2015年7月11日土曜日

7/10 勉強会:繰越欠損金控除制限の特例について 他

1.外国株式報酬の源泉義務の有無で判決

■論点
・個人(居住者)が株式報酬制度により無償取得した外国親会社株式に関してその個人の勤務先である内国法人に源泉徴収義務があったかどうか。

■裁判所の判断
・源泉徴収義務者とは、その支払について法律上の債権債務の関係に立つ債務者又はこれに準ずるような特別の関係にある者をいう。
・内国法人がその支払の委託を受けていたら、内国法人には源泉徴収義務が生じる。
・今回はA社(外国法人)が支払の委託を受けており、かつ、端株以外の外国親会社の株式は、個人の証券会社の口座に分配されているので内国法人がその支払をしたという事情がない。
・よって、内国法人は源泉徴収義務を負わないと判断。


2.修正国際基準は平成283月期から適用可能

■企業会計基準委員会(ASBJ)は630日に「修正国際基準」を公表した。
・適用時期
⇒平成28331日以後終了する連結会計年度に係る連結財務諸表から適用できる。
⇒四半期連結財務諸表に関しては、平成2841日以後開始する連結会計年度に係る四半期連結財務諸表から適用できる。

IFRSからの修正事項
⇒のれんの非償却(償却期間は20年を上限)
OCIのリサイクリング及び当期純利益に関する項目(一部事項について、ノンリサイクリングからリサイクリングへ修正)

以上より日本では、「日本基準」、「米国基準」、「IFRS」、「修正国際基準」の4つの基準が並列することになる。


3.利益連動給与の損金算入制度見直しも

■政府が6/22に「日本再興戦略」の素案を公表
・コーポレートガバナンスの強化策の1つとして、「業績に連動した報酬等の柔軟な活用を可能とするための仕組みの整理」という項目が織り込まれた。

⇒・税制については特に触れていない
 ・ただインセンティブ型の役員報酬制度が広く採用されるためには税制の整備が不可欠
 ※現状の利益連動給与はそこまで広がっていない


4.DTAの回収可能性に関する適用指針(案)(以下、適用指針案)の公表について

■平成27/5/26に企業会計基準委員会が適用指針案を公表

■適用指針案の背景
 DTAの回収可能性について定めた「監査委員会報告第66号」(以下、66)について、
(1)税制改正(繰越欠損金の繰越期間延長)に対応していない
(2)形式的な適用がなされている
 などの指摘があった

■適用指針案の内容
(1)基本的に、66号の内容を踏襲する
(2)会社分類(2号・3)の要件の変更
 「経常的な利益」ベース⇒「課税所得」ベース
(3)分類234号の内容の変更
 (a)分類2
  スケジューリング不能差異も将来、いずれかの時点で回収できることを合理的に説明できれば、DTAの計上可。
  (66号では、スケジューリング不能差異は、一律にDTAの計上不可)
 (b)分類4
  「分類4」の要件(1)を満たす企業であっても、一定の場合(2)
  「分類2or「分類3」における取扱いが容認される。
(1)過去3年又は当期において金額的に多額の欠損金等が生じている
(2)今後、5年超に渡って(「分類2)、もしくは、3年~5年程度(「分類3)
   課税所得が安定的に生じることが合理的に説明できる

■適用時期(3月決算を前提とすると)
 連単ともに平成293月期より適用
 (ただし、平成283月期より早期適用可)

■適用前(公表日後~適用初年度前年の決算期)の取扱い
 未適用の会計基準等に関する注記として、適用による影響を注記

■適用初年度の取扱い
(1)適用年度の期首時点において適用指針に基づいて算定したDTADTLと前期末のDTADTLの差額を適用初年度の期首利益剰余金残高に加減

(2)会計方針の変更による影響額を注記
 会計基準等の改正に伴う「会計方針の変更」として取扱う
 (会計処理を定めた66号の内容を変更するものであるため)


5.モニタリングモデルとは

取締役会に業務執行者の監督を担わせる仕組みのこと
⇒執行役が会社の業務執行を担い、取締役会はその業務執行者を監督(モニタリング)する。

現状、日本においては「業務執行」と「監督」が明確に区分されていない。
モニタリングモデルを導入し、社外取締役が締める取締役会においては、業務執行者の監督者として、より具体的なパフォーマンス評価者としての役割が求められる。


6.メール調査に対する企業の対応

【税務調査における権利】
・国税通則法上、税務当局はメールを閲覧する権利あり。

【近年の税務調査の傾向】
・メールが否認の端緒となることが少なくない。
 (削除されたメールを調査官が復元することもある)

【重加算税対象】
・メールの削除が発覚し、隠蔽行為として重加算税を課されるケースも多い。
※項目別重課事例の上位にランクイン

【どこまでメールを見せるべきか】
・通常、調査官はメールへのフルアクセスを求めてくる。
・過去の裁判から質問検査の範囲は、「質問検査の必要があり、社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられている」とある。

【閲覧制限】
・社外とのメールには、取引先とNDAを結んだ案件に係るものも多数含まれる。
※開示には取引先の了解が必要となり、無視すればNDA違反となる。
・現実に、税務調査の都度、取引先に情報開示の了解を得ることは困難。
 ⇒メールの閲覧制限をする理由の1つになりうる。

