2014年12月15日月曜日

12/12 勉強会:所得税:NISAの最終買付日 他

1.免税で還付できず、依頼者が税理士に対し賠償請求

■まとめ
・消費税の課税形態の選択をめぐる税賠訴訟で税理士側が完全勝訴
・裁判所は原告法人が税理士に対して適切な情報提供がされていなかったと判断

■裁判所の判断
1、枠組み
  税理士の消費税の課税形態の選択に関する指導、助言は、依頼者からの適切な情報提供をもとに課税上重大な利害損失があり得ることを具体的に認識した場合等に付随的な義務が生じる場合もあり得る

2、今回のケース
  会計ソフトの予算管理のような場所に今後の固定資産の取得状況を記載しても取得予定について認識し得るにとどまる
  したがって、これをもって税理士に適切な情報提供がされたということはできない


2.増資に係る支払報酬は委託業務の対価

■概要
A社が第三者割当増資を行うにつき、X社に業務委託した
・それが架空の契約で、寄付金になるのではないかと争われた事例

■結論
・寄付金には該当せず、業務委託の対価と認められた

■判断材料
1、A社は財務諸表の注記に、
 「継続企業の前提に関する重要な疑義が生じている」旨と、
 「収益改善をするために増資を行う」旨を記載していた

2、経営状況から、公募ではなく第三者割当にするしかなかった

3、X社は契約上投資家を集めるだけでなく、募集が出来なかった場合はX社の資金により新株を引き受けるなどして、本件増資を確実に成功させるような契約になっていた


3.財務諸表等規則と会計基準、どちらの規定に従う?

【論点】
財規の改正に伴い、H26/3期より単体開示が簡素化
→これに伴い発生した実務上の問題にどう対応するか

【単体開示の簡素化とは】
・連結F/S作成会社の個別F/Sにおける開示の簡素化

具体的には、
・会社法の要求水準に合わせた簡便な財務諸表の様式の採用
・一定の注記について会社計算規則の規定による開示
・別掲基準の緩和
など

【実務上の問題点】
財規:開示不要、会計基準:開示必要
という項目に関し、開示の要否が不明

【解決策】
財規>会計基準→「財規上、開示を要求しないものについては、会計基準上も開示を要求するものではない」ことを明確化

例えば、無償取得した自己株式に関する注記について、財規:連結F/Sを作成している場合、個別F/Sでは開示不要
→会計基準:個別S/Sの注記を記載している場合、注記事項として一定事項を記載するとし「会計基準が別途、開示を要求するものではない」ことを明確化


4.国外芸能人等にリバースチャージ適用も

●事例
海外居住の日本人(非居住者)や外国人タレント・スポーツ選手が、日本で得た収入について、消費税を納税しないケースが多発している

●理由
「海外に居住している=非居住者=消費税の納税義務なし」と、間違った認識をしている人が多い。
非居住者であろうが、基準期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合は、消費税の納税義務がある。

●対策
リバースチャージ制度の導入を検討している。
非居住者や外国人タレント等が行った役務提供につき、納税義務を報酬を支払う企業に転換させて消費税を納税させる。

平成27年度税制改正で是正される予定。
なお、「税抜金額」で報酬を支払うことになるため、報酬金額の契約形態の変更も必要となる。


5.上場株を時価9割で売却、時価との差額に寄付金課税

【審判所事例】
・請求人が、関連会社間で上場株式を譲渡(相対取引)
・譲渡対価が、証券取引所の売買価格の約9割であった。
・差額の1割分が寄付金に該当するかどうか?

【請求人主張】
・相対取引での譲渡
 ⇒譲渡対価は、売手・買手の思惑や今後の予測が働いて決定されたもので適正額。
 ⇒証券取引所の株価の9割で取引しており、異常な取引価額ではない。
・売手・買手に、差額1割分を贈与(寄付)したとの認識はない。

【判決】
・請求人の主張は退けられた
・上場株式の適正価額(時価)は、特段の事情がない限り、証券取引所の終値
・差額1割分について、売手・買手に贈与の意思がなくても寄付に該当する


6.工事進行基準の適用をめぐる課税関係

(長期大規模工事以外の工事について)
Q1 会計上で工事進行基準を採用した場合、税務上で工事完成基準を適用して減算調整することはできるか

A1 できない(ものと考えられる)
⇒税務上、工事進行基準の適用は任意であり、上記処理を否認する規定はない。
 但し、会計上工事進行基準を選択した以上、税務上も工事進行基準を選択したものと解するのが自然である。

Q2 A工事が黒字工事、B工事が赤字工事の場合、A工事を工事進行基準、B工事を工事完成基準で処理することはできるか

A2 できる
⇒工事進行基準は工事毎に選択適用できることとされている

Q3 法人税で工事進行基準を採用した場合、消費税で工事完成基準(引渡基準)を適用して納付税額を計算することはできるか

A3 できる
⇒基本通達により、「完成引渡し時に資産の譲渡等があったものとすることができる」旨、規程されている。


7.所得税:NISAの最終買付日

・今年のNISA枠を使用するためには、年内に「受渡日」を迎えるように買付けを行う必要がある。

・株式の受渡日は通常は約定日を含めて4営業日目。

・今年の大納会は12/30であり、今年のNISA枠を使用するためには『12/25迄』に約定する必要がある。


8.監査人選任の決定権

・会計監査人の選任等に関する決定権が監査役&監査役会に付与(H27.5.1施行予定)

