2015年2月20日金曜日

2/20 勉強会:無対価組織再編時の留意点/無対価の組織再編に関する会計のポイント 他

1.裁決事例:システムキッチンの取替工事に係る取扱いについて

■概要
不動産貸付業を営む個人Aはマンションの流し台をシステムキッチンに取替え、その費用を「修繕費」として申告した。
税務当局はこれを「資本的支出」であるとして更正処分を行った。

■個人Aの主張
・建物躯体に影響を与えるものではなく建物の使用可能期間が延長するわけではない。
・工事後においても賃料を変更していない(=価値が増加していない)
・よって本工事は資本的支出に該当しない(=修繕費である)

■税務当局の主張
・全面改装であり通常の維持管理費用にあたらない
・改装により建物本体の価値が増加している
・よって資本的支出に該当する

■審判所の判断
・改装により住人にあらたな便益を付与している
⇒建物の価値が高まったと言えるため資本的支出である

ポイント⇒賃料変更の有無は判定の際考慮されない


2.贈与税:扶養義務者からの結婚等に関する贈与と贈与税

平成27年度改正により、結婚・子育て資金の一括贈与にかかる非課税措置が創設される(300万円まで)

■いまでも結婚に際して親や祖父母が費用を負担するケースはよくあるが、相続税の払う必要はなかったのか?
⇒通常日常生活を営む上で必要と認められる生活費や教育費のための贈与は、課税対象とならない。
地域や家族の風習、子や孫の経済状況を勘案して判断される。
 Ex)・地域の風習に照らして必要と判断される嫁入り道具
   ・結婚式費用のうち親族の行事として親が負担すべき部分


3.取得関連費用(企業結合基準の改正)

・今年の4月以降開始事業年度から
取得関連費用
対価性のある報酬(M&A業者の成功報酬など)

(改正前)
 連結:取得原価=のれんに含める
 個別:株式取得の付随費用=取得原価へ

(改正後)
 連結:費用処理
 個別:株式取得の付随費用=取得原価へ(変更なし)
  ※金融商品Q&A15-2

連結は企業結合会計基準が、個別は金融商品実務指針が適用される。
「親と子で会計処理を合わせる」ってのの例外になる。


4.無対価組織再編時の留意点

1. 無対価で組織再編する場合の留意点
 対価のある組織再編では適格組織再編でも、無対価だと適格組織再編とならない場合がある。

2. 対価があれば適格でも、無対価だと非適格になるケースの例示
 ⇒ 100%グループ内での、親会社と孫会社の合併
 ※100%グループ内での組織再編でも、無対価だと適格とならない。

【参考】無対価組織再編が適格となるための要件(合併のケース)
 ・100%親子間の合併
 ・100%兄弟間での合併
 ・100%親子・兄弟間の混合
※再編の形態(合併なのか、会社分割なのか等)により要件が変わるため、留意が必要

3. 無対価で適格の要件を満たさない場合
 ⇒ 組織再編の直前に、適格となるための要件を満たしていればよい。
 ⇒ 無対価組織再編を組み合わせること等によって、適格と出来るケースがある。
  ⇒ 適格要件を満たすスキームを検討することが重要


5.無対価の組織再編に関する会計のポイント

 ⇒組織再編は原則現金または株式を対価にして行うが、無対価で行う例外的ケースはどうするか?
■規程
 下記の場合(いずれも共通支配下の取引)に会計処理が定められている
  ・100%子会社同士の合併
  ・親から100%子会社への事業分離
  ・100%子会社同士の事業分離
  ・100%子会社から親会社への事業分離

100%子会社から親会社への事業分離
 (原則)共通支配下の取引では、資産負債を適正な簿価で引き継ぐため、移転損益
は発生しない
 (対価:株式の場合)
  子会社:
   【親会社株式】    /移転諸資産
   親会社株式に係るDTA/移転諸資産に係るDTA
  親会社:
   移転諸資産      /【払込資本】
   移転諸資産に係るDTA/

 (対価なしの場合)
  子会社:
   【株主資本】     /移転諸資産
   法人税等調整額    /移転諸資産に係るDTA
  親会社:
   移転諸資産      /【子会社株式】
   移転諸資産に係るDTA/抱合せ株式消滅差損益

  ※通常、株式を発行して組織再編の対価とするので、発行会社では株主資本が増加するが、無対価の場合、原則、株主資本は増加しない。


6.使用見込みのない遊休資産の減損で注意すべき点

・見込まれるキャッシュ・フローは、使用後の処分によるキャッシュ・フローのみとなる。

4つのステップに従い検討する点は通常の減損と変わらない。
 (資産のグル―ピング検討⇒減損の兆候の有無判定⇒減損損失の認識判定⇒減損損失の測定)


7.無形資産の評価について

(1)マーケット・アプローチ
・類似取引を参考に評価
※取引情報の入手が困難なので採用は難しい

(2)インカムア・プローチ
・資産が生み出す将来キャッシュフローをベースに評価(=DCF法)

代表的なものとして下記の2
a.超過収益力法(例:特許権)
⇒評価対象資産が貢献する利益(全体利益-他の経営資源が生み出す利益(※))を対象として評価
(※)キャピタルチャージと呼ばれ、運転資本、固定資産、労働力があげられる

b.ロイヤルティ免除法(例;商標権)
⇒評価対象資産を持っていない場合、本来支払いを要した費用(※)=価値として評価
(※)当該費用は売上×ロイヤルティレートで算出されるが、ロイヤルティレートの設定がポイントになる

(3)コスト・アプローチ
・対象資産と同等の資産を入手するために要した費用をベースに評価


8.法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)

重加算税に該当する「隠蔽又は仮装」の定義についても、事務運営指針に明記されています。

(国税庁HP

第1 1項 隠ぺい又は仮装に該当する場合

(1) 二重帳簿の作成

(2) 次に掲げる事実があること。

1 帳簿書類を、破棄又は隠匿していること
2 帳簿書類の改ざん、虚偽記載、相手方との通謀による虚偽の証ひょう書類の作成、意図的な集計違算その他の方法により仮装の経理を行っていること
3 帳簿書類の作成又は記録をせず、売上げその他の収入の脱ろう又は棚卸資産の除外をしていること

(3) 特定の損金算入又は税額控除の要件とされる証明書その他の書類の改ざん等

(4) 簿外資産に係る利息収入、賃貸料収入等を計上していないこと。

(5) 簿外資金をもって役員賞与その他の費用を支出していること。

(6) 同族会社であるにもかかわらず、架空の者又は単なる名義人を使って非同族会社としていること。

ただし上記は判定しづらいため、「該当しない」場合を覚えておくとより便利です。

第1 3項 帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合

次に掲げる場合で、相手方との通謀又は証ひょう書類等の破棄、隠匿若しくは改ざんによるもの等でないとき

(1) 売上げ等の収入の計上を繰り延べている場合において、その売上げ等の収入が翌事業年度の収益に計上されていることが確認されたとき。

(2) 経費の繰上計上をしている場合において、その経費がその翌事業年度に支出されたことが確認されたとき。

(3) 棚卸資産の評価換えにより過少評価をしている場合。


(4) 確定した決算の基礎となった帳簿に、交際費等又は寄附金のように損金算入について制限のある費用を単に他の費用科目に計上している場合。








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