2014年11月29日土曜日

11/28 勉強会:有限責任事業組合(LLP)への出資の処理について 他

1.海外への機器使用料等に係る源泉徴収

■質問
 当社は日本法人です。
 香港の会社より日本国内で使用する機械装置を借りました。
 賃借料の支払いについて、源泉徴収の必要はありますか。

■回答
 1、租税協定の適用を受ける場合…源泉徴収は不要
   ただし、最初の使用料の支払いをする日の前日までに租税条約に関する届出書を日本法人の所轄税務署長に提出する必要がある

 2、租税協定の適用を受けない場合…源泉徴収は必要


2.実調減少の一方で無申告理由のお尋ね

・国税庁が平成25年事務年度における相続税・贈与税の調査状況を公表
→相続税の実地調査11,909件で前年より約300件減少
→贈与税も3,786件で前年より約800件減少

・減少の理由
(1)国税通則法改正の影響(調査手続の順守)
(2)実地調査以外の多様な手法の活用
[例:無申告が想定される者に対する書面でのお尋ね(平成25年度は相続税約5,000件、贈与税約1万件実施)]


3.堅固・非堅固にかかわらず借地権は存在

■概要
・母から子供へ土地を贈与した
・土地は法人に貸付を行っている
・土地の評価にあたり、借地権価格の控除は認められるか

■流れ
1、昭和52年 亡父が所有している土地の上に法人が建物を建てる
2、昭和63年 法人から亡父へ地代の支払開始 ※賃貸借契約なし
3、平成10年 建物を取壊し、駐車場へ
4、平成21年 母から子供へ土地を贈与

■論点
1、建物を取り壊した場合の借地権は?
  ⇒朽廃を原因とした滅失でない場合、借地権の存続には影響しない(借地法2)

2、借地権の発生は昭和52年か昭和63年か?
  借地権の判定に必要な建物は堅固か非堅固か?
   ⇒どちらにせよ本件贈与時には借地権が存続していると判断

 ・堅固な建物の場合 【存続期間:60年】
  ⇒昭和52年・昭和63年どちらの発生でも借地権は存続期間内

 ・非堅固な建物の場合【存続期間:30年】
  ⇒昭和52年に発生したと考える場合…平成19年に契約更新したとみなされる
  ⇒昭和63年に発生したと考える場合…存続期間内


4.改正会社法の施行日は平成2751

今年6月に公布された改正会社法の施行日が平成2751日とされる予定

【社外取締役に関する改正】
 社外取締役を選任していない上場会社等は、定時総会において口頭による説明に加え
(1)事業年度末日に社外取締役を置いていない場合、事業報告において
(2)総会に提出する取締役選任議案に社外取締役の候補者が含まれていない場合、株主総会参考書類において社外取締役を置くことが「相当でない理由」を記載しなければならない。

【「相当でない理由」とは】
 会社の実情に即したものでなければならず、「社外監査役が複数いることのみ」をもって当該理由とすることはできない。


5.税務申告を怠った税理士に、附帯税と慰謝料の損害命令

■事例
A社と税理士Bで税務申告係る委託契約を締結
Bは支部会が多忙等の理由により3年間税務申告をしなかった
・その間、顧問報酬は自動引き落としされていた
・無申告に伴う附帯税はBが負担すべきと損害賠償をおこした

■判決
支部会の仕事がいそがしい ⇒ 委任業務の放棄
記帳代行等を行わず    ⇒ 業務に係る報酬請求権は発生しない
3年間無申告       ⇒ 契約義務の不履行、不法行為による権利侵害

以上の判断により、
無申告により被った附帯税等につき損害賠償命令が下された。


6.受配益金不算入改正、JV(ジョイントベンチャー)への影響回避へ

★受取配当の益金不算入額
【現状】
<持分比率>           <益金不算入>
       100%              ⇒  配当全額
25%以上100%未満   ⇒  配当 ▲ 負債利子
25未満                 ⇒ (配当 ▲ 負債利子)× 50%

27年度税制改正の『有力』検討案】
<持分比率>               <益金不算入>
       100                                ⇒ 配当全額
       33%以上100%未満             ⇒ 益金不算入額縮小?
③少数株主持分(5%)以上33%未満  ⇒ 益金不算入額縮小?
       数株主持分(5%)未満            ⇒ 益金不算入額縮小?

JVは、出資比率を51:49へ設定することが少なくない
(誰が主導権をとるか明確にするため)
⇒上記②の持分比率を「50%以上100%未満」とすると、出資比率の決め方に多く影響する(51%49%では税負担が変わるため)
⇒影響を避けるためにも、上記②の持分比率を「33%以上100%未満」とする案が有力


7.新規上場企業紹介

㈱カヤック(マザーズ 3904
承認日:2014/11/20
上場日:2014/12/25
本社所在地:神奈川県鎌倉市
主幹事証券:大和証券
監査法人:トーマツ
主な事業内容:広告コンテンツ開発、ソーシャルゲーム開発等

企業の特徴:
広告コンテンツ事業とソーシャルゲーム事業の売上が拮抗している。
「面白法人カヤック」と打ち出しているように、一社だけで「合同説明会」をやってみたり、退職者ブースがあったり、採用ページに退職者インタビューが載っていたり。
また、毎月の社員の手当てがサイコロで決まるようです。


8.消費税:外国の市場調査を外国法人に委託した場合の課税仕入れ

■事例
(1)A社は外国の市場調査を当社に委託
(2)当社はその調査を外国法人B社に再委託

この場合、A社・当社が支払う手数料の扱いはどうなるか?

