2015年4月12日日曜日

4/10 勉強会:支配株主が新たに現れた場合の第三者割当に関する法改正 他

1.審判所、貸倒れの認定で債権者側の事情を重視

■まとめ
・審判所が貸金等の全部または一部の切捨てに関する基本通達に解釈を示した
・注目は、審判所が法令解釈において、興銀最高裁判決を引用し債権者側の事情を重視した判断を行った点
・「債権回収を強行することによって生ずる他の債権者とのあつれきなどによる 経営的損失等」の視点に基づいた検討を行っている


2.中小企業投資促進税制、取得価額の合計額判定に注意

■中小企業投資促進税制の上乗せ措置の適用を受ける際の対象設備の取得価額に注意!
・中小企業投資促進税制の対象となる「①特定機械装置等」の判定と生産性向上設備投資促進税制の「②特定生産性向上設備等」の判定について
⇒それぞれの制度において行い、いずれにも該当した減価償却資産が中小企業投資促進税制の上乗せ措置の対象となる

⇒この場合、②の判定を行う上では、①における合計額の判定上、対象外となった資産も含める!

※中小企業投資促進税制の上乗せ措置とは?
中小企業者などが、該当期間内に、特定機械装置等のうち「②特定生産性向上設備等」に該当するものの取得等をして条件を満たせば、即時償却又は7%(特定の中小企業者などについては10%)の税額控除ができる。

※制度参考(国税庁HPより)


3.小規模宅地特例の手続要件、柔軟な取扱いは認められるか?

■小規模宅地の特例
 ・相続や遺贈によって取得した土地のうち、一定要件を満たせば相続税の課税価格を5080%減額して良い制度
 ・特例を受けるためには要件が複数必要

■特例対象宅地が複数ある場合
 ⇒相続人全員の同意を証する書類の提出が必要

■今回の事例
 ・Aさんが遺言で宅地を相続した
 ・他の相続人が遺言を不服とする訴訟を起こしている
 ・Aさんが他の相続人の同意を受けられないまま、小規模宅地の特例を適用する申告書を提出
 ・税務署が全員の同意を受けていないと更正処分


4.企業会計基準委員会が税効果会計の適用指針を開発中

⇒基本的に、委員会報告66(DTAの回収可能性に関する監査上の実務指針)の内容を踏襲する方向

■一方で、会社分類(2号・3)の要件について変更する方向
変更前:「経常的な利益」ベース⇒変更後:「課税所得」ベース

たとえば、会社分類2号の要件は、
 当期及び過去(概ね3年以上)連続して、
 変更前:ある程度の「経常的な利益」が生じていること
⇒変更後:「課税所得」が安定的に生じていること
(臨時的な原因により生じたものを除く)

■変更理由
(1)他の会社分類との整合性を図るべき
 (他の会社分類は「課税所得」で判断)
(2)DTAの回収可能性は本来、将来減算一時差異と比較し
 十分な「課税所得」があるかどうかで判断すべき
 (「利益」ではなく)


5.未払賞与、通知なければ損金と認めず

■使用人賞与の損金算入要件
・支給額を支給を受ける者全員に対し通知していること
・通知額を通知した使用人に対し事業年度末から1月以内に支払うこと
・支給額を通知した事業年度で損金経理していること

上記3要件をみたしていれば、使用人への賞与が未払いであっても損金算入可能。

■定期賞与の支払いの場合は?
(結論)
給与規定により従前より職員に周知されていたとしても、上記3要件を満たしていなければ損金算入はできない

(理由)
・定期賞与であっても、業績等により支給割合が変更される余地があること
・給与規定で定められていても、使用人は具体的な支給額を把握できない。
 また周知されていることが通知があったとはいえない

夏季賞与や冬季賞与が支給される月の前月に、事業年度末(主に6月決算、11月決算)をむかえる会社は注意が必要となる
H27122日判決の事例であり、控訴中である。


6.不動産譲渡代金の減額は、「貸倒れ」によるもの

■審判所事例
・請求人がX社へ土地を譲渡
・譲渡代金は分割支払い
・途中で支払いが滞ったため、代金の一部を減額する覚書を締結
⇒減額分をどう取り扱うか?
 -請求人 :貸倒れであり必要経費
 -原処分庁:単なる債権放棄であり、必要経費にはならない

■結論
・必要経費算入OK
・下記、貸倒れの要件を満たしている
 (1) X社は債務超過の状態が相当期間継続している
 (2) 弁済を受けることができなと認められる
   ※実際、支払いが滞っていた
 (3) 書面により債務免除の通知を出している
   ※覚書を締結していた


7.相続税:小規模宅地特例と事業の規模

<事業>の規模は適用する特例で異なる
特定事業用宅地等の特例…不動産貸付業以外の事業が対象
貸付事業用宅地等の特例…不動産貸付業が対象

・特定事業用宅地等(特定同族会社事業用宅地等)の場合
⇒事業と称するに至らない規模のものは含まれない
 少なくとも所得税法上事業所得に該当する規模が必要

(参考)売電のため太陽光発電設備を設置
○周辺の除草など一定の管理なされている…所得税法上「事業所得」に該当
×とくに管理をしていない…所得税法上「雑所得」に該当

・貸付事業用宅地等の場合
⇒事業の規模は問わない。所得税法上の「事業的規模」を満たさない貸付でもOK


8.法人税:支払先が明らかにされていない支出の税務処理

一般的に考えられる税務処理は以下のいずれか
(1)使途秘匿金
 ・【損金不算入】とした上で、【支出額の40%の税金】がかかる。
 ・実務で使う機会は皆無。

(2)役員賞与
 ・【損金不算入】となるほか、【源泉徴収漏れ】が問題となる。
 ・対象の支出が社長個人の費用に充てられているケースが多いため、実態に合致することが多い。
 ・実務でよく使う。

