2014年11月1日土曜日

10/24 勉強会:使える補助金・助成金vol.4 「ものづくり補助金」 他

1.事前照会のリスクと活用

■まとめ
 ・事前照会を経たからと言って否認を行わないことを確約するものではない
 ・聞き方によっては意図しない回答が出てくる場合がある
 ・事前照会でOKをもらった場合、スキームの変更がしづらくなる
  …照会後のスキーム変更は、新たな事実を税務調査で把握することになり   事前照会とは異なる回答が出る場合があるため
 ・事前照会でNGとなったスキームを実施した場合、税務調査で是認されることはまずないと考えて問題ない
  …事前照会での回答は、調査担当部署に回覧されるため

 ・事前照会では保守的な回答となりがちなので、あえて事前照会を行わないという選択肢もあり


2.相続税時精算課税の説明怠り税理士が一部敗訴した事件

■事案
・原告は祖父から土地の贈与を受けた
・税理士は「相続税時精算課税」について適切な説明を怠り、「贈与税(暦年課税)」を選択すべきと意見を述べた
・原告は贈与税納付額相当の9431千円及び遅延損害金の支払いを求めた

・なぜ税理士は、「相続税時精算課税」を勧めたのか?
→原告は過去に相続で揉めたことがあり、他の相続人に贈与の事実を知られて新たな紛争は避けたいと希望
→「相続税時精算課税」の場合、他の相続人に贈与の事実が判明してしまう
→上記を踏まえ、原告は贈与税申告業務を依頼した

■東京地裁の見解と判決
・2つの選択肢によって、いずれが節税として有利であるか比較検討できるように説明義務がある。
・本件では「贈与税(暦年課税)」を選択したとしても、他の相続人が登記簿を閲覧すれば贈与の事実は判明できた。
その旨を説明しなかったのは、説明として不十分である。
→税理士は100万円とそれに対する遅延損害金の支払い義務を負う。


3.ライブチャットで認められる必要経費は

■審判所事例
 インターネットでライブチャットサービスを行っていた請求人が、雑所得金額の計算上、衣服費や化粧品費が経費に入れられるか

■判決
<必要経費として認められるもの>
 …パソコンやウェブカメラの購入費、ネット接続費

<必要経費として認められないもの>
 …衣服費、化粧品費、部屋の装飾費(自宅)

■判決理由
・認められる費用は業務上必要なものに限られる
 ⇒客観的に見て「必須」と解るもののみ


4.受取配当課税改正がJV出資比率に影響も

★受取配当の益金不算入額
【現状】
<持分比率>      <益金不算入>
100%                    ⇒  配当全額
25%以上100%未満  ⇒  配当 ▲ 負債利子
25未満                ⇒ (配当 ▲ 負債利子)× 50%

27年度税制改正の検討案】
100%               ⇒ 配当全額
33or50%以上100%未満     ⇒ 益金不算入額縮小?
③少数株主持分以上33or50%未満  ⇒ 益金不算入額縮小?
④少数株主持分未満         ⇒ 益金不算入不可?

★上記改正が、JV(ジョイントベンチャー)の投資傾向に与える影響
【現状】
・出資比率 51:49 ← 過半数確保 目的
・出資比率 34:66 ← 特別決議の拒否権確保 目的
を選択することが少なくない。

【②の区分が、50%以上~ へ改正される場合】
・出資比率51:49の案件が減り、50:50 の案件が多くなるかも
50%未満となると配当の益金不算入額が縮小し、税務デメリットとなるため

【②の区分が、33%以上~  へ改正される場合】
・あまり影響ないのでは
※出資比率34:66の案件の区分は変わらないため


5.税効果の例示区分12号は見直さず

【論点】
「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」の見直しが検討されている。

【「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」とは】
・繰延税金資産の回収可能性を検討する際の判断指針
・過去の業績等に基づいて会社を5つの区分に分類して、その区分に応じて回収可能性を判断する。
1号から5号へ行くに従って、業績が悪く課税所得を生み出す能力に乏しい会社とされ、一時差異が解消した際に税金負担を減少させる効果が見込めない(回収可能性がない)ものとされる。

【見直しの経緯】
・従来より「会社を5つに区分し回収可能性を判断するという手法は画一的である」という批判あり
・回収可能性を判断する際、課税所得を「おおむね5年」しか見積らず、税制改正(繰越欠損金の繰越期間が9年に延長)を考慮していない
 
【見直し内容】
 全体的な見直しはせず、一部見直し
1号・2号」といった相対的に回収可能性が高いとされるケースの見直しはせず、「3号~5号」といった相対的に回収可能性が低いとされるケースについて見直し