※正当な理由を示したうえで、「社会通念上相当な限度」について、調査官と認識を合わせる必要あり。


7.消費税:電気通信利用役務の提供と輸出免税

∇輸出免税
・国内取引に該当すること
(イメージ)役務の提供が国境をまたいで行われること
・課税資産の譲渡等であること(非課税取引に該当しないこと)
を満たす場合に適用がある。

■輸出免税になるか?
(例)日本法人の外国支店が国内企業に対し電気通信利用役務の提供を行った場合

・役務の提供を受ける者は国内企業か⇒○:国内取引 
・役務の提供が国境をまたぐか⇒○
・課税資産の譲渡等であるか⇒× ※

※改正により、事業者むけ電気通信利用役務の提供が「課税資産の譲渡等」の範囲から除かれているため

よって輸出免税の適用はない。


8.地方税:法人住民税 均等割の改正を法人税割に反映する自治体も

■均等割の基準の改正(地方税法、H27年度改正)
法人住民税均等割の税率区分の基準である「資本金等の額」が「資本金と資本準備金の合計額」を下回る場合,「資本金と資本準備金の合計額」を基準とすることになった。

■法人税割の不均一課税について(各自治体の条例)
 “法人税割の不均一課税”の基準となる「資本金等の額」について定めた条例に,上記地方税法の改正を反映させている地方自治体がある。

⇒自治体によって税率判定のフローが異なるため、法人税割の税率を間違えないように要チェック!


9.実効税率

H29.3期以降に適用となる東京都の事業税の超過税率
 ⇒7/1に公布された
 ⇒実効税率 32.26%

H28.3期1Qにおける取り扱い
 ⇒32.3032.262パターンあり


10.繰越欠損金控除制限の特例について

1. 原則
H27.4.1H29.3.31の間に開始する事業年度
 ⇒ 所得の65%までしか控除できない
H29.4.1以降開始する事業年度
 ⇒ 所得の50%までしか控除できない

2. 特例
以下の要件を満たす場合は、所得の100%まで控除可能
 (1) 中小法人 … 資本金1億円以下等
 (2) 経営再建中の法人 … 更正手続開始の決定があった等
 (3) 新設法人 … 設立7年以内の法人

3. 新設法人の範囲
⇒ 設立7年以内の会社をいうが、下記に該当する場合は新設法人とならない。
 (1) 中小法人
 (2) 資本金5億円以上の大会社等に発行済株式の100%を保有されている法人

4. 留意点
・新設法人に該当しても、上場した日以後に終了する事業年度以降は、特例が適用できない。
・組織再編により、設立日が被合併法人等の設立日に置き換えられる場合がある。
 ⇒ 組織再編により、新設法人に該当しなくなるケースがある。


11.「工事進行基準等の適用に関する監査上の取扱い」の解説

■実務指針公表の背景
 ・会計上の見積の介入の余地が大きい
 ・判断を誤るのみならず、意図的な原価の付け替えなどによる会計操作が可能

■何か重要か
 ⇒内部統制の構築(見る側としては理解すること)
  1.全社的な内部統制
   ・人事ローテーションなど
     なれ合いや癒着等 ⇒ 横領、粉飾などが行われる可能性

  2.業務プロセスに係る内部統制
   工事原価の計算過程の各要素が適切に見積り・決定されるプロセスを構築しているか?
   (1) 工事契約に係る認識の単位の決定
   (2) 工事収益総額の見積り
   (3) 工事原価総額の見積り
   (4) 決算日における工事進捗度の見積り
   (5) 工事損失引当金の計上


12.土地評価損計上の可否

資産の評価損は原則、損金算入できない。
一定の場合に損金算入が認められる。
 ・災害による著しい損傷による場合
 ・物損等の事実、法的整理の事実が生じた場合
 ・更生計画や再生計画の認可の決定があった場合


13.社外取締役の8つの心構え

(1) 会社を良く知る
 ・会社の戦略、製品、組織等について十分な知識を持つ

(2) 取締役会には誦分な準備をもって臨み、存在感を発揮する
 ・企業価値の向上や一般株主の利益の観点からの質問をすることが重要
  ・議事録に異議を留めなめれば賛成と推定

(3) 専門家は専門分野で力を発揮する
 ・専門性に関連する事柄については責任が重くなる可能性がある
 
(4) 株主総会での注目度も上がるものと心得る
 
(5) 情報の取り扱いに気を付ける
 ・同業他社の社外取締役になった場合は、守秘義務や目的外利用禁止に反しないように注意

(6) 責任限定契約、会社役員賠償責任保険(D&O保険)を忘れずに
 
(7) 万一に備えて資料は保管
 ・会社に返還、適切に処分、保管の場合は10年程度
 
(8) 監査等委員会設置会社における同委員会委員である社外取締役
 ・監査等委員会でない取締役の選任等・報酬等について監査等委員会の意見形成、総会での質疑対応の準備


14.東芝不適切会計 総額は?

・報道で、営業損益ベース1,500億円減益、とのニュースあり
・東芝は「現時点ではあくまで500億円」と否定。
(1)工事進行基準に係る処理
(2)映像事業の経費計上に係る処理(費用化すべきところ、一部資産計上?)
(3)半導体事業における在庫評価
(4)パソコン事業における部品取引に係る処理











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