(3)役員貸付
 ・翌年の定期同額給与を増加させることで回収原資を作り出すことができる。
  実質的に期ズレで損金不算入可能。
 ・状況に鑑みて可能であれば、この処理を使いたい。


9.評価性引当額について

・繰延税金資産(DTA)は将来、課税所得を減少させ、税金負担額を減額すると認められる範囲でのみ計上可能
・その範囲を超える部分は控除しなければならない
・評価性引当額=回収可能性が無いと判断し控除した金額のこと

・評価性引当額は
 「DTA及びDTLの発生原因別の主な内訳」において開示される。

⇒合計額が一括で記載されるため、どの部分が回収不可能なのかわかりにくいとの声あり
⇒内訳を開示する案が検討されている。


10.支配株主が新たに現れた場合の第三者割当に関する法改正

1. 現行法の第三者割当の手続
・発行可能株式数の範囲内での株式の発行
・有利発行でない
⇒ 上記を満たせば、取締役会決議で募集株式の発行が可能

2. 改正内容
支配株主(総議決権の50%超を保有する株主)が新たに現れる場合、下記手続を実施しなければならない。

(1) 株主に株式発行にかかる事前情報の通知又は広告
(2) 総議決権の10%以上を有する株主が反対した場合には、株主総会決議を要する。
※ただし、緊急性を要する場合には、株主総会決議は不要
※緊急性を要するとは、財政状況が悪化した場合など

3. 留意点
 支配株主が新たに現れる場合には、通常の手続とは異なるため留意が必要。


11.仮装払込を行った場合の責任と株主の地位について

1. 仮装払込をした引受人及び取締役の責任を規定
(1) 仮装払込をした引受人
⇒ 会社に対し、出資額の全額の払込が義務
(2) 仮装払込に関与した取締役
⇒ 引受人と連帯して、出資額の全額の払込が義務
※現行法では、責任を定めた規定なし

2. 仮装払い込みをした引受人は株主か
⇒ 出資額の全額を払い込むまで、株主の権利を行使できない。


12.本年株主総会の実務対応ポイント

■関連法規の適用時期
 会社法:5月1日施行(5月1日以後開催される定時株主総会から適用)
 CGC:6月1日適用開始
 ※CGC=コーポレートガバナンスコード
 ※今回の記事で触れている改正で主に対象となるのは上場会社

■総会の実務対応ポイント
(1) 社外取締役を置くことが相当でない理由への対応(()は説明が必要な場合)
  ・定時株主総会での説明(事業年度末に社外取締役を置いていない場合)
  ・事業報告への記載(同上)
  ・株主総会参考書類への記載(取締役選任議案を付議し、かつ、総会後に社外取締役が存しない見込の場合)

(2) CGCとの関連
 (株主総会と関連する項目)
  ・招集通知の発送日前ウェブ掲載
  ・議決権電子行使プラットフォームの利用等や招集通知の英訳を進めるべき旨が規定されている
   平成276月株主総会でこれらを実施しない場合には、しない理由の開示が必要になるのでは?
 (議案・機関と関連する項目)
  ・独立社外取締役を少なくとも2名以上選任すべきと規定
   確保しない場合には、しない理由の開示が必要となる
 (報告書の提出)
   CGCの各原則を実施しない場合の理由等の開示が必要(コーポレートガバナンス報告書)
   遅くとも定時総会の6か月後までに提出


13.改正会社法要点(ガバナンス)

・多重代表訴訟の制度
 会社グループ最上位の会社の株主が、完全子会社の中で特に重要な完全子会社の取締役や監査役等の責任を訴えにより追求できる

・旧株主による責任追及等の訴えの制度
 株式交換等の効力発生日で株主であれば、株主でなくなった場合でも責任追及等の訴えの提訴を請求できる


14.公開買付(TOB)について

1)特徴
・買付者があらかじめ、買付期間、数量、価格津の条件を提示して市場外で不特定多数の株主に応募を勧誘
⇒不特定多数に応募をかけるのは
・例えば過半数超の獲得を目的とする場合、つまり支配権を有することが出来る場合は、市場価格以上の価格で買うメリットがある。
 この市場価格以上の部分が支配権プレミアムと呼ばれる。
 仮に一部の大株主だけから買い取ると、他の株主は売却機会が与えられなくなり不平等になる。
 よって、(2)のルールに基づき公開買付が義務付けられる。

2) 強制公開買付(主な場合)
5%ルール
 直近60日間のなかで、11名以上から市場外で買付し、買付後の所有割合が5%を超える場合

3分の1ルール
 市場外による買付を行って、買付後の所有割合が3分の1を超える

3)買付条件
・期間は20営業日~60日営業日
・いったんTOBスタートすると撤回は×
・株主に不利な条件に変更も×


15.グローバル節税 「コーポレートインバージョン」

・「タックスヘイブン税制」
⇒ タックスヘイブンにある【子会社】の利益に対して適用される
⇒ タックスヘイブンに【親会社】を作っても適用対象外

・「コーポレートインバージョン】
⇒タックスヘイブンに親会社を設立し、節税を行う手法

・コーポレートインバージョンに対しては、タックスヘイブンの【親会社】株式を保

有する国内の株主に対して留保金課税を行う、等の手法で租税回避対策が取られている。








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