2015年3月21日土曜日

3/20 勉強会:法人税:欠損金繰越控除 新設法人の特例等(27年度改正) 他

1.名古屋地裁TH税制における「主たる事業」の判定方法

・タックスヘイブン(TH)対策税制の適用除外基準の1つである事業基準における「主たる事業」の判定方法について、原処分庁と国税不服審判所が出した結論と地裁が出した結論が異なっている

・原処分庁、国税不服審判所
 地域統括会社における事業ごとの収入や所得金額に占める割合をもって主たる事業を判定
※今回の事例では、
 株式保有による収入が多い=主たる事業:株式保有業=TH適用ありの課税処分を行っていた

・地裁
 事業活動の具体的かつ客観的な内容から判定
 事業ごとの収入や所得金額だけでなく、その事業に従事する使用人の数、施設などを具体的、総合的に勘案することが必要
※今回の事例では、
 株式保有以外の具体的な事業活動がある=主たる事業:株式保有業以外の事業=TH適用なしの判決

・主たる事業の判定方法を「事業ごとの収入、所得金額に占める割合」としてしまうと「たまたま」配当収入が多かった株式の譲渡益が出た場合などに、本来はTH対策税制の適用が除外されるものもTH対策税制が適用になってしまい、法律の立法趣旨を損なうことになる

・現在高裁で係争中


2.税効果、改正法が3月末公布なら新税率

・平成27年度税制改正により、法定実行税率が引き下げ

・税効果会計の適用税率は?※3月決算の場合
⇒改正税法が3月末までに公布=改正後の税率を適用、
 また税率変更により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額が修正された場合、その旨及び修正額を注記

⇒改正税法が41日以後に公布=税率の変更の内容及びその影響額を注記

いずれにせよ新税率での算定は必要となる。


3.一部会計ソフトで事業税が過少に算出

一部の申告書作成ソフトで、事業税の「第六号様式」の改正が反映されていないケースがある
⇒計算状況の確認必須

■原因
 「利子」や「配当」について源泉徴収された復興特別所得税が、損金算入処理をした場合、事業所税の所得に加算されていない

■経緯
 ・平成251月 復興特別所得税導入
 ・平成264月 事業税の計算において復興特別所得税の加算開始
 ・平成265月 一般会計ソフトの販売開始
 ・平成266月 第六号様式の改正
⇒一般会計ソフトの販売開始が、第六号様式改正よりも早かったため


4.中期経営計画がなければ原則の適用なし

・金融庁と東京証券取引所が有識者会議でコーポレートガバナンス・コードの原案を正式決定(公開草案から内容の変更なし)

・コーポレートガバナンス・コードとは、役員報酬のあり方など上場企業が守るべき行動規範を集約したもの。
 上場企業が各行動規範に同意しない場合は、その理由を投資家に説明する必要がある。(平成2761日から実施)

・一方、公開草案について実務上の取扱いを明確にするよう求める意見があり、これに対して回答が出されている。

例えば、「中期経営計画が目標未達の場合、原因を分析し株主に説明する」
(補充原則4-1)

(意見)
 中期経営計画の策定を明確に求めるべき
(中期経営計画といった名称を利用しない、計画そのもの策定しないことで同原則の適用を回避しようとする恐れがあるため)

(回答)
 中期経営計画の策定は求めない
(中期経営計画に該当するかどうかは実質的に判断する一方で、策定しないという経営判断は容認(策定しない場合、同原則の適用なし))


5.最高裁、当たり馬券の払戻金は「雑所得」に該当

■事例
・ネット上において馬券を購入
・全レース網羅的(全通りなど)に購入していた
3年間で約28.7億円を投資し、約30.1億円の払い戻しを受けていた
・投資額と払戻金のトータルの差額(1.4億円)は雑所得に該当すると主張

■ポイント
馬券の購入が一時所得or雑所得どちらに該当するか

条文においては
一時所得・・・営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の所得
雑所得 ・・・事業所得や一時所得などすべての所得以外の所得