・監査役等設置会社では会計監査人の選任&解任&再任しないについての総会議案は監査役等が決定する

⇒「インセンティブのねじれ=監査を受ける経営者が会計監査人の選任&報酬を決定」の解消のため

⇒従来から「同意権」はあった。が不十分だった。
 ※報酬については改正後も同意権のみ


9.ポイント制の退職金制度における給付算定基準の選択

1.給付算定基準を採用する場合の方法
 (1) 平均ポイント比例の制度として扱う方法
⇒ 毎期同じポイント数で累積していくとしてPBO算定
※ 将来のポイント変動を加味した退職までの累積ポイント÷勤務期間

 (2) 将来ポイントの累計を織り込まない方法
⇒ 実際に付与されるポイントを基にPBO算定
※ただし、採用するには勤務期間後半に著しいポイントの変動がないことが条件

2.上記方法を選択する判断基準の例示
 (1) 従来採用していた期間定額基準との近似を重視 
⇒ 平均ポイント比例の制度として扱う方法

 (2) どのようにポイントが付与されていくのかを重視(制度の設計思想を重視)
⇒ 将来ポイントの累計を織り込まない方法

※ 会計基準において、原則がどちらかは明示なし

3.上記方法の変更の可否について
 原則として、採用した方法は継続適用しなければならない
  ⇒ 制度設計の変更等による、合理的な理由があれば、変更も可能


10.過年度の「誤謬」訂正に関する情報収集ポイント

■修正再表示などの事態になる前に……平時の心がけ
 →そもそも誤謬が生じないようにする+決算作業中に誤謬の疑いが発覚しても適切な対応ができるような仕組みづくり
  ・ダブルチェック体制など内部統制の充実
  ・将来の検索性を意識した資料の整理、文書化、リファレンス

■誤謬の可能性が発覚した場合 調査における留意事項
(1)概括的な調査
 ・過去の決算書における誤謬の存在は、インサイダー取引規制における「重要事実」に該当する可能性がある
 ・インサイダー取引という二次災害を発生させないよう情報管理には十分注意

(2)本格的な調査
 ・時間的制約 → 有価証券報告書等提出までという時間的制約がある
 ・どのような形式(社内調査or外部調査など)で調査を行うか検討
 ・調査対象期間 → 少なくとも5年分の訂正報告書を提出できるよう調査を行う必要
 ・調査が実務上不可能な場合の対応
 ・調査の範囲 → どの程度まで類似事例を調査対象に含めるのか
 ・再発防止策を意識した調査を行う

■調査の方法
・証憑の確認と検証
  偽造の可能性を考慮し、できうる限り原本を入手して、確認・検証するよう努めるべき
 
・関係者に対するヒアリング
  自己保身のため嘘をつく可能性。先に処分をしてしまうと、その後ではヒアリングの協力を得られない可能性も。
  供述内容が、契約書、電子メール等の客観的証拠を符合しているのか、供述の裏を取ることが必要
  陳述内容、収集資料をリスト化して整理分類しておくことが有益

・証拠保全の必要性、証拠隠滅の防止
  疑いがある、程度の段階で調査対象者のPC等を保全しようとすると、会社が調査をしようとしている事実が発覚してしまう


11.マンション管理組合が管理費等滞納者に請求できる弁護士費用の範囲

Q管理組合が、管理費等の滞納者に、未払管理費等の支払を請求する訴訟を提起した場合、弁護士費用の実費全額を請求出来るのか?

A請求できる(東京高裁平成26416日判決)。
 原審では裁判所が相当と認める額に限定していたが、せっかく訴訟まで提起して滞納管理費等を回収しても弁護士費用に消えてしまうのでは管理組合が訴訟提起することが難しくなる為。

 ※ただし、この事例では建物の管理規約は国土交通省のマンション標準管理規約に依拠している


12.カーブアウト・ディールにおける実務上のポイント

(用語説明)
カーブアウトとは、事業を分離・独立すること+他の組織に移転するまでの手続

(1)具体的には
多角化で複数事業を営んでいる場合に、不採算事業などの一部の事業を切り出すケース
・切り出す事業が法人単位で完結⇒株式譲渡で対応(比較的容易)
・切り出す事業が複数の法人に分散(例:S1社のA事業、S2社のA事業)
⇒手続が煩雑。カーブアウト・ディールの典型例

(2)事例
カーブアウトのプロセスには、事業売却のほか、「事業統合」がある。
・「産業競争力強化法」(H26.1施行 税制優遇、金融支援等)
 ⇒三菱重工業と日立製作所の火力発電関連事業の統合

(3)カーブアウト準備作業
分離元企業における大論点(2つ)
a.分離する経営資源の範囲の特定=カーブアウトFSの作成
・単に切り出した事業は独り立ちするための機能が一部欠落=スタンドアローン・イシュー
b.ストラクチャーの選定
・移転コストのうちでも特に税金費用はインパクトが大きい

(4)ディール段階の課題
・セルサイドDD=自らDDを行い、切り出した後の課題を事前対応する。
・分離元企業と分離先企業で切り出す事業の目線が異なることも

(5)カーブアウト実行段階ので課題
・受け皿への経営資源の移転(特に従業員は個人別対応を要する)
・取引先についても継続取引の同意を得る必要がある


13.使える補助金・助成金vol.11「地域資源活用イノベーション創出助成事業」

※東京都限定
・(対象者)
東京都内に主たる事業所をもち、事業を営んでいる者

・(要件)
東京の地域課題(福祉、安全・安心その他)を解決するビジネスモデル
東京の強みを発揮できるビジネスモデル
のいずれかに取り組んでいること

・(補助内容)
事業にかかる経費を補助

・(金額)1/2以内 上限800万円

・(募集期間)3月初旬~5月下旬

・(採択数)平成26年度 採択51件(エントリー数不明)

・(採択事例)

携帯型レントゲンによる在宅診療の高度化、外国人観光客向け買い物促進アプリなど








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