具体的には、
・回収可能性を判断する際、課税所得の見積可能期間を「おおむね5年」を上回る期間とすることを許容する規定を設ける。(3)
・会社を分類する際、ストックの事象(重要な税務上の繰越欠損金があるかどうか)だけでなく、フローの事象(例えば、将来も連続して業績が赤字となる可能性が高いかどうか)も判断基準に含める。(4)


6.先端設備リースの「契約内容変更」における会計処理が明らかに

リースを活用した先端設備等投資支援スキームとは、リース期間満了後1年以内にリース物件売却に伴う損失が生じた場合に、損失額の2分の1(購入額の5%を限度)として国が補償するスキーム

契約内容が変更された場合はどうするか
①ファイナンスリース取引の再判定については、契約変更時に変更後の条件に基づき、当初のリース開始日に遡って再判定する。
②再判定における借手の割引現在価値は、契約変更時の条件でリース開始日に追加借入が適用されたであろう合理的に見積もられる利率を用いて算定

再判定による契約変更により、オペレー ティング取引からファイナンスリース取引になった場合
⇒契約変更日より売買取引に準じた会計処理を行う

原則:リース資産とリース負債を計上して、差額を損益認識させる
実務上の負担を考慮して、リース資産とリース負債を同額計上して損益認識させない簡便法も可能となる


7.繰延税金資産の回収可能性、例示区分は廃止せず

企業会計基準委員会では「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」について、見直しを行っている。

・見直しの背景
税制改正により繰越欠損金の繰越期間は当初の5年から現在は9年に延長されているが、繰延税金資産の回収可能性を判断する見積可能期間は“おおむね5年”とされているままで、整合性を欠いている。

・今後の方向性
繰延税金資産の回収可能性が高いとされている区分①及び②については、当面は見直さない。
区分③~⑤で、将来の合理的な見積可能期間についておおむね5年といった年数を上回ることを許容するかについては、見直しが検討されている。
仮に延長を許容する場合は、将来も連続して業績が赤字となる可能性が高いかどうかなど検討することなどが挙げられている。


8.美術品等の減価償却見直し案

■現行通達
・書画・骨董は原則減価償却資産にあたらない
・美術年鑑に登載されている作者の作品は書画・骨董に該当する
・判別できない場合は金額(20万円未満、号2万円未満)要件で判定

■改正案
・古美術品等で歴史的価値を有し代替性のないもの以外の美術品については 100万円未満であれば減価償却資産とする。
⇒年鑑基準廃止

・時の経過により価値が減少することが明らかであるものは減価償却資産とする。
⇒会館ロビーの展示用として購入し、転用が困難であるものなど

■適用時期
 平成2711日以後開始事業年度において有する美術品等につき適用


9.研究開発費の処理

1998年に「研究開発費等に係る会計基準」が制定されるまではノールール
・本当に効果があるかどうかは不確実=発生時費用処理
 ⇒保守主義の発送
IFRSは研究開発を2つに分けた
  研究=不確実性が高い=発生時費用処理
  開発=実現に近づいている=以下の6要件をすべて満たせば資産計上

①無形資産を完成させ、これを使用または売却することが技術的に可能
②無形資産を完成させ、これを使用または売却する意思を有している
③無形資産を使用または売却する能力がある
④無形資産が将来の経済的便益を創出することを示すことができる
⑤開発完成のための技術上、財務上及びその他の資源を十分に有している
⑥無形資産の開発局面に係る支出を信頼性をもって測定する能力を有している


10.逆取得となる吸収合併の会計処理

①逆取得とは
⇒消滅会社の株主が、合併後の存続会社を支配する合併のこと

②会計処理
(1) 個別財務諸表
 ⇒ 法的に、存続会社が主体
 ⇒ 消滅会社の株主は、消滅会社の資産・負債を合併後も支配
 ⇒ 投資は継続している
 ⇒ 存続会社は、消滅会社の資産・負債を帳簿価額で引き継ぐ(持分プーリング法)

(2) 連結財務諸表
 ⇒ 企業グループを主体とする
 ⇒ 法的には消滅したが、実態は消滅会社が存続会社を吸収合併し、存続した場合と違いはない
 ⇒ 存続会社の資産・負債を時価で取り込む(パーチェス法)


11.重要業績評価指標(KPI)の分析・管理におけるポイント

①ポイントとなる事項
(1) 指標の構造化
(2)  モニタリングとアクションの明示

②指標の構造化の主な手法
(1) バランススコアカード
 ⇒ 企業戦略を財務、顧客、業務プロセス、学習と成長の4つの視点で分類し、戦略を決定する手法
(2) 財務指標分解
 ⇒ 戦略より決定された指標をトップとし、これを分解していく手法

