2015年3月7日土曜日

3/6 勉強会:のれんの一括償却 他

1.新株発行巡る賠償請求、役員が逆転勝訴

■まとめ
 ・非上場会社の株価の算定は、客観的資料に基づく合理的な算定方法により新株発行価額が決定された場合、有利発行には当たらない
 ・最高裁が判断の枠組みを示した形
 ・最高裁は株主の訴えをすべて斥けた

■経緯
 ・アートネイチャー社が非上場のときに役員らに対して行った新株の発行価格を配当還元方式で算定(@1,500円)
 ・株主は、DCF法により算定した場合(@7,897円)に基づく公正な新株発行の価格は7,000円以下にはならないとして役員らに対する新株発行が有利発行になると裁判所に訴えた
 ・地裁、高裁は株主側の主張を認め、役員らに対し2.2億円の損害賠償を命じていた
  2.2億=(7,0001,500)×4万株


2.控除対象外消費税額等の取り扱い

■控除対象外消費税とは
 ・消費税の計算上、控除出来ない仮払消費税のこと

■控除対象外消費税が発生するタイミング
⇒仮払消費税が全額控除出来ないケース
 ・税抜経理を採用
 ・課税売上割合が95%以下or課税売上高5億円以上

■法人税において調整するべき項目①<交際費>
(税抜の交際費額+控除対象外消費税等)の金額で、
 損金不算入額を計算することになる

■法人税において調整するべき項目②<繰延消費税額等>
⇒下記に該当する場合、調整が必要
 ・課税売上割合が80%未満
 ・固定資産に係る控除対象外消費税の金額が20万円以上
  ※棚卸資産は調整不要

⇒繰延処理はどちらの方法を採用しても良い
 ・資産計上をして、償却する方法
 ・資産計上はせず、別表上で調整する方法


3.過年度遡及会計基準による修正は確定決算に該当せず

(審判所の裁決事例:H26/6/4)
 臨時株主総会で承認した修正決算は、法人税法上の「確定した決算」ではない。
∴法人税法上の「確定した決算」は、定時株主総会で承認した決算

(理由)
・「修正決算を総会で承認すると、当初決算の承認が無効になる」という規定はない
・「誤謬の訂正」や「修正再表示」は過年度の決算書を作成し直すということではない
 (会社法、過年度遡及会計基準の規定内容から判断して)


4.二重課税裁判、納税者敗訴で決着

■事例
・相続により取得した土地を譲渡した
・相続時の値上がり益が発生する土地の取得⇒時価ベースで相続税の申告をした
・譲渡時に相続前の保有期間の値上がり益も含めて所得税の申告をした

■請求人の主張
相続時まで増加額について相続税課税され、その間の値上がり益も譲渡時に所得税の課税対象となる
⇒二重課税ではないかと主張。
 また相続により取得するものは非課税(所得税法9116号参照)

■判決
所得税について
被相続人において実現できなかった値上がり益への課税であるため、相続した相続人において課税する

相続税について
土地の経済的価値をもって相続したため課税する

同一の経済的価値ではあるが、二重に課税するもとではないと判決が下された。

■その後
納税者はH251121日に最高裁判決が下された後、不服として第一審や控訴審を行っていたが、最高裁がH27116日付で上告棄却及び申立てを受理しないことを決定したため、納税者の敗訴で決着した


5.国外事業者の施行日をまたぐ電子商取引に係る消費税は?

・平成27年度改正で、国外企業の消費税課税方式が変わる
【内容】
・国外企業が提供する「電気通信利用役務」(電子書籍、音楽、広告配信 等)
 ⇒今までは、課税対象外
 ⇒H27/10/1以降、国内配信されるものは課税対象

・(B to B取引)国外企業から、国内企業向けの広告配信など
 ⇒国内企業が代理で申告納税する(リバースチャージ方式)

・(B to C取引)国外企業から、国内消費者向けの音楽配信など
 ⇒国外企業自身が申告納税する

・経過措置なし


6.試験研究費の繰越控除廃止と不利益遡及

27年改正
試験研究費の「繰越税額控除限度額の繰越控除」が廃止
⇒法人税額の30%を超える部分を翌年に繰り越して控除できたが廃止される。

よって273月期に生じた超過額は283月期に控除できない。

■不利益不遡及の原則
(不利な)法律の改正があっても従前に遡って適用はしないという原則

■不利益遡及にあたるのでは?
①この規定は「翌期での控除を保証している規定」ではない
②期首に「繰越控除限度超過額」を有している場合に適用
期首時点で「繰越控除限度超過額」という概念が廃止されている。
よって当然に適用なしとなるため、不利益遡及にあたらない(らしい)