上記の条文をもとに、
課税庁は馬券の購入はあくまでも趣味で行っており、営利目的として行っていないと判断し、一時所得に該当すると主張

■判決
3年間にわたり全レース大量に購入(年換算で約10億円超)
・恒常的に多額の利益をあげていた
・馬券購入行為そのものが利益をあげるための経済活動
⇒営利を目的とする継続的行為から生じた所得と判断され、雑所得と認定された

ただし、一般的な馬券の購入とは異なり、機械的かつ網羅的に馬券を大量購入しているので、例外として雑所得として取り扱う。
一般的には「一時所得」に該当する


6.消費税における「租税回避」

【事実】
・消費税法には、「租税回避」規定がない。
※法人税法には、同族会社・組織再編などの行為計算否認規定がある。

【考察】
・消費税法導入時に、「租税回避」規定の創設が検討されたはずである。
・預り消費税を国へ納付するだけなので、同族会社特有の租税回避等は想定しにくかったのでは。
・ただし実際は、自販機スキームなどの租税回避(=制度の濫用)も行われている。
・今後は消費税の租税回避にも課税を行うことが検討されるのでは。


7.リバースチャージ方式の対象となる「事業者向け取引」とは

■リバースチャージ方式(対象者)
・国内事業者で課税売上割合が95%未満
H27.10.1以降、国外事業者から「事業者向け」電気通信利用役務の提供を受けた場合に、
⇒役務の提供を受けた国内事業者が納税義務を負う

■「事業者向け」電気通信利用役務の提供とは?
⇒役務の提供を受ける者が通常、事業者に限られるものをいう

(具体例)
・電子書籍 ×(不特定多数の者が役務の提供を受ける)
・音楽の配信 ×(〃)
・クラウドサービス ×(〃)
・広告の配信 ○(通常、事業者のみが役務の提供を受ける)

■留意点
「事業者向け」か否かはサービスの性質で判定する。
そのため、たとえば音楽の配信契約を事業者として契約をしていても対象とならない。


8.法人税:欠損金繰越控除 新設法人の特例等(27年度改正)

繰越欠損金の利用制限について改正が行われる。
■資本金1億円以下の法人
 ・単年度の所得相当(全額)まで、繰越欠損金を使用可能

■資本金1億円超の法人[原則的な取り扱い]
 ・現行 
   単年度損益の80%まで、繰越欠損金を使用可能
 ・H27.4.1以後開始事業年度
   単年度損益の65%まで、繰越欠損金を使用可能
 ・H29.4.1以後開始事業年度
   単年度損益の50%まで、繰越欠損金を使用可能

■資本金1億円超の法人[設立から7年以内の特例]
 ・H27.4.1以後開始事業年度において、設立から7年以内であれば単年度の所得相当
(全額)まで繰越欠損金を使用可能。
  ※H27.4.1より前に設立された法人にも適用される。
  ※設立から7年以内であっても、上場した法人にはこの特例は適用されない。


9.連結の範囲/一般社団法人・一般財団法人が子会社に該当するか

(1)「会社に準ずる事業体」に該当するか否かを検討(該当すると子会社になる)
⇒親会社と一般社団法人・財団法人との関係性の実態判断。
⇒例えば、最終的に一般社団法人・財団法人から生じる損益がグループ内に還元又は転嫁されている場合は「会社に準ずる事業体」として取り扱うべき、となる。

(2)機関(社員総会または評議員会など)を支配しているか否かを検討
⇒「会社に準ずる事業体」かつ、意思決定機関を支配している場合には、子会社と判断する。

意思決定機関
 一般社団法人:社員総会、一般財団法人:評議員会
業務執行機関
 一般社団法人:理事会 、一般財団法人:理事会


10.単体開示の簡素化の復習

1. 単体開示の簡素化の趣旨
 ⇒ 金商法において、重要視されるのは連結FS
 ⇒ 個別FSの開示内容を簡素化し、事務負担を減らす

2. 簡素化の内容
(1) 特例財務諸表提出会社のみに適用
 ⇒ 会社法ベースでの開示を認める。
 ⇒ 開示すべき内容が金商法ベースと比較して減る。
 ⇒ 有報向けに資料を作成し直す手間が減る。
※特例財務諸表提出会社 … 連結FS作成会社、かつ会計監査人設置会社

