2015年7月4日土曜日

7/3 勉強会:連結納税 みなし事業年度の消費税 他

1.小規模宅地特例と財産調査義務、相続税をめぐる税賠事件で判決

■事例
・争点1
 ・東京都と千葉に自宅を保有する被相続人の相続について相続人から税理士Aが相続税の申告業務を請け負った。
 ・Aは東京都の自宅について小規模宅地等の特例適用を受ける申告書を作成したが、申告は千葉の所轄税務署Yに行った。
 ・Y税務署は税務調査で東京都の自宅についての小規模宅地等の特例適用を否認した。
 ・相続人はAが東京都の所轄税務署Zに申告書を提出していれば小規模宅地等の特例適用は認められたはず、とAに対して相続税約740万円の損害賠償請求をした。
 ・Aは被相続人の住所地について選択ミスがあったかどうか

・争点2
 ・税理士Aが作成した財産目録には一部の生命保険金が記載されておらずその部分について申告漏れがあったことが発覚した。
 ・相続人はAに対して、相続人が提出した資料が不十分な場合にはAは追加の資料提出をする必要があり、申告漏れに係る重加算税などはAの善管注意義務違反により生じた損害であるとAに対して損害賠償請求をした。
 ・Aは追加資料の開示を求めなかったというミスをしたかどうか

■裁判所の判断
・争点1について
 ・被相続人の死亡時の生活の拠点は東京都ではなく千葉県
 ・東京都の自宅の所轄税務Zに申告書を提出したとしても東京都の自宅について確実に小規模宅地等の特例適用があったとは言えない。
 ・以上より相続人の訴えを斥けた

・争点2について
 ・Aは相続人から任意に提出された資料に基づき、財産目録を作成し相続人に確認を求めていた。
 ・申告漏れがあった生命保険金はAに開示されていない通帳に入金があったためAがその入金があったことについて知ることはできない。
 ・Aが相続人から提出された資料だけで申告をしたというわけではない
  ・以上より相続人の訴えを斥けた


2.平成27年度における法人税関係の改正について

■主な改正事項
(1)法人税率引き下げ(平成2741日以後に開始する事業年度より)
・法人税25.5%→23.9%、法人事業税所得割7.2%→4.8
⇒法人実効税率31.33%へ

(2)欠損金の繰越控除
(平成2741日以後に開始する事業年度の所得に対する法人税より)
・平成2741日~平成29331日までに開始する事業年度・・・欠損金額控除前の所得の金額の65
・平成2941日以後に開始する事業年度・・・欠損金額控除前の所得の金額の50
・繰越期間9年→10年へ

(3)生産等設備投資促進税制
・平成27331日をもって廃止
 なお平成2741日前に開始した事業年度については継続

(4)所得拡大促進税制
・平成2841日から平成29331日までの間に開始する事業年度4%(中小企業は3%)
※改正前5
・平成2941日から平成30331日までの間に開始する事業年度5%(中小企業は3%)
※改正前5%以上

■その他改正事項一覧
(1)受取配当金等の益金不算入
(2)退職年金等積立金に対する法人税(特別法人税)
(3)試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度(研究開発税制)及び試験研究を行った場合の法人税額の特別控除の特例
(4)環境関連投資促進税制
(5)雇用促進税制 ※地域再生法の認定事業者に係るもの
(6)特定設備等の特別償却制度
(7)医療用機器の特別償却制度


3.審判所が初判断、霊園管理料は収益事業

■事例
 宗教法人が経営する霊園の管理料収入が収益事業として判断された
 ※審判所が公表した事例としては初めての判断

■宗教法人の事業区分
 ・(1)宗教活動、(2)公益事業、(3)収益事業に区分される
 ・基本的に(3)収益事業に区分されたものが課税対象

■判断基準
 (1)管理料は事業に伴う役務等の対価の支払いか
   …墓地供用部分の管理役務を提供するもの。対価性有り

 (2)喜捨としての性質を持つか
   …管理行為という役務に対して支払われている。喜捨では無い

 (3)管理行為は宗教法人以外の法人でも可能か
   …宗教法人以外でも可能、一般法人と競合する。

 ⇒これらを総合的に勘案して収益事業として判断


4.持合い株式に関する方針、各社の記載状況は?

■東証が6/1よりコーポレート・ガバナンスコードの適用を開始
・独立社外取締役の他、政策保有株式に関する方針が注目されている
・多くの企業で取引先との関係強化を方針とする一方、詳細な保有状況を示す企業も見受けられる。

■保有方針の記載例
NTTデータ、デンソー
 事業拡大の観点から協力関係が不可欠であれば保有
・大東建託
 業務提携の他、連結B/S計上額が総資産の5%以下などの条件を満たす範囲で保有
・みずほ銀行、新生銀行
 一定の場合を除き、原則保有しない
・ニッカトー
 方針の他、保有株式の名称、金額、取引関係を開示


5.国外転出時課税制度(H27.7.1施行)

■概要
1億円以上の有価証券等を所有している居住者が、以下に該当する場合に、有価証券等の対象資産の含み益に所得税が課される。
(1)国外転出した居住者
(2)国外居住の親族等に贈与をした居住者
(3)所有者が死亡し、国外居住の相続人等に相続をした所有者(=被相続人)