■役務提供の内外判定
市場調査など、役務の提供場所が明らかでないものは役務の提供にかかる事務所等の所在地で判定する。

■課税関係
(1)当社が外国法人B社に支払う手数料
⇒事務所等の所在地が国外であるため国外取引(課税仕入れとならない)

(2)A社が当社に支払う手数料
⇒事務所等の所在地が国内であるため国内取引(課税仕入れとなる)

結果、同一内容の調査報告であっても内外判定が異なることとなる。


9.所得税:海外勤務者に対するボーナスの源泉徴収誤りが散見

内国法人の海外勤務者に支給されるボーナスについて源泉徴収の対象となる国内源泉所得の範囲は以下のとおり。
 ※OECDモデル租税条約を前提

■従業員の場合
 支給された賞与のうち、国内勤務分に対応する部分は源泉徴収の対象となる。
 出国後に賞与支給された場合でも賞与支給対象期間の中途まで国内勤務していたら、プロラタで計算する。

■役員の場合
 支給された賞与の全額が源泉徴収の対象となる。
 内国法人が支給する役員報酬は、勤務地にかかわらずその全額が国内源泉所得となる。


10.役員向け株式給付制度

・日本版ESOP(株式給付型)
  ※退職時などに自社株式を給付する制度で給付対象者を従業員ではなく役員する会社があり
・事例:東京エレクトロン
  役員退職慰労金制度を廃止し、「業績連動型報酬制度」を導入


11.消費税10%引き上げに伴う経過措置

1. 消費税8%へ引き上げ時と同様の経過処置
・旅客運賃等
・請負工事
・資産の貸付
・延払基準適用
・工事進行基準適用
・冠婚葬祭互助会が行う役務提供
・書籍等の予約販売
・特定新聞
・通信販売
・有料老人ホーム
・仕入返還等、貸し倒れに係る消費税額の控除等

2. 消費税10%引き上げ時に新たに経過措置として追加されるもの
・家電リサイクル
【対象取引】
 ⇒ 施工日前にリサイクル料金を受領し、施工日後に再商品化等した資産を引き渡す取引
【適用条件】
 ⇒ 家電リサイクル法に規定されている条件を満たすこと

・電気料金等
 ⇒ 電気料金等の範囲に、灯油の供給が追加

3.消費税率10%へと引き上げの時期
 ⇒ 引き上げ時期の判断は12/8以降の予定であるが、引き上げ時期は延期される見通し


12.連結財務諸表上の税効果の考え方

 ・性格
  単体財務諸表の税効果=税務上の簿価と会計上の簿価の差異に係るもの
  連結財務諸表の税効果=単体会計簿価と連結会計簿価の差異に係るもの
 ・回収可能性
  連結:単体で回収可能性を検討した繰延税金資産については新たに検討不要
 ・実効税率
  単体:差異の解消年度(将来)の実効税率
  連結:差異の発生年度の実効税率


13.税務調査を活用した不正防止・早期発見法

税務調査を分析し、管理部門、内部監査部門がノウハウを共有する。

・調査官はどのような証憑書類を要求したか?
・調査官にどのような質問を受けたか?
・論点となった項目は否認事項となったのか?問題とならなかったのか?
 そうした判断根拠はどこにあるのか?


14.有限責任事業組合(LLP)への出資の処理について

(1)有限責任事業組合の特徴
  a.構成員全員が有限責任で、
  b.損益や権限の分配が自由に決めることができるなど内部自治が徹底し、
  c.構成員課税の適用を受ける⇒損益通算が可能

(2)個別FSの会計処理
  a.純額法:損益計算書の純額のみを持ち分割合に応じて計上
  b.総額法:損益計算書と貸借対照表の全てを持ち分割合に応じて計上
  c.折衷法:損益計算書は全てを持ち分割合に応じて計上、貸借対照表はLLPの資産から負債を引いた純資産の金額を持ち分割合に応じて計上

(3)税務のポイント
 ・税務メリットを最大限取るなら、総額法
 ⇒受取配当金の益金不算入、所得税額の控除、引当金繰入額の損金算入
全て認められる。
 ⇒純額法は全て認められない
 ⇒折衷法は受取配当金の益金不算入、所得税額の控除は認められる。


15.使える補助金・助成金vol.9「長期優良住宅化リフォーム推進事業」

・(要件)
もらえるのはリフォーム工事発注者、リフォーム工事施工業者
住宅をリフォームし、耐震性・省エネ・維持管理の容易性等の要件を満たした場合

・(補助内容)リフォーム費用の一部を補助
・(金額)1/3 上限1百万/戸、50百万/事業者
S基準を満たすリフォームについては、上限2百万/

・(募集期間)2月上旬
・(採択数)平成25年度: 6件採択(131件応募)


※専門家による審査が行われ、表面的な内容の提案は弾かれてしまう模様。








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