(2) 連結財務諸表作成会社に適用
 ・注記すべき事項の一部免除
※リース取引や、減損損失の注記などが免除
 ・主な資産及び負債の内容の省略
 ・製造原価明細表の省略(ただし、連結FSでセグメント情報を記載している会社のみ)

(3) 全ての財務諸表作成会社に適用
 ・区分掲記すべき科目の金額的基準(重要性基準)の緩和
 ・有価証券明細表の省略(ただし、上場している会社のみ)


11.平成2627年度税制改正に伴う税効果会計のポイント

■平成26度税制改正の影響
(1) 生産性向上設備投資促進税制に係る税効果
  一定規模以上のものを取得・事業供用した場合には特別償却or税額控除
  特別償却…会計上認められていない方法
  特別償却を選択した場合には一時差異が発生する
(2) 地方法人税の創設による連結納税制度を適用する場合の税効果
  地方法人税…国税として取り扱う=連結の見地で回収可能性判断

■平成27年度税制改正の影響
(1) 税率変更
  決算日までに公布された場合:
   新実効税率=解消年度の税率により計算する点留意
   (平成283月期=32.11%、平成293月期=31.33%)
  公布日が決算日より後だった場合、その内容と影響の注記が必要!(要注意)

(2) 繰越欠損金
  繰越期間(平成2941日以後に開始する事業年度で生じた欠損金は10年)
  使用制限(平成283月期、293月期は課税所得の65%、平成303月期は同50%)
  スケジューリングにあたって、上記に留意する

(3) 受取配当等の益金不算入制度の見直しによる影響
  将来の課税所得の発生見込の見積もりにあたって、留意


12.在外子会社の清算決定に係る会計上の論点

①連結除外とするかどうか
 ・原則、精算手続が結了するまでの間連結
 ・量的質的に重要性が乏しい場合は除外できる

②留保利益に係る将来加算一時差異に対する税効果
 ・子会社の資本の親会社持分額と個別BS上の投資簿価との間の差額は将来加算一時差異。
 ・清算配当を受け取ったときに追加納付が見込まれる税額を連結上、繰延税金負債として計上する必要がある

③為調に対する税効果
 ・清算を決議している場合、為調の一時差異の実現可能性が高いといえるため、税効果を認識する必要がある


13.有価証券報告書虚偽記載に基づく取締役の責任

1)相当な注意の有無
・有報の作成・提出に関与していなかったとしても、当然に免責されるものではない
⇒ただし、有報に虚偽記載があることを知らず、かつ相当な注意を用いたが知ることが出来なかった場合は免責可能

2)相当な注意の内容
・各役員の職務や地位によって異なる
・ある事業部門に関する記載について、当該部門を担当する役員等には記載の原資料を確認する義務がある
・多忙、病衣、遠隔地居住は理由にならない

3)免責事例
A社では各取締役間で職務分担がされており、財務は経験のあるものに委ねられていた
・財務にノータッチ
・取締役会資料が完全に粉飾されていた


14.決算日の変更手続き

・株主総会特別決議(半数以上出席、2/3以上賛成)で変更可能。
→税務署に異動届出書を提出

※総会決議は、決算日以前に行う(3月決算の会社が2月決算に変えたいならば2月中に)異動届出書は、決議後速やかに提出

・「12ヶ月を超える事業年度」には出来ないので、変更する事業年度は、通常期間が縮まることになる。
※税務上。会計上は「変更直後は18ヶ月まで可」


・変更によって、場合によっては節税効果があることも。








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