(3)については、相続人が準確定申告を行う

(3)の相続について
・対象者(=所有者であった被相続人)
 ⇒相続開始時に所有している対象資産の価額の合計額が1億円以上
   相続開始時前10年以内に、国内在住期間が5年超
・対象資産となる有価証券等
 ⇒株式、投資信託、未決済のデリバティブ取引等
・いつの時点の価額
 ⇒有価証券:相続開始時の有価証券の価額
   デリバティブ取引:相続開始時に決済したものとみなした損益額
1億円以上の判定
 ⇒保有している資産すべての合計額で判定
   ※含み損がある有価証券、譲渡により非課税となる有価証券も含める。
・いつまでに申告・納付
 ⇒相続開始があった日の翌日から4月を経過した日の前日までに、相続人が準確定申告及び納税をする。
   () H27.7.20死亡 ⇒ H27.11.20までに申告納付

そのほか一定の要件を満たせば、
「課税の取り消し」、「納税猶予」を受けることも可能である。


6.ヤフー事件のIDCFが再び税務訴訟

IDCF事件
 (1)ソフトバンク100%子会社のIDCS社が、営業部門を分割してIDCF社を設立
 (2)IDCS社は、IDCF株式をソフトバンク関連会社のヤフーへ売却
 (3) (2)の株式売却により、IDCS社は分割の適格要件である『完全支配継続見込み
     要件』を満たさないことになるため、(1)の分割は非適格となる
 (4) 非適格分割であるため、新設分割子法人IDCF社にのれんが発生し、5年間に渡り、のれん償却(損金算入)が可能となる

 ⇒裁判では、分割後の株式譲渡は、あえて適格要件を外す租税回避行為と判断され、国側が勝訴、会社側が現在上告受理申立中。
 ⇒今回、上告受理申立中の内容には含まれていない期間の、のれん償却について、IDCF社が国を相手取り税務訴訟を提起。


7.資本金基準の見直し、実現可能性は

・中小企業の定義(資本金1億円以下)の見直しが検討されている

・資本金基準を「売上基準」「所得基準」に変えるなどの案あり

・消費税率10%への引上げ(20174月~)と同時の改正だと景気ダメージが大きいため、消費税率引上げ後の改正が有力


8.連結納税 みなし事業年度の消費税

∇みなし事業年度
連結子法人の事業年度が連結親法人の事業年度と異なる場合、連結子法人の事業年度はみなし事業年度となる。

(例)
親法人 3月決算
子法人 12月決算
で、7/1より連結加入した場合
子法人の事業年度は(1)1/16/30(2)7/13/31となる。

∇消費税
連結納税制度はないため、単体での申告納付が必要
ただし、みなし事業年度を「課税期間」として計算するため注意
上記の例では(1)8/31まで、(2)5/31までに申告納付する。

なお、基準期間はそれぞれのみなし事業年度の「前々事業年度」となる。


9.源泉所得税 永年勤続表彰者に支給する旅行券

■永年勤続表彰制度により従業員に支給する旅行券について、源泉徴収が必要か
⇒個別通達(昭60直法64)で規定する要件を満たさない場合は必要
 ※要件をすべて満たすのは現実的ではない。旅行実施報告書の提出等。

■旅行、観劇への招待はOK。現金、金券は
所基通3621 により、記念品の支給、旅行観劇への招待については下記の要件を満たすものについて源泉徴収は不要とされている。
 (1) その利益の額が,役員又は使用人の勤続期間等に照らし,社会通念上相当と認められること。
 (2) その表彰が,おおむね10年以上の勤続年数の者を対象とし,かつ,2回以上表彰を受ける者については,おおむね5年以上の間隔をおいて行われるものであること。

ただし、現金や金券の支給は除かれる。旅行券は金券なので、この通達では源泉徴収不要とはされない。


10.東証一部の独立社外取締役選任率 8割超え

・東証一部上場1,885社のうち、
  社外取締役を選任した会社     :92%
  独立社外取締役を選任した会社 :84.7%

・2名以上の独立社外取締役を選任した会社:46.5%


11.グループ内合併の会計・税務上の留意点

親会社と完全子会社又は完全子会社同士の合併のケース
■会計
(1) 連結
 もともと連結グループ内にいた会社同士の合併であるため、一切影響なし

(2) 単体
・親会社と完全子会社
 子会社の資産負債を連結上の簿価で受け入れる
 受入れた資産負債の差額と子会社株式の連結簿価との差額は「抱合せ株式消滅差損益」に。

・完全子会社同士
 消滅会社の資産及び負債は適正な帳簿価額で受け入れる
 対価の支払を行わない場合は存続会社の資本金は増加させない
 親会社単体BSの存続会社株式=合併前存続会社株式簿価+消滅会社株式簿価

■税務
(1) 存続会社
 金銭の交付を伴わない親子合併、完全子会社同士の合併は原則として適格合併の要件を満たす適格合併の場合、合併法人は被合併法人の合併直前の帳簿価額で引継ぎ
 別表5(1):資本金等の額と利益積立金を引継ぐ ⇒ 課税関係は生じない

(2) 株主
 適格合併であれば、課税関係生じない

(3) 論点
 適格合併&支配関係5年超 ⇒ 繰越欠損金の引継が可能


12.東芝不適切会計 パソコン事業

・取引の流れは下記の通り
(1)原材料を購入(例:100円)
(2)下請けメーカーに有償支給(例:100円+20円=120円)
(3)下請けメーカーが加工後、製品を買取(例:100円+20円+30円=150円)
(4)製品を販売

・期末に製品が在庫として残っている場合、(2)有償支給の際の「20円」は未実現利益として取り消さなければならない。

・この取消仕訳がなされていなかった。











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