7.個人住民税:個人住民税と特別徴収の推進

・現在個人住民税は特別徴収を原則としつつも、運用上は事業者の選択により普通徴収も認められている。

・今後は特別徴収が更に推進され、自治体により時期に差はあるものの全ての事業者で特別徴収が義務付けされる。

・東京都はH29年度より。


8.子会社株式の減損

1.概要
・単体決算で検討(連結では問題とならない)
・「時価を把握することが極めて困難と認められる株式」に該当
 ⇒回復可能性の判定を行うこと無く、実質価額が50%程度以上減少すれば減損する
 ⇒ただし、子会社や関連会社の場合には回復可能性の検討ができる
  「その回復可能性が十分な証拠により裏付けられる」場合には回避
・実質価額は通常は時価純資産価額から算出

2.回復可能性
・おおむね5年以内に、実質価値が50%切っている状況が解消される、と見込まれていても、取得原価まで回復する見通しがないのであれば、減損処理を実施する

3.実質価額をDCF等で算出した場合
・実質価額=超過収益力を反映した価額(=DCF等で算出した価額)としている場合。
 ⇒回復可能性を考慮する余地はない
 (※株価評価の段階で将来の業績予測が織り込まれているため)


9.民法改正要綱案(定型約款に関する民法改正)

1. 定型約款に関する民法改正の趣旨
(定型約款のメリット)
 ・大量かつ定型的に行われる取引を効率化
(定型約款のデメリット)
 ・相手方が約款の内容を認識していなかった事を理由に契約が無効だと主張するなど、争いが起きやすい。
⇒ 定型約款についての規定を明文化し、定型約款であり、相手方が同意すれば、契約として有効となることを明記
⇒ メリットを生かしながら、デメリットを減らすことが、本改正の趣旨

※現行法案では、約款に関する明確なルールなし

2. 定型約款の定義
 ・不特定多数を対象とする取引であること
 ・約款の内容が平等(画一的)であること
 ・契約する前提であること
⇒ 上記を充足したものが定型約款

3. 定型約款を使った取引の例示
 (1) 定型約款   ⇒ アマゾン等の利用規約
 (2) 相手方の同意 ⇒ 利用規約の同意ボタンをクリック


10.日本版コーポレートガバナンス・コードとエンゲージメント

(言葉の意味)
・コーポレートガバナンス・コード:
持続的成長に向けた企業の自律的な取組みを促すため、東証が新たに策定
本年中に導入することが予定
・エンゲージメント:
機関投資家と投資先企業との間の「目的を持った対話」のこと
⇒コーポレートガバナンス・コード策定の上でのキーワード

(要求)
 独立社外取締役の重要性!
  ⇒上場会社は独立社外取締役を少なくとも2名以上選出せよ!

(会社法との比較)
 会社法:1名以上(置かない場合は総会で説明義務)
 CGC:2名以上(今のところ、罰則規定てきなものはなし)

(影響)
 3000人程度の社外取締役需要が発生する見込み


11.会社が保有する有価証券から金銭配当があった場合の会計処理

・その他利益剰余金の処分による配当
 ⇒原則、受取配当金

・その他資本剰余金の処分による配当
 ⇒原則、有価証券簿価から減額(売買目的除く)
 ⇒売買目的は、受取配当金(売買目的有価証券運用損益)


12.のれんの一括償却

(1)規定上の取り扱い
原則:20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって定額法等で償却
例外:重要性が乏しい場合には一括で費用処理可能

(2)一括償却の事例
67事例(64社)※集計期間は平成233月期~平成269月期
(参考)32日時点の上場企業は3,472社(64社=約1.8%)

・科目は販管費が圧倒的多数、特別損失もあり

・段階損益に与える影響割合は05%未満:70%超、5%超:30%未満
⇒金額的重要性が相当程度低い場合のみ例外処理
 ただし質的重要性も考慮する必要がある


13.監査等委員会設置会社の実務上の利点

「監査役設置会社」、「指名委員会等設置会社」の中間の形態として、「監査等委員会設置会社」が制定された。(201551日施行)

・「監査等委員会」は委員会なので取締役で構成される。(3名以上、過半数は社外)
・委員の選定は取締役会ではなく、株主総会で決議される。

(実はこんな利点が…)
現在、「監査役会設置会社」の会社は、社外監査役を最低2名置く必要があり、今後はこれに加えて更に社外取締役を置くことになる。

ところが、「監査等委員会設置会社」になれば、監査役は廃止され、社外取締役を2名以上置けばよいので、社外役員を増やす必要がなくなる。








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