人情報保護委員会への報告不要
  (本人すべてに連絡、外部漏えいしていない、不正目的で持ち出した事案でない、個人情報の数が100人以下)

3.事前整備の重要性
 ・事案発覚後の対応を行う組織、体制の整備
 ・技術的なモニタリング体制の整備
 ・人的な監視体制の整備


13.ロイホがホテル事業を加速
・東京浅草に、「リッチモンドホテル プレミア浅草インターナショナル」が開業する。
・ハラル認証を得た和食2種類・洋食2種類の専用弁当を提供し、ムスリムの受け入れにも注力。
・運営するのは、「ロイヤルホスト」を展開しているロイヤルホールディングス。
2012年度はセグメント利益で外食:19.8億円、ホテル:12.9億円
2015年度は第3四半期時点で外食:26億円、ホテル:25.6億円
・「期初の業績計画に対してホテル事業が大きく上振れしている。今期は初めてホテルの利益が外食を上回りそうだ」


14.関係会社への役員の出資
関係会社の株主に役員等の特別利害関係者がいる場合、役員等の利得行為が発生する可能性があり、原則として認められない。
申請会社の役員が関係会社へ出資している場合、上場審査上、出資関係の解消が求められることとなるが、その場合の留意点は次の通り。

(1)申請会社による役員所有の関係会社株式の買取り
⇒申請会社と役員との株式の売買については、特別利害関係者との取引であるため、その価額の決定・手続は公正・慎重に行う必要がある。

(2)役員による申請会社所有の関係会社株式の買取り
⇒関係会社の事業が申請会社の事業と関連性がなく、
将来にわたって競合関係が発生しないことおよび取引関係の解消も特段の支障がない場合においては、出資関係を解消する一つの解決方法である。

■今週の新規上場会社
上場・公開日    社名                   銘柄コード 市場  公募価格
(円)
1215      ダブルスタンダード       3925      マザ    2,190
1211      ツバキ・ナカシマ          6464      2部      1,550
1217      ミズホメディー             4595      JQS     1,100
1217      オープンドア               3926      マザ     3,820
1218      フリュー                     6238      1部     3,200
1218      アートグリーン            3419      名セ     3,200
1218      アークン                    3927      マザ       1,360

(ダブルスタンダード)
業種:情報・通信業
事業内容:企業向けビックデータの生成・提供、データ生成過程で培った技術を活用
したサービス企画・システム開発
主幹事:SBI証券
監査法人:新日本

(ツバキ・ナカシマ)
業種:機械
事業内容:鋼球の製造・販売等
主幹事:野村證券
監査法人:あずさ

(ミズホメディー)
業種:医薬品
事業内容:体外診断用医薬品の開発・製造・販売
主幹事:三菱UFJモルガン・スタンレー証券
監査法人:トーマツ

(オープンドア)
業種:情報・通信業
事業内容:総合旅行情報サイト「トラベルコちゃん」等の運営
主幹事:みずほ証券
監査法人:トーマツ

(フリュー)
業種:機械
事業内容:
プリントシール機及びその関連製品の企画・開発・販売、インターネット上のコンテ
ンツ・メディアの企画・運営・開発、クレーンゲーム景品の企画・販売、家庭用・ス
マートフォン向けゲームの企画・開発・運営
主幹事:野村證券
監査法人:トーマツ

(アートグリーン)
業種:卸売業
事業内容:種苗の輸入販売並びに生花の生産及び卸売
主幹事:エイチ・エス証券
監査法人:あずさ

(アークン)
業種:情報・通信業
事業内容:情報セキュリティ製品の開発・販売事業
主幹事:SMBC日興証券

監査法人:トーマツ






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