2015年8月28日金曜日

8/28 勉強会:ネット通販の商品倉庫とPE(恒久的施設) 他

1.D&O保険を巡るQA

DA保険は「普通保険約款(第三者訴訟をカバー)」と「株主代表訴訟補償特約(株主代表訴訟をカバー)」に分かれる。

・第三者訴訟とは
 役員が故意・(重)過失によって第三者(取引先、従業員等)に損害を与えた場合に、会社法429条や民法709条を根拠として第三者が役員に対して損害賠償を請求するもの。

・株主代表訴訟とは
 役員は、具体的な法律・定款違反、または善管注意義務・忠実義務に違反して会社に損害を与えた場合に、会社に対して損害賠償責任を負うことになる。
 役員の責任追及の主体は会社だが、6か月以上引き続き株式を所有している株主は、会社に対して役員を訴えるよう請求(提訴請求)することができ、提訴請求から60日を経過しても会社が役員を訴えないときに、株主が会社にかわって、その役員の責任を追及する訴えを提起することできる。
 これを株主代表訴訟という。

・特約部分は「会社の損害に対する役員の損害賠償責任」に備える保険なので、その保険料を会社が負担すること自体が忠実義務違反(会社法355条)に抵触しかねないという指摘あり。


2.平成273月期、50社が会計方針の変更で強調事項」

H273月期決算の上場企業50社の監査報告書において、会計方針の変更に関する強調事項が付された。
⇒そのうち29社が有形固定資産の減価償却方法を変更(定率法⇒定額法へ)したもの。
⇒国内外の減価償却方法を統一するため

IFRS=定額法というわけではなはない。
金融庁HPIFRSに関する誤解


3.顧問先の決算書類を株主に開示する義務なし

■前提条件
(1)各会社の代表者であるAが税理士Bに決算・税務申告書を依頼
(2)Aが亡くなった
(3)Aの相続人Cが相続税の申告を税理士Bに依頼
(4)法定相続人及び株主であるDが税理士を訴えた

■争点
(1)原告Dが税理士Bに決算書の開示を依頼したが拒否された
(2)相続税の申告を法定相続人であるDに説明なしで進めた
 ⇒原告が上記2点を不法行為として慰謝料請求した

■裁判所の判断
(1)決算書開示請求の拒否の件
 ・代表者Aと税理士B間は契約関係があるが、税理士Bと株主の間では法的関係は存在しない
 ・株主が行使できる権利は会社にされるべきもの
 ⇒棄却

(2)相続税の申告をDに説明なしで進めた
 ・確かに法定相続人であるDに連絡や説明はしなかった
 ・但し、相続税の申告手続は相続人の全員が共同して行わなければならないものではない
 ・従って不法行為ではない
 ⇒棄却


4.責任限定契約

 社外取締役、社外監査役、会計参与、会計監査人(以下、社外役員等)の損害賠償責任を限定する契約
⇒「定款に定めた額の範囲内であらかじめ定めた額」または「報酬等の2年分」のいずれか高い方を限度

(適用条件)
 社外役員等の行為が善意・無重過失であること
→わざとやった場合、または、わざとでなくとも著しい落ち度ある場合は適用されない

(留意事項)
 ・第三者(株主、債権者)に対する責任は限定できない(会社に対する責任のみ)
 ・社外でない取締役、監査役は責任限定契約を締結できない


5.減価償却資産の部分除却の可否

■事例
・建物の屋根の張替えを行う。
・張替えで生ずる費用にあたり、「修繕費又は資産計上」とするか、「除却法」を用いて処理するか。

「除却法」とは、
張替えを行う屋根相当額を除却損とし、新たに張替えを行う費用を資産計上する考え方。

■法人税法では
同一の減価償却資産(屋根)について、部分的な除却を認めている考え方はないため、「除却法」を採用することはできない

■実務上
元の状態に復元できるまでの費用(見積ベース) ⇒ 修繕費
上記を超過する費用 ⇒ 資本的支出(資産計上)

このように処理しているケースが多く見かけられる。


6.表彰金が業務委託費として損金算入できる3要件とは?

・取引先従業員への表彰金支払は、基本的に交際費
・ただし、次の要件を満たせば、損金算入可能(業務委託費でOK
 ①工場等の現場において、無事故等の記録が達成されたことに伴い、
 ②その現場で経常的に働いている下請け企業の従業員等に対し、
 ③自己の従業員とほぼ同一の基準により支給する表彰金等


7.ネット通販の商品倉庫とPE(恒久的施設)

∇非居住者がネット通販業務用に借りている倉庫はPEにあたるか?
PE(恒久的施設)とは
⇒事業を行う場所であって特に、事業の管理の場所、支店、事務所等をいう。

PEの除外規定>
⇒商品の保管・展示・引き渡しのみでその場所を使用する場合はPEにあたらない

∇事例
・非居住者Aはネット通販の商品管理のため倉庫を借りていた
・商品発送の際、サービスとして商品の日本語取説書を同梱していた

 PEにあたるか?

(裁判所の判断)
 倉庫で取説書を同梱する行為は「商品の経済的価値を高める」活動であり、単なる商品の管理・引き渡しのみで施設を利用していると言えない。従ってPEにあたる。
⇒国内にPEを有する非居住者であるとして所得税の納税義務ありとした

<まとめ>
PEにあたるか否かは、その場所で「商品等の経済的価値を高める活動がされているか」が1つの判断基準となる


8.審判所:固定資産から棚卸資産に振替えた土地の評価損認めた事案

■概要
 ・不動産賃貸&販売を行う法人が土地を取得し、当初は自社利用していたため固定資産として経理処理した。
 ・取得年度中に当該土地を商品として販売する方針になったため、棚卸資産に振り替えた。
 ・期末に棚卸資産として低価法により評価損を計上し、損金算入して申告した。
   ↓
 ・税務署は当該土地は固定資産であるとして評価損の計上を否認した。法人側は審判所へ持ち込んだ。

■関連規定(法人税)
  固定資産の評価損:損金算入が可能なケースは限定的。
  棚卸資産の評価損:低価法による評価を選定すれば時価までの切り下げが可能。

■審判所の判断
 ・法人が期末時点において当該土地を販売用として保有している事実を認定し、納税者の主張を認めた。

★ポイント
 ・棚卸資産は低価法を選定すれば時価までの評価損計上が可能。
 ・事実関係に問題がなければ、同一の資産の資産区分変更(固定/棚卸)が税務上も認められる。


9.スチュワードシップ・コード

・「責任ある機関投資家」の諸原則のこと
・機関投資家の行動指針 2014/2に金融庁を事務局とする有識者検討会で策定
7つの原則で構成
・目的:
 機関投資家が投資先企業との「目的を持った対話」を通じて「企業価値の向上や持続的成長を促す
⇒顧客・受益者の中長期的なリターンの拡大」を図り、経済全体の成長につなげること

具体的なコード
・受託者責任を果たすための明確な方針
・議決権の行使と行使結果の公表に関する指針
・管理すべき利益相反取引等について明確な方針を策定し公表する


10.特定支出控除の対象に「ベビーシッター代」を追加(案)

・厚労省の2016年度税制改正要望。

・特定支出控除とは…
 対象は会社員。
 給与所得控除額の2分の1を超えた「仕事のために使った経費」を所得控除できる制度。
 利用には会社が「業務上必要と認める証明」が必要。

・ちなみに英国では、ベビーシッター代は70%まで「税額控除」できる。

・ベビーシッターを数十万円~使って控除を受けられるのは高所得の会社員に限られる?






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