③モニタリングとアクション
 ⇒ 指標をモニタリングし、どのようなアクションをするかを明示


12.情報を漏洩させない経理アウトソーシングの心得

・アウトソーサー(会計事務所等)における内部統制の実践
→経営トップのリーダーシップが重要

・内部統制の重要性の認識
→経営トップが重要性を認識して内部統制を強化することにより、相当程度リスクを軽減

・当事者意識の醸成
・研修の重要性
→情報セキュリティに関する定期的な社内研修
→個人的・主観的な事情の抑制に貢献

 ∴事前の対策と環境づくりが重要


13.法人税:国庫補助金等で複数の資産を取得した場合の圧縮記帳に留意

■圧縮記帳と特別控除の併用
・国庫補助金等を受領して資産を取得した場合には圧縮記帳の適用を受けることができる。
法人税法上の圧縮記帳は租税特別措置で定められた特別控除と併用することができる。
(措置法上の圧縮記帳と租税特別措置の特別控除は併用不可)
)[国庫補助金の圧縮記帳][生産性向上設備投資促進税制の税額控除]は併用可能

■併用を行うケースでは、圧縮記帳の順番により有利不利が生じうる。
・国庫補助金1000万円を取得
・税額控除の対象資産A700万円で取得
・税額控除対象外の資産B800万円で取得

した場合、
  Bについて800万円の圧縮記帳を適用
  Aについて残り200万円の圧縮記帳を適用
  Aの残額500万円について特別控除を適用
と圧縮記帳の適用順を工夫することで、プロラタで圧縮するよりも税額控除の額を有利にできる。


14.業績連動型新株予約権が増加傾向に

(背景)
これまで中長期インセンティブ・プランとしてストック・オプション(以下SOとする)が導入され、税制適格SOが主流であった。
税制面から優遇されている一方で、下記のようなインセンティブ機能を向上に対するデメリットがあり、効果が限定的なことが多く、近年は導入件数が減少傾向にある。
・年間権利行使総額の上限(1,200万円)
・費用計上が求められる
・社員間や不要対象者の平等感に配慮して、薄く広く付与
・株価が権利行使価格を上回らなくても損失が出る訳ではない

①退職型の株式報酬型SO
・役員退職慰労金制度は廃止傾向にある(上場企業の約7割は廃止済み)
・役員退職慰労金制度に替わる制度として定着
SOの行使価額は1円に設定=実質的には株式を受け取ったのと概ね同じ効果
・条件は退職時まで権利行使不能(業績・株価条件の追加はほぼない)

⇒退職までという期間から長期インセンティブ・プランとして一般化
⇒中期インセンティブ・プランとしては、在職型の株式報酬型SOが増加傾向にある

②在職型の株式報酬型SO
・在職中の固定報酬の一部を株式報酬に切り替える
・業績や株価に連動した権利行使条件を加える事例が多い
・新株予約権を時価発行されるため、行使条件が未達の場合は払込相当額の損失がある
・業績・株価への意識づけ効果が高い
・在職要件は必ず付される
・従業員を対象とする事例は約10%とすくない(労働法上の問題)

③時価発行新株予約権(有償SO
・在職型の株式報酬型SOとの違いは、職務執行の対価(報酬)として付与を受けるものでない
・投資として自由意思で引き受けられるので、報酬の切り替えとしての制度よりも条件設定の範囲が広い


15.社長交代DDのススメ

・必要性
 社長DDにより前任者、後任者、利害関係者が現状認識を共有すべきと考える為効果的。

・社長交代DDツール
 以下の3つのチェックが有用。
  マーケティング力:顧客や市場の立場から自社を総点検する
  イノベーション力:社会的な存在価値を高める
  コーポレートガバナンス力:ヒトの心のベクトルを結集する


16.使える補助金・助成金vol.4 「ものづくり補助金」

・正式名称「中小企業・小規模事業者ものづくり・商業・サービス革新事業」

・要件(下記のいずれか)
(1)特定の基礎技術を活用した革新的なものづくりを行っている
(2)革新的なサービスの提供(⇒付加価値額年3%向上+経常利益率年1%の向上)

・補助金額:対象となる経費の3分の2(上限 7001,500万円 業種等の分野、企業規模による)

・採択数
H25年度予算 2.2万件応募 9千件採択

・採択例
高齢者ひとりひとりに寄り添ったクラウド型生活見守りサービス
ライフライン自立型水洗式トイレシステム







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